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2025.09.30

不動産投資シミュレーションの作り方と使い方|キャッシュフローと利回りを正確に把握する方法

不動産投資シミュレーションの作り方と使い方|キャッシュフローと利回りを正確に把握する方法

ざっくり要約!

  • シミュレーションができると物件の本当の収益性を把握できる。
  • リスクを具体的に織り込むことで失敗回避のための戦略を立てられる。

不動産投資の物件選びに際しては、不動産会社から「月々これだけの利益が出ますよ」と収益シミュレーションが提示されることは多いものです。

魅力的な数字を前にして期待が膨らむ一方で、「このシミュレーション、本当に信じて大丈夫だろうか?」「見落としている費用はないだろうか?」といった不安を感じる人もいるのではないでしょうか。

あるいは、ご自身でシミュレーションを試みたものの、「入力すべき項目がこれで全てなのか自信が持てない」「空室や将来の家賃下落といったリスクをどう織り込めばいいのかわからない」と手が止まってしまっているかもしれません。

この記事では、そうした不安を解消し、ご自身の力で物件の収益性を客観的に、そして正確に判断するための具体的な方法を解説します。

不動産投資シミュレーションが必要な理由

不動産投資を検討する際に、収支シミュレーションは必ず必要になるプロセスです。シミュレーションが重要である理由について解説します。

表面利回りと実質利回りは異なる

物件情報サイトや広告で「利回り10%!」といった魅力的な数字を目にすることは多いものです。しかし、これは「表面利回り」という指標で、多くの場合、満室を前提とした年間の家賃収入を物件の販売価格で割っただけの非常にシンプルな指標です。

不動産の運用には管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料などの経費がかかります。表面利回りは、これらのコストが一切考慮されていない、いわば「売上」しか見ていない数字と言えます。

例えば、築古の物件は価格が安いために表面利回りが高く見えがちです。しかし、実際には修繕費が頻繁にかかったり、なかなか空室が埋まらなかったりといったリスクがあります。実質利回りは表面利回りの半分にも満たないなどのケースは多いものです。

投資家が本当に注目すべきは「実質利回り」です。実質利回りは、年間の家賃収入から実際に発生する諸経費を差し引いた、より現実に近い収益性を表します。

・「利回り」に関する記事はこちら
不動産投資の理想的な利回りは?計算方法と物件選びのポイントを紹介

キャッシュフローと自己資金回収年数を明確化する

実質利回りがプラスであっても、それだけで安心してはいけません。不動産投資で最も重要なのは、全ての支出を支払った後、最終的にあなたの手元にいくらお金が残るかを示す「キャッシュフロー」です。

キャッシュフローは、家賃収入から諸経費、そして銀行へのローン返済額を差し引いて計算します。

キャッシュフロー = 家賃収入 -(諸経費 + ローン返済額)

このキャッシュフローがマイナスになるということは、毎月の家賃収入だけではローンや必要経費を賄えず、貯金から持ち出しが発生することを意味します。

また、シミュレーションによって、投下した自己資金を何年で回収できるかを示す「自己資金配当率(CCR)」もおさえておくべきポイントです。CCRは年間キャッシュフローを自己資金額で割った割合のことです。この割合から回収年数を逆算することができます。

例えば、支出した自己資金が300万円で、年間のキャッシュフローが30万円であれば、CCRは10%となり回収には10年かかることになります。この期間が短いほど、リスクが低く、効率の良い投資であると判断できます。

利益が最大化する出口戦略が立てられる

不動産投資は、物件を「買って終わり」の単発的な取引ではありません。いつ、いくらで売却するのかという「出口戦略」までを見据えることが成功の条件です。データに基づいた出口戦略を立てるためには、収支のシミュレーションが欠かせません。

具体的には、保有期間に応じたローン残債の減少ペースを算出し、併せて経年劣化による物件の想定売却価格の下落ペースを予測します。

この2つを比較することで、「売却時の利益(ローン残債と売却価格の差額)が最も大きくなるのは何年後か」という、売却の最適なタイミングを想定可能です。

また、ローン返済が進むと、経費として計上できる金利が減る一方で、経費に計上できた減価償却費も耐用年数の期限が到来し、経費計上できなくなります。その結果、キャッシュフローは黒字なのに税金の負担が重くなり、手残りが赤字に転じる「デッドクロス」という現象が起こり得ます。

デッドクロスがいつ訪れるかを予測し、その前に売却するという判断を下すためにも、シミュレーションが必要です。

・「出口戦略」に関する記事はこちら
不動産投資の出口戦略とは? 売却・相続・法人化、適切な出口を見極めるポイント
投資用物件を売却するベストタイミングは? 出口戦略の考え方

不動産投資シミュレーションの作り方・使い方

ここからは、実際に不動産投資シミュレーションを作成するための具体的な手順を解説します。「計算が複雑そう…」と感じるかもしれませんが、一つひとつの項目を順番に整理していけば、誰でも精度の高いシミュレーションを作れます。

シミュレーションをする上では、ExcelやGoogleスプレッドシートで自作できるほか、銀行のローンシミュレーションサイトや、不動産投資専門のアプリなどを活用するのも有効です。

シミュレーションに必要な項目

正確なシミュレーションを行うためのスタートラインは、必要な情報を漏れなく集めることです。物件の販売図面や不動産会社からの資料を手元に用意し、以下の項目を確認・入力していきましょう。

もし不明な項目があれば、不動産会社の担当者に質問したり、相場を調べたりして、空欄を埋めていくことが重要です。

チェックリスト

カテゴリ 項目名 主な情報源
収入 家賃収入(月額・年額) 販売図面、家賃査定書、周辺相場 (SUUMOなど)
礼金・更新料 賃貸借契約の条件、エリア特有の慣例
支出(購入時) 物件価格 売買契約書案、販売図面
仲介手数料 (物件価格 × 3% + 6万円)+消費税
登記費用 (登録免許税・司法書士報酬) 不動産会社、司法書士の見積もり
不動産取得税 自治体のHP、不動産会社
ローン事務手数料・保証料 金融機関の資料
火災・地震保険料 保険会社の見積もり
支出(運用時) 管理委託費 管理会社の契約書案 (家賃収入の5%程度が多い)
修繕積立金・管理費 (区分マンションの場合のみ) 重要事項調査報告書
固定資産税・都市計画税 固定資産税評価額、自治体のHP(税率確認)
空室時の損失引当金 後述の「詳細なシミュレーション」で設定
原状回復費・入居者募集広告費 後述の「詳細なシミュレーション」で設定
ローン関連 借入金額・金利・返済期間 金融機関のローン審査結果、仮審査通知

運用時の支出は特に、見落としや過小評価が将来のキャッシュフローを大きく狂わせる原因となるため、慎重に確認しましょう。

簡易的なシミュレーション方法

全ての情報を集めたら、まずはその物件の大まかな収益性を測る「実質利回り」を計算してみましょう。すでに解説した通り、年間の家賃収入から年間の諸経費を差し引いた、より現実に近い利回りが実質利回りです。

計算式
実質利回り(%) = (年間家賃収入 – 年間運用経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸経費) × 100

例えば、年間家賃収入が120万円、年間の運用経費が25万円、物件価格2,000万円、購入時の諸経費が140万円の物件なら、以下のようになります。

(120万円 – 25万円) ÷ (2,000万円 + 140万円) × 100 = 約4.4%

この段階で利回りが極端に低い場合は、より詳細なシミュレーションに進む前に、投資対象として見送るという判断も必要です。

キャッシュフローの計算方法

次に、投資家にとって最も重要な指標である「キャッシュフロー」、つまり手残りのお金を計算します。これは、簡易シミュレーションで算出した「家賃収入から経費を引いた利益」から、さらに「年間のローン返済額」を差し引くことで求められます。

計算式:税引前キャッシュフロー = 年間家賃収入 – 年間運用経費 – 年間ローン返済額

金融機関のウェブサイトにあるローンシミュレーターを使えば、借入額・金利・期間から年間の返済額を簡単に算出可能です。

税金を考慮した最終的な手残りを計算する

税引前キャッシュフローを算出したら、さらに所得税と住民税を差し引きます。なお、より正確な手残りを出すためには、不動産投資特有の「減価償却費」を考慮して税金額を計算し、税引前キャッシュフローから差し引く必要があります。

最終キャッシュフロー = 税引前キャッシュフロー – (所得税 + 住民税)

減価償却とは、経年劣化による建物の価値の減少分を、帳簿上の経費として計上できる制度です。実際にお金が出ていくわけではないのに経費計上できるため、税金を抑える効果があります。

減価償却まで考慮した税金の計算は複雑になるため、最終的には税理士などの専門家に相談するか、高機能なシミュレーションツールを活用するのがおすすめです。

詳細なシミュレーションをする方法

ここまでのシミュレーションは、いわば「全てが計画通りに進んだ場合」の楽観的なシナリオです。しかし、不動産経営には不確実な要素もあります。

不確定要素を可能な限り排除するためには、以下の変動要素を織り込んで、それでもキャッシュフローがマイナスにならないかを確認します。

空室率の変動を考慮する

不動産投資においては、常に満室が続く保証はありません。シミュレーション上の家賃収入を、まず90%(空室率10%)や85%(空室率15%)に減額して計算してみましょう。周辺エリアの平均空室率を参考に、現実的な数値を設定することが重要です。

家賃の下落率を考慮する

どんな物件でも建物の経年劣化は避けられない上に、周辺に新しい競合物件が建てば、家賃は緩やかに下落していきます。「5年後には3%、10年後には8%下落する」など、長期的な視点で家賃の下落リスクを織り込みます。

金利の変動を考慮する

変動金利でローンを組む場合は、将来の金利上昇は最大のリスク要因です。現在の金利だけでなく、「もし金利が1%上昇したら」「2%上昇したら」どうなるかなど、複数のパターンでローンの返済額を再計算し、キャッシュフローへの影響を確認します。

突発的な修繕費用を考慮する

突発的な修繕費用とは、給湯器の故障やエアコンの交換などにかかるものです。また、区分所有マンションの場合は、10数年周期で発生する外壁塗装や屋上防水といった大規模修繕の費用も見込む必要があります。

これらの突発的な支出に備えて、年間家賃収入の数%を「修繕引当金」としてあらかじめ経費に計上しておくと良いでしょう。

上記の費用や下落率を織り込んでもなお、プラスのキャッシュフローを維持できるのであれば、その物件は投資価値の高い物件であると判断できます。

・「不動産投資のリスク」に関する記事はこちら
不動産投資の6大リスク一覧!未然に防ぐ方法とは?

不動産投資シミュレーションの読み解き方・使い方

不動産投資 シミュレーション 読み解き方

シミュレーションシートを完成させることはゴールではありません。シミュレーションの結果を投資判断にどう生かすかが最重要のポイントです。作成したシミュレーション結果をどのように分析して戦略的な判断に繋げていくのか、3つの実践的な活用法を解説します。

赤字ラインを把握する

まず確認すべきポイントは、その物件が持つ「赤字への耐性」です。耐性を測るための重要な指標が「損益分岐点(BEP)稼働率」です。

損益分岐点稼働率とは「全戸のうち、最低何パーセントの部屋が埋まっていれば、家賃収入で全ての経費(ローン返済含む)をギリギリ賄えるか」を示す数値です。

計算式:損益分岐点稼働率(%) = (年間総費用 ÷ 年間満室想定家賃収入) × 100

例えば、年間総費用(経費+ローン返済)が180万円、満室時の家賃収入が200万円の場合、損益分岐点稼働率は90%となります。

これは、物件の稼働率が90%を下回ると赤字に転落することを意味しており、常に満室に近い状態を維持しなければならない、リスクが高めの物件と言えます。

一方で、損益分岐点稼働率が75%であれば、年間で4分の1の期間空室が発生しても耐えられる(アパートなどの場合は、全住戸の4分の1が一年間空室でも耐えられる)ため、比較的安定した経営を期待できるでしょう。

一つの目安として、損益分岐点稼働率が80%~85%を下回る物件を選ぶことが、安定経営に向けた第一歩です。

損益分岐点から出口戦略を想定する

損益分岐点の考え方は、売却のタイミング、いわゆる「出口戦略」を考える上でも非常に有効です。特にキャッシュフローに「デッドクロス」が発生するタイミングを抑えておく必要があります。

デッドクロスとは、ローン返済が進むにつれて「経費として計上できる支払利息」が減少し、同時に「経費にできる減価償却費」が耐用年数切れでなくなることで、帳簿上の利益が急に増え、税金の負担が重くなる現象のことです。

デッドクロスが起こると、キャッシュフローは黒字なのに、税金を支払うと手残りが赤字になってしまうという逆転現象が起こります。

長期シミュレーションシートを作成すれば、このデッドクロスが「何年目に訪れるのか」を予測可能です。税負担が重くなり、手残りが赤字に転落する前に物件を売却するというのが合理的な出口戦略と言えます。

長期保有した場合・売却した場合の収益を比較する

不動産投資の利益は、保有期間中に得られる家賃収入(インカムゲイン)と、売却時に得られる売却益(キャピタルゲイン)の合計で決まります。シミュレーションを活用すれば、投資戦略の異なる複数の未来を比較検討することも可能です。

【パターンA:短期~中期売却】10年後に売却するケース
トータルリターン = (10年間の累計キャッシュフロー) + (売却価格 -ローン残債 – 売却時諸経費)

【パターンB:長期保有】30年間(ローン完済まで)保有するケース
トータルリターン = (30年間の累計キャッシュフロー)

パターンAの戦略は、早期にまとまった資金を得て、次の投資へステップアップしたい人に向いています。一方で、パターンBは、ローン完済後に家賃収入の大部分が手残りとなるため、長期的に安定した私的年金を構築したい人などに向いている戦略です。

まとめ

精度の高いシミュレーションをできれば、その物件が持つ本当の実力を測れます。具体的には、物件広告に記載された表面利回りだけでなく、諸経費やローン返済を差し引いた「実質利回り」や「キャッシュフロー」を把握可能です。

シミュレーションは、投資判断における客観的で強力な根拠となります。まずは解説した手順に沿って、気になる物件の情報を集めてみてください。
ワンポイントアドバイス
シミュレーションの価値は正確に利益を予測できることだけではありません。むしろ「金利が2%上がったら?」「空室が3ヶ月続いたら?」と、最悪の事態を具体的に想定し、その対策を考える「思考の訓練」にもなります。

投資運用に絶対はないので、日頃からどれくらいリスクを見込んでいるかが成功のポイントです。シミュレーションを通じた訓練は、予期せぬ事態が起きても冷静に対応できる、投資家としての大きな武器になるでしょう。

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ワンポイントアドバイス

シミュレーションの価値は正確に利益を予測できることだけではありません。むしろ「金利が2%上がったら?」「空室が3ヶ月続いたら?」と、最悪の事態を具体的に想定し、その対策を考える「思考の訓練」にもなります。

投資運用に絶対はないので、日頃からどれくらいリスクを見込んでいるかが成功のポイントです。シミュレーションを通じた訓練は、予期せぬ事態が起きても冷静に対応できる、投資家としての大きな武器になるでしょう。

この記事のポイント

Q. どうして不動産投資シミュレーションをした方がいいのですか?

A. 不動産投資を検討する際に、収支シミュレーションは必ず必要になるプロセスです。シミュレーションが重要である理由について「不動産投資シミュレーションが必要な理由」にて解説します。


 Q. 不動産投資シミュレーションの作り方を教えてください。

A. 「計算が複雑そう…」と感じるかもしれませんが、一つひとつの項目を順番に整理していけば、誰でも精度の高いシミュレーションを作れます。詳しくは「不動産投資シミュレーションの作り方・使い方」をご覧ください。


 Q. 不動産投資シミュレーションの読み解き方を教えてください。

A. シミュレーションシートを完成させることはゴールではありません。シミュレーションの結果を投資判断にどう生かすかが最重要のポイントです。詳しくは「不動産投資シミュレーションの読み解き方・使い方」をご覧ください。

ライター:秦創平

海外も含めた不動産業界歴約12年を経て2019年からフリーランスのwebライターとして活動を開始。営業マン時代にはセミナー講師の経験も多数あり。国内・海外を問わず不動産投資に関する記事が専門。

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