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離婚時にマンションを売却する方法は?気をつけたいポイントも解説

執筆者プロフィール

大崎麻美
司法書士、FP技能士2級、宅地建物取引主任者、シニアライフマネージャー

日系エアラインのCAを経て30代で司法書士資格を取得。2012年あさみ司法書士事務所を設立。実需・収益不動産・商業に関する登記実務、終活のサポート業務を行う。2022年末より海外に移住。移住後は、実家じまいの情報発信サイト「実家じまい完全攻略ブログ」を運営。法律・不動産専門のライターとして活動。

ざっくり要約!

  • 離婚時にマンションのローンが残っている場合は売却がおすすめ
  • 慰謝料代わりにマンションをもらう場合は事前に注意点を確認する

離婚を考えている夫婦にとって、今まで住んでいたマンションどうすべきなのかというのは頭の痛い問題です。「子どもを転校させたくない」「このままマンションに住み続けたい」という方もいるでしょう。離婚は、人生に大きな影響を与えるため、住環境まで変えるのは負担も大きいものです。

不動産でも特に住宅ローンが残っている場合は、離婚後のローン支払いやローンの契約内容などにおいてトラブルが起きやすいことから売却することをおすすめします。

本記事では、離婚時のマンションの売却のポイントや売却のタイミング、売却以外の方法と問題点を紹介します。併せて、知らずにいると後悔する慰謝料代わりにマンションをもらう場合の注意点も解説するので、参考にしてください。

離婚時のマンション売却を成功させるポイントは?

離婚によるマンション売却では「マンション売却の理由が離婚だと周囲に知られずに売りたい」「売却のタイミングを離婚前にするのか、離婚後にするのか迷っている」「共有名義のマンションでも売却できるのか」「マンションは財産分与の対象になるのか」「売却せずに住み続けることでデメリットはあるのか」など、気になる点が多いものです。
ここからは、離婚時のマンション売却を成功させるためのポイントを解説します。

周囲に内緒で売却することも可能

マンション売却の理由が離婚だということを、周囲に知られたくないと感じる方もいらっしゃるでしょう。結論、自分から周囲の人に話さなければ、売却理由を知られることはありません。

厳密に言えば、「仲介」という方法で売却を行う場合には、周囲に不動産の売却活動をしていること自体を知られてしまう可能性はあります。不動産会社のチラシやサイト、新聞折り込み広告などにマンションの情報を載せて買主を探すためです。場合によっては、買主に対して売却理由を話すことは必要ですが、周囲の方に売却理由を聞かれたとしても正直に答える必要はありません。

後に解説する「買取」という売却方法を選択すれば、広告を出さずに売却することができます。買取は一般の方向けに販売するのではなく、不動産業者に売却するため宣伝を行う必要がありません。そのため、売却活動をしていること自体、周囲に知られることなく、マンションを売却することが可能です。

マンション売却後の離婚もおすすめ

離婚を機にマンションの売却を決めた場合、そのタイミングは離婚の前後どちらがよいのでしょう。タイミングによって、それぞれのメリットとデメリットがあります。

マンション売却のタイミングメリットデメリット
離婚前に売却・離婚後に元配偶者とやりとりをしなくてよい
・元配偶者と売却の件で連絡が取れなくなるリスクがない
・売却に関するトラブルが軽減できる
・売却を急ぐため高値での売却は難しい
・買主が現れるタイミングによっては離婚の時期が遅れる可能性もある
離婚後に売却・時間をかけて売却活動ができるので高値を狙える
・すぐに離婚ができる
・離婚後も元配偶者とやりとりが必要
・元配偶者と売却の件で連絡が取れなくなるリスクがある

離婚前にマンションを売却する場合、離婚のタイミングを自分達で決めることができないというデメリットがあります。いつ買主が現れるのかわからないため、離婚の時期を待てることが前提になります。とはいえ、すでに離婚が決まっているのであれば、できるだけ早く離婚したいというケースがほとんどであるため、売却を急がなければならず、売却価格が安くなってしまう可能性もあるでしょう。

ただし、離婚前に自宅マンションを売却できれば、その後に元配偶者とマンション売却に関するやりとりをしなくてすむため、新生活はすっきりとした気持ちでスタートが切れるというメリットもあります。

一方、離婚後にマンションを売却する場合は、じっくりと売却活動ができるため、納得する価格で売却できる可能性が高まります。買主が現れるタイミングを待つことなく離婚ができるため、今すぐ離婚をしたい方は離婚後に売却しましょう。ただし、売却活動の中で元配偶者とやりとりが必要になり、状況によっては売却活動で必要になる連絡が取れなくなるリスクを抱えることになります。

離婚時にマンションを売却する際の注意点とは?

離婚時にマンションを売却するには、次の点について確認が必要です。

  1. 住宅ローンが残っている場合、完済しないと売却できない
  2. 夫婦で共有名義のマンションは、双方の合意がないと売却できない
  3. 売却による利益が残った場合は、財産分与の対象になる
  4. 相場での売却を希望するなら「仲介」、早期の売却を希望するなら「買取」

なお、①②④は通常のマンション売却と同じです。詳しくみていきましょう。

住宅ローンを完済しないと売却できない

離婚の有無に関係なく、マンション売却時には住宅ローンを完済する必要があります。
マンションの売却を考えたタイミングで、住宅ローンの残債がいくらなのかを確認しましょう。同時に、複数の不動産会社にマンションの査定を依頼し、どの程度の金額で売却できるのか目安を確認します。

なお、不動産を売却する際にはさまざまな諸費用がかかります。
主な費用として「仲介手数料(売買価格の3%+6万円)」「登記費用(抵当権抹消登記、場合によっては住所変更登記)」「印紙代」「譲渡所得税(控除や特例を利用すれば発生しないケースも)」があります。
詳細は不動産会社に確認しましょう。

アンダーローンとは

マンションの売却価格が、住宅ローンの残債を上回る場合をアンダーローンと呼びます。

・アンダーローン=マンションの売却価格>住宅ローンの残債

アンダーローンの場合は、通常のマンションの売却と同様、問題なく売却が可能です。「マンションの売却価格―売却諸費用=手取額」となり、この手取額は財産分与の対象になります。

オーバーローンとは

マンション売却価格が、住宅ローンの残債に満たない場合をオーバーローンと呼びます。

・オーバーローン=売却価格<住宅ローンの残債

オーバーローンの場合は、売却代金で住宅ローンの完済ができないため、その状態では売却することができません。買主に引き渡す際には、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。

抵当権とは、お金を貸し出す金融機関等が不動産に設定する権利です。抵当権を設定すれば、ローンが返済されない場合に不動産を強制的に競売にかけ、貸したお金を回収することができます。もし抵当権が設定された不動産を買主が取得した場合でも、売主の返済が滞れば、不動産を競売にかけられてしまうのです。

オーバーローンの場合は、抵当権を抹消するために次のような方法が考えられます。

① 売却代金に自己資金を足し、住宅ローンを完済する
自己資金を足して完済できる場合は、オーバーローンであっても問題ありません。不動産引渡しの日に自己資金と売却代金を合わせて、ローンを完済します。

② 新居を購入予定の場合、住み替えローンを利用し、住宅ローンを完済する
新しく購入する不動産の価格以上の金額を借り入れることで、売却物件のローンを完済します。ただし、住み替えローンは審査も厳しく、金利も高くなる傾向があります。

住み替えローンを利用する場合、不動産の引渡しは売却と購入を同日に行う必要があります。スケジュールがタイトなうえ、各金融機関との連携も重要になるので慎重かつ迅速に進めなければなりません。

③ 任意売却をする
もし①または②の方法がとれない場合、最後の手段として任意売却があります。任意売却とは、住宅ローンの債権者(金融機関)から承諾を得て、住宅ローンを完済していないものの、引渡日には抵当権の抹消を行う売却方法です。ただし、いくら任意売却をしたくとも、債権者から承諾をもらえなければ不可能です。また、任意売却をして抵当権が抹消されてもローンは残るため、返済を続けていかなくてはなりません。

任意売却では、債権者との交渉が必要であり、通常の売買とは異なる点が多くあります。そのため、任意売却の知識と経験がある不動産会社に相談をすることが重要です。

共有名義の場合はお互いの合意が必要

マンションを夫婦で購入し、名義が共有となっている場合、一方が勝手にマンションを売却することはできません。
夫婦共有の不動産の売却は、両者の合意があることが前提であり、実際に不動産を引き渡す際には両者の手続きが必要です。

実務上、関係が悪化している共有者の不動産の引渡は、別室で行うなどの対応がとられることがほとんどです。

財産分与の対象になる場合とならない場合がある

離婚に伴うマンションの売却時には、財産分与の対象になる場合と、ならない場合があります。そもそも財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同して築いた財産を、分け合うことです。分け合う割合は折半がベースとなりますが、個々の事情により調整も可能です。

婚姻期間中に購入したマンションは、名義がどのようになっていても、財産分与の対象になります。しかし、婚姻中に取得したマンションであっても、相続で取得した場合や贈与で取得した場合は対象外です。

アンダーローンとオーバーローンで財産分与は異なる

アンダーローンのマンションの場合は「売却価格-売却諸費用=手取額」となり、手取額が財産分与の対象となります。

一方、オーバーローンのマンションの場合は手取額がないため財産分与の対象外です。また、任意売却した場合にローンの残債を半分に分けて負担することもありません。住宅ローンの債務者が引き続きローンの返済を行います。

もちろん、ローンの返済について当事者間で取り決めをすることは可能ですが、ローンの債権者(金融機関等)に対して契約内容と異なる主張をすることはできません。つまり、最終的にローン返済の責任を求められるのは住宅ローンの債務者です。

仲介と買取の違い

住宅ローンを利用していないマンションで問題なく残債を完済できる場合、「仲介」と「買取」という2つの売却方法があります。

「仲介」は、一般の方向けに売却活動を行います。自宅のマンションの売却を不動産仲介会社に依頼し、自宅マンションや投資物件を探している買主を探してもらいます。主に一般の方に向けて販売活動をおこなうため、ネット広告、チラシ、新聞折り込み広告、看板などを使って宣伝し、幅広く買主候補を探すことが可能です。

そのため、売却価格は相場の価格で売れる可能性が高く、場合によっては高値で売れる可能性もあることがメリットでしょう。反面、買主候補が現れるタイミングや、実際に売れる価格は不確定です。時間的猶予がある方で、少しでも高くマンションを売りたいという方におすすめです。

「買取」は、不動産業者に不動産を売却する方法です。不動産を買い取った不動産業者はリフォームやリノベーションを行った上で、マンションを再販することが一般的です。リフォームやリノベーションの費用がかかることもあって、不動産業者は利益を出さなくてはならない分、仲介に比べて価格が低くなる傾向になります。買取の場合の価格は、相場の7~8割と考えておけばよいでしょう。

ただし、一般の方向けの販売ではないため、ネットやチラシによる宣伝が行われず、販売活動が周囲に知られることがありません。また、仲介での販売に比べて、圧倒的に早く売却ができ、一般的には契約不適合責任が問われないというメリットもあります。

仲介買取
売却期間最短3カ月~1週間(最短2日~と宣伝している業者もあり)
売却価格相場での取引が多い相場の6~7割
売却相手主に個人不動産業者
宣伝活動ネット広告、チラシ、新聞折込み等で幅広く行う
契約不適合責任※
仲介手数料

契約不適合責任とは

不動産売買における契約不適合責任とは、買主に引き渡した不動産が売買契約書の内容と異なっていた場合に、売主が追求される責任です。

もし売買契約書の内容と異なっていた場合、不動産の修補や減額を買主に求められたり、状況によっては損害賠償の請求や解約に至ったりすることもあります。

買取の場合は、不動産業者が売主の責任を免責(責任を負わなくてよいこと)する例が多くあります。ただし、任意で不動産業者が免責にしてくれているだけなので、必ず契約不適合責任が免責になるわけではないのです。買取による売買契約を交わす際は、契約不適合責任が免責になっているのかきちんと確認しましょう。

離婚時にマンションを売却する以外の方法とは?

離婚を機にマンションを売却するケース以外に、そのままどちらか一方が住み続けるケースや、賃貸にして収益を得るケースもあります。
売却せずに、マンションを保有し続けるメリットと注意点を確認しましょう。

慰謝料でもらうかそのまま住むパターン

慰謝料として自宅マンションをもらう場合は、ローンの残債があるかどうかが問題になります。
現金で購入したマンションやローン完済済みのマンションの場合、当事者間の合意があれば、慰謝料として受け取った上でマンションの名義を変更できます。その後は自分の不動産となるため、特に問題はありません。

ただし、それ以外の場合は以下のような問題が発生する可能性があります。

問題点1:マンションの所有権の名義変更

現在のマンションの名義人から、慰謝料として受け取る人の名義に変更することが困難な場合があります。住宅ローン契約はその約款で「不動産の所有権名義人を変更する場合は承諾を得ること」と定められていることが一般的ですが、ローンの債権者(金融機関等)に名義変更の承諾を得ることは基本的に困難な場合が多いためです。

ただし、もともと共有名義のマンションであった場合などは承諾されることもありますし、金融機関によるとも言えます。まずは承諾が取れないか相談しましょう。

もし承諾を得ずに名義変更したことが判明した場合、金融機関にローンの一括返済を求められるリスクがあります。もっとも、名義人の変更が金融機関に判明するシーンは限定されますが、もしローンを滞納すれば金融機関が不動産登記の内容をチェックするため、確実に名義変更が知られてしまいます。特に自分がローンの支払いをしない場合は、いつ滞納が発生するかもわからないため、内緒で名義変更することは避けましょう。

問題点2:住宅ローンの支払い

慰謝料として住宅ローンの残っているマンションをもらう最大の問題は、ローンの支払いです。
例として、元夫名義のマンションを、元妻が慰謝料代わりにもらったとします。銀行の承諾を得て元妻名義に変わったものの、ローンの残債は残っているため、債務者である元夫が支払うことになります(慰謝料代わりにもらっているので元妻はローンの返済をしません)。

債務者である元夫がそのままローンを払い続けてくれれば問題ありませんが、離婚後に途中で返済が滞るケースは少なくありません。返済が滞っている状態が改善されなければ、マンションの名義がたとえ元妻に変わっていたとしても、強制的に不動産を競売にかけられてしまい、結果元妻はマンションから退去しなくてはならないのです。

慰謝料としてマンションをもらうのであれば、現金で購入したマンションや住宅ローンが完済されているマンションでない限り、リスクが高いことを覚えておきましょう。また、財産分与や慰謝料代わりにもらう財産については、個々の財産状況によって内容が変わるので、事前に弁護士に相談して後悔することのないようにしましょう。

ローンの債務者がそのまま住むパターン

住宅ローンの債務者は、基本的にマンションの名義人(または共有者)ですので、住宅ローンを払いながら、そのまま住み続けることに問題はありません。ただし、出ていく側の元配偶者が、住宅ローンの連帯債務者や連帯保証人になっている場合は注意が必要です。

離婚をしても、連帯債務者や連帯保証人から自動的に外れることはありません。そのため、主債務者(この場合、マンションに住み続けてローンを払っている人)の支払いが滞れば、連帯債務者や連帯保証人に返済の請求がされるため、連帯債務者や連帯保証人から外してもらうようにしましょう。

連帯債務者や連帯保証人から外してもらうためには、次のような方法があります。

①新たな連帯債務者・連帯保証人をたてる(住み続ける人の親族など)
②連帯債務から単独債務に切り替えてもらう
③ローンの借り換えをして、住み続ける人の単独債務にする

ただし、どの方法を選んでも、金融機関が新たに審査する必要があります。審査結果によっては、元配偶者が連帯債務者や連帯保証人から抜けることができないケースもあるでしょう。

このように、売却せずにローンの残ったマンションに住み続ける場合、マンションの所有権の名義人、住宅ローンの債務者、連帯債務者や連帯保証人の有無など、整理しなくてはならない問題が多いです。事前に司法書士や弁護士に相談し、リスクを減らすために対策しましょう。

賃貸にするパターン

売却せずに、人にマンションを貸し出して収益を得る方法もあります。この場合も、やはりポイントは住宅ローンの残債の有無です。

現金購入したマンションやローンを完済したマンション以外の場合、基本的には賃貸に出すことを慎重に考えなくてはなりません。というのも、住宅ローンはマイホームの購入費用を貸し出すため、他のローンより金利が低く抑えられている特別なローンです。賃貸として貸し出す場合は、収益を得る目的で行う投資用不動産に該当するため、住宅ローンが使えなくなります。

一時期、ニュースでも住宅ローンの不正利用が取り沙汰されていましたが、投資用の不動産購入の際に不正に住宅ローンを利用した場合、一括返済を求められるリスクがあります。そのため賃貸として貸し出す場合は、住宅ローンから投資用のローンに借り換えをする必要があります。投資用のローンは金利も高くなるため、収支的にメリットがあるのか事前に確認しましょう。

また、マンションが元配偶者と共有名義である場合は、離婚後も賃貸に関するやりとりが発生することも考慮しましょう。

この記事のポイント

離婚時にマンションを売却する際の注意点は何ですか?

住宅ローンが残っているのか、共有名義の場合は双方に売却の合意がとれているか、財産分与の対象となるのか、「仲介」と「買取」のどちらで売却するのかなどを事前に確認する必要があります。

詳しくは「離婚時にマンションを売却する際の注意点とは?」をご覧ください。

離婚時にマンションを売却する以外の方法はありますか?

そのままどちらか一方が住み続けるケースや、賃貸にして収益を得るケースがあります。

ただし、いずれの場合もローンの返済状況や、マンションの所有権の名義人、住宅ローンの債務者、連帯債務者や連帯保証人の有無など、把握すべき点があります。

詳しくは「離婚時にマンションを売却する以外の方法とは?」をご覧ください。

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