不動産投資にかかる税金は? 税金対策になる理由と効果的な物件選び
ざっくり要約!
- 不動産投資では、不動産取得税や登録免許税、印紙税、所得税、相続税などさまざまな税金が課せられる可能性がある
- 不動産投資をすると、所得税や住民税、相続税、贈与税の負担が軽減されることがあるため、資産形成だけでなく税金対策にも活用できる
不動産投資では、投資用不動産を取得するときや運用中、売却時にさまざまな税金が課せられます。また、相続や贈与で不動産を取得したときも、税金がかかることがあります。
その一方で、不動産投資をすると所得税や相続税などの負担を軽減することも可能です。投資用不動産をより効果的に活用するためには、税金に関する理解が欠かせません。
今回は、不動産投資で課せられる税金の種類や税負担を軽減できる仕組み、税金対策をするときの不動産の選び方などを解説します。
目次
不動産投資にかかる税金
まずは、不動産投資をする人に課せられる主な税金の種類を課税されるタイミングごとに解説します。
不動産の購入・新築時にかかる税金
マンションやアパートなどを購入・新築するときに課せられる可能性がある税金は、以下の通りです。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 消費税
- 所得税
不動産取得税は、土地や建物を取得した人に課せられる税金です。不動産取得税がかかる場合、不動産を購入・新築したあとの半年〜1年後に納税証明書が送付されてきます。
登録免許税は、登記手続きをする際に課せられる税金です。不動産の所有権を変更する「所有権移転登記」や不動産を新築したときの「所有権保存登記」、不動産を融資の担保にする「抵当権設定登記」をする際に課税されます。
印紙税は、所定の契約書や証書などに課税される税金です。不動産売買契約書や建築工事請負契約書、不動産投資ローンの契約書は、印紙税の課税対象となります。
消費税は、商品の販売やサービスの提供に課せられる税金です。仲介手数料などに消費税が課税されるほか、売主が消費税の課税事業者である場合には建物の取得代金にも課税されます。土地部分の購入代金には課税されません。
所得税は、購入した不動産の売主が日本に居所をもたない非居住者である場合に課せられる可能性のある税金です。売主に支払う対価の一部を源泉徴収する形で納めることになります。売主に対する課税ではありますが、買主が納付手続きをする必要があり怠ると不納付加算税がかかるため注意が必要です。
運用時にかかる税金
投資用不動産を運用するときに課税される税金は、以下の通りです。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 所得税・住民税
- 個人事業税
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有する人に課せられる税金です。所有する不動産が、都市計画法にもとづく市街化区域内にある場合は、都市計画税も課税されます。
所得税と住民税は、所得に対して課税される税金です。不動産投資では、家賃収入や礼金などの収入から必要経費を差し引いた部分は「不動産所得」として、所得税と住民税の課税対象になります。また2037年(令和9年)までは、復興特別所得税も課税されます。
個人事業税は、不動産投資の規模が一定以上である個人に課せられる税金です。たとえば、貸し付けているアパートの部屋が合計10室以上である場合、個人事業税の課税対象となります。
「不動産投資 税率」に関する記事はこちら
不動産所得に税金はいくらかかる?計算方法や税率、不動産所得と家賃収入の違いを解説 不動産投資の基礎知識
売却時にかかる税金
投資用不動産を売却するときに課せられる税金は、以下の通りです。
- 所得税(譲渡所得税)・住民税・復興特別所得税
- 印紙税
- 登録免許税
所得税(譲渡所得税)や住民税、復興特別所得税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金です。給与所得や事業所得などの所得とは分けて、税額が計算されます。
また、投資用不動産を売却するときは、買主と不動産売買契約書を取り交わすため、印紙税も課税されることがあります。売却時に不動産投資ローンを完済する場合は、抵当権抹消登記をするため、登録免許税の納税も必要です。
贈与・相続時にかかる税金
不動産を贈与や相続によって取得した人には、以下の税金が課せられる可能性があります。
- 贈与時:贈与税・不動産取得税・登録免許税
- 相続時:相続税・登録免許税
贈与税は、財産を無償で譲り受けたときに課せられる税金です。1年間で贈与された財産が合計で110万円を超えると、超過した部分は原則として贈与税の課税対象となります。
また、贈与で不動産を取得したときは、不動産取得税が課せられることがあります。贈与された人に名義を変更するために所有権移転登記をするため、登録免許税の納税も必要です。
相続税は、相続や遺贈※によって不動産や現金などを取得した際に課せられる税金です。各相続人が取得した遺産の総額が、基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人)」を超えると、原則として相続税が課税されます。※遺言書によって相続人ではない人に遺産を送ること
加えて、相続によって不動産を取得した人は、相続登記をして名義を相続人に変更する必要があるため、登録免許税も課税されます。一方で、不動産取得税は課税されません。
不動産投資で所得税・住民税が節税できる仕組み
不動産投資をすると、所得税や住民税の負担が軽減されることがあります。減価償却費を計上して発生した帳簿上の赤字を、他の所得と相殺することで課税の対象となる所得が減るためです。
減価償却費を経費に計上できる
不動産投資では、不動産を取得したときの費用を一括で経費に計上しません。「減価償却」により、建物部分の取得費用と法定耐用年数をもとに算出される一定金額を、毎年少しずつ経費に計上します。
減価償却とは、建物や設備などの資産価値が時間の経過とともに減少していく分を「減価償却費」として毎期の経費に計上する会計処理のことです。
法定耐用年数は、建物や設備などを使用できる期間として法的に定められている年数です。以下の通り、建物の構造ごとに定められています。
- 木造住宅:22年
- 鉄筋コンクリート造または鉄骨・鉄筋コンクリート造の住宅:47年
減価償却費は、実際の支出をともなわない経費です。毎年の収入から減価償却費を含む必要経費を差し引くと、実際は黒字でも帳簿上では赤字となることがあります。
この赤字分を、後述する損益通算によって他の所得と相殺することで、課税対象となる所得が減り、所得税や住民税の負担が軽減されます。
赤字が発生したときは損益通算ができる
損益通算とは、不動産投資や事業などで生じた損失を、同じ年の利益(所得)と相殺して、課税対象となる所得を減らせる制度のことです。
たとえば、不動産投資による収入が500万円で、減価償却費を含む必要経費が600万円、給与所得が700万円であるとしましょう。
この場合、不動産所得は「収入500万円−必要経費600万円=−100万円」となり、赤字が生じます。この100万円の赤字分を、損益通算により給与所得700万円と相殺することで、その年の総所得金額が600万円に減少するため、所得税や住民税の負担が軽減されます。
損益通算をするためには確定申告が必要です。確定申告の期間は、例年2月16日〜3月15日ですが、土日祝によって前後します。
「不動産投資 節税」に関する記事はこちら
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不動産投資が相続税・贈与税の税金対策になる理由
相続税や贈与税を計算するときは、財産の金銭的な価値を評価して「相続税評価額」を算出します。預貯金や有価証券などの相続税評価額は、原則として相続が開始されたときの時価と同じです。一方で不動産の場合、相続税評価額は時価よりも低くなるのが一般的です。
そのため、預貯金を不動産に換えて贈与または相続すると、相続税や贈与税の負担を軽減できることがあります。
また「小規模宅地等の特例」を適用できると、土地部分の相続税評価額がさらに下がり、相続税を大きく軽減することが可能です。
不動産の評価額が時価よりも低く算出される
土地部分の相続税評価額は、原則として国税庁が定める「路線価(道路に面する土地1㎡あたりの評価額)」をもとに算出されます。建物部分については、市区町村が算出する不動産価格である「固定資産税評価額」が相続税評価額となります。
路線価を用いて求めた土地部分の相続税評価額は、多くの場合、時価の8割程度です。また、固定資産税評価額は、建物の再建築価格の5〜7割程度です。そのため、不動産の相続税評価額は時価よりも低くなります。
加えて、賃貸アパートや賃貸マンションなどを相続した場合は、土地は「貸家建付地」として評価され、相続税評価額がさらに下がります。貸家建付地は、所有者のみが利用する自用地とは異なり、建物を取り壊すなどの行為が制限されるためです。
相続税評価額が下がれば、相続税や贈与税の負担も軽減されます。そのため、資産の一部でマンションやアパートなどを取得し、それを相続または贈与することで、相続税評価額が抑えられて税負担を軽減する効果が期待できます。
小規模宅地等の特例の適用も可能
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった人)が住んでいた家屋がある土地や賃貸事業用の不動産が建つ土地などを相続したときの特例です。所定の要件を満たすと、土地部分の相続税評価額が減額され、相続税の負担が軽減されます。
賃貸アパートや賃貸マンションなどを相続する場合、小規模宅地等の特例を適用できると、土地部分の相続税評価額が、土地面積200㎡を上限に50%減額されます。
小規模宅地等の特例を受けるためには、要件を満たしたうえで相続税の申告が必要です。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。
【要注意】法改正によりタワマン節税はできなくなった
タワマン節税とは、借り入れを利用して高層マンションの一室を購入し、相続税を軽減する手法のことです。
タワーマンションの高層階にある部屋は、眺望が良い、プライバシーを確保しやすいなどの理由で人気があり、市場価格が高い傾向にあります。
一方、部屋の床面積が同じであれば高層階と低層階で土地部分の相続税評価額は基本的に変わらず、建物部分についても階層による差はさほど生じません。
部屋の階層が高くなるほど、基本的には時価と相続税評価額の乖離が大きくなり、相続税の節税効果が高まっていきます。そのため、富裕層を中心にタワーマンションの高層階にある部屋を購入して、相続税を節税しようとする人は少なくありませんでした。
しかし、このタワーマンションを用いた過度な節税が問題視されたことで、国税庁により区分マンションの評価方法が見直されます。
2024年1月1日以降に相続や贈与で取得するマンションは、相続税評価額が最低でも市場価格の60%程度になるよう必要に応じて補正されるようになりました。改正後も一定の節税効果には期待できるものの、従前と比べてその効果が落ちるケースもあるでしょう。
節税効果を高める物件選びのポイント

続いて、所得税と住民税、相続税と贈与税を節税するための物件選びのポイントを解説します。
所得税・住民税を節税したい場合
所得税や住民税の節税効果を高めたいのであれば、残りの耐用年数が短い不動産に投資をするのも1つの方法です。建物の取得価格が同じである場合、残りの法定耐用年数が短いほうが、毎年の減価償却費が大きくなり、より税負担を軽減しやすくなるためです。
たとえば、木造アパートに投資をする方法があります。木造住宅の法定耐用年数は22年と比較的短く設定されているため、1年あたりの減価償却費を大きく取りやすいのです。
また、中古物件を選ぶのも1つの方法です。減価償却をする際、すでに経過している築年数の分だけ耐用年数が短くなるため、建物価格や構造が同じ新築物件よりも減価償却費が大きくなり、節税効果を高められる可能性があります。
相続税・贈与税を節税したい場合
相続税や贈与税の負担を軽減したいときは、ターミナル駅の近くや一等地などに建つ不動産に投資をする方法があります。立地の良い不動産は人気があり、時価が高くなりやすいため、相続税評価額との乖離が大きくなり、税負担が軽減されやすくなります。
反対に、駅から離れた場所にある不動産や人口の減少が進む地方都市にある不動産などは、時価が低く相続税評価額とあまり乖離しないことがあります。また、立地が悪く人気のないエリアの不動産を選んでしまうと、安定した家賃収入や売却益を得るのも困難です。
不動産会社ともよく相談をし、時価と相続税評価額の乖離を意識して、物件を選ぶことが大切です。
まとめ
不動産投資では、不動産取得税や登録免許税、所得税、印紙税などさまざまな税金がかかります。税金の種類と課せられるタイミングを把握し、必要に応じて納税の資金を準備しておきましょう。
一方で、不動産投資で税金対策をすることも可能です。たとえば、減価償却費の計上によって生じた帳簿上の赤字分を他の所得と相殺すると、所得税や住民税の負担が軽減されます。
また、現金や有価証券ではなく、投資用不動産という形で相続・贈与をすると、相続税や贈与税を軽減することも可能です。

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ワンポイントアドバイス
所得税や相続税などを節税するためだけに、不動産投資を始めるのは避けたほうが良いでしょう。たとえば、賃貸需要が低いエリアの不動産に投資をすると、空室が続いてキャッシュフローが赤字となり、所有する人の財産を食い潰してしまいかねません。また、将来売却するとき買い手がつきにくく、処分に困る可能性もあります。
節税を目的に不動産投資を始める場合でも、安定した家賃収入が期待でき、売却時に買い手が見つかりやすい物件を選ぶことが大切です。
この記事のポイント
Q. 不動産投資にはどのような税金がかかりますか?
A. 不動産投資をする人に課せられる主な税金の種類と課税されるタイミングを「不動産投資にかかる税金」にて解説しています。
Q. 不動産投資で所得税・住民税が節約できるって本当ですか?
A. 不動産投資をすると、所得税や住民税の負担が軽減されることがあります。減価償却費を計上して発生した帳簿上の赤字を、他の所得と相殺することで課税の対象となる所得が減るためです。詳しくは「不動産投資で所得税・住民税が節税できる仕組み」をご覧ください。
Q. どのような物件を選べば節税になりますか?
A. 所得税と住民税、相続税と贈与税を節税するための物件選びのポイントについて、「節税効果を高める物件選びのポイント」で詳しく解説しています。