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家の名義変更の仕方は?売買・相続・贈与・離婚4つのケースごとに解説

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 家の売買や相続、生前贈与、財産分与をしたときには名義変更が必要
  • 必要書類の準備や申請手続きは複雑なため、不動産会社や専門家を頼るのがおすすめです

家の名義変更とは、不動産登記上の所有者を変更する手続きです。売買に限らず、相続や生前贈与、離婚による財産分与を行った際にも名義変更が必要となります。ただし実際の手続きの流れや必要書類は、個々の状況によりさまざまです。

この記事では家の名義変更にかかる費用や手続きの流れ、必要書類について説明します。

家の名義変更とは所有者を変える登記手続きのこと

家の名義変更とは、所有者を変更する手続きのことです。

法務局が管理する不動産登記簿には、家の所有者の住所・氏名などが登録されています。法務局に申請し、登記上の所有者を変更することを「所有権移転登記」といい、これを一般的には名義変更と呼びます。

家の名義変更にかかる費用

家の名義変更にかかる費用は、主に以下の3つです。

  • 登録免許税
  • 司法書士への報酬
  • 書類の取得費用

登録免許税とは、登記手続きの際に支払う国税で、「課税標準額 × 税率」で求められます。課税標準額とは、固定資産課税台帳に記載されている価格を指し、市町村役場などで確認できます。

登録免許税の税率は、相続による名義変更なら1000分の4、売買や生前贈与、離婚による名義変更なら1000分の20です。登記が必要な理由によって税率が違うため、注意しましょう。

また、所有権移転登記を司法書士に依頼する場合は、平均4~8万円程度の報酬が発生します。報酬額に決まりはないので、場合によってはそれ以上の金額になることもあるでしょう。

さらに名義変更を行う際には、戸籍謄本や登記簿謄本(登記事項証明書)などの書類が必要です。必要書類は個々のケースによって異なるので、司法書士に確認してください。書類によっては司法書士で代理取得できます。

また、書類の取得費は自治体ごとに異なりますが、主な書類の一般的な取得費用は以下の通りです。郵送で取得する場合は、別途郵送代もかかります。

  • 住民票:1通300~400円程度
  • 固定資産税評価証明書:1通300~400円程度
  • 登記簿謄本:1通332~600円
  • 印鑑証明書:1通300~400円程度
  • 戸籍謄本:1通450円

家の名義変更が必要になる4つのケース

登記済権利証

家の名義変更が必要になるのは、主に以下の4つのケースです。

  • 不動産売買
  • 相続
  • 生前贈与
  • 離婚による財産分与

それぞれのケースを見ていきましょう。

1.不動産売買

家を売買すると所有者が変わるため、売主から買主へ名義変更を行います。双方立ち会いのもと、売買代金の支払いと同時に、名義変更手続きの書類を交わすのが一般的です。

不動産会社が売買を仲介しているケースでは、名義変更手続きにも不動産会社が同席するケースが多いです。また、司法書士に依頼する場合は、この場に司法書士も立ち会って手続きを進めます。

2.相続

家の所有者が亡くなって相続する場合、被相続人(亡くなった人)から相続人(相続する人)へ名義変更を行います。

売主・買主の双方が立ち会って手続きする売買とは異なり、相続の場合は、親や親族から家を引き継ぐ相続人のみで手続きを行います。相続人が1人の場合は本人が行い、2人以上の場合は共同または代表者1人で手続きをすることも可能です。

ただし相続人が複数人いる場合は、遺言書や遺産分割協議により、誰が相続するかを事前に決める必要があります。

3.生前贈与

相続税対策などを目的とし、親が存命中に子どもへ家を贈与する生前贈与でも、名義変更は必要です。元の所有者から贈与を受ける人へ、所有権移転登記を行います。

生前贈与の場合は相続とは異なり、贈与する側とされる側が共同で名義変更手続きを行います。

名義変更をせずにそのままにしていると、親が亡くなった際に、家の所有者は親であると見なされ、相続税が発生する場合があります。また遺産に含まれてしまうと、遺産分割協議で揉めることもあるので、贈与が成立した時点で名義変更手続きをしておきましょう。

4.離婚による財産分与

離婚により財産分与をする際にも名義変更は必要です。財産分与とは夫婦の財産を分けることで、夫名義だった家を、離婚後は妻の所有とするケースなどがあります。

財産分与の場合も基本的には共同で申請する必要があるため、離婚協議と並行して名義変更の準備も進めておきましょう。

不動産売買により家の名義変更をする方法

家の名義変更手続きは司法書士に依頼するケースが多いですが、書類を揃えて提出すれば、自分で行うことも可能です。

不動産売買による家の名義変更をする際の必要書類

不動産売買によって家の名義変更をする際の必要書類は、以下の通りです。

売主  ・登記済権利証または登記識別情報通知
・印鑑証明書
・住民票(売主の住所変更または氏名変更が未了な場合)
・戸籍謄本(売主の氏名変更が未了な場合)
買主  ・住民票
その他・固定資産評価証明書・売買契約書

登記済権利証または登記識別情報通知は、法務局から発行されている書類で、売主が所持しているものです。固定資産評価証明書は、市町村役場で取得できます。

また、家の売買契約書は名義が変わることを証明する書類として用いられることが多いです。

不動産売買による名義変更手続きの流れ

不動産売買によって家の名義変更手続きを行う際は、以下の流れで進めていきます。

  1. 必要書類を準備する
  2. 名義変更の登記申請書を作成する
  3. 法務局に登記申請書と必要書類を提出する
  4. 登記識別情報通知を受領する

登記申請書に決まった書式はありません。法務局のWebサイトにひな形が用意されているので、自身で申請をする場合は活用しましょう。

必要書類を法務局へ提出し、当期識別情報通知を受け取ったら名義変更は完了です。

不動産売買による名義変更の注意点

名義変更手続きは、売買代金の支払いと同時に行うようにしましょう。名義変更には期限がありませんが、所有権を移転しないまま放置しておくとトラブルのもととなります。

たとえば、名義変更しないことによるトラブルとして、家を売却できないことが挙げられます。名義変更を行わなければ、登記上の所有者は売主のままとなり、買主の所有権を証明するものはありません。

第三者へ売却をしたくても、所有権を渡すことができなければ、売買契約は成立しないでしょう。名義変更手続きは自分で行うことも可能ですが、このようなトラブルを避けるためにも、なるべく司法書士へ依頼することをおすすめします。

相続により家の名義変更をする方法

相続によって家の名義変更をする場合、相続特有の必要書類や手順があり、不動産売買のケースとは異なります。

相続による名義変更をする際の必要書類

相続によって家の名義変更をする際の必要書類は、以下の通りです。

被相続人 (亡くなった方)
・戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 ・住民票の除票(または戸籍の附票)
相続人・戸籍謄本 ・住民票
その他・固定資産評価証明書
・相続関係説明図

【法定相続分以外で相続する場合】
・遺産分割協議書
・印鑑証明書

【必要書類を揃えられない場合】
・不在籍証明書、不在住証明書
・登記済権利証
・上申書

被相続人の戸籍は、生まれてから亡くなるまでの分が必要です。また、相続人の戸籍謄本は全員分揃える必要があります。

なお、相続による名義変更の必要書類は、個々のケースにより異なります。

相続による名義変更手続きの流れ

相続によって家の名義変更手続きを行う際の流れは、以下の通りです。

  1. 家の現所有者を確定する
  2. 相続人の特定(戸籍収集)を行う
  3. 遺産分割協議書を作成する
  4. 名義変更の必要書類を準備する
  5. 名義変更の登記申請書を作成する
  6. 法務局に登記申請書と必要書類を提出する
  7. 登記識別情報通知を受領する

現在の所有者を確定するには、家の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して内容を確認します。

売買で名義変更するケースとは異なり、相続人の特定や遺産分割協議など、相続特有の手順があります。

相続による名義変更の注意点

相続によって家の名義変更を行う場合、相続人を特定することが重要です。遺産分割協議後に新たな相続人が見つかった場合は話し合いが無効になるため、協議前に確定させましょう。

また、相続による名義変更は、2024年(令和6年)4月1日から義務化されます。相続があったことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。名義変更を行わなければ、10万円以下の過料が科される場合があります。

生前贈与により家の名義変更をする方法

生前贈与で家の名義変更をする場合は、贈与契約書の締結や税金の確認といった手順が必要となります。

生前贈与による名義変更をする際の必要書類

生前贈与によって家の名義変更をする際の必要書類は、以下の通りです。

贈与者
(譲り渡す人)
・登記済権利証または登記識別情報通知 ・印鑑証明書
受贈者
(譲り受ける人) 
・住民票
その他・固定資産評価証明書 ・贈与契約書、贈与証書

生前贈与で必要となる書類は、不動産売買における名義変更のケースとほぼ同じです。売買の際に必要だった売買契約書が、生前贈与では贈与契約書や贈与証書となります。

生前贈与による名義変更手続きの流れ

生前贈与による家の名義変更手続きは、以下の流れで進めていきます。

  1. 家の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する
  2. 税金を確認する
  3. 贈与契約書を作成する
  4. 名義変更の必要書類を準備する
  5. 名義変更の登記申請書を作成する
  6. 法務局に登記申請書と必要書類を提出する
  7. 登記識別情報通知を受領する

税金を確認する際には固定資産評価証明書を取得します。生前贈与では、相続ほど複雑な手続きは必要ありません

生前贈与による名義変更の注意点

相続税対策として行われることのある生前贈与ですが、想定外の贈与税や相続税がかかることもあります。

たとえば、相続時精算課税制度を使うと2,500万円までは非課税となりますが、贈与者が亡くなったときには贈与した分の相続税も課税されます。

一方、暦年贈与制度を選択すると、1年間で110万円を超える贈与分については贈与税が課税される仕組みです。

なお、相続登記の義務化は、亡くなった人からの相続が対象であり、生前贈与による名義変更は義務化の対象ではありません。

離婚による財産分与で家の名義変更をする方法

離婚によって財産分与で名義変更をする場合は、離婚協議書や戸籍謄本を準備します。また財産分与の取り決めが必要な点も、他のケースとは異なる部分です。

離婚による名義変更をする際の必要書類

離婚によって財産分与で名義変更をする際の必要書類は、以下の通りです。

現在の所有者
(譲り渡す人)  
・家の登記済権利証または登記識別情報通知 ・印鑑証明書
新しい所有者
(譲り受ける人)  
・住民票
その他・固定資産評価証明書 ・離婚協議書、財産分与契約書 ・戸籍謄本

登記識別情報通知や印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書などは、不動産売買による名義変更のケースと共通です。その他に、離婚したことを証明するために戸籍謄本、財産を分けることの証明として離婚協議書や財産分与契約書が必要となります。

離婚による名義変更手続きの流れ

離婚によって財産分与で名義変更手続きを行う際は、以下の流れで進めていきます。

  1. 財産分与の取り決めをする
  2. 名義変更の必要書類を準備する
  3. 名義変更の登記申請書を作成する
  4. 法務局に登記申請書と必要書類を提出する
  5. 登記識別情報通知を受領する

最初に財産分与の取り決めをする点が、売買や相続による名義変更とは異なります。

離婚による名義変更の注意点

財産分与による名義変更は、離婚成立後にしか行えません。離婚前に名義変更する場合は贈与の扱いとなります。

ただ、離婚による財産分与の場合、関係性によっては名義変更の必要書類を揃えるのに苦労する場合があります。離婚協議を行いながら、名義変更の準備も並行して進めていくと良いでしょう。

まとめ

不動産売買や相続、生前贈与、財産分与などによって家の所有者が変わる場合は、名義変更が必要です。

名義変更せずに放置しておくと、家の売却が行えないといった問題も考えられます。売買であれば代金支払と同時に、生前贈与や財産分与の場合も、速やかに申請をしましょう。

ただし書類の準備や作成は難しいため、スムーズに手続きを進めるためには、不動産会社や専門家を頼ることがおすすめです。

この記事のポイント

家の名義変更とは?

不動産登記簿に登録されている所有者を変更する手続きです。

詳しくは「家の名義変更とは所有者を変える登記手続きのこと」をご覧ください。

家の名義変更が必要になるケースは?

不動産売買、相続、生前贈与、離婚による財産分与により、家の所有者が変わるケースです。

詳しくは「家の名義変更が必要になる4つのケース」をご覧ください。

名義変更の登記にかかる費用は?

主に登録免許税、司法書士への報酬、書類の取得費用の3つです。

詳しくは「登記にかかる費用」をご覧ください。

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