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擁壁とは?役割や種類、関連する法律などを解説

住宅の建設を検討しているときに、「擁壁(ようへき)」という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか?土地に高低差がある場合は、地盤が崩れるのを防ぐために擁壁が必要です。

しかし、そもそもどのような工事なのか、費用はどれくらいかかるのか、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、擁壁の役割や種類・工事にかかる費用などをわかりやすく解説します。

擁壁とは土の崩れを防ぐ壁状の構造物

擁壁とは壁のような形をした構造物で、高低差のある土地や崖などで土が崩れるのを防ぐために設置されます。崖以外に、隣地や道路との高低差がある場合にも設置されるのが一般的です。

住宅街などで道路よりも敷地が高い場合、家の下から道路までの敷地側面をブロックやコンクリートで覆った壁を目にすることがあるでしょう。それが擁壁です。

擁壁の役割

擁壁の大きな役割は、崖や建物の土が崩れるのを防ぎ、建物を守ることです。

高低差のある土地に家を建設する場合、高い敷地に家の重さがかかると、その荷重に耐えられず斜面から土が崩れる可能性があります。

そのため、敷地斜面の角度が一定の基準を超える場所に建物を建築する場合は、擁壁を設置する工事が必要になります。この目安となる角度が「安息角(あんそくかく)」です。

安息角とは、土などを積み上げても斜面が崩れない最大の角度をいい、一般的には35度前後といわれています。

擁壁と似たようなもので、「土留め(どどめ)」や「ブロック塀」を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。土留めとは、崖などの崩壊を防ぐための土木工事自体を指す言葉です。

土が崩れるのを防ぐという目的は擁壁と一緒ですが、土留めは工事を指し、擁壁は構造物を指すという違いがあります。
つまり、土留めに使う構造物が擁壁という関係です。

また、ブロック塀は、隣地との境界線や道路からの視線を遮るために設置されるのが一般的であり、設置する目的が異なります。

擁壁に関わる法律

擁壁に関わる法律としては「宅地造成等規制法」や「建築基準法」があります。

宅地造成等規制法では、崖崩れなどの危険性が高い地域での擁壁に関する規制が設けられています。

宅地造成工事規制区域に該当する地域では、規制された工事をする前に自治体の許可が必要になり、その工事での擁壁の基準も定められています。

また、建築基準法でも、2mを超える高さの擁壁を設置する場合は事前の確認申請が必要と定められています。

擁壁工事が必要な場合や、すでに擁壁のある土地を検討している場合は、これらの法律に適しているかどうか、住む地域の条例がどうなっているかも確認するようにしましょう。

擁壁の種類

一口に擁壁と言っても、さまざまな工法や種類があります。

例として、以下の3種類を紹介します。

  • L型擁壁
  • ブロック積擁壁
  • 補強土壁

L型擁壁

鉄筋コンクリート造擁壁の一種です。鉄筋コンクリート造擁壁はコンクリート内に鉄筋が埋め込まれている構造のため、見栄えが良く耐震性も高いという特徴があり、広く使われている擁壁です。

なかでも一般的なのが、L字の形をしたL型擁壁です。L型擁壁は、地面下の敷地側にL字の底部分を設置するので敷地ギリギリに設置でき、広く敷地を活用できるという特徴があります。

また、土地の形状によっては、逆L型擁壁や逆T型擁壁なども使われます。敷地の広さや形状により、設置できる擁壁が異なるので事前に確認しましょう。

ブロック積擁壁

ブロックを組み合わせて壁を作る擁壁です。擁壁の裏側をコンクリートなどで固めながらブロックを積み上げ、敷地側に斜めに積み上げていくという特徴があります。

高速道路や河川の護岸などでも利用される方法で、お城の石垣のような構造をイメージすればわかりやすいでしょう。

代表的なのが間地ブロックで、基準を満たせば5mの高さまで設置できるという特徴があります。

ただし、斜めに設置し擁壁下面が境界線になるので、利用できる敷地が小さくなるため注意が必要です。

補強土壁

補強土壁は、盛土内に補強材を敷設して壁面を作る工法です。使用する補強材などに応じてさまざまな工事方法があります。

垂直や垂直に近い壁面を構築でき、耐震性にも優れる点が特徴です。使用する素材や用途に制限があったり、補修が難しかったりする点には配慮が必要です。

擁壁工事にかかる費用

擁壁工事は、構造や工法によっても費用が異なるため、ある程度把握しておくことが大切です。ここでは、擁壁工事の費用について見ていきましょう。

擁壁工事の費用相場

一般的な鉄筋コンクリート造擁壁の場合、費用相場は1㎡あたり数万円~十数万円ほどです。

土地の形状や立地によって、費用は大きく異なります。高低差が同じであっても、傾斜がきつい場合は工法を変えなければなりません。

また、敷地までの道が狭ければ資材などを運ぶ大型トラックを搬入できずに、小型車両での往復階数が増えるため、運搬費などが多くかかります。

さらに、道幅が狭いと工事のための通行制限が必要となり、そのための人件費もかさむでしょう。事前に現地を見てもらい、見積もりを取ったうえで検討することが大切です。

分譲地を購入する場合の擁壁工事費用

住宅用の分譲地の場合、基本的には土地代のなかに擁壁工事費が含まれます。そのため、購入後に追加で擁壁工事費用を請求されることはあまりないでしょう。

しかし、不動産会社によっては含まれない場合もあるので、念のため事前に確認するのがおすすめです。

擁壁が古くなっている場合は作り直しが必要な場合もあります。その際は、擁壁工事費だけでなく解体費用も別途必要になるので注意しましょう。

擁壁工事の助成金は出る?

自治体によっては、擁壁工事や擁壁改修工事に対する助成金を設けている場合があります。

例えば、東京都港区には「がけ・擁壁改修工事等支援事業」があり、擁壁の新築工事や改修の場合に工事費の2分の1(上限:土砂災害警戒区域外最高500万円/区域内5,000万円)が補助されます。

ただし、擁壁の高さが2mを超える場合などの条件が設けられています。

擁壁に関する助成金の有無や助成額・適用条件は自治体により異なります。各自治体のホームページや窓口で確認できるので、事前に確認するとよいでしょう。

住宅購入前に擁壁について知っておこう

擁壁工事の種類や費用をお伝えしました。高低差のある土地に住宅を建てる場合、土が流れるのを防ぎ建物を守るために擁壁工事が必要になる場合があります。

擁壁工事は法律による規制もあり、また、擁壁自体も種類がさまざまあります。後々「知らなかった」と後悔する事態を防ぐためにも、事前に擁壁に関わる法律や役割・種類を理解しておくことが重要です。

また、擁壁工事費用は、工事種類や土地の形状・立地によって大きく異なるため、早めに見積もりを取って検討する必要があります。

この記事を参考に、擁壁について理解し、適切な擁壁を設置して住宅をしっかり守れるようにしましょう。

この記事のポイント

擁壁の役割とは?

擁壁とは崖など土の崩れを防ぐための壁状の構造物です。高低差のある土地に家を建設する場合、土が建物の重さで崩れないように支える役割があります。
詳しくは「擁壁とは土の崩れを防ぐ壁状の構造物」をご覧ください。

擁壁工事の費用とは?

擁壁工事は一般的な鉄筋コンクリート造であれば、1㎡あたり数万円~数十万円の費用相場となります。また、土地の形状や立地によって工法を変えなければならないため、費用が大きくなる場合があります。
詳しくは「擁壁工事の費用相場」をご確認ください。

この記事の監修

逆瀬川 勇造
資格情報: 宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事。
2018年より独立し、不動産に特化したライターとして活動している。

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