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不動産査定は匿名でできる?匿名査定に向いているケース3つ

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 不動産査定を匿名で行う場合、マンションのみ対応している例がほとんどで、戸建てを正確に査定するのは難しい
  • 匿名で行う不動産査定は、すぐに売却するつもりはない、営業電話や売却の催促をしてほしくないといった場合に向いている

遺産整理や家の買換えなどを考えたとき、自分が所有している不動産にどの程度の価値があるか知りたい人は多いでしょう。

売却が目的の場合は、不動産会社に無料で査定を依頼できますが、まずは個人情報などを伝えずに匿名で査定したいという方もいるかもしれません。この記事では「不動産査定を匿名で行うこと」について解説します。

そもそも不動産査定とは?

不動産査定とは、不動産の時価を算出することを指します。時価とは「今売ったらいくらか」という値段のことです。

不動産の価格は土地価格と建物価格の合計で構成されています。土地価格は市況によって上がったり下がったりしますが、対して建物価格は築年数の経過によって下がっていきます。

土地価格は上下し、建物価格は下落しつづけることから、不動産は購入時と売却時では価格が異なります。そのため適正な価格で売却するためには「今の価格」を調べ直す必要があり、売却前には査定をおこなうことが一般的です。

なお、似たような言葉に「不動産鑑定」があります。不動産鑑定とは、不動産鑑定士と呼ばれる国家資格者がおこなう時価の算出のことです。その意味は不動産査定と同じになります。

ただし、不動産鑑定は不動産鑑定士の独占業務であり、国が定める不動産鑑定評価基準に則っておこなわれるものです。そのため、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に基づいておこなう時価の算出のことを特別に「不動産鑑定」と表現しています。

不動産査定の種類

不動産の売却前の査定は、不動産会社に依頼しておこないます。ここでは、不動産査定の種類について紹介します。

訪問査定

訪問査定とは、不動産会社の担当者が実際に不動産を見ておこなう査定のことです。土地の境界や付帯設備、周辺環境や立地条件も含めて調べます。

訪問査定は現地を確認して価格を算出することから、一般的に最も価格精度の高い査定とされています。

机上査定(簡易査定)

机上査定とは不動産会社の担当者が物件を直接見ずにおこなう査定のことです。訪問を省くため、簡易査定とも呼ばれています。

机上査定では、担当者が住宅地図や登記簿謄本などの資料から物件を想定し、価格を算出します。実際に物件を見ないため、リフォームによるプラス要因や損傷によるマイナス要因などを価格に反映できません。よって、価格の精度は訪問査定よりも劣ります。

机上査定は訪問査定よりも価格精度が低いため、手順としては省いてもよいです。売却が決まっているのであれば、最初から訪問査定を依頼することをおすすめします。

匿名査定(AI査定)

そのほかの査定方法としては、匿名査定(AI査定)があります。AI査定はコンピュータのみでおこなう査定で、瞬時に査定額が得られる点が特徴です。電話番号などを入力する必要がないことから匿名査定とも呼ばれています。

匿名査定はマンションにのみ対応している場合がほとんどで、戸建てを査定できるものは多くありません。また、はっきりと価格が提示されるものも少なく、結果は「××万円~○○万円」のようにおおよその額で表示されます。

訪問査定や机上査定よりも価格精度が劣るため、あくまでも参考程度に利用するのがおすすめです。

不動産査定の評価を分けるポイント

不動産の査定価格に影響するポイントについて解説します。

建物の状態

訪問査定では、管理の状態や仕上げ材の良否、設備や床、壁の損傷の程度など、建物の状態が評価のポイントとなります。

戸建てにかんしては、建物の価値を客観的に証明できる資料があると評価が高くなります。建物の価値を客観的に証明できる資料としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 住宅性能評価書
  • インスペクション(建物状況調査)の結果報告書
  • 瑕疵担保保険の付保証明書

また、旧耐震基準の建物であっても、新耐震基準に適合していることを証明できる資料があれば、評価が上がります。

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請を通している建物は「旧耐震基準」、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請を通している建物は「新耐震基準」に則って建てられています。

新耐震基準に適合していることが証明できる書類としては、以下のようなものがあります。

  • 耐震診断結果報告書
  • 既存住宅に係る建設住宅性能評価書
  • 瑕疵保険の保険付保証明書
  • 建築士法第20条第2項に規定する証明書(構造計算書)
  • 耐震基準適合証明書
  • 住宅耐震改修証明書
  • 固定資産税減額証明書
  • 増改築等工事証明書

周辺の環境

周辺の環境も査定価格に影響します。具体的には、「最寄り駅の特徴」や「学区の良否」などが価格に影響を及ぼす要因です。

「最寄り駅の特徴」を例にするなら、最寄り駅が接続駅や快速停車駅など利便性が高い駅であれば、評価は高くなります。

市場状況

市場状況も価格に影響します。近年の低金利環境では、住宅ローンが組みやすいため不動産需要が高まっています。そのため、不動産価格も上昇基調にあり、査定において高く評価されやすいです。

不動産査定を匿名で利用する際の注意点

不動産査定を匿名で利用する際の注意点について解説します。

正確な査定額がわからない

匿名査定は、正確な査定額がわからない点が注意点です。
訪問査定のように物件を実際に見るわけではないため、リフォームの有無や損傷の度合い、日照・通風・景観の良否、騒音・振動の状態といった、実際に見ないとわからない部分を価格に反映することができません。

匿名査定は限られた情報の中でしか査定をしないことから、精度は訪問査定よりも劣ります。

また、匿名査定の多くは価格が幅で表示されます。表示される価格の幅の内容も、心なしか実際の価格よりも高い印象です。

匿名査定の価格が高く表示されるのは、訪問査定に誘導するといった目的もあります。
気軽に使える匿名査定で高い価格を提示すれば、「こんなに高く売れるのなら売ってみよう」と考えてしまう人は多いです。
そのため、匿名査定では意図的に高い価格を出すよう設定されている可能性はあります。

匿名査定は高めに出る傾向が強く、かつ精度も低いことから、特に住宅ローンが残っている人にとっては不向きな査定方法です。

実際には売却価格でローンを完済できないかもしれないのに、完済できると見誤ってしまう恐れがあります。

戸建ての査定精度は著しく低い

匿名査定は、戸建ての査定精度は著しく低い点が特徴です。
マンションに関しては高めに表示されるものが多いですが、中にはかなり精度の高い匿名査定も一部に存在します。
精度の高い匿名査定システムを見極めて利用すれば、マンションならそれなりの価格を把握できる可能性も高いです。

ただし、マンションも過去に同じマンション内の売却事例が少ないケースでは精度が低い場合があります。
例えば、築浅マンションや戸数が極端に少ないマンション等は、匿名査定の精度が低くなりやすいです。

一方で、戸建てに関しては残念ながら、精度の高い匿名査定はないといっても過言ではありません。
そもそも戸建ての査定は、不動産会社が行う訪問査定でも価格がバラつきやすいので、適正価格を出すことがマンションよりも難しいです。

戸建ては、土地と建物のそれぞれに価格形成要因があり、他の事例と比較しにくいことが査定の難しい理由となります。
土地は面積や形状、前面道路の幅員等が事例と異なる可能性がありますし、建物は築年数や仕様、デザイン性等が異なる可能性があります。
戸建ては事例との単純で機械的な比較が難しいことから、プログラミングによって一定の法則を適用して価格を出しにくいのです。

そのため、戸建てで概算額を知りたいのであれば、最初から机上査定(簡易査定)を利用することをおすすめします。

売却時に再度査定が必要となる

匿名査定は適正価格が出ているかどうかわからないため、いずれにしても売却前は訪問査定が必要です。

不動産の売却では、高く売りだせばなかなか売れませんし、安く売りだせば損をすることになります。
確実に売却でき、かつ、損をしないようにするためには、高過ぎず安過ぎない適正価格で売ることが必要です。

適正価格を得るという意味では、机上査定(簡易査定)でも不十分といえます。
机上査定も行う場合には、さらに二度手間となってしまいます。
相応に精度が高く、かつ概算額だけ知りたいという場合には、最初から机上査定を依頼するのも一つの方法です。

不動産査定を匿名で利用するのに向いているケース

この章では、匿名査定の利用が向いているケースについて解説します。

すぐに売却するつもりはない

すぐに売却するつもりがないのであれば、匿名査定を使っても特に問題はありません。
匿名査定は価格の精度こそ低いものの、上昇や下落といった変動傾向は反映しているといえます。

例えば1年前よりも高く査定される場合には、実際にも1年前よりも高く売却できる可能性はあります。

匿名査定は、単に価格を提示するものだけでなく、過去の価格推移や賃料等のさまざまな情報を提供してくれるものも存在します。

今売るべきか、または貸した方が良いかといった検討をすることができ、今後の方向性を決めるための参考資料とするには有効です。

営業電話や売却の催促をしてほしくない

不動産会社から営業電話や売却の催促をしてほしくない人は、匿名査定が向いています。
そもそも、不動産会社は仲介の仕事を受注するための営業の一環であることから、無料で査定を行っています。

例えるなら、不動産会社の査定は工事会社の見積もりと似ています。工事の見積もりが無料となるのは、工事の受注を目的としているからです。
見積もりをするには手間もかかりますが、工事が受注できれば利益を上げることができるため、見積もりは無料で対応してくれます。

不動産会社も査定の結果、仲介の仕事が受注できれば収益を得る機会ができますので、無料で査定を行ってくれるのです。
そのため、机上査定や訪問査定は無料ではあるものの、その後に当然営業電話がかかってきます。
ボランティア目的で査定をしているわけではありませんので、査定後の営業電話は付き物です。

一方で、匿名査定は半分企業の宣伝活動を兼ねて行っている側面もあることから、ある意味ではボランティア色が強くなっています。
営業電話がないことも匿名査定のウリの一つであり、営業電話を受けたくない人におすすめとなります。

スピーディーに査定してほしい

多くの匿名査定は、ホームページに必要な事項を入力するだけで、一瞬にして査定結果が出てきます。
24時間利用可能なため、真夜中でも、通勤時間中でもすぐに価格を知ることができます。

不動産会社の中には机上査定や訪問査定で即日査定可能としている会社もあるものの、匿名査定のスピードにはかないません。
そのため、匿名査定は今すぐ価格を知りたい人におすすめの査定方法です。

この記事のポイント

不動産査定を匿名で利用する際の注意点は?

不動産査定を匿名で利用する場合、正確な査定額がわからない、戸建ての査定精度は著しく低い、売却時に再度査定が必要となるといった点に注意が必要です。

詳しくは「不動産査定を匿名で利用する際の注意点」をご覧ください。

不動産査定を匿名で利用するのに向いているケースは?

すぐに売却するつもりはない、営業電話や売却の催促をしてほしくない、スピーディーに査定してほしいという場合は、不動産査定を匿名で利用するのに向いているでしょう。

詳しくは「不動産査定を匿名で利用するのに向いているケース」をご覧ください。

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