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マンション売却時にありがちな失敗事例とは?後悔しないコツを解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンション売却で失敗を避けるためには、売却の流れを事前に理解しておくことが大切
  • マンション売却前、売却中、売却後、それぞれのタイミングの失敗事例と対策を知っておくべき

不動産の取引は、一生で何度も経験するものではありません。マンションを売却する場合も、はじめて行う人がほとんどであることから、経験不足などが原因で失敗してしまうこともあるでしょう。

経験不足を補うには、事前に知識を備えておくことが望ましいです。特に、ありがちな失敗例を知っておくと、失敗を防ぎやすいでしょう。マンション売却の失敗には、一体どのようなものがあるのでしょうか。

この記事ではマンション売却の失敗事例や、失敗しないためのコツなどについて解説します。

マンション売却時の失敗事例は実は多い?

マンション売却では、誰でも多少の失敗はあると思われます。人生で何度も経験するものではないため、最初から完璧にできる人はむしろ少ないです。

小さな失敗はさまざまあると思いますが、やはり避けたいのは「無駄に安く売ってしまった」という大きな失敗です。適正価格で売ることができれば、マンション売却は「合格点」といえます。

大きな失敗を防ぐための基本的な対策は、安く売らないために相場を調べたり、複数の不動産会社に査定を依頼したりすることです。

マンション売却時に起こりうる失敗を避けるには?


マンション売却時に起こりうる失敗を避ける方法について解説します。

マンション売却の流れを事前に理解しておく

マンション売却で失敗を防ぐには、まず売却の流れをしっかり理解しておくことが必要です。
マンションを含む不動産の売買では「売却まで時間がかかる」「売買契約と引渡の期間が開いてしまう」という2点が大きな特徴となります。

マンション売却の流れを簡単に示すと、以下の通りです。

【売却のみの場合】

  1. マンションの査定を依頼
  2. 不動産会社と媒介契約を締結
  3. 販売活動の開始(買主が決まるまで一般的には3ヶ月程度)
  4. 買付証明書の受領
  5. 売買契約の締結(引渡までは一般的に1ヶ月程度)
  6. 引っ越し
  7. 引渡
  8. 必要があれば売却の翌年に確定申告

マンションの売却では、最初に複数の不動産会社に査定を依頼します。依頼したい不動産会社が決まったら、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約とは、仲介の契約のことです。

不動産会社に仲介を依頼したら、いよいよ販売活動の開始です。マンションは、売り出してから買主が見つかるまで2~4ヶ月程度の時間がかかります。販売期間に余裕を持っておかないと、「売り急ぎ」と呼ばれる「焦って安く売る失敗」につながるので注意が必要です。

買主が見つかったら、買付証明書を受領します。買付証明書とは、買主が正式に購入の意思を示した書面のことです。買付証明書の内容に問題がなければ、売買契約を締結します。

売買契約と聞くと、難しそうなイメージがありますが、実際には書面で「いつ、いくらで取引します」といった約束をするだけです。ただし売買契約時点では、所有権が買主に移転することはなく、売主のままです。所有権が移転するのは、あくまでも最後の「引渡時点」であると覚えておきましょう。

引渡は、売買契約の1~2ヶ月後に行うことが一般的となっています。売主は、売買契約時点で買主から手付金を受領し、次に引渡時点で買主から手付金を除いた残金を受け取ります。住みながら売る場合、売主は売買契約から引渡までの間に引っ越すケースがほとんどです。

その後、必要に応じて売却の翌年の2/16~3/15の間に確定申告を行います。

マンション売却時の税金や諸費用を把握しておく

マンション売却時の税金や諸費用を把握しておくことも、失敗を防ぐ対策になります。特に、諸費用の中で最も金額が大きくなる仲介手数料についてしっかり理解しておきましょう。

仲介手数料は売買代金が400万円超の場合、「(取引額×3%)+6万円(+消費税)」が上限額となっています。売買契約時点に50%を支払い、引渡時点に残りの50%を支払うことが通常です。
例えば、マンションの売却価格が4,000万なら、仲介手数料は138.6万円です。売買契約時には半額の69.3万円を用意することになります。大きな金額になりますので、事前に把握しておくようにしましょう。

また、比較的大きな諸費用としては、引っ越し費用があります。費用は、家族の人数や移動距離によって異なります。
例えば3人家族で500km未満の引っ越しなら、通常期は15~20万円程度です。引っ越しは引き渡し前に行うことも多いため、費用を準備しておく必要があります。

なお、税金に関しては発生しないことも多いです。どのようなときに発生し、逆にどのようなときは発生しないか、不動産会社に確認しておきましょう。

マンション売却時は焦らずに不動産会社を選ぶ

マンション売却時は、焦らずに不動産会社を選ぶことも重要です。近年は大手の不動産会社を中心に、仲介を依頼することでハウスクリーニングや一部の修繕等を無料で対応してくれる例も増えてきました。

このようにお得なサービスを提供している会社もありますので、各社がどのようなサービスを提供しているか、じっくり調べた上で不動産会社を選ぶことをおすすめします。

マンション「売却前」によくある失敗事例と対策とは?

売却前によくある失敗事例と対策について解説します。

不動産会社選びの失敗

典型的な失敗例としては「査定額の高さだけで不動産会社を選んでしまった」というケースが挙げられます。

マンション売却では、最初に不動産会社による査定を行います。査定額は、一般的に3ヶ月程度で売却できると考えられる予想価格であり、売却を保証する価格ではないため、高い査定額を提示されたとしてもその価格で必ず売れるわけではありません。ゆえに、査定額の高さだけで不動産会社を決める必要はないのです。

査定額だけでなく、不動産会社が提供する無料サービスや、営業担当者の人柄等を加味した上で決めることをおすすめします。

住宅ローンの残高や諸費用の把握不足

住宅ローンが残っているマンションは、引渡時に行われる買主の残代金の入金によって残債を一括返済します。そのため、住宅ローンが残っているマンションを売るには、売買代金が住宅ローン残債を上回っていることが基本的な条件です。

住宅ローン残債を正しく把握しておかないと、思っていたような売却活動ができない場合もあります。また、仲介手数料等も発生しますので、売買代金は住宅ローン残債に諸費用を加えた額よりも上回っていることが望ましいでしょう。

対策としては、査定を依頼する前に住宅ローン残高と諸費用を把握し、最低いくら以上で売る必要があるかをしっかり理解することが必要です。

必要書類の準備不足

マンション売却では、最後の引渡時に以下の書類が必要となります。準備不足によって、引渡のスケジュールに不都合が出たりすることのないよう、注意しましょう。

【引渡時に必要な書類】
登記済証(権利証)または登記識別情報
印鑑証明書(3ヵ月以内に発行のもの)
固定資産評価証明書
住民票
身分証明書
固定資産税納税通知書の写し
管理費および修繕積立金の額の確認書
分譲時のパンフレット
管理規約・理事会の会計報告書や議事録
設備取扱説明書・保証書
抵当権の抹消に必要な書類(銀行が用意する)

役所などで発行手続きに時間がかかる場合もあるため、書類はできるかぎり早めに揃えておくことが適切です。

マンション「売却中」によくある失敗事例と対策とは?


売却中によくある失敗事例と対策について解説します。

適切な売却時期や相場の把握不足

知識不足などから「マンションの適切な売却時期や相場をしっかり把握していなかった」という失敗もあります。

例えば、近年のような「中古マンション価格が上昇しているとき」は売りどきです。季節でいえば入学や転勤などが増える移動シーズンの「2~3月」、築年数でいえば「築25年」以内が売りどきとなっています。

併せて相場も把握しておくと、査定価格に対して正しい判断ができます。マンションの場合、同じマンションの「売り物件の価格」が良い参考資料になるので、ネットなどで広告などが出ていないか探してみましょう。そこから「単価」を計算し、およその価格を把握しておくことをおすすめします。

不動産会社との連携不足

不動産会社との連携不足による失敗も考えられます。「いくら以上で売りたい」「いつまでに売りたい」「近所に知られたくない」などの希望条件は、遠慮なく不動産会社に伝えてください。また、売却活動を円滑に進めるために「◯時以降なら電話がとりやすい」「すべてLINEで連絡して欲しい」といった相談もできます。希望条件はもちろん、なるべくスムーズに連絡がとれる方法も伝えると、連携がとりやすくなります。

内覧時の準備不足

内覧とは、販売期間中に購入希望者に対して家の中を見せることです。住みながら家を売る場合、準備不足のまま内覧を行ってしまうと、なかなか売却に結びつかないこともあります。

内覧が決まったら、極力物は片付け、掃除を行い、キレイに見せる準備を整えた上で購入希望者を迎えましょう。

マンション「売却後」によくある失敗事例と対策とは?


売却後によくある失敗事例と対策について解説します。

予想を上回る税金や諸費用の発生

マンション売却後に、予想を上回る税金や諸費用が発生するといった失敗もあります。税金に関しては、特例を利用すると発生しないことが多いです。ただし、条件によっては特例を利用できない場合もあります。

例えば、買換えを行う場合、購入物件で住宅ローン控除を利用する人は、同時に売却物件で節税の特例を利用することができません。事前に特例の要件を確認しておきましょう。

また、売却を進めていく中で「床のキズを修繕した」「ハウスクリーニングを依頼した」等の想定外の費用が生じることもあります。そうした事態に備えるために、10万円程度の予備費を確保しておくのが適切な対策です。

住宅ローンの残債よりも売却価格が下回る

査定額が住宅ローン残債と同程度だと、結果的に住宅ローン残債よりも売却価格が下回ってしまうこともあります。

査定額が住宅ローン残債をギリギリ上回っている状態の場合、適切な対策は売却をしばらく見送ることです。住宅ローンの返済が進めば、やがて売却額が住宅ローン残債を上回るタイミングが出てきます。

どうしてもすぐに売却しなければならない場合は、貯金などを追加する形で一括返済するか、もしくは住み替えローンの利用を検討するという方法もあります。住み替えローンとは、売却物件で返済しきれなかった残債を購入物件に上乗せして借りる特殊なローンになります。利用できるかどうか、銀行に相談してみましょう。

買い主との連携不足

買い主との連携不足による失敗もあります。一番多いのが「設備の不具合についてきちんと説明しなかった」というケースです。「正常に作動する」と思っていた設備が動かないなどで、売却後にクレームが来ることがあります。設備の操作にコツなどがある場合には、使い方をわかりやすく説明するなど、対策しておきましょう。

マンション売却時の失敗を避けるためにも事前準備を


マンション売却時の失敗を避けるためには、事前の準備が大切です。具体的には以下の準備をしておきましょう。

【失敗を避けるための準備】

  • 売却の流れを十分に理解すること
  • 売却の全体スケジュールに余裕を持つこと
  • 仲介手数料等の費用の詳細と支出のタイミングを知っておくこと
  • 万が一のために10万円程度の予備費を確保しておくこと
  • 税金について仕組みを理解しておくこと

はじめてマンションを売る場合、不安に思うことが多くて当然です。わからないことがあったら不動産会社に確認しつつ、焦らずじっくりと進めていきましょう。

この記事のポイント

マンション売却時に起こりうる失敗を避けるにはどうしたらいいですか?

マンション売却で失敗を防ぐには、まず売却の流れをしっかり理解しておくことが必要です。

さらに、マンション売却時の税金や諸費用について把握しておくことも忘れないようにしましょう。不明点がある場合は、不動産会社に問い合わせるようにしてください。

詳しくは「マンション売却時に起こりうる失敗を避けるには?」をご覧ください。

マンション「売却中」によくある失敗事例と対策を教えてください。

マンションの適切な売却時期や相場をしっかり把握していなかった、不動産会社との連携が不足していた、準備不足のまま内覧を行ってしまったなどの失敗事例があります。

対策としては、マンションの売りどきや相場を把握しておくこと、不動産会社に希望条件をしっかり伝えること、内覧が決まったら室内をキレイに片付けておくことなどがあります。

詳しくは「マンション「売却中」によくある失敗事例と対策とは?」をご覧ください。

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