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2025.11.11

#リスク管理#不動産投資#賃貸経営

不動産投資と火災保険・地震保険の正しい付き合い方とは?リスクマネジメントのコツ

不動産投資と火災保険・地震保険の正しい付き合い方とは?リスクマネジメントのコツ

ざっくり要約!

  • 地震を原因とする火災や建物の倒壊は火災保険だけでは補償されない
  • 賃貸経営にまつわるリスクには不動産オーナー専用の特約で備える
  • 保険料はオーナーが主体的に最適化できる

不動産投資を進めるにあたり、融資実行の際に「火災保険のご準備を」と金融機関に言われ、勧められたプランで本当に良いのか、迷いや不安を感じていませんか?また、地震保険だけの契約はできないのか、疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。

不動産投資において、保険は単なるコストではありません。万が一の災害でローンだけが残るような最悪の事態を防ぎ、大切な資産と将来の家賃収入を守るための、重要な「経営ツール」です。

言われるがままに契約して「いざという時に補償が足りない」「もっと保険料を安くできたのに」と後悔しないために、本記事では保険の基本構造から、コスト最適化のポイントまでを解説します。

火災保険と地震保険の違いは?

不動産のリスク管理を考える上で、火災保険と地震保険は最も基本的な備えとなります。しかし、この二つの保険は似ているようで、その役割や補償範囲は全く異なります。

不動産経営における様々なリスクに正しく備えるためには、それぞれの保険が「何を補償し、何を補償しないのか」を明確に区別して理解することが大切です。

火災保険の補償対象

火災保険は「火災」だけでなく、台風などの自然災害や事故・犯罪による建物の被害など、保険対象の損害を非常に幅広くカバーする保険です。

不動産経営には火災以外にも、台風による屋根の破損や、給排水管のトラブルによる水濡れなど、予測不能な様々なリスクが常に存在します。

火災、落雷、破裂・爆発といった基本的な補償に加え、多くの保険では「風災・雹(ひょう)災・雪災」「水災」「水濡れ」「盗難」「不測かつ突発的な事故(破損・汚損)」なども補償対象です。

例えば、台風で飛んできた物が壁を傷つけた場合や、偶発的な事故で窓ガラスが割れてしまった場合なども、契約内容に応じて補償の対象となります。

火災保険で補償されない損害を地震保険でカバー

火災保険に関する最も重要な注意点として、地震・噴火または地震による津波を原因とする損害は、火災保険では補償されません。これらのリスクに備えるためには、必ず地震保険への加入が必要です。

例えば、地震の揺れによって建物が倒壊した場合や、地震が引き金となって発生した火災で物件が焼失した場合、地震保険に加入していないと保険金は1円も支払われません。

地震保険に加入していれば、被害の程度に応じて、保険金が支払われ、建物の再建やローン返済の資金を確保できます。

入居者が加入する火災保険との違い

入居者が火災保険に加入していれば、不動産オーナーが火災保険に加入する必要はないのではと思う人もいるかもしれません。しかし、不動産オーナー(大家)が加入する保険と、入居者が加入する保険では、守るべき対象と目的が全く異なります。

オーナーは「建物そのもの」と「事業(家賃収入など)」を守る必要があり、一方の入居者は自身の「家財」と「オーナーへの賠償責任」に備える必要があるからです。

具体例を挙げると、入居者の不注意で火事を起こしてしまった場合、入居者が加入する保険(借家人賠償責任保険)は、オーナーへの損害賠償、つまり部屋を元通りにするための費用を補償します。

しかし、入居者が加入する火災保険は、建物の躯体そのものの損害や、修繕期間中の家賃収入の減少までをカバーするものではありません。こうしたリスクに対しては、オーナー自身が加入する火災保険で備える必要があります。

火災保険の加入は多くの不動産投資ローンの融資条件の一つ

ほとんどの不動産投資ローンにおいて、火災保険への加入は、融資を受けるための必須条件とされています。融資する金融機関から見ると、融資の担保である物件が、火災などで価値を失ってしまうことがリスクになるからです。

万が一の際に保険金で貸し付けたお金を確実に回収できるよう、火災保険への加入を義務付けることで、金融機関はリスクを回避しています。

具体的には、融資契約時に火災保険の契約書(保険証券)の提出が求められます。さらに、保険金を受け取る権利を金融機関が優先する「質権設定」という手続きを求められるのが一般的です。

万が一の際には、支払われた保険金がまずローンの返済に充当される仕組みになっています。ローンを利用して不動産投資をする場合は特に、火災保険への加入は避けては通れない、重要な手続きの一つです。

・「融資」に関する記事はこちら
不動産投資ローンの審査に落ちる理由とは?審査基準と対策を解説
不動産投資ローンの金利相場はどれくらい?金利タイプによる返済額を比較

保険料は経費計上可能

不動産投資のために支払った火災保険料や地震保険料は、確定申告の際に全額を経費として計上できます。保険料は、不動産という事業用資産の価値を維持し、安定した賃貸経営を続けるために必要なコスト(損害保険料)と見なされるためです。

保険料の支払いは伴いますが、経費計上することで税負担を軽減できるというメリットもあります。

・「確定申告」に関する記事はこちら
不動産投資に確定申告は必須? やり方や必要書類を解説

不動産投資家が知っておくべき火災保険・地震保険の仕組み

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火災保険や地震保険は、ただ加入すれば良いというものではありません。無駄な保険料を削減するためには、火災保険の仕組みを理解して、自分の物件に最適な補償を備えることが必要です。

保険料はリスク・補償範囲・保険金・保険会社によって異なる

火災保険の保険料は一律ではなく、主に「物件のリスク」「補償の範囲」「保険金額」「保険会社」という4つの要素の組み合わせで決まります。各保険会社が4つの要素を基に、独自の料率や計算式を用いて保険料を算出しているためです。

補償内容を同じにしても、どの保険会社を選ぶかによって支払う金額が変わってきます。4つの要素の詳細は以下の通りです。

物件のリスク

建物の構造(燃えやすい木造か、燃えにくい鉄筋コンクリート造か)や、所在地(ハザードマップや都道府県を確認)によって保険料は変わります。

補償の範囲

水災補償を付帯させるか、させないかなど、カバーするリスクの範囲が広いほど保険料は高くなります。

保険金額

建物の評価額である保険金額を高く設定すれば、その分保険料も上がります。

保険会社

同じ条件で見積もりを取っても、保険会社ごとのリスク評価や経営方針によって、提示される保険料には差が出ます。

したがって、火災保険のコストを最適化するためには、複数の保険会社から見積もりを取り、内容と価格を比較検討する「相見積もり」が欠かせません。

地震保険の保険料はどの保険会社も一律

一方で、地震保険の保険料と補償内容は、どの保険会社を通じて契約しても全く同じです。
地震保険は民間の保険会社単独ではなく、政府と共同で運営されているからです。

保険料や補償内容は「地震保険に関する法律」によって定められており、保険会社が独自に設定を変えることはできません。

保険料は、建物の「所在地(都道府県)」と「構造(イ構造:木造、ロ構造:鉄筋コンクリート造など)」の2つの要素だけで決まります。このため、例えば東京都にある木造住宅に地震保険をかける場合は、保険料はA社で契約してもB社で契約しても同額です。

地震保険については保険会社ごとの比較が不要です。保険選びの際は、火災保険の比較検討に集中することが、時間と労力を有効に使うコツと言えます。

不動産投資家向けの特約

不動産投資に際して火災保険を契約する場合は、基本的な火災保険に加えて、賃貸経営特有のリスクに備えるための「専用の特約」を付帯させることが極めて重要です。

その理由は、建物そのものの物理的な損害だけでなく、「家賃収入の減少」や「第三者への賠償責任」といったリスクがあるからです。これらのリスクは、火災保険の基本補償だけではカバーすることができません。

不動産オーナーが検討すべき代表的な特約には、以下のようなものがあります。

家賃収入補償特約(家賃補償保険)

火災や自然災害後の修繕期間中、入居者が退去して得られなくなる家賃収入を補償します。キャッシュフローの悪化を防ぐ生命線となります。

施設賠償責任特約

建物の管理不備(例:古い外壁が剥がれ落ちて通行人にケガをさせた)によって、第三者に損害を与えた場合の賠償金をカバーします。

家主費用特約など

物件内での孤独死などが発生した際の、特殊清掃費用や原状回復費用、事故後の家賃下落による損失などを補償します。

2024年10月から水災リスクが細部化

2024年10月の火災保険料改定により、特に「水災補償」の保険料が、市区町村などの単位から、より細かい地域ごとのリスクに応じて設定されるようになりました。

これは、近年の水災被害の増加と地域的な偏りを背景に、保険料負担の公平性を高めることを目的とした改定です。ハザードマップなどを基に、個々の物件が持つ水災リスクを保険料へより正確に反映させる仕組みが導入されました。

この改定により、例えば同じ市区町村内であっても、川や海に近い低地で浸水リスクが高いと評価される物件の保険料は上がり、高台にあるなどリスクが低い物件の保険料は下がるようになっています。

これからの保険選びでは、ご自身の物件所在地のハザードマップを確認し、水災リスクを正確に把握した上で補償の要否を判断することが重要です。

収益物件の保険を選ぶポイント

収益物件の火災保険・地震保険は「物件購入後」に検討するのではなく、「物件選びの段階」から保険料をコストとして意識することが大切です。また、リスクとコストのバランスを取りながら、最適な補償と契約形態を選択するようにしましょう。

物件選びの段階で保険料を意識する

不動産投資の収支シミュレーションを行う際は、物件取得の段階から「火災保険料」を具体的な経費として算入しておくことが重要です。物件の構造や立地によって保険料は年間数万円から十数万円単位で大きく変動し、最終的な利回りに直接影響を与えます。

特に保険料の高い物件を利回りだけで判断して購入してしまうと、想定していたキャッシュフローを大きく下回る可能性があります。

具体的に、保険料が高くなる傾向があるのは、「木造(W造)や軽量鉄骨造(S造)の物件」や、「ハザードマップで浸水リスクが高いエリアに立地する物件」などです。一方で、鉄筋コンクリート造(RC造)の物件や、災害リスクの低いエリアの物件は保険料が安くなる傾向にあります。

適切な補償内容にする

保険料を最適化するためには、ご自身の物件が持つリスクを正確に把握し、補償内容を過不足なく設定することがポイントです。「とりあえず全部入り」と「安ければ良い」のどちらも賢明な判断とは言えません。

具体的な手順としては、まず市区町村が公表しているハザードマップを確認し、物件の「水災リスク」を確認します。高台にあって浸水の可能性が極めて低いのであれば、水災補償を外すことで保険料を大幅に削減できるでしょう。

また、周辺環境や入居者層を考慮し、火災のリスクや施設賠償責任特約、家賃収入補償特約などの必要性を検討します。客観的なデータに基づいてリスクを評価し、必要な補償を主体的に取捨選択していくことが、コストと保障のベストバランスを実現する道筋です。

保険期間を長くする

火災保険を契約する際は、可能な限り「長期契約」を選択することが、保険料の支払総額を抑えるための有効な手段となります。

多くの保険会社では、1年ごとに契約を更新するよりも、長期で契約を結ぶことで、年あたりの保険料が割り引かれる「長期契約割引」が適用されるからです。

例えば、年間の保険料が5万円の物件で、1年契約を5回繰り返すと総額25万円ですが、5年間の長期契約を結ぶことで割引が適用され、総額が22万円になるといったケースがあります。

また、仮に保険料が値上がりしたとしても、すでに契約中の保険契約には値上げが適用されません。長期契約を結んでおけば、保険の更新までは値上げリスクを回避できるというメリットもあります。

まとめ

保険は単なる経費ではなく、安定した経営を続けるための「投資」です。地震による損害は火災保険ではカバーされないため、火災保険と地震保険をセットで備えることが、日本で不動産経営を行う上での基本となります。

そして、建物本体の損害だけでなく、家賃収入の減少や賠償責任といったオーナー特有のリスクに備えるための特約を検討することが重要です。ハザードマップなどで物件のリスクを把握し、相見積もりや長期契約割引を賢く活用することで、保険料を主体的にコントロールできます。

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ワンポイントアドバイス

物件選びと同じく、保険選びでは「どの保険会社か」だけでなく「誰(どの代理店)を通じて契約するか」という視点が重要です。不動産会社から保険や保険会社を紹介されることもありますが、不動産会社の担当者が必ずしも保険のプロとは限りません。

長期的な不動産経営のパートナーとして選ぶべきは、複数の保険会社を扱い、賃貸経営のリスクに精通した専門の保険代理店です。安定経営のためには信頼できる専門家を「選ぶ」という視点が必要になります。

この記事のポイント

Q.火災保険と地震保険はどう違うのでしょうか?

A. 火災保険に関する最も重要な注意点として、地震・噴火または地震による津波を原因とする損害は、火災保険では補償されません。これらのリスクに備えるためには、必ず地震保険への加入が必要です。詳しくは「火災保険と地震保険の違いは?」をご覧ください。


 Q. 火災保険や地震保険の仕組みはどうなっているのでしょうか?

A. 火災保険の保険料は一律ではなく、主に「物件のリスク」「補償の範囲」「保険金額」「保険会社」という4つの要素の組み合わせで決まります。一方、地震保険は、建物の「所在地(都道府県)」と「構造(イ構造:木造、ロ構造:鉄筋コンクリート造など)」の2つの要素だけで決まります。詳しくは「不動産投資家が知っておくべき火災保険・地震保険の仕組み」をご覧ください。


 Q. 収益物件の保険を選ぶポイントはありますか?

A. 「物件購入後」に保険を考えるのではなく、「物件選びの段階」から保険料をコストとして意識することと、リスクとコストのバランスを取りながら、最適な補償と契約形態を選択することが重要です。詳しくは「収益物件の保険を選ぶポイント」をご覧ください。

ライター:秦創平

海外も含めた不動産業界歴約12年を経て2019年からフリーランスのwebライターとして活動を開始。営業マン時代にはセミナー講師の経験も多数あり。国内・海外を問わず不動産投資に関する記事が専門。

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