不動産投資で節税ができる仕組みを解説! 住民税・所得税・相続税を節税したいときの注意点は?
ざっくり要約!
- 不動産投資には所得税・住民税・相続税の節税効果がある一方、デッドクロスやキャッシュフロー悪化に注意
- 法人化による節税は状況次第で、法改正による最新の制度変更にも考慮が必要
不動産投資は人気のある資産運用方法として知られていますが、その大きな魅力の一つに「節税効果」があります。しかし、不動産投資による節税には複雑な仕組みがあり、適切に理解した上で活用しなければ、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれません。
この記事では、不動産投資で実現できる所得税や住民税、相続税などの節税の仕組みを詳しく解説します。
また、法人化のメリット・デメリットや、注意すべきポイントについても紹介します。不動産投資による節税を検討されている方、すでに不動産投資を始めているが税制面での最適化を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産投資で所得税・住民税が節税ができる仕組み
不動産投資による節税効果は、主に所得税と住民税に関係します。その仕組みを理解するためには、まず不動産所得の課税方法を知る必要があります。
不動産所得は「総合課税」
不動産所得は、給与所得や事業所得などと同様に「総合課税」の対象です。総合課税は、すべての所得を合算して課税所得を計算し、それに応じた税率で課税される仕組みとなっています。
「不動産所得 税率」に関する記事はこちら
家賃収入に税金はいくらかかる?計算方法や税率を解説
赤字と黒字を損益通算
不動産所得が赤字の場合、他の所得と損益通算することで、全体の課税所得を減らすことができます。たとえば、給与所得が500万円で、不動産所得が100万円の赤字の場合、課税対象となる所得は400万円(500万円-100万円)となり、結果的に税負担が軽減されます。
減価償却を計上することで会計上のみ赤字にすることが可能
不動産投資の大きな特徴は、減価償却費を計上できることです。減価償却は実際にお金が出ていくわけではありませんが、会計上は経費として認められます。これにより、実際のキャッシュフローは黒字でも、会計上は赤字にできるため、節税効果を得られます。
不動産投資で贈与税・相続税が節税できる仕組み
不動産投資は、贈与税や相続税の節税にも活用できます。その仕組みを理解するために、まず贈与税と相続税の基本を押さえましょう。
贈与税・相続税とは
贈与税は生前に財産を贈与する際にかかる税金であり、相続税は被相続人(亡くなった人)の財産を相続する際にかかる税金です。
贈与税の基礎控除額は年間110万円で、これを超える部分に対して課税されます。税率は10%~55%で、贈与額が大きくなるほど税率も上がります。
また、相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。たとえば、配偶者と子供2人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3人)となります。相続税の税率は10%~55%で、相続財産が大きいほど高くなります。
参考: No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
No.4155 相続税の税率|国税庁
収益不動産の相続税評価
収益不動産の相続税評価額は、実際の市場価格よりも低く評価されるのが一般的です。特に収益不動産の場合、「収益還元法」という方法で評価されることがあり、それによって相続税評価額を低く抑えられる可能性があります。
法人化したほうが所得税を節税できる?

不動産投資の規模が大きくなると「個人で運営するよりも法人化したほうが税制面で有利になるのでは?」と考える方も多いかもしれません。ここでは法人と個人の税率の違いや「法人化=節税」とは限らない理由について解説します。
法人と個人の税率の違い
個人の場合、所得税は累進課税制度が適用されます。累進課税制度では、所得が増えるほど税率が上がり、最高税率は45%(住民税を含めると55%)です。
一方、法人の場合に課せられる法人税率は一律であり、中小企業であれば15%~23.2%の税率が適用されます。さらに、役員報酬を調整することで、個人の所得税と法人税を合わせた総税額を最適化できるケースもあるでしょう。
「法人化=節税」とは限らない
法人化は、不動産投資における一つの選択肢ですが、必ずしも節税につながるわけではありません。以下の点に注意が必要です。
- 法人設立や運営に伴うコストがかかる
- 二重課税の可能性がある
- 赤字でも税金がかかる
- 社会保険に加入しなければならない
法人を設立し運営するには、登記費用や会計処理、税務申告など様々なコストが発生します。これらの経費は、個人で投資を行う場合には必要ないものもあり、節税効果を相殺してしまう恐れがあります。
また、法人の利益に対する法人税と、個人が受け取る配当に対する所得税という二重課税の問題も考慮しなければなりません。場合によっては、二重課税によって最終的な税負担が増加することもあるでしょう。
さらに、法人の場合、赤字であっても一定の税金(均等割など)がかかることがあります。これは個人の不動産所得では生じない税金であるほか、法人化すると社会保険への加入が必要となり、これも追加の費用負担となります。
法人化の判断は現在の収支状況だけでなく、将来の事業規模や他の所得の状況、長期的な投資計画なども含めて総合的に検討することが大切です。その際、それぞれが置かれた状況によって最適な選択は異なるため、税理士や不動産のプロなど、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
「不動産投資 法人化」に関する記事はこちら
不動産投資で法人化するメリット・デメリット! 適切なタイミングは?
不動産投資で節税するときの注意点
不動産投資による節税には様々なメリットがありますが、同時にいくつかの注意点も存在します。ここでは、主要な注意点について解説します。
デッドクロスの発生
デッドクロスとは、不動産投資においてローン元金返済額が減価償却費を上回るタイミングのことです。この状況は投資物件が会計上赤字であることを意味し、資金繰りの悪化につながる恐れがあります。
デッドクロスが発生する要因は主に以下の3つです。
- 減価償却費が経費計上できなくなる
- ローン金利の経費計上割合の減少
- 築年数の経過による家賃収入の減少
例として、建物が法定耐用年数を超過して減価償却費を経費計上できなくなり、同時に老朽化により修繕費が増加すると、実際のキャッシュフローが赤字に転じる可能性があります。このような状況を避けるためには、長期的な視点で収支計画を立てることが大切です。
キャッシュフローの悪化
節税効果を追求するあまり、実際のキャッシュフローが悪化してしまっては元も子もありません。たとえ、税金が少なくなったとしても日々の収支が赤字では、長期にわたって続けられる投資とはいえないでしょう。
特に、ローンを組んで不動産を購入する場合、返済額と家賃収入のバランスを慎重に検討する必要があります。将来的な金利上昇や空室リスクも考慮に入れ、余裕を持った計画を立てることが重要です。
譲渡所得税率
不動産を売却する際には、譲渡所得税が課税されます。保有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)と5年以下の場合(短期譲渡所得)で、次のように税率が異なる点に注意しましょう。
【譲渡所得にかかる税金の税率】
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 15.315% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 30.63% | 9% |
短期間で売却すると税率が高くなるため、投資計画を立てる際には保有期間も考慮に入れる必要があります。
2024年にマンションの相続税評価方法が改正
2024年1月1日以降に発生した相続や贈与を対象に、マンションの相続税評価方法が改正されました。新制度では不動産の相続評価に「評価乖離率」と「評価水準」といった新たな指標が加えられています。これにより、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離率が1.67倍を超える場合、相続税評価額が市場価格の60%になるよう調整されます。
この改正により、単に高層階のマンションを購入するだけで相続税を大幅に軽減することは難しくなりました。しかし、現金や有価証券と比べて相続税評価額が低く算出されるという不動産の利点は変わりません。つまり、相続対策における不動産の有効性は今後も変わらないといえるでしょう。
まとめ
不動産投資による節税は、適切に活用すれば大きなメリットとなる一方、注意しなければならない点も多くあります。所得税・住民税の節税、相続税対策、法人化の検討など、様々な観点から総合的に判断することが大切です。
デッドクロスの発生やキャッシュフローの悪化には十分注意を払い、将来のリスクも考慮に入れた計画を立てましょう。また、税制は頻繁に変更されることがあります。2024年のマンション相続税評価方法の改正のように、新しい制度が導入されることもあるため、常に最新の情報をチェックすることが大切です。

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ワンポイントアドバイス
不動産投資による節税戦略は、個人の財務状況や投資目的によって最適な方法が異なります。そのため、定期的に税理士や不動産の専門家にコンサルティングを受けることをおすすめします。
この記事のポイント
Q. 不動産投資で節税は可能でしょうか?
A. 不動産投資による節税効果は、主に所得税と住民税に関係します。その仕組みを理解するためには、まず不動産所得の課税方法を知る必要があります。詳しくは「不動産投資で所得税・住民税が節税ができる仕組み」をご覧ください。
Q. 個人よりも法人化した方が所得税は節税できますか?
A. 不動産投資の規模が大きくなると「個人で運営するよりも法人化したほうが税制面で有利になるのでは?」と考える方も多いかもしれませんが、「法人化=節税」とは限らない場合もあります。詳しくは「法人化したほうが所得税を節税できる?」をご覧ください。
Q. 不動産投資で節税する場合の注意点は?
A. 不動産投資による節税には様々なメリットがありますが、同時にいくつかの注意点も存在します。詳しくは「不動産投資で節税するときの注意点」をご覧ください。