サブリースとは? メリット・デメリットや注意点をわかりやすく解説
ざっくり要約!
- サブリースは賃貸経営に時間を割けない人におすすめ
- サブリースを利用すれば入居者対応などのストレスも回避できる
- サブリース会社からの途中解約や保証賃料の値下げに要注意
サブリースとは、賃貸物件の所有者が不動産会社に物件を一括して貸し出し、その不動産会社が別途募集した入居者に転貸する仕組みです。不動産投資や賃貸経営を始める人によく利用されている管理形態の一つですが、メリットとデメリットがあります。
サブリースのメリットは、例えば「空室リスクを回避できる」「賃貸管理の手間が省ける」といったものです。その一方で「賃料が減額される可能性がある」「契約内容が複雑」といった点はデメリットとなります。この記事では、サブリースの仕組みやメリット・デメリット、さらに契約時の注意点などについて解説します。
目次
サブリースとは?
サブリースとは、不動産投資や賃貸経営を行う上で利用される運用方法の一つです。不動産オーナーが自分で賃貸運用をするのではなく、サブリース会社が物件を一括して借り上げ、入居者に転貸する仕組みとなっています。
従来は仕組みを一括りにして「サブリース」と呼ばれていましたが、2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定されたことで「マスターリース」と「サブリース」に分けて定義されるようになりました。
マスターリース契約
マスターリース契約とは、物件のオーナーがサブリース会社との間で締結する契約のことを指します。日本語での名称は「原賃貸借契約」です。
サブリースを利用すると、入居者が入っていても入っていなくても、サブリース会社から物件のオーナーへ保証賃料が支払われます。サブリース会社は、入居者から受け取る家賃と、オーナーに支払う保証賃料との差額を利益としています。
マスターリース契約には保証賃料の金額や支払いのタイミングなどが規定されるため、契約締結の前には入念な確認が必要です。
サブリース契約
サブリース契約とは、サブリース会社が部屋の入居者との間で締結する契約のことを指します。日本語では「転貸借契約」と呼ばれます。
なお、もともとはマスターリースもサブリースも一括りにして「サブリース契約」と呼ばれることが多く、実務を進めるうえで呼び分けることはほとんどありませんでした。
マスターリースとサブリースとで契約を分けるようになったことで、物件オーナーのことを「マスターレッサー」、物件を借り上げるサブリース会社のことを「マスターレッシー」と呼ぶことも増えてきています。
サブリースのメリット
サブリースは、賃貸経営の負担を軽減し収益を安定させるための有効な選択肢です。特に空室リスクや管理業務のストレスを減らせるため、不動産経営の効率化を図れます。多忙なオーナーや賃貸運営の経験が少ない投資初心者にとって、サブリースのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
安定した賃料収入が得られる
通常、不動産の賃貸経営では、空室が発生すると家賃収入が入ってきません。しかし、サブリースを利用すれば不動産会社が一定の家賃を保証するため、空室が発生しても決まった収益を得られます。
サブリースは、ローンを利用して物件を購入したオーナーにとって特に有効です。入居者が入っているといないとに関わらず、ローン返済は毎月必ず発生するからです。
サブリースを利用せずに空室が発生した場合は、自己資金からローンを返済しなくてはなりません。しかし、サブリースを利用すれば、空室発生時に自己資金から返済するリスクを軽減できます。
管理の手間がかからない
サブリースを利用するもう一つの大きなメリットは、賃貸管理の手間を大幅に削減できることです。通常の賃貸経営では、入居者募集や契約更新、家賃滞納時の対応、退去後の原状回復など、さまざまな意思決定をオーナー自身が行う必要があります。
その一方で、サブリースを利用すれば、これらの管理業務をすべて不動産会社が代行するため、オーナーは日常的な対応に時間を取られることがありません。特に、本業や家庭の都合で忙しいオーナーにとって、サブリースは有効な選択肢となります。
入居者とのトラブルを避けられる
通常の賃貸経営では、入居者とのトラブルに対応しなくてはならないこともあります。起こり得る主なトラブルとは、例えば家賃滞納や入居者同士の騒音トラブルなどです。
トラブル対応は大きなストレスとなるほか、トラブルを上手く解決できないと二次的なトラブルを誘発する恐れもあります。
サブリース契約を利用すれば、トラブル解決の主体が不動産会社となるため、精神的な負担を軽減可能です。また、不動産会社がプロとして対応することで、トラブルの迅速かつ適切な解決も期待できます。
サブリースのデメリット
サブリースには空室リスクの軽減や管理の負担軽減といった大きなメリットがある一方で、契約条件や運用面で注意を要するポイントもあります。
メリットとともにデメリットも正しく理解し、自分が理想とする賃貸経営のスタイルや投資の目的に合っているかを判断することが、トラブルを回避する鍵です。
管理委託と比べて手数料が高額
サブリースを利用すると、サブリース会社がオーナーに対して定額の家賃収入を保証する一方で、賃料の一部を手数料として差し引きます。
この手数料は、通常の賃貸運用で発生する管理委託費(家賃の3%〜5%)に比べて高額である点に要注意です。サブリースの手数料相場は家賃の10%〜20%程度となっています。
サブリースを利用すると、基本的に通常の賃貸運用よりも収益性が下がる点に要注意です。空室リスクが低いエリアや物件であれば、サブリースを利用するよりも通常の賃貸運用をする方が良い場合もあります。
入居者を選べない
サブリースを利用すると、入居者の選定や賃貸契約の締結をサブリース会社が代行します。そのため、オーナー自身は入居者を選べません。
不動産会社は空室を埋めることを優先するため、オーナーが望まない入居者が選ばれる可能性もあるでしょう。オーナーに保証賃料を支払っている関係上、空室期間が長引くと不動産会社の赤字が拡大していくためです。
例えば、物件の使用ルールを守らない入居者などが入居した場合、オーナーとしては不満を感じることもあるでしょう。サブリース契約を締結する前に、サブリース会社の入居者選定基準や管理方針を事前に確認しておくことが必要です。
解約が難しいケースがある
サブリース契約には数年単位で契約期間が設定されている場合が多く、オーナーが中途解約を希望しても、解約条件や違約金の発生により簡単に解約できないケースもあります。
また、サブリースを利用すると不動産会社が借主となり、借地借家法が適用されます。法的に正当な事由がなければ、オーナー側からの解約が認められないケースは多いものです。解約が難しいことで、通常のオーナーチェンジと比べて売りづらく、価格が落ちる可能性もあります。
サブリース契約を締結する時には、解約条件や違約金の有無、手続きの流れなどを把握しておくことが大切です。
サブリースの注意点
サブリースを活用すれば賃貸経営の負担が軽減される一方で、契約後に賃料が減額されたり、解約などに関する問題が発生したりするケースもあります。
契約後の賃貸経営を安定させるためには、事前確認が欠かせません。ここからは、具体的な注意点を4つ挙げ、それぞれについて解説していきます。
賃料が減額となる可能性がある
サブリース契約を結んでも、保証賃料が見直される場合があります。保証賃料の見直しは、その大半が減額です。例えば新築物件を運用している場合は、2人目の入居者が入ったタイミングで保証賃料が減額されることも少なくありません。
最初の入居者は「新築物件だから」という理由で相場より高めの家賃を取れますが、2人目以降の入居者は新築物件として募集できないため、家賃が下がることも多いものです。入居者から入ってくる家賃が下がった場合は、オーナーに支払われる保証賃料も下がるケースが少なくありません。
このため、契約前に「長期間家賃保証」とうたわれている場合でも、契約書を確認しておきましょう。保証賃料見直しの頻度や条件、下限額などは確認必須の項目です。
途中解約される可能性がある
サブリース契約はオーナー側からの解約が難しい一方で、サブリース会社から途中解約を通知される場合もあります。「サブリースはやめとけ」「サブリースは危ない」という意見も散見されるのは、過去に保証賃料の減額や途中解約でトラブルになった事例があるからです。
なお、サブリース会社から解約される理由の大半は、家賃の低下によってサブリース会社が収益を確保できなくなった、そもそも入居者が入らないなどです。
サブリースを解約した場合は、別のサブリース会社を探すか管理委託による運用に切り替えるか、選択する必要があります。
急なサブリースの解約で空室期間が長引くなどのリスクもあるため、契約書に記載された解約条件や事前通知の期間を確認し、契約解除後の対応策を事前に考えておくことが重要です。
出費も伴う
サブリース契約は保証賃料を受け取れる運用方法ですが、例えば、入居者が退去した後の原状回復費用や修繕費、入居者募集用の広告費などがオーナー負担となる場合があります。
また、保証賃料支払いの免責期間が設定されていることもあり、免責期間中は保証賃料が支払われない点にも要注意です。サブリース契約を締結してから3ヶ月間は免責期間とされていることも少なくありません。
オーナー負担の費用が収益に与える影響を考慮し、契約前に具体的な費用負担の範囲を確認しておくことが重要です。特に、契約書で曖昧な記載がある場合には、サブリース会社に詳細を確認し、不明点を解消してから契約を締結しましょう。
サブリース会社とトラブルになる可能性がある
過去に起きたサブリースに関連するトラブルとしては「かぼちゃの馬車問題」があります。かぼちゃの馬車は女性向けのシェアハウスであり、オーナーはサブリースで保証賃料を受け取っていました。
しかし、シェアハウスには入居者があまり入っていなかったのが実態です。また、かぼちゃの馬車に融資していたスルガ銀行は、融資額を拡大するために内部でローン申込書類を改ざんして不正融資を行っていました。
スルガ銀行が新規の融資を停止したことで、かぼちゃの馬車の運営会社は経営破綻し、サブリース契約を結んでいたシェアハウスのオーナーは大きな損害を被ることになりました。
かぼちゃの馬車が大きな問題となったように、サブリースのサービスを展開している会社の中には、そもそも無理なビジネスモデルで規模を拡大しようとしている会社も無いとは言い切れません。
サブリースを利用するなら、サブリース会社の背景や実績などについても確認することが重要です。
サブリースに向いているのはどんな人?

サブリースは、すべての不動産オーナーにとって万能な選択肢ではありません。しかし、賃貸経営の初心者や多忙な方、また遠方に住んでいるオーナーにとっては、サブリースのメリットは大きいと言えます。
賃貸経営初心者
不動産投資初心者の方にとってサブリースは有効な選択肢の1つです。物件管理や入居者対応、契約更新手続きなど、賃貸経営の実務は多岐にわたりますが、経験が無いとどこから手をつけて良いかわからないこともあるでしょう。
サブリースを利用すれば、実務を全てプロに任せられるため、オーナーは専門知識がなくても安定した賃貸経営をスタートできます。また、空室リスクが軽減されるため、初めての賃貸経営でも収益を読みやすくなる点は大きなメリットです。
・「不動産投資初心者が知っておきたい基本知識」に関する記事はこちら
不動産投資初心者が知っておきたい基本知識と始め方のポイント
不動産投資の勉強方法は? 効率的に学ぶ4つの方法
仕事や子育てで忙しい方
本業が多忙であったり、子育てなどで自由な時間が限られている方にもサブリースはおすすめです。通常の賃貸経営では、入居者募集や家賃回収、トラブル対応などに多くの時間と労力を要します。しかし、サブリースを利用すれば、これらの業務負担を大幅に軽減できます。
また、不測の事態が起きてスピーディーな対応を求められる場面でも、サブリース会社が窓口となって対応してくれます。安心して日常の仕事や家庭生活に集中できる点で、サブリースはとても有用な仕組みといえるでしょう。
海外・遠方に住んでいる方
物件が自分の住んでいる場所から遠く離れている場合や、海外に居住しているなどの場合は、賃貸管理が難しくなります。このような場合は、サブリースを活用することで、物件の状態を気にせず賃貸経営ができるでしょう。
現地に頻繁に足を運べなくても、入居者の募集やメンテナンス、トラブル対応をすべてサブリース会社が代行してくれます。遠方にある物件を効率的に管理したい方にとって、サブリースは有効な選択肢です。
まとめ
サブリースは、賃貸経営の空室リスクを軽減し、運用に関する管理の負担を大幅に減らせる有効な手段です。
安定した賃料収入や、実務をサブリース会社に任せられるなどのメリットがある一方で、保証賃料の減額リスク、オーナー側からの解約が難しいなどのデメリット・注意点もあります。
サブリースの利用が向いているのは、賃貸経営の初心者や、多忙で賃貸経営の実務に時間を取れない方、賃貸物件から遠い場所に住んでいる方などです。利用に当たっては、保証賃料や解約に関する項目などを事前に確認することが重要になります。

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ワンポイントアドバイス
ネットにはサブリースを悪者にするような論調の意見も目立ちますが、目的さえ明確になっていれば、賃貸管理の手間を省けるなどの点で、サブリースはとても有効な選択肢です。その一方で、収益の安定性だけに着目してサブリースを利用するのは、あまりおすすめできません。例えば入居者を入れるのが難しいなど、もともと収益性の低い物件は、サブリースを利用しても上手くいかないことが多いものです。
物件選びに失敗しているとサブリースを利用しても上手くいかないので、まずは物件の収益性を判断できる目を養うことが重要です。
この記事のポイント
Q. サブリースとはどのようなものですか?
A. サブリースとは、不動産投資や賃貸経営を行う上で利用される運用方法の一つです。不動産オーナーが自分で賃貸運用をするのではなく、サブリース会社が物件を一括して借り上げ、入居者に転貸する仕組みです。詳しくは「サブリースとは?」をご覧ください。
Q. サブリースのメリットは?
A. サブリースは、賃貸経営の負担を軽減し収益を安定させるための有効な選択肢です。特に空室リスクや管理業務のストレスを減らせるため、不動産経営の効率化を図れます。詳しくは「サブリースのメリット」をご覧ください。
Q. サブリースのデメリットは?
A. サブリースには空室リスクの軽減や管理の負担軽減といった大きなメリットがある一方で、契約条件や運用面で注意を要するポイントもあります。詳しくは「サブリースのデメリット」をご覧ください。