ざっくり要約!
- 瑕疵物件とは物理的瑕疵、法律的瑕疵、心理的瑕疵、環境的瑕疵の4つの瑕疵のいずれかを含む物件
- 不動産の売主や貸主には、瑕疵を告知する「信義則上の義務」がある
物件を探すときに、「瑕疵物件」や「事故物件」という言葉を聞いたことがある人もいらっしゃると思います。
最近では事故物件というワードがドラマでも登場することがあり、安く借りられる、または安く購入できるといったイメージで描かれることも多いです。
物件を探す際は、どのような物件が瑕疵物件や事故物件に該当するのか知った上で選ぶことが望ましいです。
この記事では、「瑕疵物件」について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
瑕疵物件とは?4つの種類を紹介

瑕疵(かし)とは、物件が通常有すべき品質・性能を欠いていることです。
不動産の瑕疵には、物理的瑕疵、法律的瑕疵、心理的瑕疵、環境的瑕疵の4つがあります。
このような4つの瑕疵のいずれかを含む物件を、「瑕疵物件」と呼んでいます。
一方で事故物件とは、一般的には心理的瑕疵を有する物件のことです。
瑕疵物件のうち、特に心理的瑕疵だけを有している物件を、世間一般では事故物件と呼んでいます。
物理的瑕疵物件
物理的瑕疵とは、不動産の物理的な欠陥のことです。
家の傾きや雨漏り、窓サッシ等からの雨水の浸入、擁壁の破損、土壌汚染、地中障害物等が物理的瑕疵に該当します。
事例
物理的瑕疵と認められた事例と認められなかった事例を示すと、下表の通りです。
| 分類 | 内容 | 判決 |
| 認められた例 | マンションの引き渡し後、雨が降ると書斎や居間にルーフバルコニーから浸水したり、書斎や居間の隙間から細かい落ち葉が室内に入ったりする不具合 | 東京地判 平成25年3月18日 |
| 認められなかった例 | 築後19年のマンションで床鳴りがしたり雨樋が詰まっていたりする不具合 | 大阪高裁 平成16年9月16日 |
心理的瑕疵物件(事故物件)
心理的瑕疵とは、物件の内部で過去に発生した嫌悪すべき事象のことです。
自殺や殺人事件、火災、忌まわしい事故等が心理的瑕疵に該当します。
いわゆる事故物件と呼ばれるものは、心理的瑕疵のある物件のことを指します。
事例
心理的瑕疵と認められた事例と認められなかった事例を示すと、下表の通りです。
| 分類 | 内容 | 判決 |
| 認められた例 | 借主の同居人がバルコニーで自殺した事実 | 仙台地裁 平成27年9月24日 |
| 認められなかった例 | 借主が自分の入居した建物の階下の部屋で自然死があった事実 | 東京地裁 平成18年12月6日 |
| ・「心理的瑕疵物件」に関する記事はこちら 心理的瑕疵物件とは?メリット・デメリットや入居後の対処法を紹介 ・「事故物件」に関する記事はこちら 事故物件の告知義務に新基準!いつまで・どこまで告知が必要? |
法律的瑕疵物件
法律的瑕疵とは、法律や条例等の制限によって自由な使用収益が阻害されている状態のことです。
建築基準法や消防法に違反していている物件が、法律的瑕疵に該当します。
事例
法律的瑕疵に関しては、不動産会社に説明義務があったか否かについての裁判事例が存在します。
法律的瑕疵と認められた事例と認められなかった事例を示すと、下表の通りです。
| 分類 | 内容 | 判決 |
| 認められた例 | ・借主が、説明を受けていない条例により、予定していた「飲食店営業」を行えず、「喫茶店営業」を強いられていると主張 ・共同不法行為により、貸主、借主の両宅建業者と貸主に対し、予備的に債務不履行又は瑕疵担保責任により、借主側宅建業者と貸主に対し、損害賠償を求めた →宅建業者の注意義務違反と相当因果関係のある損害は認められないとして、請求は棄却されたものの、条例の内容を説明しないことは、宅建業者の注意義務違反であるとされた | 東京地裁 平成29年11月27日 |
| 認められなかった例 | ・投資用収益物件としてマンション1棟を購入した買主が、売主及び売主側媒介業者に対し、建築基準法上の用途制限に抵触するために1階部分を倉庫として第三者に賃貸することができないとして損害賠償を求めた →説明や資料提供が尽されていた等として買主の訴えが棄却された | 東京地裁 令和2年10月23日 |
環境瑕疵物件
環境的瑕疵とは、物件を取り巻く周辺の環境にある嫌悪すべき事象のことです。
近隣からの騒音や振動、異臭、日照障害等があるケースや、近くに反社会的組織事務所があり安全で快適な生活が害される恐れが高いケース等が環境的瑕疵に該当します。
心理的瑕疵が物件の「内部で過去に生じた事象」を対象としているのに対し、環境的瑕疵は物件の「外部で現在に生じている事象」を対象としている点が異なります。
事例
環境的瑕疵と認められた事例と認められなかった事例を示すと、下表の通りです。
| 分類 | 内容 | 判決 |
| 認められた例 | 同じマンションの他の専有部分を暴力団組員が区分所有し、マンション住民等に対して迷惑行為をしている | 東京地裁 平成9年7月7日 |
| 認められなかった例 | 日照と眺望の良さを強調して売り出された海辺のリゾートマンションの買主が、購入から3年後に東南方向に別業者による高層リゾートマンションが建築されたため、日照・眺望が大幅に損なわれた | 東京地裁 平成2年6月26日 |
出典:心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について|一般財団法人不動産適正取引推進機構
RETIO判例検索システム|一般財団法人不動産適正取引推進機構
瑕疵物件には告知義務がある

買主または借主が物件の購入または賃借をする場合、物件に瑕疵があれば契約をためらうか、または代金や賃料の減額がなければ意思決定しないことが通常です。
瑕疵の存在は、買主または借主の意思決定に重要な影響を与えるものであることから、売主や貸主には瑕疵を告知する「信義則上の義務」があるとされています。
信義則とは、民法第1条2項に定められている「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という原則のことです。
| ・「告知義務」に関する記事はこちら 訳あり物件とは? 事故物件以外も含まれる?告知義務にあたるのはどんなケース? |
告知方法
売買に関しては、まず売主が不動産会社に対して告知を行うことが一般的です。
売却を依頼された不動産会社は、売主に「物件状況報告書(告知書)」を手渡し、瑕疵等の告知すべき内容があれば記載してもらいます。
買主は、契約前に物件状況報告書の内容を伝えられるため、契約前には瑕疵の内容を把握できることが通常です。
また、不動産会社も買主に対して契約前に重要事項を説明するため、瑕疵の内容は重要事項説明の時点でも伝えられます。
売買契約書には、瑕疵の内容について買主が容認するか否かを記載するため、売買契約の締結時点でも買主は瑕疵について知ることになります。
一方で、賃貸に関しては瑕疵が存在する場合、貸主が管理会社に対して伝えることが一般的な告知方法です。
管理会社は貸主からの告知を受けると、その瑕疵を前提に賃料設定をして入居者募集を行います。
入居志望者を案内する際は、瑕疵についても説明することが通常です。
最終的に、賃貸借契約の前に重要事項説明の時点でも借主に対して瑕疵についての説明を行います。
告知内容
告知内容は、瑕疵が存在すれば物理的瑕疵、心理的瑕疵、法律的瑕疵、環境的瑕疵の全てに及びます。
売買においては、不動産の種類、品質または数量に関して契約の目的に適合しないものに関しては告知されることが基本です。
賃貸においても、瑕疵があれば契約前に行われる重要事項説明の時点で瑕疵の内容が説明されます。
なお、住居内における自然死は原則として心理的瑕疵に該当しないため、告知はされません。
住居である以上、人の自然死は当然に予想されるものだからです。
告知期間
瑕疵のうち、物理的瑕疵と法律的瑕疵、環境的瑕疵に関しては現在生じている問題であるため、売買や賃貸の契約時点において当然に告知すべきものです。
一方で、心理的瑕疵は過去に生じた事象であることから、いつまで告知し続けなければならないのかという告知期間の問題が生じます。
心理的瑕疵の告知期間の問題に対し、国土交通省では「宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン」(以下、ガイドライン)にて一定の指針を示しています。
ガイドラインでは賃貸は原則3年、売買に関しては個別性が強いことから告知期間の期限を特段定めていません。
瑕疵物件かどうか調べる3つの方法

物件が瑕疵物件か否かについては、調べる方法がいくつか存在します。
ここでは、瑕疵物件を調べる方法について解説します。
1.不動産会社に問い合わせる
瑕疵を把握するには、物件を取り扱っている不動産会社に直接確認することが最も適切です。
不動産会社には、契約前に瑕疵等の説明義務が課されているため、物件の瑕疵について把握しています。
2.近隣住民にたずねる
マスコミ等で話題になった大きな事件や事故であれば、近隣住民が知っている可能性はあります。
ただし、近隣住民に聞く前に、不動産会社に直接聞く方が間違いはありません。
3.インターネットを活用する
あまりおすすめしませんが、有名な物件であればインターネットで把握できる可能性はあります。
ただし、インターネット上の情報は真偽が明らかではない情報もあるため、注意が必要です。
瑕疵物件と知らされず契約したときはどうする?

売買の場合は契約の目的に適合しない欠陥があれば売主に対して契約不適合責任を問える可能性があります。
契約不適合責任とは、契約の目的とは異なるものを買ったときに購入後に売主に対して修補請求(修繕の請求のこと)や契約解除、損害賠償等を問える売主責任のことです。
賃貸の場合は、告知されないことで損害を受けた場合には、貸主に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
まとめ
以上、瑕疵物件について解説してきました。
瑕疵物件には、物理的瑕疵物件、心理的瑕疵物件、法律的瑕疵物件、環境的瑕疵物件の4種類があり、そのうち心理的瑕疵物件がいわゆる事故物件に該当します。
瑕疵は買主や借主にとって、その存在を知っていれば契約しなかったと判断し得る重要な問題です。
契約を締結する前は、買主や借主も瑕疵物件でないことを十分に確認することが適切となります。
この記事のポイント
- 瑕疵物件とは?
瑕疵物件とは、物理的瑕疵、法律的瑕疵、心理的瑕疵、環境的瑕疵という4つの瑕疵のいずれかを含む物件のことです。
詳しくは「瑕疵物件とは?4つの種類を紹介」をご覧ください。
- 瑕疵物件の告知義務は?
瑕疵の存在は、買主または借主の意思決定に重要な影響を与えるものであることから、売主や貸主には瑕疵を告知する「信義則上の義務」があるとされています。
信義則とは、民法第1条2項に定められている「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という原則のことです。
詳しくは「瑕疵物件には告知義務がある」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
瑕疵物件のうち、賃貸の事故物件に関しては心理的瑕疵に関するガイドラインによって一定の方向性が示されていますが、売買に関しては個別性が強くガイドラインで方向性を示すことができない状況です。ただし、売買は売主に契約不適合責任が課されていることにより、買主保護は手厚くなっています。
いずれにしても、瑕疵物件は借りない、もしくは買わない方が望ましいです。後から聞いていなかったということにならないように、些細な疑問でも不動産会社に質問や確認を行い、安心して暮らせる家を探して頂ければと思います。

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