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間取り図の「S」とは?サービスルームのある物件のメリット・デメリットと注意点

執筆者プロフィール

高山みさと
インテリアコーディネーター

CADオペレーター・大手住宅設備メーカー勤務を経て、住宅ライターとして開業。インテリアコーディネーター資格保有。元キッチンスペシャリスト。家づくりやリフォームにおける難しい知識を分かりやすく伝えている。プライベートでは築20年の戸建て住まい。リフォームやDIYで家づくりを楽しんでいる。

ざっくり要約!

  • 建築基準法で居室の条件を満たさない部屋を「サービスルーム」と呼び、間取り図では「S」と表記する
  • 居室やワークスペース、収納部屋など、様々な用途で使用できる

物件や間取り図を眺めていると、1SLDK、3LDK+Sのように「S」の付いた物件を見かけることがあります。この「S」とは、一体何を指すのでしょうか。また、間取りを示すキーワードには、SB・DEN・PS……など、分かりづらい表記が他にもあります。

この記事では、間取り図で「S」として表記される「サービスルーム」について、メリット・デメリットを解説。他の間取り表記や、サービスルームの注意点も併せて解説します。

間取り図にある「S」とは?

間取り図に表記されている「S」は、「サービスルーム」を指します。
建築基準法には「居室」の定義があり、その定義を満たさない場合は、居室と見なされません。そのため、間取り図には「S」として表記し、居室ではないことを示しています。

サービスルームとは

サービスルームとは、居室としての条件を満たさない部屋のことで、イメージとしては納戸に近い空間です。実際に納戸(N)、書斎(DEN)などと表記されることもあります。

サービスルームは、居室と変わらない広さの場合もありますが、採光や換気の条件を満たさないことから、短時間の作業や収納として使われることを想定しています。

ただし、使い方が法律で規制されている訳ではなく、サービスルームは自由な使い方ができる空間です。

居室の定義

建築基準法では、居住、作業、娯楽などのために継続的に使用する部屋を「居室」と定義しています。
居室は、長時間過ごすことが前提の洋室や和室、リビングなどが該当し、トイレや洗面所のように短時間しか滞在しない場所は、居室には該当しません。

居室として使用するためには、採光と換気を行うための窓・開口部を設置することを建築基準法では義務付けています。

採光に有効な開口部の面積は、床面積の7分の1以上とされ、換気に有効な開口部の面積は、床面積の20分の1以上とされています。

出典:建築基準法制度概要集
https://www.mlit.go.jp/common/001210249.pdf#page=18
https://www.mlit.go.jp/common/001210249.pdf#page=21

他にもある!間取り図の分かりにくい表記

サービスルームを示す「S」以外にも、間取りに図には分かりにくい表記があります。代表的なものを一覧にしました。

表記意味
Kキッチン
DKダイニングキッチン
LDKリビングダイニングキッチン
S(SR)サービスルーム
N納戸
SBシューズボックス(靴箱)
SICシューズインクローゼット
CLクローゼット(衣類収納)
WICウォークインクローゼット
DEN書斎・ワークスペース(小部屋)
PSパイプスペース
MBメーターボックス

補足として、PSとは「パイプスペース」の略です。中には、給水管や排水管が通っています。マンションでは、階をまたいで縦に貫通しているため、リノベーションの際にもパイプスペースを動かすことはできません。

MBとは「メーターボックス」の略で、電気・ガス・水道の検針メーターが納められています。

S(サービスルーム)がある物件のメリット

間取り図には「居室」と記載できないサービスルームですが、実際には居室として使う他、アイデア次第で多様な使い方ができます。

同じ広さの物件より安価なこともある

3LDKと表記された物件と2LDK+Sと表記された物件では、広さが同等であっても2LDK+Sのほうが、家賃が安い傾向にあります。これは、居室として表記できる部屋数に違いがあるからです。

家賃や物件価格を少しでも抑えたいと考えている場合は、サービスルームのある物件を選択肢に入れてみましょう。

多様な使い方ができる

サービスルームは使い方に制約はなく、アイデア次第で多様な使い方ができる空間です。
採光には不利ですが、静かな環境を確保できるケースも多く、書斎やワークスペース、臨時の客用寝室などに活用できます。

サービスルームを居室として利用できることも

サービスルームは、法規上では居室として認められませんが、居室としての使用が禁止されている訳ではありません。

居住環境を整えて、居室として使うことも選択肢のひとつになります。居室として使う場合の注意点は後述していますので参考にしてください。

S(サービスルーム)がある物件のデメリット

サービスルームの部屋の広さや窓の大きさは、物件によってさまざまです。採光状況、エアコンやテレビを設置できるか否かで、用途が限定される場合もあります。

日当たりが悪い

サービスルームは採光条件を満たさないため、日当たりが悪いと言えます。日焼けを起こしにくいので、衣類や本の収納に適していますが、人が長く居住する空間としては不向きな場合もあります。

また、換気条件が悪いこともあり、湿気やカビ、結露に悩まされるかもしれません。

エアコンが使えないことも

一般的な壁掛け用エアコンは、室内機と室外機を接続して使いますが、室外機は屋外に設置することが要件です。サービスルームが屋外に面していない場合は、エアコンの設置ができません。

また、エアコンの設置には配管用の穴(スリーブ)、専用回路のコンセントも必要です。

テレビを設置できないことも

サービスルームは、居室として使うことを前提としておらず、エアコンと同様にテレビも設置できない場合があります。

テレビを設置するためにはアンテナ端子が必要です。増設工事によって、アンテナ端子を設置することはできますが、その許可についてはマンションによって対応が異なります。

S(サービスルーム)がある物件を検討するときの注意点

サービスルームは採光条件や設備、周辺環境によって使い方が変わる空間です。内覧前に知っておきたい注意点を紹介します。

サービスルームの使い方を検討する

サービスルームは、事前に用途を検討しておくと、チェックすべき注意点が見えてきます。

書斎・ワークスペース

採光が不足しがちなサービスルームは、言い換えれば落ち着いた空間でもあります。
静かな環境は、オンライン会議もしやすく、リモートワークの場として使いやすいでしょう。コンセントの有無や増設できるかがチェックポイントになります。

シアタールーム

日当たりが悪い、窓がないサービスルームの場合は、シアタールームという活用方法もあります。遮光しやすいサービスルームは、音楽や映像に集中できる没入感の高い環境をつくれるでしょう。シアタールームは、防音対策できるかがチェックポイントです。

クローゼット・書庫・パントリー

サービスルームは、納戸のような使い方もおすすめです。家族の衣類を一括して収納する「ファミリークローゼット」、漫画から実用書まで所蔵する「書庫」、常備ストックから災害用備蓄まで管理する「パントリー」といった活用方法があります。

ただし、換気しづらい環境は、湿気がたまりやすくカビが心配です。大切な物が傷まないよう、除湿器や除湿剤、サーキュレーターによる換気など、普段から注意する必要があります。

居室として使用する場合は配線・回線・配管をチェック

サービスルームを居室として使用する場合は、エアコンの設置が欠かせません。エアコンを設置するためには、以下が要件です。

  • サービスルームが屋外に面し、室外機を置くスペースを確保できる
  • エアコン専用のコンセント(単独回路)を確保できる
  • 室内機と室外機をつなぐ配管用の穴(スリーブ)が壁にある

これらの要件を満たせない場合は、窓用エアコンという選択肢もあります。
窓用エアコンは、開口した窓にはめ込むタイプのエアコンです。壁の配管穴は不要で、設置可能なサイズの窓とコンセントがあれば使うことができます。

他に、家電を使用するためのコンセント、テレビを視聴するためのアンテナ端子などがあると快適です。

これらの配線・回線・配管は、許可を取って増設できるケースもありますが、許可が取れない可能性や費用がかかることを見越して、入念にチェックしておくことをおすすめします。

窓の向こう側を確認する

サービスルームは窓の大きさだけでなく、窓周囲に障害物があることによって採光を確保できない場合もあります。

例えば、マンションの場合は窓の外に共用階段があったり、戸建てであれば隣家との距離が近かったりといったケースがあります。内覧時には窓を開けて、外の様子を確認しておくと安心です。

設備環境が整ったサービスルームは検討の価値あり!

サービスルームは、居室としても使える空間ですが、必要な設備が備わっていないことも少なくありません。

物件価格や家賃が安いケースも見られますが、設備増設に費用がかかる場合は、総額費用で勘案する必要があります。一方で、設備環境が整ったサービスルームは、検討の価値があると言えるでしょう。

この記事のポイント

間取り図の「S」とは何?

間取り図に表記されている「S」は、「サービスルーム」を指します。サービスルームとは、居室としての条件を満たさない部屋のことで、イメージとしては納戸に近い空間です。

詳しくは「間取り図にある「S」とは?」をご覧ください。

サービスルームのある物件のメリットは?

サービスルームは、法規上は居室と記載できませんが、実際には居室やワークスペースとして使うこともできます。

詳しくは「S(サービスルーム)がある物件のメリット」をご覧ください。

サービスルームを居室として使いたい場合は、何に注意すればいい?

居室として使うためには、エアコンを設置できるか否かが重要です。また、必要に応じてコンセントやテレビ端子の有無を確認しましょう。

詳しくは「居室として使用する場合は配線・回線・配管をチェック」をご覧ください。

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