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住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?通らない場合の対策も紹介

執筆者プロフィール

中村諭
ファイナンシャルプランナー/貸金業務取扱主任者

働くお母さんからの相談が多く、離婚時における住宅ローン相談等、住宅ローンの見直しから借り換え、融資まで実務支援をしているFP事務所(融資媒介業として金融庁登録のFP事務所)経営。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、貸金業務取扱主任者、情報サイトAll About住宅ローンガイド。住宅ローンソムリエ(2007年商標登録)。

ざっくり要約!

  • 住宅ローンの申し込みにおいては、金融機関によって要件が異なり「年収●●●万円以上が必須」という基準はない
  • 住宅ローンに通らないときは、フラット35やワイド団信などの利用を検討するなどして対策する

住宅ローンには審査があります。審査の結果、住宅ローンを借りられない人も当然います。そのような時に、審査に落ちた理由を銀行にたずねても「総合的に判断した結果」としか教えてくれません。

でも「自分の何がいけなかったのか」「何にメスを入れれば、住宅ローン審査にパスできるのか」知ることができれば、別の銀行に申し込む前に対策が打てます。

そこで、本記事では銀行は教えてくれない住宅ローンの審査基準や、通らない場合の対策について、住宅ローンの実務に精通したFPが解説します。

住宅ローンの審査基準を満たす年収は?

住宅ローンを申し込む際に「自分の年収は審査基準を満たしているのか?」と気になる人は少なくないでしょう。果たして、年収にまつわる明確な審査基準はあるのでしょうか?

年収●●●万円以上という明確な基準はない

住宅ローンの審査はいくつもチェック項目があり、さまざまな視点から審議されるのですが、中でも「年収」は必須項目になります。さて、その年収はいくらあれば、住宅ローンの申込みができるのでしょうか。複数の金融機関HPを調べてみました。

【住宅ローン申し込みに必要な年収額例】
 
A社:借入れに当たり、最低年収などの制限はありません
B社:前年の税込年収が 100 万円以上のかた
C社:前年度の年収(自営業の場合は申告所得)が200万円以上のお客さま
D社:連続した就業2年以上、かつ前年度税込年収が300万円以上の正社員または契約社員であること
E社:前年の年収(自営業のかたは申告所得)が、お申込人と連帯債務者合算で400万円以上であるかた

金融機関によって設定している要件が異なるため、「年収●●●万円以上が必須」という明確な基準はありません。

例えば、上記のE社では、1名で住宅ローン審査に臨む場合は年収400万円に満たないと申込みできませんが、夫婦などの2名の収入合算で400万円以上あれば申込み可です。

まずは、ご自身の年収で申し込める金融機関を探すことが肝要となります。

住宅ローンの審査基準における年収以外の重要ポイント

住宅ローンの審査では、年収以外にもさまざまなポイントがチェックされます。詳しくみていきましょう。

「借入額の上限の目安は年収の7倍」は本当か?

「住宅ローンの借入額の上限の目安は年収の7倍」と言われることがありますが、これは本当なのでしょうか。筆者はその根拠となる情報を探したのですが、明確な根拠を得ることはできませんでした。

そこで、代替案として実際に住宅ローンを借りている人の住宅ローン金額を調べてみました。

【年収倍率(融資区分別)】

  • 土地付き注文住宅:7.5倍
  • マンション:7.2倍
  • 建売住宅:7.0倍
  • 注文住宅:6.8倍
  • 中古マンション:5.8倍
  • 中古戸建:5.7倍

出典:住宅金融支援機構|2021年度フラット35利用者調査

ここに根拠がありそうな気がしますが、この数字は「借りられる額」という融資の上限額ではなく、実際に住宅ローンを借りた人の住宅ローン契約額を当人の年収で割り返した率なので「借りられる上限額」を示すデータではありません。

しかしながら、2021年に住宅ローンを借りて住宅を購入した人は、おおよそ年収の6倍〜7倍の住宅ローンを借りていることがわかります。

審査では年収だけでなく返済比率も重視

「年収の何倍まで借りられるか?」について、明確な答えはわからずじまいですが、それもそのはずです。住宅ローンの審査は「年収」と「融資額」だけでは可否を決めることはできないのです。

例えば、年収450万円のAさんが3000万円を借りる場合は、住宅ローンは年収の6.66倍となります。年収の6.66倍ということは、「年収の7倍」に到達していないため、住宅ローンの審査も問題ないのでしょうか?
 
住宅ローンの完済時年齢を80歳未満までとしている金融機関が多いことから、Aさんが40歳なら住宅ローンは35年間で審査に申し込むことができます。

しかし、Aさんが58歳なら住宅ローンの期間は21年となります。住宅ローンの返済期間が異なれば、毎月の支払額が次のとおり変わってきます。

【返済期間と返済額の関係】

返済期間35年21年
返済月額96,327円143,049円
※融資希望額3,000万円、金利:1.80%(固定金利)、元利均等返済方式とする

毎月の返済額が大きければ大きいほど、家計支出に占める住宅ローンの比率は高くなり、家計は苦しくなります。この比率を「返済比率」といいます。

返済比率=1年間の返済額(元金返済額+支払利息額)÷年収×100

この「返済比率」が住宅ローンの審査においては重要なのですが、返済比率を算出するために必要な情報が次の4つになります。

【住宅ローン審査に必要な4情報】
① 融資額(住宅ローン申込金額)
② 年収
③ 期間
④ 金利(利率)

それでは、Aさんの住宅ローン「返済比率」を見てみましょう。返済期間が異なると次のとおりになります。

返済期間35年21年
返済月額 [1]96,327円143,049円
返済年額 [2]=[1]×12115.5万円171.6万円
年収 [3]450万円450万円
返済比率 [2]÷[3]25.68%38.14%
※融資希望額3,000万円、金利:1.80%(固定金利)、元利均等返済方式とする

住宅ローン審査の目線で考えたときに、より確実に返済できそうなのは「35年ローン」でしょうか、それとも「21年ローン」でしょうか。「返済比率」は低い方が、家計における負担が少ないことを意味するため審査に通りやすくなります。

ちなみに、住宅金融支援機構では「返済比率35%以下」が求められるため、年収450万円のAさんは返済期間が21年の住宅ローンでは審査に通らないこととなります。

出典:住宅金融支援機構|【フラット35】ご利用条件

年収以外の条件もチェックされている

住宅ローンの審査において「年収」や「返済比率」はとても重要な項目ですが、それら以外にもチェックされる項目があります。

【年収以外にチェックされる主な項目】

  • 雇用形態
  • 勤続年数
  • 個人信用情報

それぞれの基準は金融機関によって異なりますし、上記以外のチェック項目もありますが、審査担当者が求めているのは「安定して返済してくれる顧客」です。

例えば、「雇用形態」は、フリーランスよりも国家公務員の方が収入は安定している印象がありますし、「勤続年数」は同一勤務先で長く勤続している方が安定している印象があります。

また、住宅ローン以外の借金の有無や、クレジットカード等の分割返済に遅延がないことも、審査に必要な情報になってきます。これを「個人信用情報」といいます。

虚偽の情報を記入するのはNG

自動車ローンやカードローンなど、住宅ローン以外の借金返済中の人は包み隠さず告知する必要があります。

借金が多いと住宅ローンの審査ハードルが高くなることは確かです。しかしながら、借金があることを隠して虚偽の申告をしてもその嘘はすぐにバレます。

嘘をついたことが銀行にバレたら、それこそあなたの信用度は低くなり、住宅ローン審査上、大きなマイナスになります。

個人信用情報に不安がある人は、住宅ローン審査でチェックされるご自身の個人信用情報を取得し、問題ないか確認してみるのも1つの方法です。

【個人信用情報3機関】

  • KSC(全国銀行個人信用情報センター)
  • CIC(クレジットインフォメーションセンター)
  • JICC(日本信用情報機構)

不安がある人は、上記の信用情報機関の公式HPにアクセスし、ご自身の個人信用情報を取得してみると良いでしょう。

住宅ローンの審査が通らない人の特徴

住宅ローンの審査が通らない人の特徴とは何なのでしょうか。詳しく説明します。

年収に対して借入希望額が大きい

住宅購入を考え始めたときに、「自分の年収でいくらまで借りられるのだろうか」と気になる人は少なくないでしょう。金融機関各社では住宅ローンの審査基準を定めているものの、その内容は非公開となっています。

ですが、固定金利で有名な「フラット35」では、住宅金融支援機構がその基準を次のとおり公開しています。フラット35の例を元に考えてみます。

●フラット35

すべての借入れ※に関して、年収に占める年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が次表の基準を満たす方(収入を合算できる場合があります。[収入の合算参照])

【年収/基準】
400万円未満/30%以下
400万円以上/35%以下

※【フラット35】のほか、【フラット35】以外の住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードによるキャッシング、商品の分割払いやリボ払いによる購入を含みます。)などをいいます(収入合算者の分を含みます。)。また、賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金を含みます(当該借入金が賃貸用のアパート向けのローン(ローンの対象が1棟の共同住宅または寄宿舎)である場合は、借入金には含めません。)。

引用:住宅金融支援機構|【フラット35】ご利用条件

例えば、年収380万円の場合(他に借金がない場合)、住宅ローンのシミュレーションは次のようになります。

まずは、毎月のローン返済に使える額を算出します。
年収が400万円未満なので、ローン返済に使える額は年収の30%が上限となります。

① 380万円×30%÷12か月=9.5万円

次に返済期間を考えます。

② 35年とします

最後に金利を考えます。

③ 1.50%とします
 
これら3つの条件[① 9.5万円/月 ②35年/返済期間 ③1.50%/年利]から、融資額を計算します。

ご家庭にある電卓では計算が難しいので、住宅金融支援機構HPの住宅ローンシミュレーションを使ってみると良いでしょう。
 
すると、借入可能額は3,102万円になります。
 
つまり、年収380万円の人が3,200万円の住宅ローンを申し込んだ場合、借入額が多すぎて、審査に通らないこととなります(頭金を100万円用意すれば、審査に通ることとなります)。

住宅ローンの審査項目は多岐に渡りますが、大きなポイントのひとつが「年収」から算出される「融資上限金額(借入可能額)」になります。

ご自身の融資上限金額を知っておくことで、審査が通らないリスクを排除できる可能性があります。ただし、各金融機関のよって審査の基準が異なります。ここでの計算はあくまでも、住宅金融支援機構の借入可能額です。

勤続年数が足りていない

一昔前までは、勤続年数が1年未満の場合、住宅ローン申し込みを受け付けてくれない金融機関は多かったのですが、昨今は転職も珍しくなくなり、勤続年数を理由に審査受付の足切りにしない金融機関も増えてきました。

とはいうものの、勤続年数は長ければ長いほど、審査面では有効になります。その意味では、やはり1年以上経過している方が望ましいと思います。

物件の資産価値に問題がある

住宅ローンは不動産担保ローンなので、融資に際しては、物件(不動産)に抵当権を設定します。住宅ローン契約者がローン返済を滞った場合、金融機関は不動産を差押え、最終的に売却することで、融資金額を回収することとなります。

この融資金額の回収時に売却が難しいような不動産は、担保としての価値が乏しいと判断されます。なので、不動産に問題がある可能性があれば住宅ローン審査が通らないこととなります。

売却が難しい不動産の一例としては、「再建築不可物件」があります。

例えば、中古の一戸建ての場合、新築当時の法律では問題なく建築できたものの、現代の法律では、その中古建物を取り壊した後、その土地には新たに建物を建築することができないケースがあります。そのような物件は、金融機関は担保価値つまりは資産価値が乏しいと判断します。

団体信用生命保険に通らない

住宅ローンの審査は、銀行などの融資をする金融機関が行う審査の他に、もう一つ、別の審査があります。それは「保険の審査」です(一部の金融機関を除きます)。

住宅ローンの融資の条件には「金融機関が指定する生命保険に加入すること」が付されていることが一般的です。

そのため、金融機関が用意している生命保険に加入できないと、住宅ローン審査もそこで停止となります。

個人信用情報に問題がある

住宅ローンの申し込み時点で、カードローンなどの返済があれば、すでに月々ローン返済をしている状況です。

上記(年収に対して借入希望額が大きい)で見たように、住宅金融支援機構に年収380万円の人がローン審査に申し込んだ場合、住宅ローン審査の過程において、毎月のローン返済に使える額は9.5万円(380万円×30%÷12か月=9.5万円)でした。

しかし、すでにカードローンの返済が月々毎月5万円あったならば、住宅ローン返済に使える金額は、5万円が差し引かれて、4.5万円となります。結果的に希望する住宅ローン審査に通らなくなります。

さらに、カードローンなどの返済において延滞の事実が判明した場合は、金額の多寡に関わらず住宅ローンの審査は厳しくなります。

住宅ローンの審査に通らなかったらどうする?対処法6つ

住宅ローンの審査に通らなかった場合、どうすればいいのでしょうか。6つの対処法を紹介します。

フラット35を利用する

住宅ローンには大きく分けて「個人」「不動産」の審査があります。

中でも、フラット35はどちらかというと「不動産」に審査の重点を置きます。そのため、個人の属性面から銀行のローン審査に通りにくい場合でも、フラット35なら通ることがあるというわけです。

しかしながら、フラット35は固定金利しか選択肢がありません。変動金利のローンと比較すると金利が高い傾向にあることは心に留めておきましょう。

ワイド団信を利用する

「生命保険に加入できないこと」が審査に通らない理由であると明確な場合は、ワイド団信を用意している金融機関に住宅ローンの審査を申し込むことで、住宅ローンを組める可能性があります。

ワイド団信とは、持病がある人など、健康上の理由から一般的な団信の審査に通らなかった人でも加入しやすいよう設計された生命保険です。

金利の追加負担はあるものの、団信がクリアできれば住宅ローンを組める可能性があります。

ペアローンを利用する

年収がネックで住宅ローン審査に通らない場合、配偶者にも年収があれば、二人でローンを申し込む「ペアローン」という方法をとれます。

例えば、夫妻ともに同じ年収の場合、一人でローンを組む場合に比べて、2倍の金額までローンを組むことが可能です。

頭金を増やす・物件を変える

審査で大事なのは、ローンを申し込む人の年収と買いたい物件価格とのバランスです。

先の住宅ローンシミュレーションでは、年収380万円の人は3,102万円まで借りられる計算でした。4,000万円の物件なら、頭金を900万円用意しなければローンに通りません。

希望物件にあわせて、適切な額の頭金を用意しましょう。

もしくは、借入可能な額の物件に変更することで、住宅ローンの審査に通る可能性があります。

好タイミングで審査を申し込む

住宅ローンの審査は一般的に前年の年収(前年の源泉徴収票、前年の所得証明)を使います。

例えば、住宅ローンの申し込みが11月の場合、あと1~2カ月待てば、今年の源泉徴収票が手元に届くはずです。

昨年よりも今年のほうが、年収が増えているのなら、今年の源泉徴収票が出るまで待ってから、住宅ローン審査を申し込みするのも方法の一つです。

(例)フラット35の年収基準から計算する融資上限金額

金利/期間/融資上限金額
年収380万円の場合 1.50% 35年 3102万円
年収420万円の場合 1.50% 35年 4000万円

出典:住宅金融支援機構フラット35│毎月の返済額から借入可能金額を計算

信用情報を改善する

年収380万円の人がローン返済に使える、月々の額は9.5万円でした。もし、この人に次の借金があったらどうなるでしょうか。

  • ショッピングローン返済月額:3万円
  • 携帯電話の分割払い月額:2万円

住宅ローンに使える額は、9.5万円-3万円-2万円=4.5万円です。

これでは、住宅ローンの審査が通りにくいことがお分かりでしょう。

改善策としては、住宅ローンの審査申し込みをする前に、これらのローンを全額返済しておくことです。

住宅ローン以外に分割返済がなければ、審査に通る可能性は高くなります。

この記事のポイント

住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?

年収に対して借入希望額が大きい、勤続年数が足りていない、物件の資産価値に問題があるなどの特徴が挙げられます。

詳しくは「住宅ローンの審査が通らない人の特徴」をご覧ください。

住宅ローンの審査に通らなかったらどうすればいいですか?

フラット35やワイド団信、ペアローンなどの利用を検討する、物件を変える、頭金を増やすなど、さまざまな対策があります。

詳しくは「住宅ローンの審査に通らなかったらどうする?対処法6つ」をご覧ください。

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