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ゴーストレストランとは?メリットデメリットと経営にあたっての注意点

コロナ禍により時短営業や休業要請など様々な規制を強いられた飲⾷店でしたが、デリバリー産業が⼀筋の光を与えました。従来、そば屋や寿司屋などを筆頭に、⾃社で注⽂をとって顧客に届ける体制でしたが、「UberEats」などのデリバリープラットフォーム(デリバリー代行サービス)が出現。それにともない、料理を提供する側もゴーストレストランとしてデリバリーに特化した仕組みづくりを展開し、盛り上りをみせています。
ここでは、ゴーストレストランの基本情報や開業までの流れをご紹介します。

ゴーストレストランとは

ゴーストレストランとは、お客様が店内で飲⾷をすることをせずに、デリバリーで料理を提供するレストランのことです。店舗によってはテイクアウトにも対応しており、その場合はデリバリー料が加算されない分、料理を安く提供しています。

外食産業、中食産業の市場規模

ゴーストレストランは、キッチン設備が整った環境の中で、1〜2⼈程度で運⽤されます。
デリバリー特化型飲⾷店なので、基本的には⼈件費も調理師のみ。客席がないため内装費などにも費⽤をかけずに⾮常にリーズナブルに開業することができます。
従来、飲食店開業はハードルが高いものでしたが、デリバリープラットフォームの出現により、ひとりで運⽤したい⽅や、開業費⽤をおさえたい⽅の選択肢のひとつとなっています。
ゴーストレストランの開業⽅法は3タイプありますのでそれぞれ解説させていただきます。

 ゼロからスタート元々経営している飲食店でデリバリーをはじめるクラウドキッチンの運営会社と契約
メリット全て自分好みに選ぶことができる配送の方法を検討するだけで簡単に導入可能充分市場調査がされた立地で開業できる
マーケティングの支援を受けられる場合も
デメリット労力がかかる
初心者には難易度が高い
イートインのお客様への影響カスタマイズの選択肢はゼロからに比べると少なくなる

①ゼロからスタートする場合

開業エリアの選定、不動産の購入または賃貸契約、運営に必要な重機備品の購入まで全てご自身で手配する場合について。
まずは、ゴーストレストランを開業したい場所が商業地区に⼊っているかを確認し、開業可能であれば電気やガスを引いたり、重機や備品を揃えるところから始まります。キッチン設備や導線なども含め、全てが⾃分好みにできるという点ではメリットですが、ゴーストレストランの魅⼒は初期費⽤の安さや⼿軽さです。
ゼロからスタートするとなると、かかる労力は飲⾷店開業とほぼ同等なので、飲食店経営の初心者にとってはハードルが高いかもしれません。

②元々飲⾷店を経営していて、ゴーストレストラン機能(デリバリー)を兼ね備える場合

既に⾃分の店舗を持っている⽅がデリバリーを始める場合は、⾃社で配達員を⽤意するか、もしくはデリバリープラットフォームと契約をするかで簡単に開業することができます。
しかし、配達員が料理を受け取る度にお店に来るので、イートインで来店されているお客様にとって居⼼地の悪い空間になる可能性も。デリバリーの受け渡し場所、導線については事前によく検討する必要があります。

③クラウドキッチンの運営会社と契約をして開業する場合

クラウドキッチンは、ゴーストレストランを開業するにあたって条件の良い立地であるかどうかを充分に調査した上で運営されています。商圏や顧客層など⽴地特性が確⽴されているため、開業と同時に⾮常に集客がしやすい環境で運営できる可能性が高いです。
⾃分でマーケティングを⾏う場合には、各デリバリープラットフォームの特性を調査し分析しなければならないので、知識と労力が必要です。さらに、飲⾷に関わる施設を運営する上では必然的に近隣との関わりが重要になりますが、近隣住⺠の対応も代⾏してくれますので心配いりません。
初めて開業する方にとって、心強いパートナーとなってくれるでしょう。

クラウドキッチン・シェアキッチンとの違いは?

ゴーストレストランとは、デリバリーに特化した飲⾷店の総称で、「飲食店の経営形態」を指しています。
「クラウドキッチン」「シェアキッチン」は「飲食店の施設の種類(キッチンの種類)」を指す用語です。
では、クラウドキッチンとシェアキッチンの違いを紹介します。

⚫︎クラウドキッチンとは

クラウドキッチンは、同じテナントに複数の飲⾷店が⼊りますが、ブースとして分かれており、それぞれに独⽴したキッチン設備があります。運営会社がテナントを用意し、賃貸、管理する運用形態となっています。
クラウドキッチンの物件を貸している運営会社は、「UberEats」や「出前館」などのデリバリープラットフォームの導⼊実績がある場合が多く、クラウドキッチン未経験者でも開業しやすいでしょう。

⚫︎シェアキッチンとは

シェアキッチンでは、ひとつのキッチンを複数の飲⾷店と共同利⽤します。
空いたスペースや時間をシェアする軒先ビジネスと同様で、昼と夜の時間帯で分けてシェアをしている飲⾷店が多いです。賃料や光熱費を折半することができますが、在庫や物資の管理が難点です。

ゴーストレストランの市場規模

飲食店経営を検討する際に、市場規模の調査は切り離せないものとなります。
各団体が発表しているデータを踏まえご紹介していきたいと思います。

外食産業、中食産業の市場規模

※中食:レストラン等へ出かけて食事をする「外食」と、家庭内で手づくり料理を食べる「内食」の中間にあって、市販の弁当や総菜、家庭外で調理・加工された食品を家庭や職場・学校等で、そのまま(調理加熱することなく)食べること。これら食品(日持ちしない食品)の総称としても用いられる。
農林水産省「令和元年度食料・農業・農村白書」

外食産業全体の市場規模は令和元年で26兆2,684億、コロナウイルスの影響を受けた令和2年は大きく数字が落ちましたが、それでも18兆2,005億の市場があります。
デリバリーを含む中食産業は、外食産業が伸び悩んだ時期にも右肩上がりに市場を拡大しており、令和2年、コロナウイルスの影響もほぼ受けていないようにみえます。

このデータから、中食市場(デリバリー含む)は安定的で、ポテンシャルを秘めた領域であると言えるのではないでしょうか。

デリバリー(出前)の市場規模

デリバリー市場規模は年々増加傾向にあります。コロナウイルスの感染拡大以前から同様の傾向ではありましたが、2021年には、2019年対比で191%まで増加。イートイン市場の厳しい状況もあり、多くの飲⾷店が⽣き残りをかけてデリバリー市場に参⼊しました。

そのような経緯から、2021年はデリバリープラットフォームの出店⼿続きがパンク状態にありました。コロナウイルスの感染拡大以前からデリバリー導⼊をしていて、出店までの⼿順を熟知していた飲⾷店も、新規業態の開店まで2ヶ⽉を要しています。初参⼊の店舗は出店までに3ヶ⽉を要する店舗もあったのではないでしょうか。

2021年は、結果的に前年⽐27%増となりましたが、実態は、プラットフォームの出店⼿続きがコロナ禍前の従来のスピードであれば更に伸びていたであろうと考えています。

今後のデリバリー市場の動き

首都圏では、デリバリー市場はレッドオーシャンになりつつあります。
ひとりで突き進むよりも、周りからサポートを受けながら、仲間と協力しながら運営ができると、心強く、また可能性も広がるのではないかと思います。
ゴーストレストランの運営会社は、エリアの特性や商品の価格帯、何が流行っているかなどの情報をもっているため、サポートを受けるのも選択肢のひとつではないでしょうか。

ゴーストレストラン開業までの流れ

ここでは、ゴーストレストランの運営会社と賃貸契約をして開業する場合を例にします。

STEP1:提供料理のメニュー考案、⼈員の確保

ゴーストレストランのテナントに申し込み後、すぐに開業ができると思いがちなのですが、デリバリーサイトの登録や準備で1〜2ヶ⽉程度かかります。そのため、提供する料理のメニューの考案や写真撮影など基本的な準備をしておくと良いでしょう。

もしくは、契約した⽇から⼀定期間家賃が無料になるフリーレント物件を借りるのもおすすめです。

メニュー考案と同時に、⼈員の確保も⾏うのがベスト。基本的には、ワンオペもしくはツーオペで、ひとつの業態を受け持つことが良いでしょう。店舗の規模を考えると、それ以上の人員確保は実際の運営状況に応じて検討するのが良いのではないでしょうか。

STEP2:許認可の申請

開業に必要な許認可「防⽕管理者」、「⾷品衛⽣責任者」、「営業許可書」などはゴーストレストランの運営会社が取得している場合もありますが、⾃社で取得する⽅がのぞましいでしょう。

なぜならば、デリバリープラットフォームと契約をする際に、事業者名の相違があると審査が遅くなる可能性があるからです。

関連記事:ゴーストレストランの開業に必要な資格と許可申請について

STEP3:ゴーストレストランの運営会社と賃貸契約をする

ゴーストレストランやクラウドキッチンとして貸し出している物件は、テナントを4〜8つで区分けしており、各ブースにキッチン設備を設けています。
物件を選ぶ際には、調理器具や材料をどれだけ保管できるのか、提供予定の料理が問題なく調理可能か、効率の良い導線かを確認しましょう。

STEP4:デリバリープラットフォームと契約

デリバリープラットフォームとの契約は、登録完了するまでに2週間から2ヶ⽉程度の時間を要します。参考までに、主要なものを紹介します。

⚫︎A プラットフォーム

出店審査はさほど厳しくはありませんが、申請店舗が多いため承認までの時間がかかります。最短で1ヶ⽉程度ですが、余裕をもって2ヶ⽉程度はみておいたほうが良いでしょう。

⚫︎B プラットフォーム

お店のコンセプトや業態の審査が厳しいのが特徴。売上が⾒込めるかといった審査が特に厳しく、販売実績が無い場合は要注意です。地域別のサポートセンターによって差があるため、デリバリーが多い激戦区では2ヶ月程度みておいた方が良いでしょう。

⚫︎C プラットフォーム

料理のオプション数が必要なのが特徴です。メイン料理+オプションセットがないと登録が難しい為、商品数を確保することが必須です。

ゴーストレストランで開業するメリット

初期費⽤が安い

都内で飲⾷店を開業する場合、物件取得の初期費⽤で300〜400万円かかります。さらに、内装で300〜500万円以上。冷蔵庫などの重機の⽤意に100〜200万円かかるため、トータルで1000〜1500万円かかります。
しかし、ゴーストレストランであれば、提供メニューなどにもよりますが50〜300万円程度で開業が可能です。

開業経験がない⽅も安⼼

クラウドキッチンの運営会社で開業する場合、運営会社にノウハウがあるため、販売促進やSNS運⽤、広告出稿などもサポートしてくれます。
また、テナント内は複数の飲⾷店で成り⽴っているため、個⼈商店が集まった「商店街のキッチン版」のようなもの。お互いに意⾒交換ができるのもメリットなのではないでしょうか。

実店舗に来店されるお客様に案内ができる

実店舗がある場合によりますが、満席で予約をとることができない際にデリバリーの案内ができます。また、デリバリーのお客様が実店舗に来店される場合もあり、相互で認知度を⾼める効果があります。

ゴーストレストランで開業するデメリット

デリバリープラットフォームに⼿数料がかかる

店舗側がデリバリープラットフォームに⽀払う⼿数料が売り上げの約35〜40%以上(税込み)となるため、商品⾃体の価格を上げなければ利益が出ません。さらに、ユーザー側は配達⼿数料もかかるので、ユーザーが求めるコストパフォーマンスと店舗側がだす料理の間に⼤きな格差が⽣じます。
提供するエリアの平均価格や競合他社の商品を分析し、値段設定に気を付けましょう。

天候に左右される

ユーザーは⾬など悪天候であるほどデリバリーを頼みたいものですが、デリバリープラットフォームでは対応しきれていないことが現状。⾃転⾞やバイクで配達するため、悪天候であると「近くに配達員がいません」の表⽰になり、対応不可となります。
従来どおり、⾃社で注⽂を受け配達することが可能であれば良いですが、配達員の⼈件費が⽣じますので注意が必要です。

テイクアウト⽤の容器が⾼い

デリバリーはテイクアウト⽤の容器が随時必要です。2022年1⽉の⽯油価格⾼騰により、容器の値段が⾮常に⾼値になり、さらに他の素材を使⽤した容器も⾼値になっています。料理の値段設定をする際には、容器の値段を加味しなければなりません。また、汁物であれば汁と麺が分かれたものを使⽤するなど、適した容器を選ぶことも⼤切です。

ゴーストレストランを経営する上での注意点とアドバイス

限られたスペースを有効活⽤し商品数を増やす

クラウドキッチンは平均2〜3坪と、どうしても限られたスペースになるため、調理スペースと⾷材のストックスペースを有効活⽤することが重要です。ひとりで出来るオペレーションと、豊富なメニュー数を確保できるかが鍵となります。

ゴーストレストラン運営会社への売上連動型の賃料が発⽣するか確認すること

基本的には(キッチンの)賃料のみを支払う場合が多いですが、ベースの賃料が安いかわりに、売上連動型の賃料が発⽣する場合もあります。その場合は、デリバリープラットフォームに⽀払う⼿数料に加えて、賃料に値する売上連動型のパーセンテージもコスト計算する必要があります。

通常の飲⾷店開業と違い、初期費⽤や⼈件費などをおさえることができるゴーストレストラン。開業後も、コンセプトやメニューの変更など簡単に業態変更も出来るので、トライアンドエラーを繰り返して運⽤できることが最⼤の魅⼒ではないでしょうか。

この記事の監修

井上大輔
飲食店経営/飲食店コンサルタント

1982年 香港生まれ
中央大学卒業後、京都で修行し帰京後は京都おばんざい料理店で3年間料理長を務める。
2020年に独立。白金台の住宅街に開業し、以降数店舗を経営。
培ったノウハウをもとに実践的なコンサルタントを行う。
また、専門の料理人がほぼ完成まで仕上げた料理を提供するシステムを開発し、飲食店の新しい潮流を生み出している。

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