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シニア向け分譲マンションのメリット・デメリットは?費用や中古物件についても解説

老後の生活を老人ホームなどの介護施設で送る高齢者がいる一方で、そうした施設には入りたくないと考える方もいるでしょう。

そのような方たちから人気を集めているのが、シニア向け分譲マンションです。
この記事では、シニア向け分譲マンションに入居する場合のメリットやデメリット、費用や入居条件などを解説します。

サービス付き高齢者住宅との違いや中古物件、売却なども説明するので、シニア向け分譲マンションに興味を持っている方や購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

日本における介護の実情

日本は高齢社会に突入しており、要介護(要支援)の認定者数も年々増加傾向にあります。
近年の日本の介護の実情をみると、2019年度の時点で、国内の要介護(要支援)の認定者数は669万人でした。2000年度と比べると、約2.6倍に増えています。

このような現状を受けて、要介護者に対するサポート体制の整った介護施設が多く設置されています。

一方で、自立して生活ができる高齢者、軽度の要介護、要支援認定者も少なくありません。総務省によると、2030年時点で、約8割の高齢者は自立的に暮らしているという予測データもあります。そのため、サポートなしでも日常生活を送ることができるシニア向けの住居も増えています。

シニア向け分譲マンションとは

シニア向け分譲マンションとは、シニア世代の人々が暮らしやすいようにバリアフリー化が施され、さらに安否確認サービスやフロントサービスなどが用意されているマンションのことです。

建物によっては、温泉やレストラン、シアタールームにフィットネスジム、ゲストルームなどの豪華な設備が共有施設として備わっています。

このような充実した生活支援のためのサービスが整備されているほか、入居者のサークル活動が盛んに行われている物件もあります。

シニア向け分譲マンションは、法律上は一般的な分譲マンションと変わらない位置づけのため、特別な設置基準はありません。譲渡や売却も自由に行うことが可能です。

おもに富裕層をターゲットとした物件で、より自由度の高い環境での生活を希望している方に適しています。介護などが必要なく自立した生活を送ることができる、いわゆるアクティブシニア向けのマンションといえるでしょう。

中古のシニア向け分譲マンションという選択肢もある

シニア向け分譲マンションは、一般的な分譲マンションと比べて購入価格が高めです。シニア向け分譲マンションを検討する場合、中古物件を選べば、相場よりも安く購入できる可能性があります。

シニア向け分譲マンションは、2000年代に入ってから大きく増加しているため、中古でもそこまで築年数が古くない傾向にあります。一方で、比較的新しいため、一般的な分譲マンションと比べて物件数が多くない点には注意が必要です。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違い

高齢者向けの住居への引越しを考えた場合、シニア向け分譲マンションのほかにサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)も選択肢のひとつとして検討している方もいるかもしれません。

サービス付き高齢者向け住宅は、生活相談や安否確認などのサービスを行うことが義務付けられており、スタッフが住宅についている点が特徴の賃貸住宅です。バリアフリー化されており、高齢者が暮らしやすい造りになっています。

また、緊急対応サービスや食事サービス、外出支援など多彩なオプションサービスが整備されており、高齢者のなかでも介護度が低い方に人気が高いです。

高齢者住宅という種類に分類される点はシニア向け分譲マンションと同じです。国の支援を受けているため、施設の数も多く、入居も比較的簡単にできます。

シニア向け分譲マンションと大きく異なる点は、シニア向け分譲マンションは「購入」するものであるのに対し、サービス付き高齢者向け住宅は「賃貸」であることです。

サービス付き高齢者向け住宅には「介護型」と「一般型」の2種類があり、前者の介護型は介護サービスにあたるスタッフが24時間常駐しています。一方の一般型は、介護を要する状態になった場合は外部サービスを利用することになります。

サービス付き高齢者向け住宅は賃貸住宅のため、入居一時金は必要ありません。初期費用は礼金や敷金、仲介手数料などです。月額費用は物件やサービスの内容により異なります。

シニア向け分譲マンションのメリット

シニア向け分譲マンションの最大の魅力は、シニア世代でも生活がしやすい各種サービスが備わっている点です。それ以外にも、分譲マンションならではの、以下5つのメリットがあります。

  • 生活するうえでの自由度の高さ
  • 入居者向けの手厚いサポート
  • マンション内の施設が充実
  • 資産としても有効
  • 生活にあわせてリノベーションが可能

生活するうえでの自由度の高さ

シニア向け分譲マンションは浴室やキッチンが自室に備わっており、自炊が可能です。
自由に外泊や外出ができるほか、プライバシーも保護される造りになっているため他人の目を気にする必要もありません。

有料老人ホームなどでは、1日の流れがある程度決まっている場合や、家族との面会時間が決められている場合があります。シニア向け分譲マンションではそうした制限がなく、友人を招いたり家族を泊めたりすることも可能です。


所有権は住人にあることから、何かあった場合に一方的に退去を迫られるような立場の弱さもありません。このように、生活するうえでの自由度の高さが大きな魅力です。

入居者向けの手厚いサポート

シニア向け分譲マンションは、一般的な分譲マンションと同じ位置づけとなるため、介護や医療などの設置基準はありません。

ただし、高齢者が快適に過ごせるよう、各マンションは手厚いサポートを提供しています。

多くのマンションでは24時間スタッフが常駐しており、緊急時の対応などをしてくれるのが一般的です。また、マンションにより異なりますが、以下のようなサポートが受けられます。

  • 健康相談や健康診断
  • センサーによる見守りサービス
  • 買い物代行
  • 防犯対策

さらに、医療機関などと提携することで、スムーズに医療・介護が受けられるようになっているマンションもあります。

マンション内の施設が充実

シニア向け分譲マンションの多くは、カラオケやレストラン、プール、フィットネスジム、温泉施設などの娯楽設備が用意されています。

例えば、カラオケルームが併設されているマンションなら、短い移動で簡単に利用でき、雨の日も気にせずマンション内で歌が楽しめます。また、生け花などのお稽古ができるマンションもあります。

さらに、マンションによっては、クリスマス会や新年会、お花見などのイベントも充実しています。イベント活動が活発なマンションでは、入居者同士の親睦も深めながら暮らすことが可能です。

資産としても有効

シニア向け分譲マンションの所有権は住人にあるため、資産として相続していくことも可能です。もちろん賃貸や売却に出すこともできます。サービス付き高齢者向け住宅は賃貸借契約となるため、財産として残すことはできません。

ただし、シニア向け分譲マンションの場合も、入居にあたっての条件などは個別に存在するので、管理規約を確認しましょう。

生活にあわせてリノベーションが可能

シニア向け分譲マンションは、一般的な分譲マンションと同様、専有部分であれば自分の生活の利便性や好みにあわせて、リノベーションを自由に行うことができます。

ただし、防音性能や床材の素材など、管理規約上で制限が設けられている場合もあります。

リノベーションする場合は、事前に内容を確認して、必要に応じて管理組合へ届け出をしなければなりません。

シニア向け分譲マンションのデメリット

シニア向け分譲マンションには、以下3つのデメリットも存在します。

  • 月々の支払い費用が高額になることもある
  • 介護度によっては暮らせなくなる
  • 物件数自体が少ない

月々の支払い費用が高額になることもある

シニア向け分譲マンションは、入居する際に高額な費用を準備しなければならないため、それなりの資産がないと入居は難しいでしょう。

立地条件などによって金額は異なりますが、修繕積立金や管理費のほか、見守りサービスやフロントサービスなど、各種サービスの利用料を含めるとかなり高額になるケースがあります。

一般の分譲マンションと比べて高くなってしまう場合が多いため、中古のシニア向け分譲マンションを検討するのも手段のひとつです。

介護度によっては暮らせなくなる

シニア向け分譲マンションには、住民が認知症になった場合に対応する体制は備わっていません。介護が必要であれば、訪問介護サービスやデイサービスなどの外部サービスを利用します。

万が一、身体的な状況が悪化して24時間介護や恒常的な医療ケアが必要と判断された場合は、有料老人ホームなどへの引っ越しを余儀なくされるケースもあるでしょう。

将来的に要介護度が上がれば、介護サービスを依頼する必要が生じます。そうなった場合は、入居型の介護サービスと比べた場合、費用負担が大きくなる可能性があります。

物件数自体が少ない

シニア向け分譲マンションは、物件数が多くありません。
広範囲で探せば見つかるかもしれませんが、生活圏の範囲内で探すと選択肢が限られる場合があります。

ただし、高齢化が進みアクティブシニアが増えていることもあり、近年注目を増しています。そのため、今後も物件数が増えていくことが予想されるでしょう。

シニア向け分譲マンションに住むなら都市部と郊外どちらがいいか

シニア向け分譲マンションの購入を検討する際に、都市部と郊外どちらに住むか迷う方もいるのではないでしょうか。

都市部と郊外に住むメリット・デメリットをそれぞれ以下にまとめました。

都市部郊外
メリット・日常の買い物に困らない
・レジャーなども楽しめる
・自然に囲まれゆったりと過ごせる
・生活費が安い傾向にある
デメリット・物価が高い・買い物などが不便

都市部に住むと、基本的に買い物などに困ることはないでしょう。レジャー施設なども充実しているため、外出の機会が多いアクティブシニアの方も楽しみながら生活できます。

一方で、郊外と比べて生活するのにお金がかかりやすいのがデメリットです。

郊外に住めば、自然のなかでゆったりと老後生活が送れるでしょう。都市部と比べて、生活費も抑えられる傾向にあります。

一方で、買い物などに不便を感じる可能性があります。郊外を選ぶ場合は、スーパーや病院が近くにあるかどうかなどが重要です。ただし、シニア向け分譲マンションは、郊外でも駅近の物件が多い傾向にあります。

シニア向け分譲マンションの入居費用

シニア向け分譲マンションに入居するには、事前に費用を見積もっておくことが必要です。シニア向け分譲マンションにかかる費用を、初期費用と月額費用に分けて解説します。

初期費用

シニア向け分譲マンションに入居する際は、初期費用として物件の購入費と諸費用の用意が必要です。金額は、立地や建物のグレード、共用施設の内容によって異なります。

物件は、1,500万円程度のものもあれば1億円を超えるものまでありますが、一定の年収があれば、通常の分譲マンションと同様に住宅ローンの利用も可能です。

ただし、住宅ローンを利用する場合は、以下のような費用が別途かかります。

  • 融資事務手数料
  • 印紙税
  • 登記費用(登録免許税や司法書士への報酬)
  • 住宅ローンの利息 など

融資事務手数料とは、住宅ローンの借入をする金融機関に支払う費用です。金額は、金融機関により異なります。

印紙税は、金融機関との金銭消費貸借契約書などにかかる国税です。契約金額に応じて、税額が決められています。

また、抵当権設定などの登記費用も必要です。登記に必要となる費用には、登記手続きを依頼する司法書士への報酬も含まれます。

毎月利息を加えたローンの返済もしていくことになるので、慎重に検討しましょう。

なお、高齢者が住宅ローンに申し込みする際には、年齢制限がある点にも注意が必要です。

各金融機関が、申込時の年齢と完済時の年齢に制限を設けています。70歳まで申し込めるものもあれば、65歳以下に限定されている住宅ローンもあるので、事前に確認しましょう。

月額費用

シニア向け分譲マンションは、一般的な分譲マンションと同じく、毎月の管理費や修繕積立金を支払います。見守りサービスやフロントサービスなどの利用料や、共用施設の利用料に食事サービス代などの費用もかかります。

これらを含めた月額費用の相場は約10~30万円です。これに加えて、固定資産税などの税金も支払う必要があります。

また、介護サービスを利用する場合はそちらの費用も見込んでおきましょう。

シニア向け分譲マンションの入居手続き

シニア向け分譲マンションへの入居を希望する場合は、各施設に申し込むことになります。手続き方法は、通常のマンション購入の場合と同様です。

内覧などを済ませたら、購入申し込みとして入居申込書を提出し、面談が行われます。

続いて、所得証明書、住民票、健康診断書などの書類を提出し、スタッフによる要介護度調査や介護度の必要性などを踏まえて審査が行われます。

資産や収入額なども考慮に入れて入居が決定すれば、あとは売買契約を済ませて引渡しとなるのが一般的な流れです。

シニア向け分譲マンションの主な入居条件

シニア向け分譲マンションの基本的な入居条件は、「自立して日常生活が送れること」です。

入居条件に一定の基準はなくマンションによって異なるので、要介護認定を受けていても入居することができます。

ただし、シニア向け分譲マンションには介護サービスがあるわけではないので、要介護度が高い方や認知症の方が入居するのは現実的には難しいでしょう。

また、マンションにより異なりますが、「60歳以上」など入居時年齢の下限が決められている場合も多いです。身元保証人を求められるほか、伝染病に感染していないことが条件となる場合もあるので、事前に確認しましょう。

シニア向け分譲マンションの売却

シニア向け分譲マンションは、入居者の所有となるため、売却や賃貸も自由に行うことが可能です。

しかし、一般的な分譲マンションと比べると、売却に時間がかかる場合があります。シニア向け分譲マンションは、高齢者のみが対象であること、物件によっては入居条件が設けられていることなどがその理由です。

売れるまでの期間も維持費がかかるため、注意が必要です。

ただし、高齢化や一人暮らしの親の見守りニーズの高さなどから、シニア向け分譲マンションの資産価値は高まっていくと考えられます。

ちなみに、日本の高齢化率は令和元年時点で28.4%です。日本はすでに超高齢化社会ですが、今後も高くなることが予想されています。

さらに、半数以上の人が自宅で最期を迎えたいと思っているという内閣府のデータもあります(※)。

(※)内閣府「高齢者の健康に関する意識調査

シニア向け分譲マンションへの住み替えは計画的に

シニア向け分譲マンションへの入居は、老後の資産などに余裕がある高齢者におすすめです。入居そのもののハードルは高くなく、自由度の高い生活と安心のサービスが保証されています。
一方で、初期費用や月額費用が高額になることや、将来的に介護の必要性が高まった場合のことを考慮する必要があります。

メリットだけでなく注意点も踏まえたうえで、計画的にシニア向け分譲マンションへの住み替えを検討しましょう。

この記事のポイント

シニア向け分譲マンションのメリットとは?

シニア向け分譲マンションのメリットは、見守りサービスや買い物代行などの生活支援サポートが充実していることです。ほかにも、さまざまなメリットがあります。

  • 生活するうえでの自由度の高さ
  • 入居者向けの手厚いサポート
  • マンション内の施設が充実
  • 資産としても有効
  • 生活にあわせてリノベーションが可能

詳しくは「シニア向け分譲マンションのメリット」をご確認ください。

シニア向け分譲マンションの入居費用とは?

シニア向け分譲マンションに入居する際は初期費用として物件の購入費と諸費用の用意が必要です。物件は1,500万円~1億円を超えるものまでありますが、年収次第で住宅ローンの利用も可能です。シニア向け分譲マンションの入居費用は、一般的な分譲マンションと比べて高い傾向にあります。

詳しくは「シニア向け分譲マンションへの入居費用」をご確認ください。

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