不動産投資の賃貸管理会社の選び方|管理委託のメリット・デメリットも解説
ざっくり要約!
- 管理方法は「自主管理」「管理委託」「サブリース」の3つに大別される
- 管理会社選びは手数料の安さだけでなく実力を見て判断することが重要
- 契約書の「解約条件」と「業務範囲」を必ず事前に確認する
不動産投資をするにあたって、多くのオーナーが直面するのが「賃貸管理会社をどう選ぶか」という課題です。
- どの会社に任せれば、自分の物件を安心して預けられるのだろうか
- 手数料の安さにひかれるが、安かろう悪かろうという結果にならないだろうか
- もっと管理費が安くていいところがあるんじゃないか
このような疑問や不安は、安定した収益を目指す上で当然生まれるものです。賃貸管理会社の質は、空室リスクの抑制、資産価値の維持、そして投資家自身の手間と精神的な負担を大きく左右します。良い賃貸管理会社を選ぶことは、不動産投資の成否を分ける重要なポイントです。
この記事では、管理委託の基本的なメリット・デメリットから、優良な管理会社を見極めるための具体的なチェックポイントや、契約で失敗しないための法的な注意点などを解説します。
目次
不動産投資物件の管理方法
不動産投資における物件管理の方法は、大きく分けて「自主管理」「管理委託」「サブリース」の3種類です。それぞれにメリットとデメリットがあり、オーナーの居住地、物件との距離、専門知識の有無、そして賃貸経営にどれだけ時間を割けるかによって最適な選択は異なります。
自主管理
自主管理とは、オーナー自身が入居者募集から家賃の回収、クレーム対応、建物の維持管理まで、すべての管理業務を行う方法です。最大のメリットは、賃貸管理会社に支払う手数料がかからないため、運営コストを抑えられる点にあります。
その一方で、オーナー自身が負うべき責任と手間は非常に大きくなる点がデメリットです。例えば、入居者からの「深夜にエアコンが故障した」「上の階がうるさい」といったクレームに対応しなければなりません。また、家賃滞納が発生すれば、自ら督促や交渉を行う必要があります。
そのほか、賃貸借契約に関する法律(借地借家法など)や税務に関する専門知識も不可欠です。自主管理は、時間に余裕があり、賃貸経営に関する十分な知識と経験を持つオーナー向けの選択肢といえるでしょう。
管理委託
管理委託は、管理業務全般を専門の賃貸管理会社に委託する方法で、多くのオーナーに選ばれている一般的な形態です。
オーナーは管理会社と管理委託契約を結び、毎月家賃収入の中から一定の管理手数料(一般的には家賃の5%前後)を支払うことで、煩雑な実務のほとんどを代行してもらえます。自主管理で課題となる専門的な知識がなくても良いうえに、入居者対応に割かれる時間的な制約から解放される点が最大のメリットです。
管理委託を利用すれば、本業が忙しい方や物件から遠方に住んでいる方でも、安心して賃貸経営を続けられます。
サブリース
サブリースは、管理会社がオーナーから物件を丸ごと一括で借り上げ、それを入居者に転貸(又貸し)する契約形態です。「家賃保証」「一括借り上げ」とも呼ばれます。
オーナーにとってのメリットは安定した収入を見込めることです。サブリースを利用すれば、空室か満室かに関わらず、管理会社から毎月一定の賃料(家賃相場の80%〜90%など)が支払われます。
一見すると非常に魅力的な仕組みですが、リスクがあることも事実です。多くのサブリース契約では、数年ごとに賃料の見直しが行われます。その際、近隣の家賃相場の下落や建物の経年劣化などを理由に、保証賃料が一方的に引き下げられるケースも少なくありません。
また、オーナー側の都合で解約するのが難しい点にも要注意です。サブリースは「転貸借契約」とみなされて借地借家法が適用されるためです。
・「サブリース」に関する記事はこちら
サブリースとは? メリット・デメリットや注意点をわかりやすく解説
賃貸管理会社の役割と管理委託のメリット
賃貸管理会社へ業務を委託することには、手間の削減といった実務的なメリットだけではなく、メンタル面のメリットもあります。管理会社が具体的にどのような役割を担い、それがオーナーにとってどのようなメリットにつながるのかを、4つの側面に分けて解説します。
入居者管理
入居者管理の軸となるのは「空室を埋めるための募集」と「入居後の対応」の2つです。
募集業務では、不動産ポータルサイトへの情報掲載はもちろんのこと、地元の不動産会社との連携や法人契約のネットワークなどを駆使して入居希望者を探します。
そして、重要な業務の一つが、入居希望者が持つ家賃の支払い能力や人柄を見極めるための「審査」です。審査を行うことで、家賃滞納や入居者間のトラブルといったリスクを未然に防ぎます。
入居後の対応業務では、設備の故障や騒音問題といったクレームへの対応、家賃滞納者への督促など、専門的な知識と冷静な対応が求められる業務をすべて代行します。
安定した収益基盤を作る「優良な入居者の確保」をできることや、トラブル対応による精神的負担から解放されるなどの点も大きなメリットです。
入出金管理
入出金管理とは、毎月の家賃を確実に集金してオーナーへ送金すること、そしてその収支を明確に報告することです。
一見シンプルな業務に見えますが、複数の入居者からの入金を毎月確認し、万が一滞納が発生した際には迅速に督促を行うといった業務には、正確性と根気が求められます。
この煩雑な会計業務から完全に解放されることは、管理会社に業務を委託する大きなメリットです。さらに、管理会社は毎月「収支報告書」を作成してオーナーに提出します。この報告書には、家賃収入だけでなく、管理手数料や修繕費などの経費もすべて記録されています。
収支報告書を見れば、オーナーは物件の収支状況を客観的に把握できるでしょう。また、収支報告書は確定申告の添付書類にも使えるため、税務処理の負担が大幅に軽減されます。
建物管理
建物管理の目的は、物件の物理的な状態を良好に保ち、その資産価値を維持・向上させることです。
具体的には、エントランスや廊下といった共用部分の定期的な清掃、建物周辺の見回り、消防設備やエレベーターなどの法定点検の手配などが含まれます。清潔で手入れが行き届いていれば、入居希望者に対する印象が良くなり、内見時の成約率も上がるでしょう。
また、建物の状態を定期的にチェックすることで、雨漏りの兆候や外壁のひび割れといった劣化を早期発見できます。問題が深刻化する前に修繕する「予防保全」が可能となり、将来的な大規模修繕のコストを抑制できるのもメリットです。
業務効率の向上とストレスの軽減
ここまで挙げた「入居者管理」「入出金管理」「建物管理」という3つの役割は、最終的にオーナーの「業務効率の向上」と「ストレスの軽減」という大きなメリットに集約されます。
信頼できるプロに実務を一任することで、夜にクレームの電話が鳴ったり、滞納者との気まずい交渉をしたりといった精神的負担から解放されるでしょう。
そして、煩雑な業務から解放されて生まれた時間を使えば、本業に集中したり、家族との時間を大切にしたり、あるいは次の投資戦略を練るなど、より生産的な活動に充てることも可能です。
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賃貸管理会社選びでチェックすべきポイント

賃貸管理会社は数多く存在しますが、特徴や強みはそれぞれに異なります。自分にとって最適なパートナーを見つけ出すためには、明確な判断基準が必要です。ここでは、賃貸管理会社を選ぶ際に最低限チェックすべき4つの重要なポイントについて解説します。
管理手数料
管理手数料は管理会社に支払う最も基本的なコストです。一般的な相場は、月額家賃の5%(税別)前後とされています。例えば家賃10万円の物件であれば、月々5,500円(税込)が目安です。
ただし、手数料率だけで管理会社を比較するのは避けましょう。相場より極端に安い手数料を提示している会社には裏があることも多いものです。
例えば、「入居者決定時の広告料(AD)が高額に設定されている」「一部の業務はオプション扱いで別途費用がかかる」といった事情が隠れていることも少なくありません。
重要なのは「その手数料で、どこまでの業務をカバーしてくれるのか」を明確にすることです。担当者と面談する際に、「毎月の管理手数料以外に、入居者募集時や契約更新時に発生する費用はありますか?」と具体的な質問を投げかけて、費用の全体像を把握するようにしましょう。
対応エリア・管理戸数
管理会社の事業規模を示す指標としては「対応エリア」と「管理戸数」が挙げられます。一方で、管理会社を見極めるためには、それぞれの数字を深堀することが必要です。
対応エリアで確認すべきことは、自社の物件所在地が単に「エリア内」にあるかどうかだけではありません。地域の家賃相場や入居者層の特性、競合物件の状況といった「土地勘」を持っているかが重要です。
例えば地域に根差した会社であれば、地元の仲介業者との強い連携により、入居者付けで有利に働くこともあるでしょう。
管理戸数は、その会社の実績や信頼性を示す一つの目安になります。しかし、戸数が多ければ良いというわけでもありません。注目すべきは、従業員数に対して管理戸数が多すぎないか、つまり「一戸一戸にきめ細やかな対応ができる体制か」という点です。
面談時には「担当者一人が何戸くらいの物件を担当していますか?」と質問してみることで、管理の質を見極める手がかりを掴めます。
入居率
入居率は、その管理会社が持つ「収益を生み出す力」を最も客観的に示す指標です。多くの会社が「入居率98%」などの数値をアピールしていますが、この数字を鵜呑みにしてはいけません。
入居率の算出方法は各社で異なっており、中には募集期間中の物件を分母から除外して数値を高く見せているケースなどもあるからです。
管理会社の実力を見極めるためには、「その入居率の算出定義は何ですか?」あるいは「募集を開始してから次の入居者が決まるまでの平均期間はどれくらいですか?」など、一歩踏み込んだ質問をすることが有効です。
踏み込んだ質問をすることで、単なる数字の高さだけでなく、空室期間をいかに短縮できるかという、管理会社の真の実力を推し量れます。
レスポンスの早さ
担当者のレスポンスの早さは、管理会社の顧客に対する姿勢や業務遂行能力を測る、重要な指標です。
例えば、入居希望者から内見の問い合わせがあった際に、管理会社の対応が遅れれば、その間に希望者は他の物件に決めてしまうかもしれません。オーナーから見ると、これは大きな機会損失です。また、入居中のトラブルが発生した時に迅速な対応ができなければ、入居者の不満が高まって退去につながる可能性もあります。
レスポンスの質を確認する最も確実な方法は、実際に問い合わせてみることです。最初に資料請求のメールを送った際の返信速度や、電話で質問した際の丁寧さ、的確さなど、契約前の段階からその会社の姿勢は表れます。
管理委託のデメリットと失敗しないための契約上の注意点
賃貸経営を安定させるうえでは、信頼できる管理会社を選ぶことが必須です。一方で、契約内容の確認を怠ると、予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
管理委託における代表的なトラブル事例を紹介するとともに、失敗を防ぐための確認ポイントについて解説します。
賃貸管理会社とのトラブル事例
賃貸管理会社との間に起こるトラブルとして多いのは以下の3つです。
空室が長期間埋まらない
ホームページに掲載されている高い入居率を信じて契約したが、自分の物件は半年以上も空室のまま。問い合わせても「善処します」と言うだけで、具体的な募集活動の報告が一切なく、本当に動いてくれているのか分からない。
不透明なリフォーム費用の請求
退去者が出た後、管理会社から「次の入居者のために」と高額なリフォームの見積もりが届いた。相見積もりを取りたいと申し出ても、「指定業者以外は使えない」と断られ、適正価格か判断できないまま費用を支払わされた。
担当者からの連絡が一切ない
契約後は担当者からの連絡が途絶え、収支報告書が送られてくるだけ。建物の状況や入居者の様子が全く分からず、何か問題が起きていないか常に不安な状態が続いている。
これらの事態が起こる主な原因は、契約前の確認不足にあります。次の3つのポイントを必ずチェックしましょう。
契約形態を確認する
賃貸管理会社との契約には、主に「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の2種類があります。
一般媒介契約: 複数の管理会社に同時に募集を依頼できる形態です。
専任媒介契約: 依頼する管理会社を一社に絞る形態です。
どちらにもメリットはありますが、賃貸管理においては、責任の所在を明確にし、一社に集中して能動的な管理・募集活動をしてもらうためにも「専任媒介契約」を選択するのが一般的です。
ただし、これは「信頼できる一社」を見つけられることが大前提となります。もし一社に絞ることに不安がある場合は、まずは一般媒介で各社の動きを見てから専任に切り替えるという選択肢をとっても良いでしょう。
解除条件を確認する
万が一、管理会社を変更する事態になった場合、足かせになりかねないのが管理委託契約書に記載された解除条件に関する条項です。スムーズに契約を解除して次の会社へ切り替えられるかどうかは、この条項の中身によって決まります。
以下の2点が重要なポイントです。
解約の予告期間
オーナー側から解約を申し出る場合、何ヶ月前までに通知する必要があるかを確認します。一般的な期間は「3ヶ月前」です。
中途解約時の違約金
契約期間の途中で解約した場合、違約金やペナルティが発生するかどうか、また発生する場合はその金額と算出根拠を明確に確認します。
また、「オーナー側からは正当な事由なく解約できない」などの、一方的に不利な条件が記載されていないかも注意点です。
業務範囲を明確にする
「これは手数料の範囲内で対応してくれると思っていた」「この費用が別途かかるとは聞いていなかった」などの「言った言わない」のトラブルを防ぐために、業務範囲は明確にしておきましょう。
契約を締結する前に、管理委託契約書に付帯する「業務一覧表」や「重要事項説明書」を読み込み、以下の点をクリアにしておきましょう。
月額手数料に含まれる業務
定期巡回や収支報告書の作成など、標準的な業務がどこまで含まれるか。
別途費用が発生する業務
入居者募集時の広告料(AD)の負担割合、契約更新時の事務手数料、原状回復工事の費用など、追加で支払いが必要となる項目とその金額。
特に費用が絡む項目については、少しでも疑問があれば遠慮せずに質問し、メールか書面で回答をもらっておくと安心です。
リフォームの見積もりについては、「〇〇一式」のような大雑把な記載があれば、各項目ごとに細かく出してもらうように依頼し、ネット情報などを参考に単価を見比べたりするのも高額請求への対策になるでしょう。
まとめ
賃貸管理会社を選ぶ際には、手数料の安さといった目先の数字だけでなく、総合的な視点で判断することが重要です。「入居率」に代表される収益化能力、「レスポンスの早さ」に見られる業務への姿勢、そして「解除条件」といった契約内容まで、複数の要素を比較検討する必要があります。
最適な管理会社は、単なる業務代行者ではなく、オーナーの大切な資産価値を守り、収益を最大化するためのビジネスパートナーです。自分に合った管理会社を見つけるためには、何を最優先にしたいかを考えることがポイントになります。

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ワンポイントアドバイス
管理会社との面談時には、可能であれば、いろいろな質問をするとともに、同じエリアでその会社が実際に管理している物件をいくつか見せてもらうことをお勧めします。エントランスやゴミ置き場が清潔に保たれているか、掲示板は整理されているかなど、実際の現場には、その会社の「仕事の質」が如実に表れます。書類上の数字や担当者の言葉だけでは分からない、リアルな管理の品質を見抜くための最も確実な方法の一つです。
この記事のポイント
Q. 不動産投資物件の管理方法は?
A. 不動産投資における物件管理の方法は、大きく分けて「自主管理」「管理委託」「サブリース」の3種類です。詳しくは「不動産投資物件の管理方法」をご覧ください。
Q. 賃貸管理会社はどのようなことをしてくれるのですか?メリットはありますか?
A. 賃貸管理会社へ業務を委託することには、手間の削減といった実務的なメリットだけではなく、メンタル面のメリットもあります。詳しくは「賃貸管理会社の役割と管理委託のメリット」をご覧ください。
Q. 管理委託のデメリットはありますか?
A. 賃貸経営を安定させるうえでは、信頼できる管理会社を選ぶことが必須です。一方で、契約内容の確認を怠ると、予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクもあります。詳しくは「管理委託のデメリットと失敗しないための契約上の注意点」をご覧ください。