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土地の名義変更の費用は?名義変更すべき4つのケースも解説

執筆者プロフィール

元木進一
司法書士・ファイナンシャルプランナー

平成9年司法書士登録・勤務司法書士として業務開始。平成19年ファイナンシャルプランナー(AFP)登録。平成23年元木司法書士事務所開業。司法書士とファイナンシャルプランナーとしての知識と経験を生かして主に相続手続、相続対策、遺言書作成、成年後見業務サポート相談業務をメインに業務を行う。

ざっくり要約!

  • 土地の名義変更をおこなう場合は「登録免許税」や「相続税」などがかかる
  • 亡くなった人から土地を相続したときや、配偶者や子どもに土地を生前贈与したときなど、土地の名義変更が必要となるさまざまなケースがある

土地を取得する場合、法務局で名義を変更する「所有権移転登記」の手続きが必要です。この手続きはとても重要で、登記簿に反映してはじめて、自分が所有者であると主張できます。この記事では、土地の名義変更の手続きにおける必要書類や費用について解説します。

土地の名義変更に関する費用

土地の名義変更の際に発生する費用は次のとおりです。

役所で取得する書類の費用

名義変更の種類によって必要な書類は異なります。しかし、ほとんどのケースでは役所で以下のような書類を取得する必要があります。

  • 住民票
  • 印鑑証明書
  • 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、除籍謄本、改製原戸籍謄本、戸籍の附票
  • 固定資産評価証明書

戸籍謄本(450円)や除籍謄本(750円)については全国一律の金額ですが、住民票や印鑑証明書などは市町村によって金額が異なります。

登録免許税

土地の名義変更をおこなう場合は「登録免許税」という税金を納めます。この登録免許税は登記の原因によって税率が異なります。また、相続登記にあっては、一定の要件を満たしている場合、非課税になる制度もあるので、注意が必要です。

登録免許税は以下のような方法で計算します。

土地の相続の登録免許税    固定資産税評価額×1000分の4
              (一定の要件に該当すると非課税)
土地の贈与の登録免許税    固定資産税評価額×1000分の20
土地の売買の登録免許税    固定資産税評価額×1000分の15
土地の財産分与の登録免許税  固定資産税評価額×1000分の20

そのほかの税金

土地の名義変更に関連するそのほかの税金は次のとおりです。ここでは、それぞれの税金の概要を簡単に説明しましょう。

相続税

土地やそのほかの財産を相続した場合、その額が基礎控除額(3,000万円+相続人の人数×600万円)を超えるときには、相続税が発生する可能性があります。土地の評価額については、毎年国税庁が7月1日に発表している路線価というもので計算します。

たとえば路線価が15万円で土地の大きさが200平方メートルの場合の評価額は、15万円×200平方メートル=3000万円となります。

贈与税

土地を贈与により取得した場合、基本的には取得した人に贈与税が課税されます(※3)。

贈与税は、もらった土地の評価額から110万円の基礎控除を引いた金額に対して、10%から55%の税率をかけて計算します。この税率は、誰から贈与を受けたか、いくら贈与を受けたかによって異なります。ここでいう「土地の評価額」も、相続税の項目で述べた路線価から計算しましよう。

※3毎年1月1日から12月31日の間に贈与を受けた金額に対して課税される「暦年課税制度」の場合です。

例外として、60歳以上の直系尊属(父母や祖父母)から、20歳以上の子や孫に対して贈与された額が2,500万円まで非課税となる「相続時精算課税制度」というものがあります。一度こちらを選択(申告)すると、暦年課税には戻せないので注意が必要です。

譲渡所得税

土地を売却して利益が出ると、「譲渡所得税」という税金が発生します。譲渡所得は次のように計算します。

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額

ここでいう収入金額とは、売買の場合であれば受け取った代金のことです。取得費とは、土地を購入したときの経費など。そして譲渡費用とは、仲介手数料をはじめ売却するために支払った費用などを指します。特別控除額とは、居住しているマイホームの売却で一定の要件に該当すると、3,000万円の控除があるというもの。一定の要件を満たす場合は、ほかにも適用されるものがあります。

こうして求めた課税譲渡所得金額に税率をかけて税額を計算します。この税率は、長期間所有していた場合と短期間所有していた場合で異なります。

なお、財産分与の場合も、不動産を渡した側に譲渡所得税が課税される仕組みになっています。

不動産取得税

土地や家屋を売買や贈与などで取得したときに課される税金です。相続の場合には課税されません。また、財産分与の場合も基本的には課税されません。

固定資産税

売買で土地の名義変更をする場合に、固定資産税の精算をおこないます。引き渡し以降の固定資産税を買主負担、引き渡し前日までの分は売主負担というように日割り計算をして、取引の日に精算します。

印紙税

不動産の譲渡に関する契約書は、印紙税法という法律で課税されます。具体的には、郵便局などで収入印紙を購入して、契約書に貼付して割り印をすることで税金を納めた扱いになります。土地や建物の売買契約書以外に、贈与契約書、新築工事請負契約書なども課税対象です。

土地の名義変更が必要となる4つのケース

Person looking through estate contract. House model and calculator on table.

土地の名義変更が必要となるシーンはさまざまです。代表的な4つのケースを紹介します。

亡くなった人から土地を相続した

土地の所有者が亡くなったとき、亡くなった人(被相続人)から引き継ぐ人(相続人)に名義変更する手続きが必要です。これを「相続登記」といいます。市役所に死亡届を提出すると、戸籍には死亡事項が記載されますが、土地の名義変更は自動ではおこなわれません。土地を有効活用するためにも相続登記が必要です。

また、2024年4月1日からは相続登記が義務化されることが決まっており、理由なく相続登記をしなかった場合は10万円以下の過料が発生します。

相続登記に必要な書類

「相続登記」は、基本的に相続人だけで手続可能です。手続きには登記申請書と添付書類が必要となります。添付書類については遺言書の有無、遺産分割協議の有無によって異なりますが、一般的には次のとおりです。

遺言書がある場合

  • 遺言書(※1)
  • 名義を取得する相続人の住民票、戸籍抄本(謄本)(※3)
  • 被相続人の死亡事項の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)(※3)
  • 相続人と被相続人の関係がわかる戸籍謄本(除籍謄本もしくは改製原戸籍謄本)(※3)
  • 固定資産評価証明書

※1法務局の遺言書保管制度を利用していない「自筆証書遺言」の場合は、家庭裁判所で検認手続きを行う必要があります。

遺言書がなく遺産分割協議をおこなった場合

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)(※3)
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書と戸籍抄本(謄本)(※2)(※3)
  • 名義を取得する相続人の住民票(※3)
  • (家庭裁判所で相続放棄をした人がいる場合)相続放棄申述受理証明書

※2相続人の中に未成年者がいる場合は、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要となる場合があります。

遺言書がなく法定相続する場合

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)(※3)
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 固定資産評価証明書
  • 相続人全員の住民票

※3法定相続情報一覧図がある場合には、相続人の住民票、戸籍抄本(謄本)、被相続人の戸籍謄本は不要となります。

複数の相続人で土地を分ける「分筆登記」

1つの土地を複数の相続人で分割して取得する場合、「分筆登記」という手続きが必要になります。分筆登記には費用と時間がかかるので、もし将来、自分の子どもたちに相続させたいと考えている場合には、生前に分筆登記をしておくといいでしょう。

また、将来売却せずに有効活用する予定の1つの土地を共有名義にすると、新たな相続の発生により、権利関係が複雑になる可能性があるので避けたほうが無難です。

配偶者や子どもに土地を生前贈与した(贈与された)

配偶者や子どもに対して、「相続対策」や「相続税対策」のため、土地を生前に贈与することもあります。どちらも相続という言葉がついて似ていますが、内容はまったく異なります。

相続争いを回避する「相続対策」

「相続対策」では、生前贈与によって、土地を遺産分割協議の対象から外すことが目的です。相続人から見れば、遺産分割協議をする財産がない状態になります。

離婚・再婚などで家族関係が複雑になっている場合は、基礎控除の110万円まで贈与税が発生しない「暦年課税制度」や令和6年1月に改正される「相続時精算課税制度」を利用して、土地や建物を生前贈与しておくことで、相続が発生したあとの無用な争いを回避できます。

相続人の税負担を考えて行う「相続税対策」

贈与された土地は、贈与時の路線価で贈与税が判断されます。将来性のある土地の場合は、値上がり前に子どもや配偶者へ贈与しておくことで、相続時の税負担を軽くできる可能性があります。これが「相続税対策」としての贈与です。

土地を贈与する場合、土地の評価額が贈与税の基礎控除額である110万円を超えるときには贈与税が発生しますが、配偶者への贈与には特例があります。それが「居住用不動産贈与の配偶者控除」という制度です。

婚姻期間20年を経過しているなど一定の条件を満たせば、土地と建物あわせて2,110万円の評価額までは非課税で贈与できます。この制度も「相続税対策」「相続対策」として利用されます。

さらに前述のとおり、贈与税の基礎控除額は毎年110万円と定められています。これを利用して少しずつ子どもに土地の名義を変更していくと、10年で1,100万円も贈与者の財産を減らすことが可能です。

今まで「相続時精算課税制度」は相続税対策としてはあまり利用されてきませんでしたが、令和6年1月からは従来の2500万円まで贈与税が非課税となっていた枠以外に、毎年110万円ずつ贈与しても贈与税が発生せず、申告も不要となります。今後、相続税対策にも「相続時精算課税制度」を利用するケースが増えてきそうです。

贈与による土地の名義変更で必要な書類

「贈与」による登記では、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の両者による手続きが必要です。贈与を証明する贈与契約書、登記申請書に加え、贈与者は、登記済権利証書(登記識別情報通知)、印鑑証明書、固定資産評価証明書、受贈者は住民票を用意します。

土地や不動産を売買した

土地を「売買」で取得した場合において、名義を変更しないと法務局にある登記簿の所有者が売主の名義のままとなり、「自分が土地の所有権を取得した」とは言えません。

一般的には登記手続きの専門家である司法書士が取引の場に同席し、売主、買主双方の意思確認、本人確認、書類の確認を行います。通常、売買代金の授受、固定資産税等の清算、仲介手数料や登記費用の支払いが完了したら、司法書士は法務局に登記申請をします。

以前は法務局に申請書や添付書類を持参していましたが、最近の取引においては所有権移転登記をオンライン申請し、添付書類については郵送もしくは持参して法務局へ提出することが一般的になっています。

なお、売買後、所有権移転登記申請をせずにいると、「売主が死亡した」「認知症になった」などさまざまな理由で、あとから名義変更ができなくなる可能性があります。場合によっては、売買の事実を知らない売主の相続人が他人に土地を売ってしまい、二重売買になる可能性もあります。

売主側も、名義変更がされていないと、毎年固定資産税が課税されます。売買で土地や建物を取得したらできるだけ早く名義変更をおこないましょう。

売買による名義変更で必要な書類

「売買」による登記は、売主と買主の両者による手続きが必要です。

売主は、登記済権利証書(登記識別情報通知)、印鑑証明書、固定資産評価証明書、買主は住民票などを用意します。ほかにも、登記原因証明情報の作成や、登記手続きには不要ですが売買自体を成立させるために売買契約書や売買代金の領収書、固定資産税の清算書などが必要になります。

司法書士が立ち合いの取引においては売主買主ともに運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等の身分証明書が必要となります。

離婚で土地や建物を財産分与した(分与された)

「財産分与」とは、離婚する際、婚姻中に取得した夫婦の財産を清算することをいいます。

夫婦が協力して築いた財産の中に土地がある場合、名義がどちらか一方になっていたとしても、請求があれば財産分与の対象になります。ただし、独身の間に購入した土地や建物などは、財産分与の対象にはなりません。

財産分与に関する合意が成立したら、速やかに名義変更をおこないましょう。時間が経過すると、相手方の協力を得るのが難しくなるかもしれません。

次はどのような財産分与の方法が考えられるかみていきましょう。

土地と建物の名義が違う場合

例えば土地は妻、建物は夫というケースです。このようなケースでは、不動産を売却して代金を分ける方法や、土地と建物が一方のものになる形で名義変更をおこない、お金をもう一方へ支払うといった清算方法があります。

住宅ローンを利用している場合

住宅ローンの残高が土地や建物の評価額より低い場合は、土地や建物の評価額から住宅ローンの残高を差し引いて財産分与の金額を算出します。

住宅ローンの残高が土地や建物の評価額を上回っている場合には、資産価値がないとも言えますが、居住は可能です。銀行との交渉により住宅ローンの債務者を変更し、名義変更へと進めるという方法もあります。

また、住宅ローンについては借入名義人が居住することが条件となっていることが多いので、離婚をして財産分与で名義変更をする際には借入先の金融機関に相談し、確認をする必要があります。

財産分与による名義変更で必要な書類

「財産分与」による土地の登記手続きは、夫と妻の両者による手続きが必要です。

両者が離婚したことがわかる戸籍謄本に加え、財産を渡す側は、登記済権利証書(登記識別情報通知)、印鑑証明書、固定資産評価証明書、財産をもらう側は、住民票を用意します。

ほかにも、登記原因証明情報を作成したり、登記手続きでは不要ですが後々の財産分与による紛争を防止するため離婚協議書を作成したりする必要があります。

土地の名義変更が必要なときにすべきこと

相続、贈与などは、いずれも内容によっては司法書士に依頼しないと難しいものもありますが、基本的にはご自身でもできる手続きです。

一方、売買や財産分与といった名義変更は、大きなお金が動くことがあるので専門家に依頼をした方がよい手続きです。ただし、営業時間が限られている法務局に訪れるには平日に都合をつけなければならないですし、役所に書類を取りに行くなどの面倒な作業も多くともないます。

専門家に相談・依頼する

司法書士に依頼することのメリットとしては次のようなものがあげられます。

不動産登記の煩雑な作業をおまかせできる

司法書士に依頼した場合には、権利証、住民票、印鑑証明書といった書類を提出して、委任状などに署名捺印するだけで、あとの手続きは司法書士が代行してくれます。また、相続登記のように多くの書類を取り寄せる必要のある作業についても依頼することが可能です。

遠方にある不動産の名義変更も可能

多くの司法書士はオンライン申請に対応しているので、法務局へ出向くことなく名義変更をすることができます。つまり、東京に住んでいても北海道や九州にある土地の名義変更が可能です。

法的知識があるので現在または将来のトラブル防止が期待できる

経験豊富な司法書士は、依頼を受けた際に、まずその依頼内容に法的に問題はないかどうか、そして将来的に問題が生じないかを検討します。もし問題があるようなら、対応方法を説明し、場合によっては依頼内容の変更を提案してくれることもあります。

相続に関しては登記以外のことも対応してくれる

相続登記以外にも、戸籍謄本の取り寄せ、遺産分割協議書や法定相続情報一覧図を作成することもできます。ほかにも、被相続人の凍結された預貯金の払い出しや解約などの手続きも可能です。時間があまり取れない方は、専門家に依頼することによって安心して迅速に手続きを進められます。

ほかの専門職との連携ができる

不動産の名義変更の手続きは司法書士が専門ですが、税金については税理士が、土地の分筆登記については土地家屋調査士が専門になります。多くの司法書士はほかの専門家との連携がありますので、さまざまな専門家からアドバイスを受けることができるケースがあります。

自分で名義変更の手続きを進める

自分で名義変更の手続きを行うメリットとしては次のとおりです。

自由なタイミングで法務局に行ける

土地の所有権移転登記の申請書を作成したら、法務局に提出します。法務局は午前8時30分から午後5時15分までが業務時間です。専門家に依頼する場合は、専門家と日時を調整して打ち合わせたり、書類をやりとりしたりする必要がありますが、この時間内に法務局へ行くことができれば、時間の制約をうけずに登記申請できます。

司法書士の報酬が発生しないためコストが安い

法務局への事前相談や登記申請、そして登記完了後に登記識別情報通知を回収する手間はかかりますが、収入印紙や住民票などの書類の取得費用だけで済むためコストを抑えることが可能です。

専門家(司法書士)に依頼しない場合は注意点も

専門家に依頼せず自分で手続きするに場合は、知識不足や効率の面で注意したほうがよいことも多くあります。気をつけるべき点を紹介します。

書類の準備は正確に

登記の種類によっては、たくさんの書類を正確にそろえる必要があります。書類に不備があるとその都度、法務局から連絡があり対応を迫られるなど、手続きにも時間がかかります。

税金の申告や発生に注意

自分で手続きする際は、書類の提出のほかに税金面にも気をつけておきましょう。「大きな額の贈与税が発生したことにあとから気づいた」「相続税の申告を忘れて追徴課税されてしまった」などのトラブルもありえます。

この記事のポイント

土地の名義変更が必要となるのはどんな場合?

亡くなった人から土地を相続した、配偶者や子どもに土地を生前贈与した(贈与された)、土地や不動産を売買した、離婚で土地や建物を財産分与した(分与された)といった場合に土地の名義変更が必要となります。

詳しくは「土地の名義変更が必要となる4つのケース」をご覧ください。

土地の名義変更が必要なときにすべきことは?

司法書士などの専門家に相談して名義変更の手続きをするか、または自分で書類を作成して法務局に出向いて名義変更の手続きをしなければなりません。

詳しくは「土地の名義変更が必要なときにすべきこと」をご覧ください。

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