【金利動向】「金利のある世界」における不動産投資の収支シミュレーションとリスク管理
ざっくり要約!
- まずは金利上昇による支払金利の変化を確認する
- 手元資金の状況に応じて最適な金利タイプを選択する
- インフレを背景とした家賃値上げや物件の売却も視野に入れて対策する
2025年12月末に日銀が利上げを決定したことで、金利上昇トレンドが決定的なものとなりました。「物件の投資用ローンは変動金利のままで大丈夫か?」「返済額が増えてキャッシュフローが赤字(逆ザヤ)にならないか?」など、不安は尽きないのではないでしょうか。
目次
金利が上がると返済額はいくら増える?
「金利が上がる」ことはわかっていても、実際にどれくらい金利が上がると自分の収支にどんな影響が出るのか認識していない人も多いのではないでしょうか。
まずは、金利が上昇した際に「具体的にいくら返済額が増えるのか」を具体的に把握することから始めましょう。
金利上昇時の返済額変動幅を試算
例えばニュースで「0.1%の利上げ」と聞くと、わずかな数字に思えるかもしれません。しかし、借入額が大きく返済期間が長い場合、その影響は決して小さくありません。
まず、一般的な一棟アパート投資を想定したモデルケースで試算を行います。前提条件は以下の通りです。
【試算の前提条件】
- 借入残高: 5,000万円
- 返済期間: 30年
- 返済方法: 元利均等返済
- 基準金利: 2.0%
この条件において、金利が0.1%ずつ上昇した場合の返済額を試算します。
| 金利(上昇幅) | 毎月の返済額 | 差額(月額) | 差額(年額) |
|---|---|---|---|
| 2.0%(基準) | 184,810円 | 0円 | 0円 |
| 2.1%(+0.1%) | 187,364円 | +2,554円 | +30,648円 |
| 2.2%(+0.2%) | 189,929円 | +5,119円 | +61,428円 |
| 2.3%(+0.3%) | 192,504円 | +7,694円 | +92,328円 |
| 2.4%(+0.4%) | 195,089円 | +10,279円 | +123,348円 |
| 2.5%(+0.5%) | 197,684円 | +12,874円 | +154,488円 |
たった0.1%の上昇でも、年額では約3万円の支出増となります。もし金利が0.5%上昇すれば、年間のキャッシュフロー減少額は約15万円です。東京都内で単身者用の区分マンションを運用していると仮定すれば、物件の条件によるものの、おおよそ家賃1〜2ヶ月分は収入が減ると考えて良いでしょう。
金利の上昇はキャッシュフローの減少に直結するものであり「金利が多少上がっても大丈夫」と油断するのは禁物です。
投資用ローンにおける「5年ルール・125%ルール」の注意点
金利上昇のニュースが出ると、「変動金利でも5年間は返済額が変わらないから、すぐに生活が苦しくなるわけではない」という話を耳にすることがあるかもしれません。しかし、すべての不動産投資ローン(アパートローン)に「5年ルール」や「125%ルール」が適用されるわけではありません。
5年ルールとは、金利が上がっても5年間は毎月の返済額が変わらないというものです。また、125%ルールとは「金利が上がってから6年目以降に返済額を変更する際、変更前の1.25倍までしか上がらない」という決まりのことを指します。
5年ルールや125%ルールは、債務者の生活を守るための激変緩和措置ですが、ネット銀行など一部の金融機関では、これらのルールが設けられていないこともあります。ご自身が契約されているローンがどちらのタイプなのか、正確に把握されている方は意外と少ないのが実情です。
5年ルールのない契約だった場合は、金利が見直されるタイミング(一般的には半年ごと)で、即座に毎月の返済額が増額されます。「5年間の猶予がある」と思い込んでいると、急に引き落とし額が跳ね上がり、資金ショートを起こす恐れがあるので要注意です。
また、125%ルールがない場合は、返済額の上昇に上限がありません。もし急激なインフレによって金利が短期間に1%以上跳ね上がった場合は、返済額が前月の1.3倍や1.4倍などになることも、理論上はあり得ます。
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不動産投資ローンとは? 金利・審査・選び方を徹底解説!
イールドギャップの適正ラインと確保の重要性
金利が上昇トレンドにある今、不動産投資家が毎日チェックすべき指標があります。それが「イールドギャップ(利回り差)」です。
「物件の利回り」ばかりに注目が集まりがちですが、借入金利が変動する中では、利回りだけを見ていても賃貸経営の健全性は測れません。
イールドギャップとは?
イールドギャップとは、簡単に言えば「投資物件の利回りとローン金利との差」のことです。イールドギャップが大きいほど、実際に手元に残る資金が多くなることを意味します。
一般的には以下の計算式で求められます。
イールドギャップ = 実質利回り(NOI利回り) - 借入金利
ここで注意していただきたいのは、「表面利回り」ではなく「実質利回り」を使うという点です。
表面利回りは一年間満室での運用を想定した、単純な掛け算に基づく数値です。しかし、実際には空室によるマイナスがあったり、賃貸管理費・固定資産税といった経費がかかったりします。
マイナス損や経費などを差し引いた「本当の収益額」からさらに「支払金利」を差し引いて初めて、オーナーの手元に残る真の利益が見えてきます。投資利回りが借入金利を上回る前提では、イールドギャップが大きいほどレバレッジ効果も大きくなります。
・「レバレッジ効果」に関する記事はこちら
不動産投資の「レバレッジ効果」とは?
イールドギャップの重要性
イールドギャップの重要性が強調される理由は、金利上昇局面においては、イールドギャップの不足が「黒字倒産(逆ザヤ)」に直結するからです。
金利が低い局面では、イールドギャップが小さくても、金利が低位安定しているため「なんとかなるケース」が大半でした。しかし、金利が上昇し始めた局面では、その前提は崩れてしまいます。
例えば、実質利回りが4.0%の物件で、金利が2.5%まで上がったとします。この時のイールドギャップは「1.5%」です。一見プラスに見えますが、ここからさらに将来の大規模修繕費用や税金などを支払う必要があります。
もし金利があと0.5%上がったり、突発的な空室が出たりすれば、この1.5%の余白は一瞬で吹き飛び、毎月の収支がマイナス(持ち出し)になってしまうでしょう。
イールドギャップの適正値
では、具体的にどれくらいの数値を目標にすべきなのでしょうか。現在の市場環境と今後の金利動向を鑑みると、最低でも「2.0%以上」、可能であれば「2.5%」を目指すべきだと考えられます。
超低金利と言える局面では「1.5%〜2.0%あれば合格点」と言われていました。しかし、金利が上がってきた中にあっては、その基準のままではリスクが出てきます。
今後さらに金利が0.5%〜1.0%など上昇する可能性を考慮すると、より厚いバッファが必要です。「金利が上がっても、まだ1.5%のギャップが残る」という状態を作っておくのが理想と言えるでしょう。
もし、現在保有している物件のイールドギャップが1.5%を切っているようであれば、この後解説する「繰り上げ返済」や「家賃値上げ」などの対策を実行し、意図的にギャップを広げる努力が必要になります。
固定金利と変動金利の「リスク許容度」の違い
これから融資を受ける、あるいは借り換えを検討する際、「固定金利と変動金利、どちらが得か?」という損得勘定だけで悩んでしまってはいないでしょうか。
2026年の金利上昇局面において重要なのは、「どちらが得か」よりも「自分は金利変動リスクにどこまで耐えられるか(リスク許容度)」という視点です。それぞれの金利タイプが、どのような投資家の方に適しているのかを解説します。
固定金利
結論から申し上げますと、固定金利は「手元資金に余裕がなく、将来のキャッシュフロー変動リスクを極力ゼロにしたい方」に適した選択肢です。固定金利は「安心を買うためのコスト」を含んだ商品設計になっています。
確かに変動金利に比べれば、スタート時点での金利は高めに設定されています。しかし、今後金利がどれだけ上がっても、契約期間中の返済額は1円も増えません。「確定した未来」を手に入れられる点が、固定金利が持つ最大のメリットです。
例えば、ギリギリの収支で物件を運用している場合は、予期せぬ金利上昇で返済額が月2万円増えただけで、経営が赤字転落する恐れがあります。固定金利を選んでおけば、外部環境の変化に怯えることなく、長期的な修繕計画や資産形成に集中できるでしょう。
堅実派の投資家の方にとっては、固定金利こそが最良の防衛策と言えるでしょう。
変動金利
一方で、変動金利は「手元に潤沢な現預金があり、いざという時に繰り上げ返済で対応できる方」に適しています。
変動金利の魅力は、固定金利と比較すると金利が低いことです。イールドギャップを最大化して、キャッシュフローを多く残せる点は大きな武器になります。しかし「将来の利上げリスク」がついて回るのも事実です。
なぜ現預金が重要かというと、金利が急騰して収支が悪化した際に、手元の資金を投入(一部繰り上げ返済)して借入元本を減らせば、毎月の返済額を効果的に軽減できるからです。この「消火活動」をできる資金力があれば、金利上昇は怖くありません。
「リスクを取ってでも収益性を最大化したい、かつ何かあっても自分で火消しができる」。変動金利は、そんな財務体質の強い投資家向けの選択肢と言えます。
「ミックスローン」という選択肢はあるか?
「固定か変動か、どちらか一つに絞れない」という場合は、一つの借入契約の中で両方を組み合わせる「ミックスローン」という手法も存在します。
例えば、借入額の50%を固定金利、残りの50%を変動金利にすることも可能です。これにより、変動金利の低さによる恩恵を受けつつ、金利上昇時のダメージを半分に抑えるという「いいとこ取り」を狙えます。
しかし、この手法には注意点もあります。最大のデメリットは、将来的に「他行への借り換え」が難しくなる可能性がある点です。
ミックスローンでは借入が2本に分かれている(あるいは1本の中で複雑な特約が付いている)ため、抵当権の設定や手続きが複雑になります。結果的に、他の銀行へ乗り換えようとした際に敬遠されたり、手間が増えたりするケースもあります。
ミックスローンは有効なリスク分散の一つですが、あくまで「銀行との長い付き合い」を前提とした選択肢です。「将来、条件の良い銀行があれば借り換えたい」と考えている方は、安易に飛びつかず、慎重に検討することをおすすめします。
金利上昇局面における5つの防衛手段

「金利が上がった時に何か打つ手はないのか?」と模索する人もいるのではないでしょうか。外部環境(金利)は変えられませんが、ご自身の資産状況(内部環境)を調整すれば、リスクはコントロール可能です。ここからは、今日から検討できる具体的な防衛手段を5つの切り口で解説します。
1.金利タイプの検討・借り換え
まず最初に行うべきは、現在のローン契約の見直し、特に「借り換え」のシミュレーションです。結論からお伝えすると、「金利を下げるため」だけでなく「返済期間を延ばして毎月の負担を減らすため」の借り換えも視野に入れるべきでしょう。
通常は「より低い金利の銀行を探す」ことが借り換えの大きなテーマになります。しかし、全体的に金利が上昇傾向にある現在の局面では、劇的な金利ダウンは望めないかもしれません。
それでも、借り換えによって返済期間を(例えば残り20年から30年に)引き延ばせれば、毎月の返済額を圧縮し、キャッシュフローを改善できる可能性があります。
一方で、借り換えには手数料や登記費用がかかるのも事実です。このため「借り換えコスト」と「月々の削減効果」を天秤にかけ、トータルでメリットが出るかどうか、一度他行の融資担当者に相談してみることをおすすめします。
・「金利」に関する記事はこちら
不動産投資ローンの金利相場はどれくらい?金利タイプによる返済額を比較
2.繰り上げ返済
手元の資金に余裕がある場合、「繰り上げ返済」は非常に強力な防衛手段となります。ここで重要なポイントは「期間短縮型」ではなく「返済額軽減型」を選ぶという点です。
期間短縮型 : 毎月の返済額は変わらず、ローンの終わる時期が早まる。
返済額軽減型: ローンが終わる時期は変わらず、毎月の返済額が減る。
金利上昇局面において避けるべきなのは、毎月の支払額が増えてキャッシュフローが回らなくなる状態です。したがって、目先のキャッシュフローを楽にする「返済額軽減型」を選ぶのが鉄則と言えるでしょう。
元本を減らせれば、将来支払うはずだった利息をカットしつつ、毎月の「逆ザヤ」リスクを直接的に下げられます。ただし、手元の現金をすべて使い果たすのは危険です。突発的な修繕などに備え、運転資金は残した上で実行しましょう。
3.キャッシュフローの確保・改善
財務面(ローン)の対策と同時に、物件の収益力そのものを高める「泥臭い努力」も必要です。具体的には「インフレを根拠にした家賃値上げ(攻め)」と「運営コストの削減(守り)」の両輪でキャッシュフローを改善します。
世の中の物価が上がっている今、家賃の値上げ交渉は以前ほどタブーではありません。更新のタイミングで「管理費の上昇」などを理由に、数千円でも賃料アップを打診してみましょう。
また、共用部の電気をLEDに変えるなどの細かい経費削減も、チリも積もれば山となります。「1円でも多く利益を残す」という執念が、金利上昇に負けない賃貸経営につながります。
4.物件選び
これから物件を買い増す、あるいは入れ替える場合は、物件選びの基準を「高利回り」から「賃料の伸びしろ」へ変えましょう。金利上昇以上のペースで家賃を上げられれば、大きな対策になるからです。
これまでの低金利時代は、地方の築古物件など、利回りが高い物件であればキャッシュフローが出せました。しかし、地方では人口減少が顕著で家賃を上げにくい傾向にあります。
金利の上昇に対応するためには、例え表面利回りが多少低くても、都心部や駅近など「需要が強く、インフレに合わせて家賃を上げられる物件」を選ぶべきです。
「今の利回り」ではなく「5年後、10年後に家賃がいくら取れるか」という成長性こそが、金利上昇局面での防御策となります。
・「物件選び」に関する記事はこちら
不動産投資は新築・中古どっちですべき?物件選びで重視すべきこととは
不動産投資の理想的な利回りは?計算方法と物件選びのポイントを紹介
5.出口戦略(売却)の検討
最後に、最も勇気のいる決断でもありますが、「売却」も立派な防衛手段の一つです。もし、シミュレーションの結果「金利があと0.5%上がると収支が赤字になる」と判明し、かつ「家賃値上げも難しい」という状況であれば、売却するのも選択肢の一つです。
「せっかく買った物件を手放すのは嫌だ」と感じるかもしれません。しかし、赤字を垂れ流しながら保有し続け、最終的に破綻してしまっては元も子もありません。
まだ物件価格が大きく崩れていない今のうちに売却し、市況が落ち着いたタイミングや、より良い物件が出たタイミングで別の物件を購入すれば、金利の動向にストレスを抱えることもありません。資産を「入れ替える」柔軟性を持つことも、長く投資家として生き残るための秘訣です。
・「出口戦略」に関する記事はこちら
不動産投資の出口戦略とは? 売却・相続・法人化、適切な出口を見極めるポイント
まとめ
これまで「予測」の域を出ていなかった「金利のある世界」は現実となりました。しかし、いたずらに不安を抱く必要はありません。
本文で解説した通り、金利上昇による影響を詳細にシミュレーションし、「イールドギャップの確保」や「繰り上げ返済」「家賃値上げ」といった具体的な防衛策を講じれば、リスクは十分にコントロール可能です。
この局面は、見方を変えればご自身の賃貸経営の「財務体質」を見直し、より堅実性を高める絶好の機会でもあります。重要なのは、思考停止せずに行動することです。まずは現在の収支状況を正確に把握することから始めましょう。

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ワンポイントアドバイス
金利が上がったからと言って、銀行へ単純に「苦しいから下げてほしい」と頼んでも、この市況下ではなかなか応じてもらえません。交渉のテーブルに必須なのは、他行の「借り換え見積もり」です。銀行は顧客の窮状よりも「優良な貸出先を他行に奪われること」を最も恐れます。他の金融機関へ借り換え診断を依頼し、その提示条件(カード)を持ってメインバンクと交渉しましょう。その手間を惜しまないことが、資産を守る分水嶺となります。
この記事のポイント
Q.金利が上がると返済額はいくら増えますか?
A. 0.25%程度の金利上昇でも家賃1ヶ月分程度の負担増になる可能性があります。詳しくは「金利が上がると返済額はいくら増える?」をご覧ください。
Q. イールドギャップとはなんですか?
A. イールドギャップとは、簡単に言えば「投資物件の利回りとローン金利との差」のことです。イールドギャップが大きいほど、実際に手元に残る資金が多くなることを意味します。詳しくは「イールドギャップの適正ラインと確保の重要性」をご覧ください。
Q. 固定金利と変動金利はどちらが良いのでしょうか?
A. 2026年の金利上昇局面において重要なのは、「どちらが得か」よりも「自分は金利変動リスクにどこまで耐えられるか(リスク許容度)」という視点です。詳しくは「固定金利と変動金利の『リスク許容度』の違い」をご覧ください。