ざっくり要約!
- 住宅ローンの繰り上げ返済には、一部繰り上げ返済と全部繰り上げ返済がある
- 住宅ローンを選ぶ際には金利や返済期間だけでなく、繰り上げ返済のしやすさにも注目しておくことが大事
住宅ローンの返済が続くなか「毎月の負担を軽くしたい」「少しでも早く完済したい」と感じている方は多いのではないでしょうか。
そのようなときに活用できるのが「繰り上げ返済」です。繰り上げ返済は、住宅ローンの総返済額を抑えるうえで有効な手段となります。
この記事では、繰り上げ返済の基本的な仕組みから、活用するタイミングや注意点を解説していきます。「本当に今やるべきか?」と迷っている方にも役立つ内容となっているため、ぜひ最後までご覧ください。
記事サマリー
そもそも住宅ローンの繰り上げ返済とは?

住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の決まった返済とは別にまとまったお金を前倒しで返済し、元金を減らす方法です。
この方法を取ることで利息の負担が軽くなり、結果としてローン全体の支払額を抑えることができます。
繰り上げ返済は、ボーナス時や貯蓄に余裕ができたときなど、自分のペースで実行できる点もメリットです。ただし、金融機関によっては手数料が発生するケースもあるため、事前に確認しておく必要があります。
また、繰り上げ返済は、あくまで家計に余裕があるときに行うべきものです。将来の生活設計も視野に入れたうえで、慎重に判断することが求められるでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済の方法2つ

住宅ローンの繰り上げ返済には、大きく分けて以下の2つの方法があります。
- 一部繰り上げ返済
- 全部繰り上げ返済
それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、目的や家計状況に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。ここからは、それぞれの返済方法について詳しく解説していきます。
一部繰り上げ返済
一部繰り上げ返済とは、住宅ローンの借入金の「一部」を前倒しで返済する方法です。
この一部繰り上げ返済には、目的に応じて選べる「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。
返済期間短縮型はローンの支払期間を短くする方法で、一方の返済額軽減型は毎月の返済額を減らす方法です。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
| 返済期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
| 主な目的 | ローンの完済時期を早める | 毎月の返済負担を軽くする |
| 利息の返済効果 | 高い | やや低め |
| 毎月の返済額 | 基本的に変わらない | 減る |
| 向いている人 | 少しでも返済利息を減らしたい方 | 毎月の返済負担を減らしたい方 |
次項でそれぞれの返済方法を詳しくみていきます。
返済期間短縮型
返済期間短縮型とは、繰り上げ返済を行ったあとも毎月の返済額はそのままで、ローンの返済期間だけを短縮する方法です。
たとえば、ローンの返済期間が残り20年だったところを、一部繰り上げ返済することで19年に短縮できるといったケースが該当します。
この方法は、完済時期が早まる分、支払う利息も大きく減らせるのが特長です。
特に、少しでも利息を抑えたい方や、定年退職前にローンを完済しておきたいと考えている方に向いています。
返済額軽減型
返済額軽減型は、返済期間を据え置いたまま、月々の返済額を減らす方法です。
たとえば、毎月の返済額が10万円だった方が一部繰り上げ返済を行うことで、月々の返済が9万円に抑えられるといったケースが該当します。
この方法は、生活にゆとりを持たせる効果があり、毎月の家計負担を軽くしたい方に向いているでしょう。
ただし、返済期間短縮型に比べると、利息の軽減効果はやや低くなってしまいます。
全部繰り上げ返済
全部繰り上げ返済とは、住宅ローンの残りの元本をすべて一括で返済する方法です。
いわゆる「一括返済」と呼ばれるもので、ローンそのものを完済することになります。
親族からの贈与や相続などにより、繰り上げ返済に踏み切るケースも考えられるでしょう。利息の軽減効果は繰り上げ返済のなかで最も高く、返済期間中に支払うはずだった利息のすべてをカットできます。
また、住宅ローンがなくなることで、精神的な安心感が得られるのもメリットの1つでしょう。
ただし、全部繰り上げ返済には手数料が発生する場合があるため、あらかじめ金融機関に確認しておく必要があります。
住宅ローンの繰り上げ返済で得するワザ

住宅ローンの繰り上げ返済は、利息の軽減が期待できる有効な手段ですが、実行する時期や方法によっては、さらに高い効果を得られる可能性があります。ここでは、繰り上げ返済をより賢く活用するためのポイントをご紹介します。
繰り上げ返済がお得になる3つのタイミングを狙う
繰り上げ返済自体は基本的にいつでも可能ですが、タイミング次第で効果は大きく変わります。ここからは、狙い目となる3つのタイミングについてわかりやすく解説します。
1.住宅ローン控除期間が終わってから
住宅ローン控除が受けている場合は、すぐに繰り上げ返済するよりも、控除期間が終わってから行ったほうがお得になる場合があります。
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高に対して所定の利率を乗じた金額を、所得税や住民税から控除できる制度です。
一定の条件を満たせば最大13年間適用され、2025年3月時点の控除率は0.7%です。
たとえば、年末のローン残高が3,000万円であれば、0.7%に相当する21万円が税額から差し引かれる計算になります。借入金利が0.7%未満の場合は、支払う利息よりも控除の恩恵のほうが大きくなるため、控除期間が終わるまで繰り上げ返済を控えたほうが得になる可能性があります。
ただし、金利状況によっては、繰り上げ返済によって軽減される利息が控除額を上回ることもあるため、双方のバランスを見て判断することが重要です。
2.年内より年明け
同じ繰り上げ返済をするなら、年明けに行うだけで節税額が増えることがあります。
住宅ローン控除を受けている場合、その年の控除額は年末時点のローン残高に控除率0.7%を掛けた金額で決まる仕組みです。 そのため、年末前に繰り上げ返済で残高を減らしてしまうと、その分だけ控除額も減ってしまいます。
たとえば、ローン残高3,000万円の方が300万円を繰り上げ返済する場合、年内と年明けでは以下のような違いが生じます。
| 本年中に繰上返済した場合 | 年明けに繰上返済した場合 | |
| 年末時点のローン残高 | 2,700万円 | 3,000万円 |
| その年の住宅ローン控除額 | 18万9,000円 | 21万円 |
| 控除の差額 | ▲2万1,000円 |
このように、繰り上げ返済を年明けにずらすだけで2万円以上の節税につながります。
年末のボーナスなどで資金に余裕ができると、ついその勢いで繰り上げ返済したくなりますが、控除の恩恵をしっかり受けるためには、タイミングを見計らって年明けに行うのが効果的です。
3.金利が上がりそうなとき
金利が上昇するタイミングで繰り上げ返済を行うことも効果的です。
特に変動金利でローンを組んでいる場合は慎重な判断が求められます。
変動金利は一般的に年2回、4月と10月に金利が見直される仕組みになっており、市場金利の上昇に伴って、将来的に返済額が増える可能性があります。
とはいえ、多くの金融機関では「5年ルール」と呼ばれる仕組みを設けており、金利が上昇しても実際の返済額が増えるのは5年ごととなっています。
ほかにも固定期間選択型を利用している方は、固定期間の終了時に金利が上がることもあるため、そのタイミングでの繰り上げ返済も有効です。
返済額軽減型ではなく期間短縮型を選ぶ
同じタイミングで、同じ金額を繰り上げ返済するのであれば、「返済額軽減型」よりも「期間短縮型」を選んだ方が、利息の軽減効果が大きくなるケースが多いです。
具体的に、以下の条件で「返済額軽減型」と「期間短縮型」を比較してみましょう。
- 借入額:3,000万円
- 金利:0.7%
- 借入期間:35年
- 返済済み期間:3年
- 繰り上げ返済額:500万円
- 返済方法:元利均等返済
| 繰り上げ前 | 返済額軽減型 | 期間短縮型 | |
| 毎月の返済額 | 8万556円 | 6万5,984円 | 8万556円 |
| 返済期間 | 32年 | 32年 | 25年 9ヵ月 |
| 軽減できる利息額 | ― | 58万736円 | 111万5,690円 |
このように、同じ500万円の繰り上げ返済でも、期間短縮型の方が50万円近く利息を減らすことが可能です。ただし、毎月の返済負担は変わらないため、月々の支出を抑えたい方には不向きな場合もあります。
住宅ローン繰り上げ返済で注意すべき点4つ

繰り上げ返済は、総返済額を抑えるうえで効果的な方法ですが、実行する際には以下の点に注意する必要があります。
- 繰り上げ返済しやすい条件の住宅ローンを選ぶ
- 資金は手元に残す
- 団信の保険金額が減る可能性を考慮する
- 低金利では利息軽減効果が薄いこともある
それぞれの内容について詳しく解説していきます。
1.繰り上げ返済しやすい条件の住宅ローンを選ぶ
住宅ローンを選ぶ際には、金利や返済期間だけでなく、繰り上げ返済のしやすさにも注目しておくことが大事です。 あらかじめチェックしておきたいポイントは以下の2つです。
- 手数料の有無
- 繰り上げ返済の限度額
金融機関によっては、繰り上げ返済のたびに手数料がかかることがあります。こまめに繰り上げ返済をする場合、手数料の積み重ねが負担になる可能性もあるため注意が必要です。
また、一部繰り上げ返済の最低金額や上限金額が設定されている場合もあります。まとまった額でしか返済できない場合、柔軟な返済がしにくくなることもあるでしょう。
将来的に繰り上げ返済を検討している場合は、金融機関の条件をよく比較して選ぶことが大切です。
2.資金は手元に残す
繰り上げ返済をする際は、手元に一定の資金を残しておくことも忘れてはいけません。 余剰資金をすべて返済に充ててしまうと、急な出費や万が一の事態に対応できなくなるリスクがあるからです。
目安としては、生活費の6カ月分程度を手元に残しておくことが望ましいとされています。
たとえば、毎月の生活費が30万円の方であれば、最低でも180万円は現金として確保しておくと安心です。
特に、子どものいるご家庭では教育費など子育てにかかる費用も考慮する必要があります。
進学など、将来大きなお金がかかることを想定して、子育てが終わるまではあえて繰り上げ返済せずに、他のローンより比較的低金利な住宅ローンを利用しつつ手元に資金を残しておくことも有効な方法です。
繰り上げ返済は効果的な節約手段ですが、無理のない範囲で行うことが、家計を安定させるためのポイントです。
3.団信の保険金額が減る可能性を考慮する
繰り上げ返済を行う際には、団体信用生命保険(団信)への影響にも目を向けておくことが大切です。
団信とは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になったときに、残っているローン残高を保険金で支払う仕組みです。つまり、団信は生命保険の代わりのような役割を果たしています。
この団信ですが、繰り上げ返済によって住宅ローンの残高が減ると、それに伴って団信がカバーする保険金額も減少します。
つまり、万が一の際に保障される金額も少なくなるということです。
保障が少なくなったことで、別途生命保険への加入が必要になる場合もあり、結果的に保険料負担が増えてしまうかもしれません。繰り上げ返済を検討する際は、単に利息の軽減効果だけでなく、万が一のときの保障がどう変わるかもあわせて確認しておくと安心です。
・「団信」に関する記事はこちら
団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説
4.低金利では利息軽減効果が薄いこともある
住宅ローンは金利が低めに設定されているため、繰り上げ返済によって得られる利息軽減効果が他のローンに比べて小さくなることがあります。
たとえば、以下のような高金利のローンがある場合は、そちらを優先的に返済したほうが利息負担を抑えられます。
| ローンの種類 | 金利の目安 |
| カードローン | 2.0~18.0% |
| 自動車ローン | 1.5~15.0% |
| フリーローン | 3.0~16.0% |
どうしても住宅ローンは借入額が大きいため、優先的に繰り上げ返済したい気持ちになりがちです。しかし、金利の高いローンから返済することで、最終的な利息負担を大きく減らせる可能性があります。
・「世帯年収1000万円の住宅ローン」に関する記事はこちら
団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説
まとめ
住宅ローンの繰り上げ返済は、元金を予定より先に返済することで利息の負担を減らし、総支払額を抑える方法です。繰り上げ返済には「一部繰り上げ」と「全部繰り上げ」があり、一部繰り上げには「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。なかでも期間短縮型は利息軽減効果が大きく、同じ金額でも長期的な節約につながります。
効果的に繰り上げ返済を行う場合は以下のタイミングを意識するとよいでしょう。
- 住宅ローン控除期間が終わってから
- 年内より年明け
- 金利が上がりそうなとき
これらのタイミングを見極めることで、より効率的な返済が可能です。ただし、手数料の有無や返済条件、団信の保障減少、手元資金の確保といった点にも注意し、無理のない範囲で計画的に進めていきましょう。
この記事のポイント
- 住宅ローンの繰り上げ返済の方法にはどんなものがある?
住宅ローンの繰り上げ返済には、主に一部繰り上げ返済と全部繰り上げ返済があります。
それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、目的や家計状況に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。詳しくは「住宅ローンの繰り上げ返済の方法2つ」をご覧ください。
- 住宅ローンの繰り上げ返済で得するワザはある?
住宅ローンの繰り上げ返済で得するワザとしては、繰り上げ返済がお得になる3つのタイミングを狙う、返済額軽減型ではなく期間短縮型を選ぶといった方法があります。
詳しくは「住宅ローンの繰り上げ返済で得するワザ」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
最近は住宅購入が40歳前後になるケースも多く、35年ローンを組むと完済が75歳に達することも珍しくありません。老後資金や教育費など、人生の他の大きな支出とも重なる時期でもあります。
繰り上げ返済は将来の家計負担を減らす有効な手段です。しかし、ライフプラン全体を見ながら無理のない範囲で計画を立てる必要があります。繰り上げ返済を実施する際は、必要に応じて専門家のサポートを受けながら進めていってください。

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