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サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の費用はいくら?料金の仕組みを解説

執筆者プロフィール

中谷実歩
フリーライター

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

サービス付き高齢者向け住宅の入居を検討するなかで、入居にかかる費用が気になっている方も多いのではないでしょうか。サ高住で安心した老後を過ごすためにも費用や料金の仕組みについて知っておくことは大切です。そこで、本記事では、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で受けられるサービスや料金の仕組み、費用の注意点について解説します。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?

サービス付き高齢者向け住宅は2011年に施行された通称「高齢者住まい法」に基づいて導入されました。略して「サ高住」や「サ付き」とも呼ばれます(以下、サ高住)。

高齢者が暮らしやすいバリアフリー構造の賃貸住宅で、基本的なサービスとして安否確認と生活相談のサービスが受けられます。常駐するスタッフに近くで見守られながら、自宅に近い自由な環境で安心して生活を送ることができます。

入居対象は60歳以上、もしくは60歳未満の要介護・要支援認定を受けている方です。また、施設によっては一定の条件を満たした同居人と2人で入居することも可能です。

入居が認められる同居人には以下があります。

  • 配偶者
  • 60歳以上の親族
  • 要支援または要介護認定を受けた親族
  • 特別な理由により入居者の生活に必要があると都道府県知事が認めた者

次に、サ高住の種類についてご紹介します。

サ高住には一般型と介護型がある

サ高住には一般型と介護型の2種類があります。

一般型のサ高住

一般型は、比較的介護度が軽い方や自立している方が入居するサ高住です。
そのため、一般型のサ高住では、生活支援サービスや介護サービスの提供は義務付けられていません。ただし、希望があればオプションサービスとして、掃除や洗濯、ゴミ出しなどの生活支援サービスを提供している施設もあります。

また、一般型のサ高住は、介護保険では家と同じ扱いとなるため、介護サービスを利用したい場合は、外部のケアマネジャーを介して、訪問介護などの介護サービス事業所と個別に契約することになります。

一般型サ高住の大きな特徴の1つに介護が必要となった時には、外部の事業者から自分に合ったサービスを選択できることがあげられます。

介護型のサ高住

介護型のサ高住は、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けています。厚生労働省が定めた人員や設備を完備しているため、要介護度が高い方でも入居することができます。

特定施設である介護型サ高住では、施設専属のケアマネジャーがケアプランを作成し、介護サービスも施設のスタッフが提供しています。施設によっては、看取り介護まで行っている場合もあります。

サ高住にかかる費用

サ高住では「初期費用」と「月額費用」の2つの費用がかかります。それぞれの費用を確認しましょう。

サ高住の初期費用

一般型のサ高住では、入居時の初期費用として「敷金」が必要です。これは通常の賃貸住宅と同様に賃貸借契約を結んで入居するためです。施設によっては「保証金」としている場合もあるため、契約時に確認が必要です。礼金と更新料は不要です。

なお、入居時に預かった敷金は、退去時の修繕費用や、月額費用が滞った場合に充てられます。

一方、介護型のサ高住では、初期費用に「入居一時金」が必要な施設が多い傾向にあります。入居一時金については次章で詳しく解説します。

サ高住の月額費用

月額費用の内訳は「賃料」「共益費」「水道光熱費」「食費」が挙げられます。一般型のサ高住で自炊を行う場合、食費は不要です。

また、上記のような毎月かかる費用の他に、個人の状況に合わせて介護サービス費やオプションサービス費、医療費、消耗品費(日用品・おむつ代など)、サークル活動費などの費用が別途必要となります。

なお、介護サービス費については、一般型では月々に利用した分だけを支払いますが、介護型では要介護度によって定められた定額を支払います。

サ高住の月額費用の相場

国土交通省の資料によると、家賃と共益費、必須サービス費用(生活相談・見守り)を合計した入居費用(月額)の全国平均は、10万8000円となっています。また、地方圏では9万円、大都市圏では12万6000円が平均です。

地方圏と大都市圏で金額に差がある理由は、サ高住の賃料が一般の賃貸住宅の家賃相場に準じて設定されているためと考えられます。

出典:厚生労働省│サービス付き高齢者向け住宅について-制度の概要-

一部のサ高住には前払い方式がある

入居費用の支払い方式には「月払い方式」と「前払い方式」の2種類があります。

多くのサ高住の場合、月払い方式をとっていますが、介護型のサ高住では前払い方式が多く採用されています。

支払い方式の違いによって、入居期間に支払う費用の総額に差があったり、退去する場合の返還金の額に違いがあったりするため、契約時にはどの支払い方式が採用されているのか確認が必要です。

ここでは、2つの支払い方式について確認していきます。

月払い方式

月払い方式とは、毎月決まった費用を支払っていく方式のことです。
月払い方式のサ高住では、入居一時金がないため入居しやすいというメリットがあります。しかし、毎月支払う金額が高くなるため、長期的に入居する場合では累積の支払額が前払い方式よりも高額となります。

前払い方式

前払い方式とは、賃料などの居住費用を入居時に一括で支払う方式のことで、介護型のサ高住で多く採用されています。前払金は「入居一時金」として支払うことが一般的です。

この入居一時金の金額は、想定居住期間を決めてその間に発生する家賃と、想定居住期間を超えた期間に備えた家賃(将来の家賃)をもとに施設ごとに定められています。

そのため、前払い方式では入居時に高額な費用を支払う必要がありますが、想定居住期間を超えて長く居住した場合には、追加の費用が発生しないというメリットがあります。

ただし、想定居住期間内に退去することになった場合、退去の時期によって入居一時金が返還されないこともあるため、契約時には確認が必要です。

支払い方式の選び方

支払い方式を選ぶ際には、ご自身の生活設計と合わせて慎重に検討しましょう。

例えば、別の介護施設に申し込みをしている人が、待機場所としてサ高住に入居する場合では、短期間の入居となるため「月払い方式」を選ぶほうがお得です。

一方、サ高住に終身にわたって住み続けたいと考えている人は、入居期間に支払う費用の総額が安くなる「前払い方式」のサ高住を選ぶと良いでしょう。

サ高住に介護保険は適用される?適用される場合の自己負担額は?

サ高住では、一般型と介護型で介護保険の適用範囲が大きく異なっています。それぞれの場合で確認していきましょう。

一般型のサ高住は在宅と同じ扱いとなるため、訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスを利用する場合に介護保険が適用されます。
また、在宅と同様に、必要な介護サービスを組み合わせて利用するため、要介護度別に1カ月あたりの上限額(支給限度額)が定められています。

限度額の範囲内でサービスを利用した場合、介護保険が適用されるため1〜3割の自己負担額を支払います。しかし、限度額を超えてサービスを利用したケースでは、超えた分は介護保険が適用されないため全額自己負担となります。

特定施設である介護型のサ高住では、施設から介護サービスを受けることになります。一般型のように他のサービスを組み合わせて利用する必要がないため、支給限度額は設定されていません。

ただし、介護型のサ高住では「上乗せ介護費用」が利用者に請求される場合があります。これは、看護・介護職員を国の基準より手厚く配置されている場合など上乗せされたサービスにかかる費用です。この「上乗せ介護費用」は介護保険の適用外のため、全額が自己負担となります。

このように、特定施設である介護型のサ高住では、施設によって介護保険の規定以上の手厚い介護サービスを提供している場合があります。そのため、契約時には上乗せ介護費用が発生するかどうか確認するようにしましょう。

なお、サ高住の賃料と食費は介護保険の適用外となります。賃料や食費が介護保険の適用になる施設は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの「介護保険施設」のみです。

サ高住における費用面の注意点

サ高住に入居する際に、費用面で注意する点をまとめました。

立地や設備の充実度によって金額が違う

サ高住の家賃は、一般の賃貸物件と同じ扱いとなるため、人口が多く、利便性に優れているサ高住は家賃が高くなる傾向にあります。また、高級ホテルのような外観で、充実した設備やサービスを売りとしているところでは高額な費用が必要です。

介護度が高くなると月々の負担が割高になる

一般型のサ高住では、元気なうちは介護サービス費を抑えることができますが、心身状態の悪化により介護度が高くなると、月々の負担が割高になる可能性があります。介護サービスを利用する回数が増えるため、結果として介護施設より割高となってしまうのです。

入居一時金の返還ルールは施設によって異なる

入居一時金は施設ごとに返還ルールが定められています。法律による決まりはないため、施設がそれぞれ償却期間や償却率を設定しており、施設ごとにバラバラです。償却期間より退去する場合は、各施設のルールに沿って返還されます。入居一時金の返還に関するルールについては退去時のトラブルを避けるためにも、入居前にしっかり確認しておくようにしましょう。

支払いが滞ると退去となる

月々の支払いが滞った場合、すぐに退去を求められることはありません。ただし、契約書に示された支払い猶予期間を過ぎても支払われない場合には、強制退去になる可能性があります。このような事態を避けるためにも、入居時に年金収入や資産について確認するサ高住もあります。

この記事のポイント

サ高住にかかる費用はどんなもの?

初期費用として敷金・保証金、介護型の場合は施設によって入居一時金がかかります。 月額費用としては、賃料、共益費、水道光熱費、食費などが挙げられます。ほかにも介護サービス費やオプションサービス費など利用するサービスなどの状況によって費用が発生します。

詳しくは、「サ高住にかかる費用」をご覧ください。

介護保険が適用されるサ高住は?

一般型のサ高住の場合は、介護サービスを利用する場合に限度額分まで介護保険が適用されます。介護型のサ高住では、施設から介護保険サービスを受けることができます。ただし、介護型のサ高住では「上乗せ介護費用」に注意が必要です。

詳しくは、「サ高住に介護保険は適用される?適用される場合の自己負担額は?」をご覧ください。

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