修繕積立金と管理費から読み解くマンション投資のリスクとチャンス
ざっくり要約!
- 管理費・修繕積立金を差し引いた「実質利回り」を見るのが重要
- 極端に安い修繕積立金は「一時金徴収のリスク」を持っている
マンション投資の物件選びで、「利回りは魅力的だけど、管理費と修繕積立金が高すぎるのでは?」と手を止めた経験はありませんか?
一方で、「毎月のコストが安い物件の方が良い」とも言い切れないのが、昨今の難しいところです。建物の建築費が高騰する中では、安すぎる積立金は、将来の「巨額な一時金徴収」や「売却時の価格下落」というリスクになりかねません。
この記事では、表面利回りだけでは見えない「本当の収支」の読み解き方や、インフレ時代に即した「適正価格の目安」について解説します。
目次
なぜ「管理費・修繕積立金」が投資判断に重要なのか
不動産投資の世界では、物件価格や家賃収入(表面利回り)には注目しても、毎月のランニングコストである「管理費・修繕積立金」のチェックは甘くなりがちです。
しかし、管理費・修繕積立金は単なる「必要経費」ではありません。投資の手元資金(キャッシュフロー)を左右するだけでなく、将来その物件をいくらで売れるかという「出口戦略」にも直結する極めて重要な要素です。
「表面利回り」だけでは見えないリスク
まずお伝えしたいのは、広告に掲載されている「表面利回り」だけを見て物件購入するのは危険であるということです。
表面利回りには、管理費や修繕積立金といったランニングコストが含まれていません。たとえ表面利回りが高くても、毎月の管理費等が高額であれば、必要経費を差し引いた後の手残り(実質利回り・NOI)は少ないか、あるいは赤字になってしまうケースも多いものです。
不動産会社の営業担当から「管理費は経費計上できるので節税になります」と言われることがあるかもしれません。確かに税金計算上の経費にはなりますが、それはあくまで「現金が出ていった結果」に過ぎません。
実際の支出を伴うコストは、投資の利益を確実に圧迫します。だからこそ、物件選びの際は表面上の数字に惑わされず、「家賃から管理費・修繕積立金を引いた後にいくら残るのか」を必ずシミュレーションする必要があります。
・「利回り」に関する記事はこちら
不動産投資の理想的な利回りは?計算方法と物件選びのポイントを紹介
資産価値にも大きく影響する
管理費や修繕積立金の金額は、あなたが物件を手放す時の「売却価格」にも大きな影響を与えます。なぜなら、次にその物件を買う投資家もまた、収益性(実質利回り)をシビアに見ているからです。
もし、あなたが物件を所有している間に管理費や修繕積立金が大幅に値上がりした場合、次の買い手は「ランニングコストが高いから、その分、物件価格を安くしてもらわないと採算が合わない」と判断します。
毎月の負担増だけでなく、将来的な「資産価値の目減り(キャピタルロス)」を避けるためにも、将来の値上げリスクまで見越した判断が欠かせません。
管理費・修繕積立金は「物件の未来」を映す鏡
一般的にランニングコストは安いほうが良いものですが、マンション管理においては「安ければ良い」とは限りません。相場よりも修繕積立金が極端に安い状態は「将来必要な修繕費が貯まっていない」ことを意味するからです。
資金不足で必要なメンテナンスができないマンションは、外壁が剥がれ、配管から水漏れし、次第に「スラム化」していきます。そうなれば入居者は離れ、新たな入居者も決まらず、空室だらけの「負動産」になりかねません。
反対に、修繕積立金と管理費がある程度確保されていれば、適切な管理・修繕が行われるため、その物件の資産価値は長く維持されるでしょう。
管理費とは?その水準が示す管理体制の質
投資物件の販売図面(マイソク)を見ると、「管理費」と「修繕積立金」が並んで記載されていますが、この2つの性質は全く異なります。
修繕積立金が「将来のための貯金」であるのに対し、管理費は「現在の快適さを買うための費用」です。管理費の金額とその使われ方を見ることで、そのマンションが今、どのような管理体制にあるのか判断可能です。
管理費の使われ方(日常管理と資産維持)
毎月支払う管理費は「入居者が日々快適に暮らすためのサービス料」として消費されています。具体的には、エントランスや廊下の清掃費、共用部分の水道光熱費、エレベーターの保守点検費、そして管理会社への業務委託費などが含まれます。
もし管理費が極端に削減されると、清掃や保守点検などが滞ることになるでしょう。結果的にゴミ置き場は荒れ放題になり、共用廊下の電灯は切れたまま、郵便受け周辺にはチラシが散乱、などという事態になりかねません。
このような「荒れた状態」は、内見に来た入居希望者に強烈なマイナスの印象を与え、結果として客付けの苦戦や家賃下落に直結します。管理費は単なるコストではなく、入居者満足度を高め、空室を防ぐための「必要経費」であることを理解しておきましょう。
「高い管理費」は悪か?コストと質のバランス
物件探しをしていると、相場より管理費が高い物件が見つかることもあります。「利回りが下がるから損だ」と即座に候補から外してしまう方も多いものです。しかし、必ずしも「管理費が高い=悪」とは限りません。
重要なポイントは、支払うコストに対して、見合ったサービス(対価)が得られているかどうかというバランスです。
たとえ管理費が高くても、24時間ゴミ出しが可能だったりセキュリティが強固だったり、常に清掃が行き届いていたりすれば、それは物件の強みになります。高い管理品質は、周辺相場より高い家賃設定を可能にする上に、結果として高い入居率につながります。
一方で、管理費が高いにもかかわらず、清掃が行き届いていない物件もあるものです。これは、マンション管理会社への委託料が割高になっているだけである可能性も高いです。
管理費等については金額の多寡だけで判断せず、現地や写真で「管理の質」を確認し、納得できる金額かどうかを見極める視点が大切です。
自主管理物件の隠れたリスク
管理費が非常に安い、あるいは「0円」と記載されている物件を見かけることもあります。その多くは「自主管理」と呼ばれる管理方式を取っている物件です。
マンションの共用部等の管理を管理会社に委託せず、オーナー自身(または管理組合)で管理を行っているケースです。管理費が安くなるなら自主管理で十分と思う人もいるかもしれません。しかし、自主管理物件は「見えないリスク」の塊である可能性が高いものです。
プロの管理会社が入っていないため、トラブル対応が遅れたり、建物の維持管理がおざなりになったりするケースが少なくありません。
また、投資家として特に怖いのが「出口戦略」への影響です。自主管理の場合、管理規約や修繕履歴などの書類が整備されていないことが多く、銀行の融資評価が出にくい(=次の買い手がローンを組みにくい)ため、売却時に苦労することがあります。
目先の管理費の安さに惹かれて自主管理の物件を購入した結果、多大な労力と売却難というリスクを背負い込むことになりかねません。手堅く投資をしたい方にとっては特に、管理費を払ってでもプロに委託している物件のほうが安全と言えるでしょう。
修繕積立金とは?長期修繕計画との関係
管理費が「今の快適さ」を買う費用なら、修繕積立金は「将来の安心」を買うための貯金であると言えます。12〜15年周期で行われる大規模修繕工事(外壁塗装や屋上防水など)や、不測の事故に備えて、所有者全員で毎月少しずつお金を積み立てていくのが修繕積立金です。
修繕積立金はどんぶり勘定で決まっているわけではありません。通常、20年〜30年先を見据えた「長期修繕計画書」に基づき、「いつ、どんな工事に、いくらかかるか」を逆算して設定されています。
段階増額積立方式の仕組みと「値上げ」の必然性
これからマンション投資を始める方にまず知っておいていただきたいのは、「修繕積立金は将来的に値上がりすることを前提として金額設定されている」という事実です。
日本の多くの分譲マンションでは「段階増額積立方式」が採用されています。これは、新築分譲時の購入ハードルを下げるために当初の積立金を低く設定し、5年、10年といった節目ごとに段階的に値上げをしていく仕組みです。
「物件購入時の修繕積立金は月5,000円だったのに、10年後には月15,000円になっていた」というケースは決して珍しくありません。
修繕積立金の値上げは建物を守るために必要な措置であり、大半のマンションで行われていることです。重要なのは、「値上げがある」という前提で長期修繕計画書を確認し、「いついくらまで上がる予定なのか」を把握することです。
インフレと建築費高騰が招く「計画破綻」リスク
2025年時点で警戒しなければならないのが、「インフレ」と「建築費の高騰」による長期修繕計画のズレです。例え長期修繕計画の通りに積立が行われていたとしても、その計画が数年前に作られたものであれば、見直しを要する内容になっているかもしれません。
例えばエレベーターや給排水管など、マンション共用部の維持修繕工事に必要な費用を見越したうえで長期修繕計画は作成されます。しかし、2025年時点では、世界的な原材料費の高騰や建設業界の人手不足により、工事費は数年前に比べて著しく上昇しているのが実態です。
結果として、大規模修繕工事を行う際に費用の不足が発生し、数十万円単位の「一時金」を各オーナーから徴収せざるを得ないということも起こり得るでしょう。そのほか、修繕積立金を突然2倍、3倍に値上げするというケースもあるかもしれません。
「この長期修繕計画は最近の建築費高騰を反映しているか?」「積立額の単価は安すぎないか?」という、よりシビアな視点を持つことが、予期せぬ出費から身を守る鍵となります。
管理費・修繕積立金から見る「健全な物件」

管理費と修繕積立金の重要性について解説してきましたが、具体的にいくらぐらいであれば「適正」と言えるのでしょうか。もちろん、物件のグレードや設備によって適正金額は変わりますが、「相場」を知っておくことは危険な物件を避けるための必要知識と言えます。
管理費の相場
まず管理費ですが、これは「マンションのグレード」「総戸数」「住戸の広さ」「共用設備の充実度」などの要因によって異なります。一方で、国土交通省が公表している「令和5年度マンション総合調査」では、マンション規模別の戸当たり月額管理費は13,932円~22,131円とされています。平均額に差があるのは、マンションの総戸数によって管理費が大きく変わるからです。
一方で、平均と比較して管理費が高いか安いかだけを見るのは早計です。例えば、コンシェルジュが常駐していたり、ジムやラウンジがあったりする物件なら、平均額を上回ることもあります。しかし、設備そのものが資産価値を支えているとも言えるため問題ないでしょう。
注意したいのは「設備が貧弱なのに管理費が高い」ケースです。例えばエレベーターもなく、清掃も週1回程度なのに管理費が相場より高い場合は、マンション管理会社の委託料が不当に高いか、オーナーへの請求額がブラックボックス化している可能性があります。
管理費の金額そのものよりも、「サービスの対価として納得できるか」という視点でチェックしてみてください。
修繕積立金の相場
修繕積立金も管理費と同じく、マンションの総戸数やマンションのグレード(使われている建築資材の良し悪し)、共用設備の充実度によって金額が変わってきます。
なお、国土交通省が公表している「令和5年度マンション総合調査」では、令和5年度(2023年度)の戸当たり月額修繕積立金は13,054円とされています。
また、修繕積立金が「月額 2,000円〜3,000円(平米100円程度)」という物件が見つかることもありますが、こういった物件はワンルームであっても危険です。
「将来、大規模修繕ができなくなる」か「購入後に積立金が2〜3倍に跳ね上がる」、あるいは「数十万円の一時金を徴収される」可能性が極めて高いと考えておきましょう。
戸数と管理費・修繕積立金の関係
マンションの「規模(総戸数)」とコストの関係についても触れておきます。基本的には、戸数が多いほうが、一戸あたりの負担額は安くなる傾向にあります。「スケールメリット」が働くためです。
例えば、エレベーターや各戸に水を供給するためのポンプ、法定で設置しなければならない消防設備など、マンションの規模に関わらず必ず入っている設備は複数存在します。
設備を維持管理するためには保守点検費用がかかる一方で、こうした費用は20戸で割るよりも100戸で割るほうが、一戸あたりの負担は軽くなります。
特に、総戸数が20戸〜30戸未満の小規模マンションは、将来的に一戸あたりの修繕負担が重くなりやすいため、積立金の額が十分か、より慎重に確認する必要があります。
一方で、「大規模なら何でも安い」わけではありません。特に「タワーマンション」は例外です。タワーマンションは、足場を組むのが難しく特殊な工事が必要になるため、一般的なマンションよりも修繕コストが割高になる傾向があります。
パターン別判断シミュレーション
ここまで相場やリスクについて見てきましたが、実際の物件選びでは判断に迷う場面が必ず出てきます。ここでは、よくある3つのパターンを例に、どう判断すれば良いのかシミュレーションしてみましょう。
パターン1:利回りは高いが、修繕積立金が「月額2,000円」など激安
【判断】初心者の方は「見送り」を強くおすすめします。
「表面利回りが10%を超えている! でも修繕積立金が月2,000円しかない」このような物件は非常に魅力的ですが、大きなリスクを孕んでいます。
理由はシンプルで、その安さは「問題の先送り」である可能性が高いからです。月2,000円程度の積立では、将来の大規模修繕費用を賄うことはほぼ不可能です。
そのため、あなたが購入した数年後に「修繕積立金不足のため、各戸100万円の一時金を徴収します」という通知が来たり、積立金が突然5倍に跳ね上がったりするリスクがあります。
目先の利回りが良くても、後々の突発的な出費で利益が吹き飛んでしまっては意味がありません。
パターン2:管理費・修繕積立金は高いが、管理状態は抜群に良い
【判断】長期保有目的なら「検討の価値あり」です。
「毎月のコストが相場より高く、手残りは少ない。でも、物件はピカピカで管理が行き届いている」このケースは、実は「優良物件」である可能性があります。
コストが高いのは痛手ですが、それは「資産価値を守るための投資」がしっかり行われている証拠とも取れるからです。管理状態が良い物件は、入居者が決まりやすく、家賃も維持しやすいため、結果として空室リスクを低く抑えられます。
「毎月のキャッシュフローは控えめでも、長く安定して家賃収入を得たい」という長期保有目的であれば、十分に検討する余地があります。
ただし、将来売却する際は、次の買い手も「コストの高さ」を気にします。売却価格が少し安くなる可能性も考慮して、出口の計算をしておくとより安心です。
パターン3:長期修繕計画書が「5年以上」更新されていない
【判断】提示された数字を鵜呑みにせず、警戒が必要です。
「積立金額も相場通りで、計画書通りに進んでいるから安心」と思っても、もしその長期修繕計画書の作成日が5年以上前(例えば2020年以前)なら要注意です。
その長期修繕計画には「建築費高騰」や「インフレ」が反映されていない可能性もあります。計画書上は「資金は足りる」となっていても、現在の工事費で再計算すると「大幅な赤字」になっているケースは多いものです。
この場合、近い将来に計画の見直し(値上げ)が入ることはほぼ確実です。不動産会社を通じて「直近で計画の見直し予定はないか」を確認し、もし値上げがあっても収支が合うかどうか、厳しめにシミュレーションしてから判断することをおすすめします。
所有中もマンション管理に関心を持つことが大切
物件を購入すると「あとは管理会社にお任せ」と安心してしまう方が多いかもしれません。実際のところ、自分が住んでいないこともあり、投資家の多くはマンションの管理組合や総会に対して関心が薄くなりがちです。
しかし、オーナーになった後こそ、マンション管理への関心を持ち続けることが、投資を成功させるためには大切です。
収益と資産価値を左右するのは「管理」
毎月の管理費や修繕積立金は、あなたの手元に残る利益(キャッシュフロー)に直結する要素です。2025年時点では特に、物価上昇や人件費の高騰に伴い、管理組合の総会で「管理費・積立金の値上げ」が議題に上がるケースも増えています。
もしオーナーが無関心のまま、総会の案内も読まずに捨ててしまっていたらどうなるでしょうか。「知らない間にコストが上がり、収支が悪化していた」という事態になりかねません。
「安さ」ではなく「価値」を守る視点を
もちろん、値上げに対して「安ければいい」「値上げ反対」とただ主張すれば良いわけではありません。
必要なコストを削りすぎて清掃が雑になったり、必要な修繕が先送りになったりすれば、マンションの住み心地(居住性)は悪化します。それは入居者の退去を招き、空室が増え、結果として資産価値そのものを下げてしまうことにつながります。
大切なのは、「無駄な支出は抑えつつ、資産価値を維持・向上させるための投資は惜しまない」というバランス感覚です。
他人事ではなく「自分のビジネス」として捉えて総会の議案書に目を通し、時には意見を出すなど積極的に管理に関わっていく姿勢こそが、資産を守ることにつながります。
まとめ
「管理費」と「修繕積立金」は単なる「毎月の支払い」ではなく、マンションの資産価値を守り、将来の収益を確保するための「生命線」とも言える要素です。特にインフレが進み、建築コストが上昇している現在において、過去の相場観だけで「安いから良い」と判断するのは大きなリスクを伴います。
不動産投資の成功は、物件購入前の冷静な「目利き」と、購入後の「経営者としての意識」にかかっています。リスクを正しく把握し、根拠のある数字に基づいて判断を行うことが、投資成功のポイントです。

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ワンポイントアドバイス
物件購入前に、可能であれば仲介会社を通じて直近の「総会議事録」も見せてもらいましょう。議事録には「修繕費値上げへの反対意見」など、数字には表れないマンションのリアルな状況が記録されています。そのほか、総会資料には、管理費収支とその内訳や修繕積立金の積み立て状況なども記載されています。少し手間に感じるかもしれませんが、資料の確認は購入後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ、最も確実な防御策になります。
この記事のポイント
Q.投資判断に「管理費・修繕積立金」が重要なのはなぜですか?
A. 管理費・修繕積立金は単なる「必要経費」ではありません。投資の手元資金(キャッシュフロー)を左右するだけでなく、将来その物件をいくらで売れるかという「出口戦略」にも直結する極めて重要な要素です。詳しくは「なぜ「管理費・修繕積立金」が投資判断に重要なのか」をご覧ください。
Q. 管理費とはどのような性質の費用ですか?
A. 修繕積立金が「将来のための貯金」であるのに対し、管理費は「現在の快適さを買うための費用」です。詳しくは「管理費とは?その水準が示す管理体制の質」をご覧ください。
Q. 修繕積立金はなんのためにあるのですか?
A. 12〜15年周期で行われる大規模修繕工事(外壁塗装や屋上防水など)や、不測の事故に備えて、所有者全員で毎月少しずつお金を積み立てていくのが修繕積立金です。詳しくは「修繕積立金とは?長期修繕計画との関係」をご覧ください。