更新日:  

2026年4月施行のマンション関係法改正で購入・投資の判断が変わる? 事前にチェックしたいポイント

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

2025年11月、マンション関係法(老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律)の施行に伴う関係政令が閣議決定されました。改正法の施行は2026年4月を予定しています。

近年、マンションの高経年化および住人の高齢化の進行により、建物の老朽化やそれに伴う安全性の低下といった問題が深刻化しています。加えて、集会決議が難航していることも、この問題に拍車をかけているのが現状です。改正法は、こうした課題を解消し、マンションの管理と再生を後押しすることを目的としています。

マンション関係法改正の背景

マンションは、全国的に建物と住人の「2つの老い」が進行しています。安全の確保のためにも維持管理の重要性が高まっているマンションが増えている一方で、住人の高齢化や非居住化によって理事などの担い手が不足し、総会運営や集会の決議が困難になっています。

高経年マンションの増加

築40年以上 マンション 推移
出典:国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移

2024年末時点の全国のマンションストック総数は、約713.1万戸。これに対し、築40年以上のマンションは20%以上にあたる約148万戸存在しています。マンションの高経年化は今後ますます進み、2034年末には293.2万戸に、2044年末には482.9万戸にのぼると推計されています。

近年、高経年マンションの増加に伴い、適切な維持管理が行われてこなかったマンションを中心に、崩落や外壁の剝落、鉄骨の腐食、給排水管の老朽化など、居住者や近隣住人の安全を脅かす状態になってしまっているマンションが増えつつあります。

マンション住人の高齢化

建物の老朽化に加え「住人の高齢化」もマンションの適切な維持管理に支障をきたしかねません。住人の高齢化が進むと、管理組合や理事、修繕委員会などの担い手が不足し、総会運営などが難航する傾向にあります。

マンション住人 高齢化
出典:国土交通省

令和5年度マンション総合調査」によれば、全体的に高齢の世帯主の割合は増加傾向にあります。高経年であればあるほど世帯主の年齢は高い傾向にあり、1984(昭和59)年以前築のマンションにいたっては、世帯主の半数以上が70歳以上となっています。

所在不明所有者の増加

マンション 所在不明所有者 増加
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

高経年マンションは、所在がわからない所有者も多い傾向にあります。1984(昭和59)年以前築のマンションは、空室がないマンションのほうが少なく、所在不明で連絡先もわからない住戸が一定数あるとするマンションが1割近くにのぼります。

建て替えがなかなか進まない現状

マンション 建て替え 推移
出典:国土交通省「マンションを巡る現状と 最近のマンション政策等の動向

マンションの高経年化が進む一方で、マンションの建て替えはなかなか進んでいません。先のとおり、2024年末時点の全国のマンションストック総数は、約713.1万戸、築40年以上のマンションは約148万戸存在していますが、2024年4月1日時点のマンションの建て替え実績は累計で297件、約2万4,000戸です。敷地売却などの実績はわずか11件、約700戸に留まります。

建て替えが進まない要因は、大きく2つ。1つは、所有者に金銭的な負担が生じるためです。マンション建て替え事業による区分所有者の平均負担額は、およそ1,940万円におよびます。(2017〜2021年実施)この金額を負担できる住人ばかりではありません。

また、ここまでのとおり高経年マンションに住む住人の半数以上が70歳以上の高齢者であるという状況からしても、経済的に建て替えができないというマンションは多いものと推測されます。容積率緩和措置を受け、建て替え後により大規模なマンションを建築できれば住人の負担は抑えられますが、容積率の緩和には一定の条件があるため容易ではありません。

そしてもう1つの理由は、建て替え決議の多数決要件です。マンションを建て替えるには、区分所有者および議決権の5分の4以上の同意が必要です。一定の費用負担があり、さらに建て替え中には転居を要することから、やはり高齢者が多いマンションでの決議は容易ではありません。

マンション関係法改正前にチェックしておきたい3つのポイント

2026年4月に施行されるマンション関係法の改正は、マンションの管理・再生の円滑化を目的にしています。改正前にとくにチェックしておきたいポイントは、次の3つです。

1.決議の多数決要件を緩和

現行制度では、建て替え決議の多数決要件は「5分の4」となっています。改正後も原則的にはこの割合が維持されるものの、次のいずれかに該当するマンションは多数決割合が「4分の3」に緩和されます。

  1. 耐震性の不足
  2. 火災に対する安全性の不足
  3. 外壁等の剝落により周辺に危害を生ずるおそれ
  4. 給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
  5. バリアフリー基準への不適合

また、共有部分の変更決議についても次の事由がある場合は、現行の「4分の3」から「3分の2」に多数決割合が引き下げられます。

  1. 共用部分の設置・保存の瑕疵により権利侵害のおそれがある場合
  2. バリアフリー化のために必要な場合

2.集会決議の円滑化

現在は所在不明の区分所有者も母数に加えたうえで決議を取らなければなりませんが、改正後は裁判所が認定した所在不明所有者をすべての決議の母数から除外することができます。また、建て替え決議や区分所有権の処分を伴う決議を除き、決議は「出席者」の多数決によることになります。ただし、議決行使書や委任状により議決権を行使する人は出席者に含まれます。

これにより、所在不明の区分所有者だけでなく、マンションの維持管理に無関心な所有者を一部決議の母数から除外することができます。

3.新たな再生手法の創設

現在、建物・敷地一括の売却や取り壊し、一棟リノベーションなどをするには、すべての区分所有者の同意が必要です。建て替えより要件が厳しいことから、事実上、売却や取り壊しは困難です。

しかし、改正後は多数決による売却や取り壊しなどの決議ができるようになります。多数決割合は建て替えと同様、原則5分の4で、一定の客観的事由がある場合は4分の3に引き下げられます。

マンション選びは今後どう変わるのか

マンション 選び方

マンション関係法の改正によって建て替えや一括売却といった再生手法がとりやすくなる一方で、マンションごとに抱える課題の“差”はこれまで以上に拡大していく可能性があります。購入・投資の判断においては、これまで以上に「管理」および「立地」が重要な判断軸になっていくものと考えられます。

「管理」の重要性が増す

2026年4月施行のマンション関係法改正は、マンションの管理や再生を円滑化するためのものです。とはいえ改正以降、すべてのマンションの維持管理や組合運営が改善するというわけではなく、意識の高いマンションとそうではないマンションの差がより大きくなっていくと見るのが妥当でしょう。

同法改正だけでなく、近年はマンション管理に関わる法改正や制度の創設が目立ちます。たとえば、2022年4月には「管理計画認定制度」や「マンション管理適性評価制度」という制度がスタートしました。いずれもマンションの管理状態や管理組合の運営状況などを評価するもので、現在、融資や保険などにおいて認定されたマンションが優遇される場面も増えています。

近年はマンション価格が著しく上昇していることもあって、購入時には販売価格ばかりに目が行ってしまうものです。また、投資として購入する場合は利回りを重視するあまり、管理費や修繕積立金が安い物件を“お得”と捉えてしまうケースも見受けられます。

しかし、法改正後も一定の期間は維持管理を続けなければならず、依然として資金面の課題は残るため、すべてのマンションが最終的に建て替えられるわけではありません。むしろ、「管理が適切に行われてきたマンション」と「放置されてきたマンション」では、その後の選択肢の幅や実現可能性に大きな差がつく時代になるはずです。

自己居住用にせよ、投資目的にせよ、購入前には、不動産ポータルサイトに掲載されている販売価格や管理費、修繕積立金の金額だけでなく、不動産会社がマンション管理会社から取り寄せてくれる重要事項調査報告書で修繕履歴や修繕計画、積み立てられている修繕費などをよく確認するようにしましょう。

「コミュニティ形成」の重要性も高くなる

多数決要件の緩和や集会決議の円滑化は、一見すると良い改正のように思えますが、経済的な理由や健康面から建て替えや売却などに反対する所有者の声が届きにくくなるという見方もできます。また、一部の理事や住人が主導で、意図的に参加しづらいスケジュールで決議が取られたり、興味を持ってもらえるような説明をしてこなかったりすれば、決議の母数が減り、少ない同意者のもと重要な決議が取られてしまうおそれもあります。

近年、修繕関連業者が住人になりすまして理事会や総会に参加し、決議を操作しようとする事件も多発しています。すべての住人にマンションの問題や課題が共有され、誰も取り残されることのないよう議論を進めていくには、住人同士のコミュニケーションが欠かせません。

必ずしも「建て替えられればいい」「決議が取れていればいい」というわけではありません。これまでどのような議論が行われてきたかを確認するためにも、重要事項調査報告書に加え「総会議事録」を見せてもらうことをおすすめします。

「立地」の優位性がますます高くなる

改正後は、建て替えに加え、建物と敷地の一括売却も多数決で決議できるようになります。建て替えには引き続き資金面の課題が残ることから、一括売却が有効な出口となるマンションも出てくることでしょう。

しかし、建て替え同様、どのようなマンションでも一括売却できるわけではありません。売買は買主がいないことには成り立たず、活用可能性が低いマンションは買い手がつかない可能性があります。とくに郊外の駅距離が遠い物件や人口の減少が加速しているようなエリアに建つマンションは、敷地を購入して再開発を図るディベロッパーが現れにくく、一括売却の“出口戦略”としての実現性はどうしても低くなります。

一方で、駅近・都心部・再開発エリアなど立地が優れたマンションは、土地の価値が高く、活用の幅も広いため、建て替えが難しくても一括売却できる可能性が高いものと見られます。たとえば、オフィス・店舗・ホテル・サービスアパートメントなど、複数の用途への転用が考えられる土地であれば、ディベロッパーなどが積極的に買い手として名乗りを上げることも十分想定されます。

つまり、法改正によって出口戦略の幅は広がるものの、その恩恵を十分に受けられるのは、立地そのものの競争力が高いマンションです。改正法はマンション再生を後押しする仕組みではありますが、再生の“前提”として土地の価値が担保されていることが極めて重要といえます。すでに立地によってマンションの資産価値は二極化し始めていますが、立地の優位性は今後ますます高くなっていくものと考えられます。

まとめ

2026年4月の改正マンション関係法の施行により、建て替えなどの決議が取りやすくなります。これまで非現実的だった一括売却や一棟コンバージョン、取り壊しなどの決議も取りやすくなることから、マンションの「出口」が多様化します。管理や再生が円滑に進められるようになるのはポジティブな変化ですが、改正後は出口が多様化する分、判断が難しくなり、管理の難易度が上がるという見方もできます。いずれにせよ、今後はさらに「管理」がマンションの資産性や居住快適性、持続可能性に大きく影響する時代になっていくでしょう。

不動産購入なら東急リバブル

不動産購入なら東急リバブル

14日以内に登録された最新物件をご紹介!
マンション・一戸建て・土地の購入をご検討なら東急リバブルにご相談ください。

新着物件検索はこちら

不動産投資・収益物件

不動産投資・収益物件

不動産投資用物件なら東急リバブルにお任せ下さい。
投資用マンション・投資用アパート・ビル購入など、最新
の投資用不動産情報をお届けします。

物件検索はこちら

logo不動産のプロに
無料で相談してみませんか

初めての不動産購入から売却・賃貸まで、トータルサポート致します。法務・税務関係の難しい内容についてもお気軽にご相談ください。