なぜ不動産投資はインフレ対策になるのか。インフレに強い物件の条件とは
ざっくり要約!
- インフレ期では現金の価値は実質的に目減りする
- インフレによって不動産の資産価値は維持または上昇する
- インフレ期の不動産投資では金利の上昇に要注意
スーパーでの会計や毎月の光熱費の請求書を見て、「物価ばかりが上がっていく…」と感じることはありませんか。また、銀行に預けているあなたの大切なお金の価値が、インフレによって静かに目減りしているかもしれないと考えたことはあるでしょうか。
2025年時点では、社会保険料や税金などが上がっていく一方で、何もしないでいることが将来のリスクになりうる時代になっていると言えます。
不動産投資はインフレ対策として有効な資産運用です。この記事では、「不動産投資」がインフレ対策になる理由や、「インフレに強い物件」を見極めるためのポイントなどについて解説します。
目次
インフレ下で貯金の価値は10年後にどうなる?
2025年時点では、燃料費の高騰や天候不順による作物の収穫量減少などを背景として、様々なモノの値段が上がっています。もし今後もインフレが続けば、銀行に預けている貯金の価値は、例えば10年後には大きく目減りしている可能性が非常に高いでしょう。
モノやサービスの値段が上がると、相対的にお金の価値は下がります。同じ金額で比較しても、そのお金で「買えるモノの量」が減ってしまうためです。
例えば、日本銀行が目標とする「年率2%」のインフレが続いたと仮定してみましょう。現在1,000万円の預貯金を持っていた場合、10年後にはその価値はどうなるでしょうか。
計算上、10年後には現在の約820万円分しかモノを買えなくなってしまいます。つまり、額面上は1,000万円のままでも、その購買力は180万円近くも失われてしまう可能性があるのです。
インフレの状況下では「運用などは何もせず貯金する」という選択が、実は資産を静かに減らしていくリスクをはらんでいます。
インフレと資産価値の関係
モノとしての不動産が持つ価値は「資産価値」と呼ばれます。不動産投資がインフレ対策になる理由を把握するうえでは、現金の価値と資産価値との関係について理解することが必要です。
現金の価値が下がる=資産価値が相対的に上がる
インフレが進む局面では、現金の価値が下がる一方で、土地や建物といった「モノ」の価値は相対的に上がります。
これは、インフレがお金の「購買力」そのものを低下させる現象だからです。モノの値段が上がっていくと、同じ1万円札で買えるモノの量が減ってしまいます。つまり、お金の価値が実質的に目減りする一方で、モノの価値は上昇、あるいは維持されることになります。
したがって、インフレから資産を守るためには、価値が下がっていく現金を、価値が上がるか下がりにくい「モノ」に資産を換えておくことが合理的な選択肢です。
現物資産である不動産の特徴
インフレに強い「モノ」の中でも、特に不動産は「現物資産」としてユニークで強力な特徴を持っています。
不動産そのものがインフレに連動して価値が上がりやすいうえに、保有している間にも「家賃」という新たな収益(インカムゲイン)を生み出し続けてくれます。
例えば、同じ現物資産である金(ゴールド)もインフレに強いことで知られています。しかし、金(ゴールド)を保有しているだけでは、お金は1円も生まれてきません。
金(ゴールド)によって利益を得るためには、値上がりしたタイミングでの売却が必要です。一方、不動産は賃貸に出せば、資産価値の上昇を待ちながら、毎月の安定した家賃収入を得られます。
不動産は、「資産価値の維持」と「継続的な収入確保」という2つの側面からインフレに対抗できる、非常にバランスの取れた現物資産であると言えます。
不動産投資がインフレ対策になる3つの理由
インフレから資産を守る上で、不動産投資が有効な対策となることには、明確な3つの理由があります。
1.資産価値が落ちにくい
不動産は土地や建物といった「現物資産」のため、現金と異なり、インフレの状況下では価値が下がりにくいのが特徴です。
インフレでモノの値段が上がるということは、建物を建てるための建築資材費や人件費、そして土地の価格も上昇する傾向にあることを意味します。そのため、現金や預貯金とは異なり、不動産の価値はインフレに合わせて上昇、あるいは維持されやすいのです。
例えば、建築コストの上昇によって新築マンションの価格が上がったとします。すると、割安感のある中古マンション市場にも買い手が集まり、結果的に中古マンションの価格も引き上げられるといった現象が起こります。
したがって、不動産を保有することは、インフレによる資産の目減りを防ぐ「守りの資産運用」として非常に有効な手段と言えます。
・「不動産投資 インフレ対策」に関する記事はこちら
【2025年最新版】不動産投資とインフレ対策|資産保全に有効な理由とは?
2.家賃と売却益の上昇に期待できる
不動産投資は、インフレに応じて「家賃収入(インカムゲイン)」と「売却益(キャピタルゲイン)」の両方で収益アップが期待できるという、攻めの一面も持っています。
インフレによって世の中の物価やサービス価格、そして人々の給与水準が上昇すれば、住宅の家賃も上げやすくなります。また、先述の通り不動産自体の資産価値も上がるため、将来的な売却益も期待できるのです。このように、資産を守りながら育てていける点が不動産投資の大きな魅力です。
3.長期保有による元本保全効果
ローンを活用して不動産を長期で保有することは、インフレの状況下において、ローンの元本を守り実質的な資産を築く上で効果的です。
毎月のローン返済によって借入金の元本が減っていくと同時に、インフレによって「お金そのものの価値」が下がることで、過去にした借金の実質的な負担も軽くなるからです。
例えば、3,000万円のローンを組んで物件を購入したとします。ローン返済を続けることで、10年後には残債が2,200万円に減っていたとしましょう。
もしこの10年間でインフレが進んでいれば、10年後の2,200万円という金額は、借入当初の2,200万円よりも価値が軽くなっています。つまり、「ローン返済が進む効果」と「インフレによる借金の目減り効果」という、二つの恩恵を同時に受けられるのです。
・「長期保有」に関する記事はこちら
不動産投資で長期的に成功するための計画の立て方|修繕計画・出口戦略も解説
インフレ対策としての不動産投資の注意点
インフレの状況下で不動産投資を進めるためには、特に注意すべき特有のポイントが3つあります。
コストもインフレで上昇する
インフレで家賃が上がっても、建物の修繕費や管理費、保険料といった不動産投資に不可欠なコストも同様に上昇します。また、資材価格の高騰により、将来の修繕積立金が想定より高くなる可能性もあるでしょう。
収入の増加分以上に支出が増え、手残りの現金が減ってしまうリスクを考慮しなければなりません。
すべての物件がインフレの恩恵を受けるわけではない
インフレによって不動産の価格が上がりやすいと言っても、日本全国の不動産価格が一律に上がるわけではありません。
人口が減少し、賃貸需要が弱いエリアの物件では、世の中がインフレになっても家賃を上げられず、資産価値も上がらないケースも起こり得ます。「インフレに強い」のは、あくまで継続的な賃貸需要が見込めるエリアの物件に限られます。
インフレ抑制のための「金利上昇」リスク
インフレ対策として不動産投資を考える上で、最大のリスクが「金利の上昇」です。行き過ぎたインフレを抑えるため、国が政策として金利を引き上げる可能性があります。
変動金利でローンを組んでいる場合は特に、金利の上昇は毎月の返済額増加に直結し、収支計画を大きく狂わせる危険性があります。
インフレに強い収益物件を選ぶポイント

不動産投資がインフレに強い理由と、インフレに際した注意点を踏まえたうえで、どのように物件を選べば良いのかについて解説します。
リスクを見極める
インフレに強い物件を選ぶ上で重要なポイントの一つは、「将来にわたって安定した賃貸需要が見込めるエリア」にある物件を選ぶことです。不動産投資でインフレ対策をするのであれば、空室リスクのケアは必須と言えます。
インフレの状況下で家賃や資産価値が上昇するのは、あくまでそこに「住みたい」という需要があるからです。どんなにインフレが進んでも、借り手が見つからない物件では家賃を上げられない上に、資産価値も上がりません。借手がいなければ、不動産投資はインフレ対策として機能しないことになります。
空室リスクを見極めるためには、人口動態を確認すると良いでしょう。特に若年層や単身世帯が増加傾向にある都市部は有効な選択肢となります。
さらに、最寄り駅からの距離(徒歩10分以内が目安)、スーパーやコンビニといった生活利便施設の充実度、近隣の再開発計画の有無などをチェックします。これらの客観的なデータに基づいてエリアの将来性を見極めることが重要です。
・「不動産投資のリスク」に関する記事はこちら
不動産投資の6大リスク一覧!未然に防ぐ方法とは?
維持費を試算する
インフレ期の物件選びでは、家賃収入の増加だけでなく、運営コストの上昇も織り込んだ、現実的な収支シミュレーションが不可欠です。
先述の通り、インフレは家賃だけでなく、修繕費や管理委託費、保険料といったあらゆるコストを押し上げる要因となります。収入の伸び以上に支出が増えてしまっては、手元に残る現金が減ってしまうでしょう。
例えば、購入を検討する物件の長期修繕計画や過去の修繕履歴を確認し、将来発生しうるコストを予測します。インフレによって資材価格や人件費が高騰することも想定し、少し厳しめに見積もっておくと安心です。
収入と支出の両面からインフレの影響を試算し、それでも利益が残るかを慎重に判断しましょう。
・「シミュレーション」に関する記事はこちら
不動産投資シミュレーションの作り方と使い方|キャッシュフローと利回りを正確に把握する方法
流動性の高さは不可欠
インフレ対策として保有する物件は、必要な時にいつでも売却できる「流動性の高さ」を備えていることが非常に重要です。
価格の大きさゆえに、ライフプランの変化があった時や急に資金が必要になった時などに、スムーズに現金化できないと、不動産の保有は大きなリスクとなり得ます。
流動性が高い物件とは「買いたい人が多い物件」のことです。例えば、交通利便性の高い都市部のマンションや、人気の住宅地にあるファミリー向けマンションなどは、市場の買い手が多く、比較的スムーズな売却が期待できます。
一方で、ニッチな間取りや特殊な立地の物件は、高利回りでも買い手が見つかりにくい可能性があるため要注意です。
・「物件選び」に関する記事はこちら
不動産投資で成功する物件の選び方|優良物件を見極めるポイントと現地調査のコツ
金利上昇中!融資比率・金利タイプはどう考えるか
インフレ期では金利上昇の可能性があるため、ローンの「融資比率」を抑え、さらに「金利のタイプ」を慎重に選択することが、リスク管理の生命線となります。
金利の上昇は、ローン返済額の増加に直結し、不動産投資のキャッシュフローを悪化させる最大の要因です。金利上昇のリスクコントロールは、インフレ期における投資の成否を大きく左右します。
まず「融資比率」については、自己資金を多めに入れ、借入金の割合を抑えるのが安全策です。借入額が少なければ、金利が上昇しても返済額の増加幅を小さく抑えられます。
次に「金利タイプ」ですが、「変動金利」は低金利が魅力な一方、金利上昇の影響を直接受けることになります。一方で、「固定金利」は金利がやや高めですが、返済額が変わらない点で安心です。
金利上昇への備えとして、不動産投資を始める際は固定金利によってリスクを確定させる、というのも賢明な選択肢の一つと言えるでしょう。
・「不動産投資ローン」に関する記事はこちら
不動産投資ローンの種類と選び方|アパートローン・プロパーローン・ノンバンクの違いとは?
まとめ
物価の上昇が続くインフレ期では、銀行口座に預金しておくだけでは、その価値が静かに目減りしてしまいます。
インフレに連動して資産価値が下がりにくく、家賃という継続的な収入も期待できるため、不動産投資は資産を守りながら育てていく有効な手段となり得ます。
さらに、インフレによってローンの実質的な負担が軽くなるという、他の金融商品にはないメリットも、不動産投資が持つ特徴の一つです。
ただし、不動産投資をインフレ対策として成功させるためには、インフレ期特有のリスクを理解し、賃貸需要が落ちないエリアを見極めるなど正しい物件選びが不可欠です。

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ワンポイントアドバイス
インフレであってもデフレであっても、不動産投資の成功につながる物件の本質は「長期的に人が集まり、賃貸需要が落ちない場所にある」という一点に尽きます。不動産の値動きや金利の動向など経済状況に目を奪われて、物件そのものを見極めるという原理原則を見失うと、失敗の原因になります。
目先のトレンドに惑わされず、10年後もその場所で人が暮らす姿を想像できるかといった冷静な視点を持つことが、本当の意味でのインフレ対策となるでしょう。
この記事のポイント
Q.インフレと資産価値にはどのような関係があるのでしょうか?
A. インフレが進む局面では、現金の価値が下がる一方で、土地や建物といった「モノ」の価値は相対的に上がります。詳しくは「インフレと資産価値の関係」をご覧ください。
Q. 不動産投資はなぜインフレ対策になるのでしょうか?
A. 不動産は土地や建物といった「現物資産」のため、現金と異なり、インフレの状況下では価値が下がりにくいのが特徴です。詳しくは「不動産投資がインフレ対策になる3つの理由」をご覧ください。
Q. インフレに強い物件を選ぶポイントは?
A. インフレに強い物件を選ぶ上で重要なポイントの一つは、「将来にわたって安定した賃貸需要が見込めるエリア」にある物件を選ぶことです。詳しくは「インフレに強い収益物件を選ぶポイント」をご覧ください。