ざっくり要約!
- 住宅ローンの変動金利は、一般的に「短期プライムレート」を基準とし、このレートは日本銀行が決定する政策金利に強く影響を受けている
- 住宅ローンの固定金利は、主に10年国債利回りを中心とした長期金利の動きを参考に、各金融機関が決めている
これから住宅ローンを組もうと考えている方のなかには「どの金利タイプを選べばよいのかわからない」と迷っている方も多いのではないでしょうか。また「これから金利は上昇するのだろうか」と将来の動向に不安を感じている方もいるはずです。
住宅ローンの金利には、主に「変動金利」と「固定金利」があり、それぞれ金利が変動する要因や仕組みが異なります。
この記事では、住宅ローンにおける変動金利と固定金利の過去の推移や現在の動向をみていき、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。あわせて、両者を組み合わせた「ミックスローン」についても取り上げるため、これから住宅ローンを組む方の参考になるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
記事サマリー
住宅ローン金利の推移と動向

ここでは、住宅ローンの代表的な金利タイプである「変動金利」と「固定金利」について、それぞれの金利推移と現在の動向を確認していきます。
変動金利の推移と動向
住宅ローンの変動金利は、一般的に「短期プライムレート」を基準としており、このレートは日本銀行が決定する政策金利に強く影響を受けています。
そのため、変動金利の将来を予測するには、まず政策金利の動向を押さえることが重要です。
政策金利とは、日本銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際に適用する金利で、景気や物価の状況を踏まえて調整されます。
一般的には、以下のような関係性が成り立ちます。
| 景気動向 | 物価 | 政策金利の動き |
|---|---|---|
| 景気の上昇局面 | 物価上昇(インフレ) | 金利は引き上げられる |
| 景気が減速している局面 | 物価下落(デフレ) | 金利は引き下げられる |
このように、政策金利は景気と物価のバランスを取るために調整され、結果として変動金利にも大きな影響を与える仕組みになっています。
続いて、直近の政策金利と変動金利の関係を、時系列で整理した表で確認してみましょう。
| 時系列 | 金融政策の内容 | 変動金利への影響 | 変動金利の相場 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月 | マイナス金利を解除 政策金利を0.0~0.1%に誘導 | 変動金利には大きな変化なし | 0.3~0.4%程度 |
| 2024年7月 | 利上げの実施 政策金利を0.25%程度に誘導 | 一部金融機関で基準金利が0.15~0.25%上昇 | 0.4~0.5%程度 |
| 2025年1月 | 追加利上げ 政策金利を0.5%程度に誘導 | 春ごろに多くの金融機関が基準金利を0.25%程度引き上げ | 0.5~0.6%程度 |
2025年7月時点では、日銀はトランプ政権による関税政策の影響や国内外の景気動向を慎重に見極めるため、政策金利を据え置く姿勢を取っています。
今のところ、新たな追加利上げは見送られているものの、声明のなかでは今後の物価上昇率(インフレ)や景気の回復具合に応じて、段階的な利上げを検討していく方針が示されています。
そのため今後の変動金利は、経済・金融政策の影響を受けながらも、緩やかな上昇傾向が続く見込みです。
| ・「マイナス金利解除」に関する記事はこちら マイナス金利解除!住宅ローン金利や不動産価格に与える影響は? |
【2025年86月】主要金融機関の変動金利の推移
以下は2025年86月時点で、主要金融機関が公表している住宅ローンの変動金利になります。低金利順に並べたランキングの上位であり、最新の金利水準を比較するうえで参考にしてください。
| 銀行 | 優遇金利 |
|---|---|
| 1位:りそな銀行 | 年0.640% |
| 2位:SBI新生銀行 | 年0.660% |
| 3位:三菱UFJ銀行 | 年0.675% |
| 4位:三菱UFJ信託銀行 | 年0.675% |
| 5位:auじぶん銀行 | 年0.684% |
(2025年8月時点)
このように、2025年8月時点では、主要金融機関の多くが住宅ローンの変動金利を0.6%台で維持しています。大幅な変動は見られず、全体としては安定した水準で推移している状況です。
ただし、表示されている優遇金利を適用するためには、自己資金を20%以上用意することなどを条件としている場合もあります。審査条件や適用要件は金融機関ごとに異なるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
出典: ローン金利|りそな銀行
固定金利|SBI新生銀行
住宅ローン金利|三菱UFJ銀行
住宅ローン|三菱UFJ信託銀行
住宅ローン | auじぶん銀行
固定金利の推移と動向
住宅ローンの固定金利は、主に10年国債利回りを中心とした長期金利の動きを参考に、各金融機関が決めています。
これは、変動金利が短期プライムレートに連動するのとは異なり、将来の金利見通しやインフレ期待など、長期的な経済環境を織り込んで設定されるのが特徴です。
直近の10年国債の利回りを、時系列で整理した表で確認してみましょう。
| 時系列 | 10年国債利回り | 背景 |
|---|---|---|
| 2024年10月 | 0.894% | 上昇基調に転じる |
| 2025年3月 | 1.588%(最大) | 物価上昇・利上げ観測強まる |
| 2025年4〜5月 | 一時1.22%台に | トランプ大統領の関税政策による景気減速懸念で長期金利が下落 |
| 2025年6月 | 1.4~1.5%台を推移 | 景気の底堅さやインフレ再燃観測で持ち直し |
出典:国債金利情報|財務省
こうした長期金利の上昇を背景に、10年固定金利も上昇傾向が続いています。
現在は、日銀による追加利上げの可能性や、インフレ再燃への懸念が意識されており、今後も金利が引き上げられる可能性があるでしょう。そのため、10年固定金利は、引き続き緩やかな上昇が続く可能性が高いと予想されます。
また、35年固定などの全期間固定金利型も、基本的には10年国債利回りなどの長期金利をもとに設定されるため、10年固定と同様に上昇傾向が続くと考えられます。
次項で、主要金融機関における10年固定金利と全期間固定金利型の前月比を比べてみましょう。
【2025年8月】主要金融機関の10年固定金利
2025年8月時点における、主要金融機関の10年固定金利(新規借入)の推移は以下の通りです。金利水準は上位5行を比較しております。
| 銀行 | 金利 |
|---|---|
| 1位:SBI新生銀行 | 年1.580% |
| 2位: PayPay銀行 | 年1.630% |
| 3位:イオン銀行 | 年1.680% |
| 4位:りそな銀行 | 年2.345% |
| 5位: みずほ銀行 | 年2.350% |
(2025年8月時点)
2025年8月の10年固定金利は、1.5%台から2.3%台まで幅広い水準で設定されており、金融機関によって金利差がやや開いています。特にSBI新生銀行やPayPay銀行のように1%台の低金利を提供しているところもあれば、みずほ銀行やりそな銀行では2%を超える水準が継続されています。
出典:金利|PayPay銀行
固定金利|SBI新生銀行
住宅ローン 当初固定金利プラン|イオン銀行
住宅ローンの金利一覧|みずほ銀行
ローン金利|りそな銀行
【2025年8月】主要金融機関の全期間固定金利
2025年8月時点における、主要金融機関の全期間固定金利は、以下のようにすべての上位行で引き下げられる結果になりました。
| 銀行 | 金利 |
|---|---|
| 1位:ARUHI(フラット35) | 年0.750%(金利引き下げ制度適用時) |
| 2位:住信SBIネット銀行 | 年0.840%(金利引き下げ制度適用時) |
| 3位:三井住友信託銀行 | 年1.480%(借入期間20年以下) |
| 4位:楽天銀行 | 年1.480%(借入期間20年以下) |
| 5位:りそな銀行 | 年1.480%(借入期間20年以下) |
(2025年8月時点)
※各銀行とも引き下げ制度や返済期間の優待を受けた場合の最低金利
直近では10年国債利回りがやや低下傾向にあったため、各行の金利は比較的抑えられている印象です。
ただし、2024年以降の動向を見ると、長期的には金利は緩やかな上昇基調にあります。一時的に利回りが下がったとしても、物価上昇や政策金利の引き上げといった要因から、固定金利が再び上昇に転じる可能性も十分あるといえるでしょう。
出典:金利引き下げ制度|ARUHI住宅ローン
長期固定金利型住宅ローンのご案内|住信SBIネット銀行
金利一覧|三井住友信託銀行株式会社
金利一覧 -【フラット35】住宅購入|楽天銀行
ローン金利|りそな銀行
住宅ローンの金利タイプとは?種類別の特徴を解説

住宅ローンの金利タイプは、大きく次の3つに分けられます。
- 変動金利型
- 全期間固定金利型
- 固定金利期間選択型
- ミックス金利型
さらに、これらを組み合わせた「ミックス金利型」という選択肢も存在します。どのタイプが自分に合っているかを判断するには、それぞれの仕組みやメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。
ここでは、4つの金利タイプについて詳しく解説します。まずは「変動金利型」の特徴からみていきましょう。
変動金利型の特徴やメリット・デメリット
変動金利型とは、景気や金融政策などに応じて金利が変動するタイプのローンになります。
一般的に、半年ごとに金利が見直される仕組みです。
変動金利のメリット・デメリットは主に以下のとおりです。
| 変動金利のメリット | 変動金利のデメリット |
|---|---|
|
|
また、変動金利には、返済額の急激な増加を抑えるための仕組みとして次の2つのルールが設けられています。
- 5年ルール
- 125%ルール
5年ルールとは、金利が上昇しても、毎月の返済額が原則5年間は据え置かれる仕組みです。これにより短期間で急激に家計が圧迫されることはありません。
一方の125%ルールとは、5年後に返済額が見直される際も、変更後の返済額は見直し前の125%以内に抑えられます。ただし、金利上昇によって利息負担が増加すると、元金の減りが遅くなるリスクがあります。
| ・「住宅ローンの5年ルール」に関する記事はこちら 住宅ローンの5年ルールはどう計算される?金利が上昇するとどうなる? |
向いている人
変動金利が向いているのは主に、次に該当している方です。
- 返済額を抑えたい人
- 金利上昇による返済額の増加にも対応できる経済的余力がある人
- 借入期間が短い人
- 金利動向をチェックできる人
変動金利型は、固定金利型と比較して初期の金利が低く設定されています。そのため、住宅ローンの返済負担をなるべく軽減したい方にとって有利な選択肢となります。
特に、ライフプランとして短期間の借入を予定している方や、将来的に繰り上げ返済を視野に入れている方に適しているでしょう。
ただし、将来的な金利上昇によって返済額が増加するリスクは避けられません。そのため、収入や資産にある程度の余裕があり、金利変動への備えができていることが重要です。
全期間固定金利型の特徴やメリット・デメリット
全期間固定金利型とは、住宅ローンの借入時から完済までの間、金利が変動しないタイプのローンです。
一般的に、長期金利である10年国債利回りに連動して金利が適用されます。
期間終了まで返済額が一定となるため、安定した返済を希望する場合に有効な選択肢となるでしょう。
全期間固定金利型のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 全期間固定金利型のメリット | 全期間固定金利型のデメリット |
|---|---|
|
|
全期間固定金利型は、完済まで返済額が変わらないため、長期の資金計画を組みやすいのが特徴です。金利変動による影響を受けないことから、安心してローン返済ができます。
ただし、当初金利は変動型より高めに設定されることが多く、毎月の返済負担が重くなる傾向があります。
向いている人
全期間固定金利型は、次のような方に向いています。
- 返済額を変動させたくない人
- 金利や経済動向を追うのが苦手な人
- 借入期間が長い人
全期間固定金利型は毎月の返済額が一定で計画が立てやすいため、将来の支出や家計の見通しを重視する方にとって安心感が得られます。また、金利が変わっても返済額は変わらないため、市場動向を頻繁にチェックする必要はありません。
加えて、借入期間が30年や40年と長くなるほど金利変動リスクは高まりますが、全期間固定金利型であればその影響を受けずに済むため、将来の不確実性を抑えることができます。
固定金利期間選択型の特徴やメリット・デメリット
固定金利期間選択型とは「当初5年」や「当初10年」など、一定期間のみ金利が固定される住宅ローンです。
固定期間が終了すると、再び変動金利型か固定金利型のいずれかを選択する必要があります。
一般的に、全期間固定金利型よりも当初の金利が低めに設定されており、借入当初の返済負担を軽減しやすくなっています。
固定金利期間選択型のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 固定金利期間選択型のメリット | 固定金利期間選択型のデメリット |
|---|---|
|
|
固定期間中は返済額が一定のため、ライフイベントが集中する時期でも支出を予測しやすくなります。また、固定期間終了時に、その時点での金利環境に応じて金利タイプを柔軟に選べるという自由度の高さも魅力の1つです。
ただし、固定期間が終了したあとに市場金利が上昇していれば、そのまま金利負担が増える可能性もあります。また、変動金利型に存在する「5年ルール」「125%ルール」が適用されない点にも注意が必要です。
向いている人
固定金利期間選択型は、次のような方に適しています。
- 一定期間は返済額を安定させたい人
- 一定期間後は収入が安定する見込みがある人
一定期間中は金利が固定されているため、出産や教育費の増加など将来的な支出を見越して、今は返済額を抑えたいという方に向いています。
特に、子育て初期や転職直後など、家計や収入の見通しが不透明な時期に活用すると効果的です。
また、固定期間終了後に昇給や退職金などで収入が増える見込みがある場合は、将来的な返済負担にも柔軟に対応しやすくなります。金利動向を意識して判断できる方であれば、固定金利期間選択型は有効な選択肢の1つとなるでしょう。
ミックス金利型の特徴やメリット・デメリット
ミックス金利型とは、住宅ローンの借入額を別々の金利タイプに分けて組む方式です。
たとえば借入総額が3,000万円の場合、2,000万円を全期間固定金利型、残りの1,000万円を変動金利型にするなど、異なる金利を組み合わせることが可能です。
また、金融機関によっては固定金利部分の返済期間を35年、変動金利部分を20年といった異なる返済期間に調整することもできます。
ミックス金利型のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| ミックス金利型のメリット | ミックス金利型のデメリット |
|---|---|
|
|
ミックス金利型のメリットは、金利上昇リスクを一部固定金利でカバーしつつ、変動金利の低金利メリットも活かせる点です。将来の支出や収入の見通しに応じて、返済プランを細かく作成できるのも強みといえます。
一方で、契約が複数に分かれるため、登記費用や手数料といった諸経費が増加する点には注意が必要です。また、それぞれの金利タイプの特徴が中和されるので、固定金利の安定性や変動金利の低さといった効果を最大限活かしにくくなる点もデメリットといえるでしょう。
向いている人
変動金利と固定金利を組み合わせるミックスローンは、以下のような方に向いています。
- 返済期間中、金利に振り回されたくない人
- 将来の支出計画や収入の変化を踏まえて柔軟に対応したい人
たとえば、金利が上昇した場合でも、手元資金を活用して変動金利部分を繰り上げ返済で対応できる方であれば、市場の金利変動に振り回されることなく返済を続けられます。
また、子育てや教育費など将来的に発生する大きな支出を見据えて、返済プランを柔軟に調整したいと考えている方にとっても、ミックスローンは有効な選択肢です。
住宅ローンの金利タイプはどう選ぶ?

住宅ローンを組むうえで、金利タイプの選択は返済計画全体に直結する重要なポイントです。「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」では、変動金利型を選ぶ人の割合が84.3%に上り、多くの方が金利の低さを重視していることがわかります。
しかし、変動金利は常に金利上昇のリスクを伴うため、低金利というメリットだけで判断するのは危険です。
金利タイプを決める際には、将来的な金利の変動にどれだけ対応できるかを事前に見極めることが求められます。
自身のライフプランを見直し、今後の収支の変化、貯蓄状況、繰り上げ返済が可能かどうかなどを総合的に見て判断していきましょう。
もし、リスク分散をしたい場合は、ミックス金利型を検討するのも1つの方法です。固定金利と変動金利を組み合わせることで、返済負担の軽減と金利上昇リスクの両面に備えることができます。
まとめ
2024年3月時点で0.3~0.4%だった変動金利は、2025年6月には上位行で0.640%前後まで上昇しています。一方の10年固定金利も2024年10月以降に上昇基調に転じ、現在は1.3~2.0%台で推移している状況です。加えて、全期間固定金利型も実質1.7%超の水準が一般的となっています。
このように、変動型・固定型のいずれも金利は上昇傾向にあり、今後も景気動向や物価上昇を背景に、ある程度の上下動を含みつつも上昇傾向が続く可能性があります。
そのため、金利タイプを選ぶ際は、それぞれの特徴を理解することが欠かせません。安定を重視するなら固定型、返済額を抑えたいなら変動型、柔軟性を求めるならミックス型を選択するとよいでしょう。
住宅ローンは長期間にわたる契約です。今後の収入や支出の見通しを踏まえ、将来にわたって無理のない返済計画を立てることが大事です。
この記事のポイント
- 住宅ローンの金利は上がる?
2025年7月時点では、日銀はトランプ政権による関税政策の影響や国内外の景気動向を慎重に見極めるため、政策金利を据え置く姿勢を取っています。
今のところ、新たな追加利上げは見送られているものの、声明のなかでは今後の物価上昇率(インフレ)や景気の回復具合に応じて、段階的な利上げを検討していく方針が示されています。
詳しくは「住宅ローン金利の推移と動向」をご覧ください。
- 住宅ローンの変動金利型とは?
変動金利型とは、景気や金融政策などに応じて金利が変動するタイプのローンです。
当初の金利が固定金利よりも低く設定されており、一般的に半年ごとに金利が見直される仕組みです。
詳しくは「住宅ローンの金利タイプとは?種類別の特徴を解説」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
住宅ローンの返済は長期間にわたるため、金利タイプの選び方ひとつで家計への負担は大きく変わります。そのため「金利が低いから」といった理由だけで安易に決めてしまうのは避けたいところです。将来の収入や支出を正確に予測するのは簡単ではありません。もし迷ったときは、銀行など利害関係のある窓口に任せきりにせず、FP(ファイナンシャルプランナー)など第三者の専門家を活用するのも有効です。中立的な視点から、家計に合った選択肢を提示してくれるでしょう。

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