不動産投資物件は値引きしてもらえるのか? 成功させる価格交渉術
ざっくり要約!
- 価格交渉は不動産投資の「技術」であり一般的に行われている
- 交渉の成否は「準備」によって決まる
不動産投資の物件購入を前に、「提示された価格で買うしかないのか?」と疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。あるいは「値引きをお願いして、売主や仲介会社の気分を害したらどうしよう」など、価格交渉に心理的なハードルを感じる方も多いかもしれません。
しかし、不動産投資において、物件の価格交渉はごく一般的に行われています。また、物件の取得価格を少しでも抑えることは、将来の収益性を大きく左右するポイントです。
この記事では、価格交渉は特別な才能ではなく、正しい知識と準備さえあれば誰でも実践できる「技術」であることを解説します。
不動産投資物件購入時に価格交渉はできるのか
結論からお伝えすると、不動産投資を目的とした物件購入において、価格交渉は可能です。むしろ、投資の成功確率を高めるためには、価格交渉は不可欠なステップと言えます。不動産投資における価格交渉の基本的な考え方について解説します。
購入時の値引き交渉は一般的
不動産投資用の物件を購入する際に、価格の値引き交渉を行うことは非常に一般的です。なお、売主側も価格交渉をある程度見越して、意図的に少し高めの価格で売り出しているケースが少なくありません。
また、投資用不動産は、取得価格が低ければ低いほど将来の利回りが向上し、キャッシュフローに直接的な好影響を与えます。交渉によって少しでも安く物件を買うことは、投資効率を最大化させるための合理的な戦略です。購入したいという意思が固まった物件であれば、臆することなく交渉に臨むべきでしょう。
値引き交渉のタイミング
価格交渉を切り出す最も効果的で正式なタイミングは、「買付証明書(購入申込書)」を不動産会社に提出する時です。
なお、口頭で「安くなりませんか?」と尋ねるだけでは、単なる探りを入れているだけだと思われ、売主側も真剣に取り合ってくれない可能性があります。一方で、買付証明書は「この金額と条件であれば、購入する意思があります」という買主の意思を書面で証明するものです。
買付証明書によって価格交渉をしたいと伝えれば、売主もこれを正式な申し込みとして受け止め、交渉のテーブルについてくれます。
交渉が決裂したらどうなる?
価格交渉が決裂した場合の選択肢はシンプルで、「売主が提示した価格で購入する」か、「その物件の購入自体を潔く諦める」かの2つです。
価格交渉はあくまで買主からの「お願い」であり、売主にその申し出を受ける義務はありません。売主が「この価格以下では売らない」と決めている場合は、買主側がその条件を受け入れるか、あるいは取引を見送るかを最終的に判断する必要があります。
交渉が決裂する可能性も念頭に置いて、交渉を始める前に「ここまでなら出せる」という上限額を明確に定めておくことが重要です。
価格交渉でどれくらい値引きしてもらえるのか
価格交渉に臨むにあたり、誰もが気になるのが「一体いくらくらい値引きしてもらえるのか?」という点です。実際の値引き幅はもちろん物件や売主によって大きく変動しますが、交渉額の一般的な目安と、交渉しやすい物件の見極め方について解説します。
首都圏中古マンションの乖離率は5〜10%程度
交渉額のひとつの目安として、物件の売り出し価格から5%〜10%程度の値引きがターゲットになるケースが多くなっています。
以下のグラフは、中古マンションの新規登録価格(売出価格)と成約価格との差を時期ごとに表したものです。

出典:東日本不動産流通機構
乖離率が5%ということは、例えば4,000万円で売り出されている物件であれば、その5%、つまり200万円程度の値引きが現実的な交渉の範囲になるという計算です。もちろん、これはあくまで平均値であり、実際には市況や物件の個別要因によって変動します。
そのため、相場だからと何も考えずに一方的に価格交渉を打診すると、うまくいかないばかりか売主側の心証を損ね、その後の交渉に応じてくれなくなる可能性もありますので注意が必要です。
人気の物件は交渉が難しい
全ての物件で交渉がうまくいくわけではなく、特に条件の良い「人気物件」では、価格交渉は非常に難しいのが実態です。人気物件には他にも多くの購入希望者が現れる可能性が高いためです。
売主からすれば、交渉してくる買い手を相手にするよりも、提示価格のまま(満額で)購入してくれる買い手を優先するのは自然なことと言えるでしょう。
具体的には、以下のような特徴を持つ物件は人気が高く、交渉が難しい傾向にあります。
- 最寄り駅から徒歩5分以内など、立地が非常に良い
- 築年数が浅く、室内や設備の状態が良好
- 周辺の類似物件と比較して、価格設定が明らかに割安
- 大規模な再開発が予定されているエリアに位置している
このような人気物件に対して過度な値引き交渉を行うと、その間に他の買主に契約されてしまう「機会損失」のリスクがあります。物件の魅力と交渉のバランスを慎重に考えることが重要です。
交渉しやすい物件の特徴
一方で、売主側の事情や物件が持つ特性によっては、価格交渉が比較的スムーズに進みやすい物件も存在します。これらを見極めることが、有利な条件での購入に繋がります。
何らかの事情がある物件については、売主側も多少価格を下げてでも早く売却したいという考えが働くため、交渉の余地が生まれやすくなります。交渉しやすいケースとしては、主に以下のような特徴が挙げられます。
売主の事情
- 相続が発生し、納税資金のために現金化を急いでいる
- 離婚による財産分与で、売却期限が決まっている
- 転勤や買い替えで、新居の購入資金を必要としている
物件の特性
- 売りに出されてから半年以上など、長期間売れ残っている
- 室内の汚れや設備の古さが目立ち、リフォームが必要な状態
- 旧耐震基準の建物である
- 日当たりが悪いなど避けられがちな条件を持つ
物件情報の確認や担当者からのヒアリングを通じて「売主が売却を急いでいる事情」や「物件の弱点」を把握することが、価格交渉を成功に導くための重要な鍵となります。
価格交渉を成功させるための心構え
価格交渉を「売主からお金を奪う」ことと捉えるのではなく、「双方にとって納得のいく着地点を探すための共同作業」と考えることが必要です。この考え方が、交渉を成功に導く土台となります。
価格交渉が売主のメリットに繋がるケースもある
買主からの根拠のある価格交渉は、売主にとってもメリットがあり、円満な取引に繋がるケースがあります。売主の希望が単に「最高値で売ること」だとは限らないからです。
「できるだけ早く現金化したい」「面倒なトラブルなく安心して取引を終えたい」といった、価格以外のニーズを売主が持っていることも少なくありません。
例えば、相続税の支払期限が迫っている売主にとっては、多少価格が下がったとしても、スピーディーに決済してくれる買主は非常に魅力的です。
交渉とは、相手の懐を探る行為ではありません。売主の事情やニーズを理解し、こちらが提供できるメリットも提示しながら、お互いにとって良い取引を目指すためのコミュニケーションであると言えるでしょう。
不動産会社の担当者を味方につける
不動産会社にだまされるのではないかと考える人もいるのではないでしょうか。しかし、不動産会社の仲介担当者は、決して敵ではありません。むしろ、良好な関係を築くことで、交渉を成功に導いてくれる「最も重要なパートナー」になり得る存在です。
不動産会社にとっては、売買契約が成立して初めて、彼らの成功報酬である仲介手数料が発生します。担当者に横柄な態度を取ったり、無理な要求ばかりしたりすると、協力は得られにくくなるでしょう。
仲介担当者とは常に対等なパートナーとして接し、誠実なコミュニケーションを心がけるのが賢明です。
収益物件の価格交渉テクニック

ここまで解説したマインドセットを土台として、「交渉材料の見つけ方」「相手への配慮」「伝え方」という3つのステップで、交渉術を身につけていきましょう。
交渉材料を見つける
説得力のある価格交渉を行うためには、感覚的な値引き要求をするのではなく、「なぜこの金額を希望するのか」を裏付ける、客観的な交渉材料を見つけることが重要です。
売主はあなたの「安く買いたい」という感情ではなく、「この指摘には合理的な根拠がある」という事実に心を動かされるからです。具体的な根拠を示すことで、交渉は単なるお願いから、ビジネス上の論理的な対話へと変わります。交渉材料は、主に以下の3つの視点から探せます。
なお、ここで述べる視点が既に価格に織り込まれている場合もあります。交渉材料が見つかったと安易に判断せず、その要素を踏まえて改めて価格設定が妥当かを見定める必要があります。
物理的な状況
建物の外壁や共用廊下にひび割れはないか、給湯器やエアコンなどの設備は耐用年数を超えていないかなどをチェックします。
市場データとの比較
周辺の類似物件の成約事例を調べ、「市場相場と比較して割高である」ことをデータで示します。また、近隣の賃料相場を根拠として「現在の満室想定賃料では、将来的に空室リスクが高い」と指摘し、それを根拠に価格の調整を求めるのも有効です。
法的な制約やリスク
購入後にセットバック(敷地後退)が必要な物件や、再建築ができない物件など、法的な制限がある場合は強力な交渉材料となります。
売主の立場や事情にも配慮する
価格交渉を円滑に進めるためには、こちらの値引き要求だけを伝えるのではなく、同時に「売主側のメリット」も提示することが効果的です。
交渉は売主との着地点を探す共同作業なので、売主が持つ「早く売りたい」「安心して取引したい」といったニーズに沿った提案をすると良いでしょう。結果的に、売主に「この買主なら多少譲歩しても良い」と思わせることができます。
売主のメリットとして提示できる内容には、以下のようなものがあります。
決済スピードをアピールする
「ローンは使わずに現金で購入いたします」やローンを使う場合でも「ローンの事前審査は承認済みですので、契約後は非常にスムーズな決済が可能です」と伝えることで、現金化を急ぐ売主への強力なアピールになります。
売主の手間やリスクを軽減する
「残置物の対応については、こちらで処分費用を負担します」「建物の細かな不具合については、将来こちらで対応します(契約不適合責任の免責)」といった提案は、売主の手間や心理的負担を軽くします。
伝え方や態度に気をつける
どれほど優れた交渉材料を用意しても、それを伝える際の態度や言葉選びを間違えると、交渉はうまくいきません。常に相手への敬意を払い、謙虚かつ毅然とした姿勢で臨むことが大切です。交渉に臨む際は、以下のポイントを意識しましょう。
購入意欲を最初に示す
交渉に際して、まず「この物件を大変気に入っており、ぜひ購入したいと考えております」というポジティブな意思を伝えます。
NGな表現を避ける
「この物件は〇〇がダメだから安くしろ」といった否定的な言い方ではなく、「〇〇の修繕が必要となる点を考慮いただき、〇〇円でお譲りいただくことは可能でしょうか」など、丁寧な依頼の形で伝えます。
まとめ
価格交渉を成功させる上で最も重要なポイントは「客観的な根拠に基づいた事前準備」と「相手の立場を尊重するマインドセット」です。
物件の物理的な状況や市場データを基にした交渉材料を用意し、売主や仲介担当者と良好な関係を築きながら進めることが、お互いが納得できる結果に繋がります。
価格交渉は、特別な話術が求められるものではなく、正しい知識と手順に沿って準備すれば誰でも実践できる合理的な「技術」です。まずは気になる物件に関する情報収集から始めてみてください。

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ワンポイントアドバイス
例えば、買付証明書に「〇〇銀行にて融資事前承認取得済み。契約後、〇日以内の迅速な決済が可能です」と一文添えるだけで、あなたの資金的な信頼性は飛躍的に高まります。
同額の交渉をしたライバルがいたとしても、こうした「具体的な情報」や「相手への配慮」を書面で具体的に示せば、最終的に選ばれる可能性は十分にあるでしょう。金額だけでなく、あなたの誠実さと本気度を伝える「手紙」として、買付証明書を活用してください。
この記事のポイント
Q.不動産物件を購入する際に価格交渉をしても良いのでしょうか?
A. 不動産投資を目的とした物件購入において、価格交渉は可能です。むしろ、投資の成功確率を高めるためには、価格交渉は不可欠なステップと言えます。詳しくは「不動産投資物件購入時に価格交渉はできるのか」をご覧ください。
Q. 価格交渉をしたらどれくらい値引きをしてもらえるのでしょうか?
A. 実際の値引き幅はもちろん物件や売主によって大きく変動しますが、交渉額の一般的な目安と、交渉しやすい物件の見極め方について「価格交渉でどれくらい値引きしてもらえるのか」にて解説します。
Q. 価格交渉を成功させるためにはどうしたら良いでしょうか。
A. 価格交渉を「売主からお金を奪う」ことと捉えるのではなく、「双方にとって納得のいく着地点を探すための共同作業」と考えることが必要です。詳しくは「価格交渉を成功させるための心構え」をご覧ください。