不動産投資の出口戦略とは? 売却・相続・法人化、適切な出口を見極めるポイント
ざっくり要約!
- 不動産投資を成功させるためには、適切なタイミングで物件を売却することが必要
- 売却のタイミングとしては、譲渡所得税が減った時などが有効
- 運用期間終了の時点でもローン審査に通りやすい物件を選ぶことが重要
不動産投資を成功させるためには、物件の購入や運用だけでなく「出口戦略」も重要です。出口戦略とは、投資をどのように終えるかを計画することで、不動産投資においては運用している物件を売却することを指します。
しかし、「いつ売却すればいいのか?」「売却以外にどんな方法があるのか?」と悩む投資家の方も多いのではないでしょうか。出口戦略を誤ると、本来得られるはずだった利益を逃したり、大きな損失を被るリスクもあります。
この記事では、不動産投資の出口戦略について、売却のタイミングやその他の選択肢、成功のポイントを詳しく解説します。
目次
不動産投資の「出口」とは?
不動産投資における「出口」とは、運用している物件に関する投資を、終えるタイミングや方法のことです。家賃収入を得ながら運用することも重要ですが、最終的に「どのように投資を終了し、利益確定するか」が、不動産投資の成否を決める大きなポイントとなります。
利益確定とは、運用していた物件を売却して、売却した物件に関する投資を終了することにより、その物件から得る利益を確定することを指します。
大きく分けると「売却」「相続・贈与」「法人化」「土地活用」などが不動産投資における出口戦略です。一般的に、最も多く選ばれるのは売却による利益確定ですが、市場環境や投資家の状況によっては、他の方法を選ぶことが適切な場合もあります。
例えば、物件を売却すればキャピタルゲイン(売却益)を得られますが、市場が低迷している時期に無理に売却すると、損失が発生する可能性もあるでしょう。一方で、物件を相続・贈与することで、資産を次世代へ引き継ぐ選択肢もありますし、法人化することで税制メリットを活用する戦略も考えられます。
このように、不動産投資の「出口」は投資家にとって大きな決断となるものです。投資を成功させるためには、物件の購入時から出口戦略を考え、最適なタイミングと方法で利益確定を行うことが必要です。
売却のタイミングはいつがいい?
不動産投資の成功を左右する重要なポイントの一つが「売却のタイミング」です。同じ物件でも、売る時期によって利益の額が大きく変わります。主に3つのタイミングで売却するのが適切です。
譲渡所得税の税率が下がるとき
投資用であるか自分が住むかに関わらず、不動産を売却して利益がある場合は「譲渡所得税」が発生します。譲渡所得税の税率は物件の所有期間によって異なり、5年を超えると大幅に軽減されるため、税金を抑えるためには5年以上過ぎたタイミングで売却するのが有効です。
| 所有期間 | 税率 |
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315% |
※税率は2025年3月時点のもの
なお、物件の所有期間を算定する基準には要注意です。譲渡所得の所有期間は「購入からちょうど5年が経過したタイミング」ではなく、「購入から6回目のお正月を迎えた時点」で長期譲渡所得が適用されます。
例えば2025年4月に購入した物件は、2026年1月1日から所有期間がカウントされます。2031年以降に売却しないと短期所有とみなされるため要注意です。
・「短期譲渡所得・長期譲渡所得」に関する記事はこちら
短期譲渡所得・長期譲渡所得の基礎知識!不動産売却で気をつけるべき点も
減価償却が終わるとき
不動産投資では、減価償却費を計上することで、課税所得を圧縮して節税することが可能です。しかし、減価償却期間が終了すると節税メリットがなくなるため、売却を検討すべきタイミングとなります。
建物は時間の経過によって傷んでいくため、資産価値が減少していきます。減少した資産価値を経費として計上できるというのが減価償却の考え方です。
減価償却費は以下の計算式によって算出します。
物件購入価格のうち建物の価格 ÷ 減価償却期間 = 1年間に計上できる減価償却費
また、減価償却期間は、建物の築年数が法定耐用年数を超えているかどうかで変わります。法定耐用年数を超えていない建物の減価償却期間は以下の計算式で算出可能です。
(法定耐用年数 ー 経過した築年数)+ 経過した築年数 × 0.2 = 減価償却期間
建物の築年数が法定耐用年数を超えている場合は、減価償却期間は以下の計算式で算出します。
法定耐用年数 × 0.2 = 減価償却期間
居住用の建物である場合、構造ごとの耐用年数は以下の表のとおりです。
| 建物の構造 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 建物の構造 | 法定耐用年数 |
| 木造 | 22年 |
| 軽量鉄骨(厚み3mm以下) | 19年 |
| 軽量鉄骨(厚み3mm超~4mm以下) | 27年 |
| 鉄筋コンクリート(RC造) | 47年 |
特に、節税目的で不動産投資をする場合は、減価償却のメリットがなくなるとキャッシュフローが悪化することもあるため、売却を検討するタイミングの一つとなります。
・「不動産投資で節税」に関する記事はこちら
不動産投資で節税ができる仕組みを解説! 住民税・所得税・相続税を節税したいときの注意点は?
不動産投資で節税は嘘⁈ 本当に節税できるのか徹底検証
デッドクロスになるとき
デッドクロスとは「ローンの元金返済額が減価償却費を上回った状態」のことです。この状態に陥ると、帳簿上は黒字でも、実際にはキャッシュフローが悪化し、手元の資金が減っていく状態に陥ってしまいます。
減価償却費を計上できる間は、実際の支出を伴わずに経費を計上できるため、税負担を軽減可能です。しかし、ローンの返済額のうち経費計上できるのは支払金利の部分のみです。元金は経費として計上できません。
運用期間の経過に伴って減価償却費を計上できなくなり、元金返済額が増えるとキャッシュフローが悪化し、税負担が重くなる状態(デッドクロス)が発生します。
デッドクロスの時期を迎えると、税金やローン返済の負担が急激に増えて手元資金が減少するため、売却の検討が必要です。
不動産投資における「売却」以外の選択肢

不動産投資の出口戦略として最も一般的なのは売却ですが、売却以外にも複数の方法があります。 長期的な資産形成や相続対策を考える場合は特に、贈与・相続、法人化、土地活用といった選択肢が有効です。
贈与・相続
不動産を次世代に引き継ぐ方法として、生前に「贈与」するか、死亡後に「相続」するかの2つがあります。贈与とは、不動産の所有権を生前に家族へ移転することです。贈与をすると贈与税がかかりますが、非課税枠を活用すれば節税も可能です。
相続とは、所有者が亡くなった際に、法定相続人が不動産を承継することを指します。相続税の課税対象となるものの、基礎控除があるため、贈与する場合と比較して税負担を抑えられるケースもあります。
贈与・相続のメリット・デメリット
贈与と相続にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
| 選択肢 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 贈与 | 計画的な節税が可能 相続争いを避けやすい | 贈与税が高い 登記変更などの手続きが必要 納税者変更の手続きが必要 |
| 相続 | 基礎控除で税負担を抑制できる 小規模宅地等の特例がある 評価額を下げられることもある | 相続トラブルにつながるリスクがある 分割相続するなら売却が必要 |
贈与は税金対策をしながら計画的に進めることが重要です。例えば、毎年110万円までの暦年贈与を活用すれば、贈与税を支払わずに資産を移転できます。
相続は、相続税を試算した上で、売却や資産の分割方法を決めておくことが大切です。生前に「遺言」や「家族信託」を活用するのも有効です。
・「贈与」に関する記事はこちら
土地の生前贈与で相続税を節約できる?贈与税の計算方法も解説
・「相続」に関する記事はこちら
賃貸物件の相続の流れを徹底解説!相続するメリットや知っておきたい注意点とは
法人化
個人で保有している不動産の所有権を法人へ移転する「法人化」も、出口戦略のひとつです。法人化すると法人税率を適用できるため、個人の所得税よりも税負担を軽減できるケースがあります。
また、法人で不動産を運用することによって経費計上の幅が広がり、節税効果を期待できるのもメリットです。法人化するメリットとデメリットは以下のようになっています。
法人化のメリット
- 個人の所得税より法人税の方が安くなるケースが多い
- 家族を法人の役員にすれば所得の分散が可能
- 相続時に分割しやすくなるため相続税対策になる
- 計上できる経費の幅が広がる
法人化のデメリット
- 法人設立の手間とコストが必要
- 法人維持費用(登記費用や会計処理費用など)が必要
- 不動産所有権を個人から法人へ移転する際に譲渡所得税がかかる
(売却扱いになるため)
・「法人化」に関する記事はこちら
不動産投資で法人化するメリット・デメリット! 適切なタイミングは?
更地にして土地活用
老朽化した建物を解体し、更地として活用するのも選択肢の一つです。特に、建物の維持管理コストがかさむ場合や、土地のポテンシャルを最大限に生かしたい場合などは有効です。
古くなった不動産をそのまま売却するよりも、更地にすることで購入希望者が増えたり、土地の用途が広がったりするため、高値での売却につながるケースがあります。築年数が経って賃貸需要が落ちた物件は特に、更地化したほうが売却しやすくなるケースも多いものです。
また、更地のまま保有しておき、駐車場やコインパーキング、太陽光発電用地などとして活用するのも有効です。ただし、建物が建っていた土地を更地にすると固定資産税が上がるリスクもあるため、活用方法を事前に決めておく必要があります。
更地化と土地活用のメリット・デメリット
まとめると、更地化と土地活用のメリット・デメリットは以下の通りです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・古い建物を解体することで高値で売れる可能性がある ・活用方法の選択肢が増えて売却しやすくなる ・建物を管理する手間を減らせる | ・建物の解体費用が必要 ・固定資産税が上がる ・活用方法を決めておかないと収入の空白期間が出てしまう ・タイミングよく空家になるとは限らず、場合によっては解体費用の他に退去費用がかかる |
・「土地活用」に関する記事はこちら
土地活用は儲かる?ケース別の土地活用方法10選!
不動産投資の出口戦略を成功させるためのポイント
不動産投資の出口戦略(=物件の売却)を成功させて大きな利益を得るためには、物件を購入する前の時点から様々なポイントを考えておくことが必要です。出口戦略を成功させるために考えておくべきポイントについて解説します。
出口を見据えて物件を選ぶ
不動産投資の出口戦略は、物件を購入する時点で既に決まっているとも言えます。物件の売却がスムーズに進むかどうかは、購入する物件の立地や築年数、融資条件などに大きく左右されるからです。
特に、物件を売却する時に、買手が金融機関の融資を引きやすい物件を選ぶことが重要です。
融資審査に通りやすい物件は、主に以下の特徴を持っています。
- 築年数が法定耐用年数を超えていない
- 再建築不可の物件ではない
- 住宅需要が大きいエリアに建っている
特に、法定耐用年数を超えている物件は金融機関の融資審査が厳しいため、購入希望者が融資を受けられないケースも多くなります。買手が現金購入者に限られるため、結果的に物件がなかなか売れず、出口戦略が上手くいかないという状況に陥らないよう要注意です。
投資目的に合わせて出口戦略を練る
不動産投資の目的によって出口戦略の選び方も変わります。一般的な不動産投資の目的としては主に3通りのパターンがあり、それぞれに合った出口戦略は以下の通りです。
キャピタルゲイン(売却益)狙いの投資
短期間で売却して利益を確定させたい場合は、市場価格の変動を常にチェックし、不動産価格がピークのときに売却します。物件を購入する時点で、再開発予定エリアや地価上昇が見込めるエリアを選ぶことが必要です。
インカムゲイン(家賃収入)狙いの投資
長期間保有して家賃収入を狙う場合は、出口戦略として「相続」や「法人化」も視野に入れると良いでしょう。築年数が経過すると家賃が下がる可能性もあるため、デッドクロスなども考慮して売却時期を見極めることが重要です。
相続・資産承継を考えた投資
資産を次世代に残すことが目的の場合は、相続税対策や法人化を早めに検討します。相続後の運用方法(売却するのか、賃貸経営を続けるのか)を家族と事前に話し合うことも重要です。
一定の自己資金を入れる
不動産投資をするにあたっては、フルローン(自己資金ゼロ)で物件を購入するのも有効です。しかし、出口戦略を成功させるためには、一定の自己資金を入れるのも選択肢の一つとなります。物件購入時に自己資金を入れるメリットは以下の通りです。
- 売却時のキャッシュフローを良好に保てる
フルローンで物件を購入した場合は、物件の売却価格がローン残債を下回った時に自己資金を用意しないと売却できなくなる。 - ローン審査が通りやすくなる
自己資金を入れることでローンの利用額を減らせるため、金利等の条件が良くなる可能性がある。
特に、売却時に「ローン残債 > 売却価格」となってしまうと、売るに売れない状況に陥る可能性があります。自己資金を入れておけば、出口戦略を確実にすることが可能です。
・「自己資金」に関する記事はこちら
不動産投資に自己資金はいくら必要?自己資金別の購入できる物件価格と種別を紹介
資産価値が維持・向上するように努める
物件を売却する時に高値で売れるかどうかは、運用期間中に物件の資産価値をいかに維持・向上させられるかにかかっています。物件の状態が悪いと、売却価格が下がるだけでなく買手が見つからないリスクも出てきます。
資産価値を維持・向上させるためのポイントは、外壁塗装・防水工事・共用部の修繕など、定期的なメンテナンスを実施することです。また、設備のグレードアップや内装のリニューアルなど、入居者のニーズに合わせたリフォーム・リノベーションを適宜実施するのも良いでしょう。
なお、物件が古くなるほど、リフォームや修繕が売却価格へ与える影響が大きくなるため、売却を考える5年前くらいから計画的にメンテナンスを行うのが理想的です。
まとめ
不動産投資を成功させるためのカギとなるのは「出口戦略」です。利益確定の方法を事前に考えておき、最適なタイミングと手段で投資を終了することが、利益を最大化するためのポイントになります。
売却のタイミングとしては、譲渡所得税の税率が下がる時期、減価償却の終了時、デッドクロスを迎える前などが挙げられます。また、売却する以外には、贈与・相続、法人化、更地にして土地活用といった方法が有効です。
さらに、運用を終了して売却するタイミングになっても融資を引きやすい物件を選び、一定の自己資金を入れるなど対策しておくことで、スムーズな出口戦略を実現できます。

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ワンポイントアドバイス
出口戦略とは個々の物件を売却することで投資期間を終了させる計画のことを指しますが、出口戦略は購入時に物件選びをする時点でほぼ決まっているとも言われます。抽象的な表現ですが「良い物件」は市場や景気の動向に関わらず売れるものです。物件購入時には、例えば今後年数が経ったとしても売れる立地の良い物件であるか、または今後の再開発などによって立地が良くなる物件であるか、などの視点を持って物件を選ぶことが重要です。
この記事のポイント
Q. 不動産投資の出口戦略とはどのようなものですか?
A. 不動産投資における「出口」とは、運用している物件に関する投資を、終えるタイミングや方法のことです。詳しくは「不動産投資の「出口」とは?」をご覧ください。
Q. 売却のタイミングはいつがいいのでしょうか?
A. 不動産投資の成功を左右する重要なポイントの一つが「売却のタイミング」です。同じ物件でも、売る時期によって利益の額が大きく変わります。詳しくは「売却のタイミングはいつがいい?」をご覧ください。
Q. 出口戦略を成功させるポイントはありますか?
A. 不動産投資の出口戦略(=物件の売却)を成功させて大きな利益を得るためには、物件を購入する前の時点から様々なポイントを考えておくことが必要です。詳しくは「不動産投資の出口戦略を成功させるためのポイント」をご覧ください。