【原状回復】国土交通省ガイドラインに基づく「経年劣化」と「入居者負担」の区分解説
ざっくり要約!
- 経年劣化は原則オーナー負担だが、入居者の故意・過失による汚損は請求可能
- 入居時の写真記録や、具体的金額を明記した「特約」がトラブル回避に有効
「退去時のリフォーム費用、またオーナー負担…?」賃貸経営をする中で、こうした悩みを抱えるオーナーの方は多いのではないでしょうか。
賃貸経営における原状回復ルールにはあいまいな部分も多いものです。オーナーにとって、原状回復による費用の持ち出しは、キャッシュフローを圧迫する悩みの一つとも言えます。
国土交通省が示す「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年劣化に伴う修繕費用は貸主負担とするのが原則です。しかし、正しい知識があれば入居者に正当な請求ができるケースもあります。
この記事では、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインに基づく負担区分の線引きから、減価償却後でも施工費を回収するための実務知識、有効な特約までを徹底解説します。
目次
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の基本原則
賃貸経営において、退去時の敷金精算はトラブルになりやすいタイミングの一つです。まずは、判断の基準となる国土交通省のガイドラインが、どのような考え方に基づいているのかを正しく理解することから始めましょう。
ガイドライン策定の背景
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸借契約の退去時における原状回復の定義を明確にし、敷金返還をめぐるトラブルを未然に防ぐために策定されました。
かつては原状回復という言葉が「部屋を入居時の新品の状態に戻すこと」と拡大解釈されがちでした。その結果、本来はオーナーが負担すべき経年劣化や自然損耗の修繕費用まで入居者に請求するケースが横行し、トラブルが急増したという経緯があります。
トラブルになった事例とは、例えば「日照で畳が変色した」「家具を置いた跡がカーペットに残った」といった、普通に暮らしていても避けられない変化まで入居者に請求してしまうものです。
こうした背景から、2026年時点では「経年劣化・通常損耗はオーナー負担」というルールがスタンダードとなり、裁判等の判決もこのガイドラインを基準に出されるようになっています。
貸主負担となる範囲
原則として、経年劣化(時間の経過による自然な傷み)と通常損耗(普通に使っていてできる汚れや傷)に関する修繕は、貸主(オーナー)が費用を負担します。
オーナーが受け取っている毎月の家賃には、あらかじめ建物や設備の減価償却費(損耗に対する費用)が含まれていると考えられているからです。つまり、入居者は家賃という形で、すでに修繕費の一部を毎月支払っているという解釈になります。
貸主負担になる修繕とは、具体的には以下のようなものです。
- 日照による畳やクロスの変色(日焼け)
- 家具の設置によるカーペットの凹み
- テレビや冷蔵庫の後ろの壁紙の電気焼け(黒ずみ)
- 耐用年数超過による給湯器やエアコンの故障
「入居者が使っているのだから、入居者が直すべきでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、上記のような、普通に住んでいれば防ぎようがないものについては、次の入居者を迎えるための経費(グレードアップ費用)として、オーナーが費用負担する必要があります。
借主負担となる範囲
一方で、借主(入居者)が費用負担するのは、故意・過失による汚損や、善管注意義務違反(入居者が本来するべき注意を怠ったこと)による損耗です。
このようにされている理由は、通常の部屋の使用範囲を超えたダメージであり、家賃に含まれる通常損耗の範囲外だからです。入居者の不注意や使い方の悪さによって発生した損害については、原状回復(修繕)にかかる費用を請求する正当な権利がオーナーにはあります。
具体的には、以下のようなものを原因とする修繕が該当します。
- タバコのヤニ汚れや臭い(喫煙によるもの)
- 飲み物をこぼして放置したことによる床のシミ・カビ
- 引越し作業や模様替えで家具をぶつけてできた壁の穴・傷
- 日常の清掃を怠ったことによる風呂場の頑固な水垢やカビ
ガイドラインは決して入居者のみを守るためのルールではありません。入居者に明らかな過失がある場合は、遠慮なく適正な費用を請求することが、健全な賃貸経営には不可欠です。
法的効力はない
国土交通省が示すガイドライン自体に法律としての強制力はありません。あくまで国が示した一般的な基準(目安)という位置づけがされているからです。
日本の民法には「契約自由の原則」があり、双方が合意した内容(契約書)が、基本的に優先されます。このため、ガイドラインと異なる内容であっても、条件を満たした特約を結んでいれば、そちらを有効とすることができます。
最も一般的なのは「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担とする」という特約です。ガイドラインの記載に従うのであれば、クリーニング費用は原則オーナー負担です。しかし、契約書に明記して合意を得ていれば、入居者に負担してもらえます。
ただし、法的効力がないからといってガイドラインを無視して良いわけではありません。訴訟になった場合、裁判所はこのガイドラインを判断基準として採用する可能性が非常に強いからです。
したがって、ガイドラインを理解した上で、有効な特約によって自衛するという戦略が、オーナーには求められます。
・「家賃滞納者への対処法」に関する記事はこちら
家賃滞納する入居者は強制退去させられる? 発生した場合の適切な対処法とは
「経過年数(減価償却)」と入居者負担割合の考え方
原状回復の費用負担を区分する時に、多くのオーナーが頭を悩ますのが「経過年数」というルールです。原状回復費用を請求する際に「なぜ全額請求できないのか?」と思われる方も多いでしょう。
しかし、ガイドラインでは「建物や設備の価値は、時間が経つにつれて減少する」という減価償却の考え方が採用されています。ここでは、費用請求の際に必ず押さえておくべき計算の仕組みについて解説します。
壁紙(クロス)などは6年で残存価値が1円になる
壁紙(クロス)やクッションフロア、カーペットなどの内装材は、新品の状態から6年経過するとその価値(残存価値)が1円になるとされています。
6年以上住んだ入居者が退去する場合は、例え入居者の過失でクロスが汚れていても、材料費の大半は請求できません。壁紙などは消耗品としての性格が強く、税法上の耐用年数に基づき「6年で価値を使い切る」とみなされるためです。
入居者が負担すべきなのは、あくまで退去時に残っているはずの価値(残存価値)に対する損害分だけです。6年経過して価値がなくなっているものに対しては、弁償すべき価値自体が存在しないというロジックになります。
例えば、新築時に入居し、3年暮らして退去した入居者がクロスを破ってしまったとします。この場合、クロスの価値は入居時の半分です。
そのため、張り替え費用が全体で10万円かかったとしても、入居者に請求できるのはその50%にあたる5万円までです。残りの5万円は、自然な経年劣化分としてオーナー負担となります。
「実際に部屋を使ったのは入居者なのに」と感じられるかもしれませんが、ガイドライン上では「長く住んでもらうほど、退去時の入居者負担額は減っていく」という仕組みになっています。
経過年数を考慮しないもの(フローリング・クリーニング等)
一方で、室内の全ての設備が、年数とともに価値が減るわけではありません。フローリングや畳の表替え・ハウスクリーニング費用などは、原則として経過年数を考慮せずに請求できるケースが多くなっています。
これらは減価償却の考え方がなじまない、あるいは建物本体と同じ長期の耐用年数を持つ部材だからです。
消耗品のように全体を交換して価値をリセットするものではなく、汚損した部分のみを補修するものや、作業そのものへの対価(クリーニング)については、入居年数に関わらず実費を請求できるのが基本です。
例えば、フローリングは建物本体の一部とみなされるため、部分的な補修であれば経過年数は考慮されません(入居者の過失でついた傷の補修費は、入居年数が長くても請求可能です)。
畳・襖紙・障子などは消耗品ですが、減価償却資産として扱わず、張り替え等の補修費用は経過年数を考慮しないとされています。
原状回復の見積りを作成する際は、対象となる箇所が減価償却(6年ルール)の対象なのか、それとも経過年数を考慮しない項目なのかを見極めることが、正当な回収額を確保するためのポイントです。
・「減価償却」に関する記事はこちら
不動産投資の減価償却とは?仕組み・計算方法・節税メリットを徹底解説
【部位別】貸主・借主の負担割合
ここでは、トラブルの発生頻度が高い主要な部位ごとに、ガイドライン上の負担区分を明確にしていきます。
「これは生活傷なのか、それとも過失なのか?」と迷ったときは、この基準に照らし合わせて判断してみてください。
床(フローリング・カーペット・畳)
床に関しては「重い家具を置いたことによる凹み」は貸主(オーナー)負担です。一方で飲みこぼしや雨の吹き込みによるシミ・カビは、借主(入居者)負担となります。
家具を置いて生活することは、居住用物件として貸し出している以上、必然的な行為だからです。一方で、液体をこぼしたり、雨が吹き込んだりした際に、すぐに拭き取るなどの処置を怠って放置し、床材が傷んだ場合は善管注意義務違反となり、入居者の責任が問われます。
特に要注意なのはキャスター傷やペット汚れです。これらは通常の使用範囲を超えていると判断されることも多く、フローリングの張り替え費用等を請求できる可能性が高い項目です。
壁・天井・クロス
壁や天井は、画鋲などの小さな穴や電化製品裏の黒ずみまでは、貸主負担となります。一方で喫煙によるヤニ汚れや釘・ネジなどの大きな穴は借主負担です。
ポスターやカレンダーを画鋲で貼る程度は、一般的な生活の一環と認められています。また、冷蔵庫裏の黒ずみ(電気焼け)も静電気による自然現象のため、入居者には防げません。
しかし、喫煙によるヤニや臭いは、入居者が吸わない努力をすれば防げるものであり、クロス全体をダメにする行為であるため、入居者負担が基本となります。
なお、日焼けによる変色やクロスの剥がれ(自然な経年によるもの)なども貸主負担となります。そのほか、ペットがひっかいた傷や子供の落書きなどは借主負担です。
建具
建具類は、自然な摩耗や変色は貸主負担ですが、不注意で破った・壊した場合は借主負担です。特に襖(ふすま)や障子などの消耗品は、退去時に張替え費用が発生しやすい箇所となっています。
建物の構造部分は時間が経てば歪みが出たり、木部が変色したりします。これはオーナーが負うべきリスクです。しかし、物理的な力が加わってできた破損(穴や折れ)は、入居者の過失とみなされます。
そのほか、次の入居者のための網戸の張り替え(破損がない場合)、構造の歪みによる開閉不良、ガラスの熱割れ(自然現象)なども貸主負担です。
設備・その他・鍵
設備機器は、寿命による故障は貸主負担で修理・交換が必要ですが、清掃不足による不具合や鍵の紛失は借主負担となります。
エアコンや給湯器などは、賃貸借契約に基づいてオーナーが入居者へ提供している設備であり、寿命が来ればオーナーの責任で交換する必要があります。一方で、入居者はそれらを適切に管理する義務を負います。
メンテナンス不足(フィルター掃除をしない等)により故障した場合は、入居者が責任を負わなければなりません。
なお、鍵の交換費用については「原則はオーナー負担」とガイドラインにあります。しかし、実務上は特約で入居者負担としているケースが大多数です。契約書の内容が優先される代表的な項目ですので、必ず契約条項を確認しましょう。
減価償却後でも請求できる?オーナーが知っておくべき実務知識
「入居者が6年住んだらクロスの価値はほとんどないから、退去時に傷んでいても請求できないのか」と諦めてしまってはいないでしょうか?
実は、減価償却のルールは絶対的なものではなく、実務上では状況に応じて費用を請求できるロジックが存在します。
残存価値1円でも「施工費用(手間賃)」は請求可能なケース
減価償却(経年劣化)というのは、あくまで物(材料)の価値が時間とともに減るという考え方です。しかし、工事を行う職人さんの労働対価(技術料)は、時間の経過によって価値が減るものではありません。
入居者の過失によって張り替え工事が必要になったのであれば、本来なら発生しなかったはずの工事費用(損害)として、手間賃相当分を請求するという主張は実務上十分に成り立ちます。
管理会社に見積りを依頼する際は、材工一式(材料費と工事費をまとめた価格)ではなく、材料費と施工費を分けた見積りを出してもらうようにしましょう。
善管注意義務違反があれば負担を求められる
入居者に善管注意義務違反(管理者として当然払うべき注意を怠ったこと)があった場合は、表面のクロスなどが減価償却されていても、その奥にある下地や構造部の修繕費用まで請求できるケースがあります。
クロスやクッションフロアは6年でほとんどの価値がなくなりますが、その下にある石膏ボードや床の下地材は、建物本体と同じく数十年の耐用年数を持っています。
入居者の過失(放置や不適切な使用)によってダメージが下地まで到達している場合は、その復旧費用には「6年ルール」は適用されません。残存価値に基づいた請求が可能です。
退去立会いの際は、表面の汚れだけでなく、壁を押してブヨブヨしていないか(ボードの腐食)、床に深いシミや浮きがないかを入念にチェックしてください。もし下地へのダメージが見つかれば、原状回復費用として請求しても問題ありません。
トラブルを防ぐための入退去時の対応

原状回復トラブルが起こる最大の原因は、実は「入居時の状態がどうだったか」という記録(証拠)が残っていないことにあります。
「最初から傷があった」「いや、新品だったはずだ」という水掛け論になってしまうと、立証責任のあるオーナー側が不利になりがちです。ここでは、無用な争いを避け、スムーズな解約精算を行う上で必須となる入退去時の手順をご紹介します。
入居時に写真撮影をしておく
トラブルを回避するための最良の対策は、入居直前(リフォーム完了後)の室内状況を日付入りの写真で詳細に残しておくことです。
退去時に傷や汚れが見つかった際、入居者から「入居した時からこの傷はあった」と主張されるケースが多々あります。このとき、入居前の証拠写真があれば、「入居時はきれいな状態でしたので、これは入居期間中についたものですね」と客観的な事実に基づいて反論できるでしょう。
なお、写真を撮影する際には以下のポイントに要注意です。「写真は撮りすぎに感じるくらいでちょうどいい」と考えてください。
- 部屋全体の様子だけでなく、床の四隅やクロスの継ぎ目などを接写する。
- すでに小さな傷がある場合は、その箇所をメジャーを当てて撮影しておく。
- 撮影したデータは、管理会社と共有するか、クラウド等に保存して「撮影日時のメタデータ」を保持しておく。
認識のズレを解消しておく
トラブル対策の2つ目は、入居契約時、または鍵を渡すタイミングで現況確認書(入居時チェックリスト)を入居者に記入・提出してもらうことです。
これでオーナーと入居者とのお互いの認識をすり合わせできます。また、入居時に申告しなかった傷は、入居期間中に発生したものとみなすというルールを共有することで、入居者に「きれいに使おう」という意識を持たせる効果も期待できるでしょう。
退去時に揉める原因の多くは説明不足や思い込みです。入居の段階で、ルールと現状についての合意形成をしっかり行っておくことが、将来の安心につながります。
退去立会い時のチェックポイント
退去の立会いは、可能な限りオーナー様ご自身で行うか、信頼できる管理担当者に任せることをおすすめします。なお、荷物が搬出された後の何もない状態で厳しくチェックを行ってください。
一度精算を完了して鍵の返却を受けてしまうと、後から隠れていた傷を見つけても追加請求することは極めて困難です。その場で見落としをなくし、入居者の目の前で事実確認することが肝要です。
なお、以下のポイントは特に注意してみておくことをおすすめします。
家具・家電の裏側
冷蔵庫や洗濯機置き場の下に、水漏れによる腐食やカビがないか。
臭いの確認
換気扇を回してみて、タバコやペットの臭いが染み付いていないかを確認する。
明るい時間帯に見る
夕方や照明のない状態では床の傷やクロスの薄汚れを見落としやすいため、念のため懐中電灯を持参するか、極力日中に立会いを実施する。
立会いの場は、気まずさから遠慮してしまいがちですが、ここで妥協するとオーナーの負担が増えてしまいます。気になる箇所はその場で指摘し、入居者に確認してもらった上で記録に残す姿勢が大切です。
トラブル回避のために有効な「特約」の例
国土交通省のガイドラインは重視されることの多い一つの基準ですが、あくまで一般的なルールに過ぎません。
一方で、民法には契約自由の原則があります。このため、ガイドラインと異なる内容でも、部屋の貸主と借主の双方が納得して合意した特約があれば、その内容が優先されるケースは少なくありません。
ここからは、貸主のリスクを最小限に抑えるために、契約書に盛り込んでおくべき特約をご紹介します。
原状回復費
最も重要かつ一般的なのは、退去時のハウスクリーニング費用を借主負担とする特約です。この特約を入れ忘れると、クリーニング代は原則オーナー負担となってしまいます。
ガイドライン上では、次の入居者のためのクリーニングは「グレードアップ費用」とみなされており、貸主負担とするのが原則です。しかし、これがオーナーの賃貸経営を圧迫する大きな要因でもあります。
そこで、契約時に「退去時に要するクリーニング費用は借主の負担とする」と明記しておき、入居者の合意を得ることで、この費用を正当に借主へ請求できるようになります。
なお、効果的なのは、単に「負担する」と書くのではなく、「退去時クリーニング費用として金~万~千円(税別)を負担する」と具体的な金額まで明記することです。
金額が明確であれば、「クリーニング費用が高すぎる」という退去時のトラブルを未然に防止できるうえに、裁判でも有効性が認められやすくなります。
室内の喫煙
物件の資産価値を守るためには「室内および敷地内での喫煙を禁止する」という特約も非常に有効です。
タバコのヤニ汚れや臭いは、一度染み付くとクロスだけでなくエアコン内部や建具にまで及び、完全な原状回復が困難になります。
ガイドラインでもヤニ汚れは借主負担とされていますが、特約で禁煙を明文化しておくことで、違反時のペナルティ(クロス全面張り替え費用の請求など)を正当化しやすくなります。
なお、近年は嫌煙傾向が強まっており、禁煙物件であることが逆に入居者募集の強みになることもあります。リスク回避と差別化の一石二鳥を狙いましょう。
契約者以外の宿泊・同居
契約者以外の人物、特に「半同棲」状態による無断同居を防ぐための特約も、物件の汚損スピードを抑えるために重要です。
単身者用物件に二人が住めば、設備の劣化や床の傷みなどがより速く進む可能性もあるでしょう。また、近隣住戸との騒音トラブルの原因にもなりかねません。
法的に宿泊そのものを完全に禁止するのはプライバシーの観点から難しい場合がありますが、実質的な同居を制限することは可能です。
更新・再契約に関する特約
長期間の入居によるゴミ屋敷化や設備の深刻な不具合を防ぐために、契約の更新時に室内確認を行える特約を盛り込むのもおすすめです。
一度入居者が入ると、退去するまで数年間、オーナーは室内の状態を確認できないのが一般的です。しかし、その間に水漏れが放置されていたり、清掃不足でカビだらけになっていたりすると、退去時には手遅れになっていることもあります。
手遅れになってしまうことを防ぐためには、契約更新のタイミングで介入できる権利を確保しておく必要があります。
「契約更新時、貸主または管理会社が必要と認めた場合、室内の使用状況の点検を行うことができる。借主は正当な理由なくこれを拒めない」という条項を賃貸借契約に入れておきます。
実際に点検するかどうかは別として、この一文があるだけで、入居者に「見られるかもしれないから綺麗に使おう」という心理的抑制力が働くでしょう。原状回復対策は、退去時だけでなく、入居中から始まっています。ブラックボックス化を防ぐ仕組みを契約書で作っておきましょう。
強行法規に違反する規定は認められない
最後に注意点ですが、特約があれば何でも認められるわけではありません。消費者契約法などの強行法規に違反する、入居者に一方的に不利な特約は無効となります。
入居者は「消費者」として法律で守られています。そのため、常識を逸脱した暴利的な内容は、例え契約書にハンコを押していても、裁判になれば無効と判断されるため要注意です。
欲張って過剰な請求をしようとすると、特約自体が無効になり、本来請求できたはずのクリーニング代さえ取れなくなるリスクがあります。ガイドラインを理解した上で、常識的な範囲で自衛するのが、賢いオーナーの戦略です。
・「不動産投資 リスク」に関する記事はこちら
不動産投資の6大リスク一覧!未然に防ぐ方法とは?
まとめ
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は賃貸経営の基本ルールです。しかし、原則を知るだけではオーナーとして収益を守りきれません。
経年劣化や減価償却といったオーナー負担の仕組みを正しく理解しつつ、施工費用の請求ロジックや善管注意義務違反の線引きといった、実務知識を併せ持つことが重要です。
また、入居時の詳細な記録(写真・確認書)や、クリーニング費用等を明記した「特約」の活用は、トラブルを未然に防ぐ強力な対策となります。
原状回復は「言った言わない」の水掛け論になりがちですが、論理的な準備さえあれば適正な負担区分を引き出せます。

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ワンポイントアドバイス
原状回復の実務では、管理会社がトラブル回避を優先し、本来請求できる項目まで「ガイドラインだから」とオーナー負担にしたがる傾向があります。しかし、最終的な決裁権者はオーナー自身です。「ここは過失ではないか」「施工費だけでも請求できないか」と根拠を持って指示を出すだけで、精算結果は大きく変わります。全てを任せきりにせず、知識を武器に管理会社と連携することが、賃貸経営の利益最大化には不可欠です。
この記事のポイント
Q.「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の基本原則とは?
A. 賃貸経営において、退去時の敷金精算はトラブルになりやすいタイミングの一つです。まずは、判断の基準となる国土交通省のガイドラインが、どのような考え方に基づいているのかを正しく理解することから始めましょう。詳しくは「国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の基本原則」をご覧ください。
Q. 貸主・借主の負担割合はどうなりますか?
A. 床やクロスなど、トラブルの発生頻度が高い主要な部位ごとに、ガイドライン上の負担区分を明確にしていきましょう。「これは生活傷なのか、それとも過失なのか?」と迷ったときは、基準に照らし合わせて判断してみてください。詳しくは「【部位別】貸主・借主の負担割合」をご覧ください。
Q. トラブルを防ぐためにはどうしたら良いですか?
A. 原状回復トラブルが起こる最大の原因は、実は「入居時の状態がどうだったか」という記録(証拠)が残っていないことにあります。詳しくは「トラブルを防ぐための入退去時の対応」をご覧ください。