不動産所得に税金はいくらかかる?計算方法や税率、不動産所得と家賃収入の違いを解説
ざっくり要約!
- 不動産所得は、家賃など不動産から得られた収入から経費を差し引いた金額です。
- 所得税・住民税は所得に対して課税されるため、経費計上や控除適用により所得を減らすことで納税額を抑えられます。
アパートや区分マンションなどの賃貸経営を通じて得られる家賃収入は、法律上「不動産所得」に分類されます。不動産所得は給料や事業所得と同様に税金が課せられる対象です。納税は事業者の義務ではありますが、できるだけ少ない金額に抑えたいと思うのが賃貸オーナーとしての本音でしょう。
この記事では、不動産所得に課せられる税金の種類や税率、節税方法について解説します。
目次
税金がかかるのは家賃収入ではなく「不動産所得」
アパートの入居者などから得られる家賃収入は不動産所得に分類されます。不動産所得を得た人は、翌年に確定申告を行い税金を納める必要がありますが、家賃収入として得られたお金の全額が不動産所得に該当するとは限りません。
確定申告を行う前には適切な額の税金を納められるよう、不動産所得と家賃収入の違いを理解しておきましょう。
家賃収入と不動産所得の違い
家賃収入とは、経営するアパートなどの物件の利用者から得られる賃料のことです。15戸の物件の全室を家賃5万円/月で貸し出している場合、15×5万円=75万円が毎月の家賃収入となります。また、家賃収入には礼金や管理費・共益費、物件に付随する駐車場代など、直接家賃として徴収しない収入も含まれます。
不動産所得とは、不動産の貸付により得られる所得全般です。所得とは、収入から経費を差し引いた後の差額を指します。所有するアパートから家賃収入を得ている場合、その家賃収入を得るために発生した経費を差し引いた残りが不動産所得となります。
不動産投資で得られる収入は家賃収入だけではない
不動産投資とは、投資目的で購入した不動産を管理・運用して利益を得る投資手法です。家賃収入は不動産投資を通じて得られる収入のひとつですが、投資目的で不動産を運用する場合には、他にも収入を得る方法があります。
不動産投資で得る収入は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」に分けられます。
インカムゲインは、不動産物件から継続して得られる利益のことです。主に家賃収入が該当し、数カ月から数年といった長期にわたり収入を得続けられます。
キャピタルゲインは、不動産物件を売却して得る利益です。5,000万円で購入したマンションを5,500万円で売却できた場合は、500万円のキャピタルゲインが発生したことになります。将来値上がりが予想される土地や、リノベーションにより価値を高めた家屋など、売買の対象となる不動産にはさまざまな種類があります。
なお、インカムゲインとキャピタルゲインは確定申告時の所得区分が異なる点に注意が必要です。インカムゲインは不動産所得、キャピタルゲインは譲渡所得に分類されます。
不動産所得は給与所得や事業所得などと合算して損益を計算する損益通算ができますが、投資目的の売買により発生した譲渡所得は損益通算の対象外です。不動産の売却により損失が発生したとしても、給与所得や事業所得といった他の所得から差し引くことはできません。
経費計上できるのはどんな費用?
不動産所得の計算に必要な経費には、主に以下の費用が含まれています。
- 不動産取得にともない発生する税金(不動産取得税、登録免許税)
- 所有する不動産に対して課せられる税金(固定資産税、都市計画税)
- 賃貸物件の維持管理に必要な費用(修繕費、管理委託費)
- 減価償却費
- 火災・地震保険
- 物件購入のために借り入れたローンの金利部分 など
なお、経費計上できる費用は、他者に貸し付けた不動産物件のための費用に限定されます。自分が居住する家のために発生した費用は経費計上できません。
また、賃貸物件の一室を自宅として利用している場合には、物件全体に対する自宅の割合を按分して計算する必要があります。物件の大半を貸し出しているとしても、発生した費用の全額を経費計上することはできませんのでご注意ください。
家賃収入による不動産所得にかかる税金と税率

家賃収入から諸経費を差し引いて算出された不動産所得には、複数の種類の税金がかかります。それぞれの税金は異なる税率が定められており、所得の額によって税率が変動するものがあります。
所得税
所得税は、毎年1月1日から12月31日の1年間に発生した個人の所得に対して課せられる税金です。国に納める国税の一種であり、法人ではなく個人の名義で所有している物件から得た不動産所得に対し、一定の税率で課税されます。
所得金額に対する所得税率は以下の通りです。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照:国税庁「所得税の税率」
また平成25年から令和19年までの間は、復興特別所得税として所属税額の2.1%が徴収されます。
なお、不動産所得は他の所得との損益通算により課税対象額を算出する「総合課税」の対象です。年間で不動産所得500万円と事業所得-100万円が発生した場合は、合算後の400万円が所得税の課税対象となります。
住民税
住民税は、個人が居住する都道府県および市区町村に納める税金です。住民税は「所得割」「均等割」といった複数の計算方法によって税額が算出されます。
所得割は、前年の所得額を基準とした課税方法です。対象となる所得は所得税の課税額と同じものが用いられますが、所得税のように税率は変動しません。自治体によって税率は異なりますが、概ね10%から大きく外れない税率が用いられています。
均等割は、所得に関係なく定額が課せられる住民税です。自治体によって金額は異なりますが、概ね5,000円前後が課税されます。なお、令和6年度からは住民税均等割に「森林環境税」として1,000円が加算されます。
消費税
消費税は、提供された商品やサービスの金額に対して消費者側に課せられる税金です。商品やサービスを利用した消費者は対価の10%(軽減税率が適用される場合は8%)を上乗せして事業者に支払い、事業者は消費者から預かった消費税を納税します。
なお、居住用の賃貸物件の家賃は消費税の課税対象ではありません。そのため入居者は家賃に消費税を上乗せして支払う必要はなく、オーナーも消費税を納める必要はありません。ただし、商業用のテナントといった居住用ではない物件の賃料は消費税の課税対象となります。
不動産所得にかかる税金を節税する方法
不動産所得に課せられる税金は、必ずしも戸数に比例するとは限りません。所得が増えるほど税率が上がる仕組みとなっているため、管理戸数の割には手元に残るお金が少ないと感じることもあるでしょう。不要な税金を納めずに済むよう、オーナーは適切な方法で節税を行いましょう。
経費と適用になる控除をしっかり申告する
経費計上および控除の申告は、節税に有効な手段です。経費に計上できる費用には、不動産物件の管理・運営に必要な費用全般が含まれます。先述の費用を計上できるのはもちろん、経営のために必要な交際費や税理士費用なども含まれますので、計上漏れがないように日頃から経営に必要な費用を記録しておきましょう。
控除は、税金の算出対象となる所得から一定の金額を差し引くことを認める制度です。控除項目は複数あり、条件を満たした場合にそれぞれの控除が適用されます。
不動産所得からの控除が認められる控除項目には以下の15種類があります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
参照:国税庁「所得控除のあらまし」
これらの控除は、条件を満たせば重複して適用できますので、確定申告前には自身がいずれかの控除を適用できる条件を満たしていないか確認しておきましょう。
減価償却費が大きい物件を選ぶ
節税効果は、減価償却のルールを利用することで高めることが可能です。投資対象に減価償却期間が短い物件を選べば、短期間に計上する減価償却費を高く設定できます。
減価償却期間は、法定耐用年数と築年数の関係によって以下の計算式で算出されます。
| 新築 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 築年数が法定耐用年数以下 | (法定耐用年数-築年数)+築年数×20% |
| 築年数が法定耐用年数を超過 | 法定耐用年数×20% ※小数点以下切り捨て |
例えば木造(法定耐用年数22年)の物件を2,200万円で購入した場合、築年数別の減価償却費は以下の通りとなります。
| 築年数 | 毎年の減価償却費 |
|---|---|
| 新築 | 2,200万円÷22年= 100万円 |
| 10年 | (22年-10年)+10年×20%= 14年 2,200万円÷14年= 約157万円 |
| 20年 | (22年-20年)+20年×20%= 6年 2,200万円÷6年 = 約366万円 |
| 22年超 | 22年×20%= 4年 2,200万円÷4年= 500万円 |
築古物件ほど多額の減価償却費を計上できるため、所得税・住民税の大幅な節税が期待できるでしょう。
青色申告する
個人で不動産投資を行っているなら、確定申告を青色申告で行うことで節税効果が高まります。青色申告は、白色申告と並ぶ確定申告方法のひとつです。申告を行う年の3月15日までに税務署へ届け出ることで、最大65万円の青色申告特別控除や赤字損失金の最大3年繰越控除といった制度が適用されます。
白色申告とは異なり、複式簿記で帳簿を付ける義務がありますが、記帳の手間に見合うだけの大きな節税効果が期待できます。
法人化
ある程度大きな不動産所得を得られる事業規模であるなら、節税を目的とした法人化を検討してもよいでしょう。
法人は会計年度中に得た利益に対し、法人税が課税されます。法人税は個人における所得税に相当する税金です。所得税同様に利益の金額によって税率が変動しますが、所得税の税率上限が45%であるのに対し、法人税は23.2%と低く設定されているため、所得税よりも納税額を抑えられる可能性があります。さらに法人は個人事業主よりも経費として計上できる費用項目が多いため、さらに高い節税効果が期待できるでしょう。
ただし、法人は個人では不要である「法人を維持するための費用」が発生するため、支出そのものは増える可能性があります。また所得が低いうちは所得税率を法人税率が上回ることもありますので、多くの家賃収入を得られる事業規模でなければ法人化による節税の恩恵を受けにくいでしょう。
「不動産投資 法人化」に関する記事はこちら
不動産投資で法人化するメリット・デメリット! 適切なタイミングは?
まとめ
不動産投資により得られる不動産所得が増えるほど、所得税や住民税の納税額が増加します。
不動産投資による収入を増やすには、節税により納税額を抑えるのが効果的です。余分な税金を支払わずに済むよう、適切な経費の計上や控除制度を適用した節税を心がけましょう。

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ワンポイントアドバイス
安定した賃貸経営の継続が不動産所得の増加に繋がります。物件の規模によってはオーナー個人での管理が難しくなる場合がありますので、賃貸物件の管理を専門で行う管理会社への委託を検討しましょう。
腕のいい管理会社は、オーナーの事情に適した節税ノウハウも持っています。支払う委託費用以上の収入アップや節税効果が期待できますので、委託先には豊富な経験と実績を持つ管理会社を選ぶのがおすすめです。
この記事のポイント
Q. 家賃収入と不動産所得の違いは?
A. 家賃収入は入居者がオーナーに支払う家賃であり、不動産所得は家賃収入から経費を差し引いた後に残る利益です。詳しくは「税金がかかるのは家賃収入ではなく「不動産所得」」をご覧ください。
Q. 不動産所得にはどのような税金がかかりますか?
A. 国に納める「所得税」と、地方自治体に納める「住民税」がかかります。居住用のアパート・マンション以外の物件を運営する場合には「消費税」がかかる場合があります。
詳しくは「家賃収入による不動産所得にかかる税金と税率」をご覧ください。
Q.不動産所得にかかる税金を節税するには?
漏れがないように経費計上や控除の適用をおこないましょう。不動産所得が大きいようなら、法人化することでより高い節税効果を得られる場合があります。
詳しくは「不動産所得にかかる税金を節税する方法」をご覧ください。