ざっくり要約!
- 相続した不動産の売却で必要な書類は、遺産分割協議と相続登記、査定と媒介契約、売買契約と引き渡し、確定申告で異なる
- 相続登記は2024年4月1日から義務化され、原則として不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請が必須に
- 売却益に課税される譲渡所得税を抑える特例を適用するためには、期限内に売却したうえで、被相続人居住用家屋等確認書などの書類を準備する必要がある
相続した不動産を売却する際は、通常の必要書類に加えて、相続人であることを示す戸籍謄本や遺産分割協議書なども用意します。
また、そろえるべき書類は手続きする内容で異なります。どの場面で何が必要になるのかを把握しておくと、より効率的に書類を収集してスムーズに手続きを終えられるでしょう。
この記事では、相続した不動産の売却に必要な書類をフェーズごとに解説します。
記事サマリー
相続した不動産を売却する全体の流れとフェーズ別必要書類
相続した不動産を売却する手続きは、主に次の4ステップに分かれます。
- 遺言書や遺産分割協議などで不動産を取得する相続人を確定し、相続登記で名義を移す
- 不動産会社へ査定を依頼し、媒介契約を結ぶ
- 買主と売買契約を結び、引き渡しと決済をする
- 必要に応じて、売却した年の翌年に確定申告をする
必要な手続きや書類は、相続や売却の状況によって異なります。
以下では、各ステップで売主が用意する書類を、取得場所や費用とあわせて解説します。
ステップ1:遺産分割協議と相続登記に必要な書類
買主へ所有権を移転するには、先に被相続人(亡くなった人)から相続人への「相続登記」を済ませる必要があります。まずは不動産を取得する相続人を決め、法務局で名義を変更しましょう。
法的に有効な遺言書で不動産を取得する人が指定されている場合は、基本的にその内容に従います。遺言書がない場合は「遺産分割協議」をして不動産を取得する人を決めます。
遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。協議がまとまったあとは、合意した内容を遺産分割協議書に記載し、実印を押印します。
遺産分割協議と相続登記で必要になる書類は、以下の通りです。
| 書類名 | 主な取得場所 | 費用(1通) | 有効期限 |
|---|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場(広域交付を利用する場合は最寄りの市区町村窓口) | 戸籍謄本450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本750円 | 定めなし |
| 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地または本籍地の市区町村役場 | 300円程度 | 定めなし |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 450円 | 被相続人の死亡日以後に取得したもの |
| 遺産分割協議書に実印を押した相続人の印鑑登録証明書(印鑑証明書) | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 300円程度 | 相続登記では定めなし。不動産会社や司法書士から発行後3ヶ月以内と指定されるケースあり |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 住所地の市区町村役場 | 300円程度 | 定めなし |
| 遺産分割協議書 | 相続人が作成し、原則として全員が実印を押印 | 0円(作成を専門家へ依頼する場合は報酬が発生) | ― |
| 固定資産税課税明細書または固定資産評価証明書 | 課税明細書は納税通知書に同封。評価証明書は物件所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所) | 課税明細書は0円。評価証明書は自治体により異なる | 登記を申請する年度のもの |
遺産分割協議は必ず法定相続人の全員で行わなければなりません。そのため、協議をする前に被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍等を集め、法定相続人を確定させます。
本籍地が遠方にある場合でも、2024年3月1日に始まった戸籍証明書の広域交付により、最寄りの市区町村の窓口で複数の戸籍をまとめて請求できるようになりました。広域交付で請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)です。ただし、一部の古い戸籍は広域交付の対象外です。
必要書類を集めたら、相続登記を申請します。相続登記は2024年4月1日から義務化されました。申請の期限は不動産を相続で取得したと知った日から3年以内です。
2024年4月1日より前に発生した相続は、2027年3月31日と、取得したと知った日から3年以内のいずれか遅い日までが期限となります。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科されることがあるため、必ず期限内に相続登記を済ませましょう。
・「相続登記の義務化」に関する記事はこちら
相続登記の義務化はどのような影響がある?いつから始まるのかについても解説
ステップ2:不動産会社への査定依頼・媒介契約に必要な書類
不動産を売却するときは、不動産会社に物件を査定してもらい、およその売却価格を把握するのが一般的です。査定を受けた後、不動産会社と媒介契約を結び、買主探しを始めます。
必要な書類は、物件の種類や不動産会社によって異なります。査定と媒介契約で用意する主な書類は、以下の通りです。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 公図
- 地積測量図(登記されている場合)
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書
- 固定資産税納税通知書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
登記事項証明書や公図がなくても査定を依頼できますが、そろっていると不動産会社に権利関係や土地の形状を踏まえた、より正確な査定額を提示してもらえる可能性があります。
被相続人が購入したときの売買契約書は、不動産の売却益に課税される「譲渡所得税」の税額を計算する際に購入代金を証明する資料になります。権利証や通帳が保管されていた場所を中心に探しておくとよいでしょう。
・媒介契約の種類に関する記事はこちら
専属専任媒介契約とは?専任媒介・一般媒介との違いやメリットを解説
ステップ3:売買契約・引き渡し(決済)に必要な書類
買主が見つかり、売買価格や引き渡し日などの条件に双方が合意したら、売買契約を結びます。売買契約から引き渡しまでの期間は、1〜2ヶ月程度が一般的ですが、契約条件によって異なります。
契約と引き渡し時には、売主の本人確認書類に加えて、所有権移転登記の申請や、税金の精算・代金の受け取りに用いる書類も必要です。用意する書類は、以下の通りです。
- 登記識別情報
- 実印と印鑑登録証明書
- 本人確認書類:運転免許証やマイナンバーカードなど
- 固定資産税納税通知書
- 住民票や戸籍の附票:登記記録の住所と現住所が異なる場合の住所変更登記に使用
- 売却代金の振込先が分かる通帳やキャッシュカード
登記識別情報は、相続登記の完了時に法務局から通知された12桁の符号です。被相続人の名義で発行された登記済権利証が自宅で見つかった場合も、所有権移転登記では利用しません。
所有権移転登記の委任状に添付する印鑑登録証明書は、作成後3ヶ月以内のものに限られます。物件の種別によっては、以下の書類も追加で用意します。
| 物件種別 | 追加で必要になる主な書類 |
|---|---|
| マンション | 管理規約・使用細則、管理費と修繕積立金の額が分かる書類、長期修繕計画書 |
| 戸建て | 建築確認済証・検査済証、建築設計図書、境界確認書、地積測量図 |
| 土地 | 境界確認書、地積測量図、隣地へ越境している場合は覚書 |
見当たらない書類がある場合は、媒介契約を結んだ不動産会社に入手方法や代替となる書類の種類を相談するとよいでしょう。
・「売買契約」に関する記事はこちら
不動産の売買契約とは?簡単にわかりやすく解説!
ステップ4:売却翌年の確定申告に必要な書類
不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した年の翌年に確定申告をします。期間は原則として2月16日〜3月15日までです。※土日祝日によって前後します。
確定申告で用意する書類は、以下の通りです。
- 確定申告書(第一表・第二表)と申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
- 売却時の売買契約書の写し
- 被相続人が購入したときの売買契約書の写し
- 仲介手数料や測量費などの領収書の写し
- マイナンバー確認書類と本人確認書類
申告書と内訳書は、国税庁のサイトや税務署の窓口で入手できます。また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で金額を入力しながら作成できます。
譲渡所得が生じていない場合、原則として確定申告は不要です。ただし、「相続空き家の3,000万円特別控除」などの特例を適用したことで税額が0円になる場合は、確定申告が必要です。
特別控除については、後述で詳しく解説します。
・「不動産売却後の確定申告」に関する記事はこちら
不動産売却後の確定申告は自分でできる? 計算方法・流れ・必要書類などを解説
相続不動産の売却にかかる税金と費用

相続した不動産の売却では、以下のようなさまざまな税金や費用が発生します。
- 譲渡所得税:売却して利益が出た場合にかかる税金
- 登録免許税:被相続人から相続人へ名義を変える相続登記で法務局へ納める税金
- 印紙税:売買契約書に貼る収入印紙の代金
- 仲介手数料:売買契約が成立した場合に不動産会社へ支払う成功報酬
- その他の費用:物件の状態に応じて発生する測量費や建物の解体費など
譲渡所得税
不動産の売却で生じた利益は「譲渡所得」として、所得税・復興特別所得税・住民税の課税対象になります。これらは「譲渡所得税」と呼ばれています。
譲渡所得税は申告分離課税の対象です。給与や事業の所得とは合算せず、課税譲渡所得に税率をかけて税額を計算します。
譲渡所得と課税譲渡所得の計算式は、以下の通りです。
- 譲渡所得=総収入金額−(取得費+譲渡費用)
- 課税譲渡所得=譲渡所得−特別控除額
計算式に用いる項目の内容は、以下の通りです。
| 項目 | 内容・定義 |
|---|---|
| 総収入金額 | 家の売却によって得た金額。売却金額の他、固定資産税・都市計画税の精算金として受領した金額を含む |
| 取得費 | 購入代金や購入時の仲介手数料・印紙税など、家の取得にかかった費用から建物の減価償却費を控除した金額 |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料・印紙税、解体費、立退料など、家を売るために直接かかった費用 |
| 特別控除額 | 一定の要件を満たす場合に譲渡所得から差し引ける金額。「相続空き家の3,000万円特別控除」などが該当 |
譲渡所得にかかる税率を決めるのは、売却した年の1月1日時点の所有期間です。所有期間が5年超は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得に区分され、異なる税率が適用されます。
2026年8月時点の税率は、以下の通りです。
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
相続した不動産を売却した場合、被相続人が取得した日と取得費を引き継ぎます。そのため所有期間は、相続した日ではなく被相続人の取得日から数えます。
被相続人が長年所有していた実家などは、相続後すぐに売却した場合でも長期譲渡所得の税率が適用されることが多いです。
・「譲渡所得」に関する記事はこちら
短期譲渡所得・長期譲渡所得の基礎知識!不動産売却で気をつけるべき点も
登録免許税と印紙税
相続登記を申請する際は、原則として相続人が登録免許税を法務局へ納めます。2026年8月時点で、相続による所有権移転登記の本則税率は、不動産の価額の0.4%(1,000分の4)です。
不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)です。たとえば、評価額が2,000万円の不動産を売却した場合、税額は次のように計算します。
- 登録免許税=固定資産税評価額×0.4%
=固定資産税評価額2,000万円×0.4%
=8万円
登記を司法書士へ依頼した場合、登録免許税とは別に報酬がかかります。5万〜15万円程度が目安ですが、依頼内容や不動産・相続人の数、事務所によって異なります。
印紙税は、売買契約書に契約金額に応じた収入印紙を貼って納める税金です。2027年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書には、軽減措置が適用されます。税額は以下の通りです。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
|---|---|---|
| 10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
| 50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
| 100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
| 1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
| 5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
| 10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
なお、署名・押印した紙の契約書を作成せず、電子契約のみで結ぶ場合は印紙税がかかりません。
・「登録免許税」に関する記事はこちら
登録免許税の計算方法と支払時期を解説!軽減措置や事例もあわせて紹介
・「印紙税」に関する記事はこちら
不動産売買の印紙代(印紙税)の金額は?軽減税率も解説
仲介手数料やその他の費用
不動産会社に仲介を依頼して、不動産を売却したときは、売買契約が成立したときの成功報酬として仲介手数料を支払います。仲介手数料は、宅地建物取引業法にもとづく告示によって上限額が定められています。
売買の媒介で不動産会社が受け取れる報酬の上限額は、原則として以下の通りです。
- 200万円以下:取引価格×5%+消費税
- 200万円超400万円以下:取引価格×4%+2万円+消費税
- 400万円超:取引価格×3%+6万円+消費税
たとえば、不動産を3,000万円で売却する場合は、仲介手数料の上限額は「取引価格3,000万円×3%+6万円=96万円(税抜)」です。このケースの場合、上限額は96万円であり、消費税(2026年8月時点の税率10%)を加えた支払額は105万6,000円になります。
他にも、相続した不動産では境界が確定していない土地の測量費や、建物の解体費、残された家財の撤去費用が発生する場合があります。
・「仲介手数料の計算方法」に関する記事はこちら
不動産売買にかかる仲介手数料はいくら?上限や支払うタイミングも解説
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確定測量が不動産売買で必要な理由を解説!かかる費用や測量の流れも紹介
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譲渡所得税を安くする2つの節税特例と必要書類
相続した不動産を売却するときは、特例を適用することで、譲渡所得税の負担を軽減できる可能性があります。主な特例は以下の2種類です。
- 相続空き家の3,000万円特別控除
- 取得費加算の特例
同じ譲渡について上記2つの特例は併用できません。両方の要件を満たしている場合は、どちらか一方を選ぶ必要があります。
以下では、各特例の制度内容や要件、必要書類を解説します。
相続空き家の3,000万円特別控除
相続空き家の3,000万円特別控除は、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。被相続人が1人で住んでいた家屋とその敷地を相続し、一定の要件のもとで売却した人が適用できます。
2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上の場合、控除できる金額は1人当たり最高2,000万円です。
この特例の対象となる家屋は、以下のすべてに該当するものです。
- 1981年5月31日以前に建築されていること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
区分所有建物登記がされている建物は対象外のため、相続した分譲マンションを売却するときは原則として適用できない点に注意しましょう。
また、特例を適用するためには以下のような要件を満たす必要があります。
- 売却するまで、事業、貸付け、居住に使われていない
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
- 売却代金が1億円以下である
- 所定の耐震基準を満たす家屋を売却するか、取り壊してから敷地等を売却すること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人への売却でないこと など
この特例を適用する際は、売却した翌年に必要な書類をそろえて確定申告をします。申告の際は、市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付します。
・「相続空き家の3,000万円特別控除」に関する記事はこちら
空き家の売却で適用される3000万円控除とは?適用条件を解説
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、課税された相続税額のうち、売却した不動産に対応する金額を取得費へ加算できる制度です。取得費が増えると譲渡所得は小さくなるため、税負担を抑える効果が期待できます。
この特例を適用するためには、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却を終えなければなりません。相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。そのため実際には、おおむね3年10ヶ月以内に売却する必要があります。
確定申告の際には「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を添付します。また、相続税の申告書の写しも手元に用意しておきましょう。国税庁が示す添付書類には含まれていませんが、計算明細書を作成する際に金額を確認する資料となるためです。
・「控除特例」に関する記事はこちら
相続したマンションの売却で利用できる控除特例一覧!控除額・適用要件を解説
相続不動産を売却する際の注意点とトラブル対策
必要な書類をきちんとそろえていても、売却代金の分け方や不動産の名義などが原因で相続人の間で行き違いが起きると予定通りに売却が進みにくくなります。
以下では、相続不動産の売却時に押さえておきたいポイントを解説します。
遺産分割の方法を明確にする
相続した不動産を売却する場合は「換価分割」が選ばれるのが一般的です。換価分割は、不動産を売却し、得た代金を相続人で分ける方法です。
遺産分割協議書を作成するときは、相続する不動産を換価分割することと、売却代金をどのように分けるのかを記載しておくとよいでしょう。換価分割の記載がない場合、売却代金をいったん受け取った人が他の相続人へお金を渡した際に、遺産の分配であると証明することが難しくなるためです。
分配の根拠を示せないと、お金を渡す行為が「贈与」に該当すると判断されて、受け取った額から110万円を引いた部分に贈与税が課される可能性があります。また、売却代金の分け方を遺産分割協議の際に決めておくと、売却後にそれぞれの取り分をめぐるトラブルが起きにくくなります。
共有名義の不動産の売却は全員の同意が必要
相続人の「共有名義」で登記した不動産を売却する際は、共有者全員の同意が必要です。共有者のうち1人でも応じない場合は、売却できません。
また、売買契約と決済では共有者全員が契約書へ署名・押印します。実印と印鑑登録証明書、本人確認書類も人数分集める必要があります。
名義人の数が多いほど、書類の取得や契約・決済の日程調整にかかる日数が増えやすくなります。そこで、換価分割を前提とする場合は、代表者1人の単独名義で相続登記をしてから売却するのも1つの方法です。売却手続きの窓口が1人になり、契約と決済で用意する書類も1人分で足りるためです。
加えて、遺産分割協議書に売却の最低価格や売却代金の分配割合などを記載しておくと、代表者は相続人全員の合意した範囲内でスムーズに手続きを進めやすくなります。
・「共有名義」に関する記事はこちら
不動産の共有名義とは?単独名義との違いやメリット、デメリットを解説
不動産の共有持分の売却はトラブルが発生しやすい?注意点を解説
取得費が不明な場合の「概算取得費」
相続した実家を売却するとき、親が購入したときの売買契約書が残っておらず、購入代金がわからないケースが少なくありません。
取得費を証明できない場合、売った金額の5%相当額を「概算取得費」とみなして譲渡所得を計算できます。たとえば、不動産の売却価格が3,000万円の場合、概算取得費は150万円です。
しかし、概算取得費は、本来の取得費よりも少なくなるケースが多く、購入時に支払った仲介手数料や登記費用なども加えられません。差し引ける取得費が少なくなると、譲渡所得の金額が増えて譲渡所得税の負担は重くなりやすいです。
当時の売買契約書が見つからない場合は、代替となる資料を探してみましょう。購入代金の支払いを示す信頼できる資料があると、その金額から取得費を推定して譲渡所得を計算することが、税務署に認められる可能性があるためです。
具体的には、以下のような資料が候補になります。
- 通帳の入出金履歴
- 住宅ローンの契約書や返済予定表
- 購入当時のパンフレットや価格表
自宅に保管された書類を確認しても見つからないケースもあります。その場合は、購入時に仲介した不動産会社や借入先の金融機関に当時の資料が残っていないか問い合わせてみましょう。
・「概算取得費」に関する記事はこちら
取得費が不明な土地を売却するときの税金はどうなる?
相続した不動産の売却に関するよくある質問
最後に、相続した不動産の売却についてよく寄せられる質問に回答します。
相続登記が終わっていなくても売却活動は始められる?
相続登記が終わっていない段階でも、売却活動は始められます。査定の依頼、媒介契約の締結、購入希望者を探す販売活動は、登記が完了する前でも可能です。
ただし、引き渡し(決済)の日までには、相続登記を済ませておく必要があります。引き渡し日には一般的に売主から買主への所有権移転登記が行われることから、そのときまでに売主自身が登記名義人になっている必要があるためです。
相続人が遠方や海外にいる場合の必要書類は?
国内の遠方に住む相続人が用意する書類は、他の相続人と変わりません。遺産分割協議書は郵送でやり取りし、実印を押してもらったうえで印鑑登録証明書を集めることも可能です。
海外に住んでいて日本に住民登録がない相続人は、国内の市区町村で印鑑登録証明書や住民票を取得できません。その場合は、署名が本人のものであると示す署名証明書(サイン証明書)を印鑑証明書の代わりに用いるのが一般的です。
住所の証明が必要なときは、住民票の代わりに在外公館が発行する在留証明書を用います。
・「海外在住の人が不動産を売るときの必要書類」に関する記事はこちら
海外在住の非居住者が不動産を売却するときの必要書類は? 確定申告までの流れを解説
古い実家は解体して更地にしたほうが売れやすい?
実家が古いからといって、解体して更地にしたほうが売れやすいとは限りません。建て替えを前提に古家付きのまま購入する人も一定数いるためです。
加えて、売却のために家屋を解体すると、原則として住宅用地特例の対象外となり、土地の固定資産税・都市計画税が上がる可能性があります。更地にしてから売却するまでの期間が長引くほど、保有している間に課される税金の負担は重くなっていきます。
築年数が古い家を相続したときは「古家付き土地」としての査定額を確認し、不動産会社とも相談して建物を解体すべきか慎重に判断しましょう。
まとめ
相続した不動産の売却では、手続きに応じた必要書類を集めることが大切です。たとえば、相続登記では戸籍謄本や遺産分割協議書などが必要です。
また、相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく3年の期限を過ぎた場合は過料の対象となります。相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例を適用する場合も、相続から3年以内を目安に売却する必要があります。
亡くなった人の不動産に住んだり他人に貸したりするつもりがない場合は、速やかに査定額を調べて売却できないか検討することをおすすめします。東急リバブルでは、相続した不動産の売却相談から買取まで対応しています。まずは無料査定で不動産がいくらで売れるのかをぜひ確認してみてください。

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この記事のポイント
- 相続した不動産の売却に必要な書類は?
相続登記では被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要で、売買契約と引き渡しでは登記識別情報や実印・印鑑証明書、固定資産税納税通知書などを用意します。
詳しくは「相続した不動産を売却する全体の流れとフェーズ別必要書類」をご覧ください。
- 相続登記はいつまでに必要?
相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料が科されることがあり、売却の引き渡し日までにも完了させておかなければなりません。
詳しくは「相続した不動産を売却する全体の流れとフェーズ別必要書類」をご覧ください。
- 相続した不動産の売却にかかる税金は?
売却益に課される譲渡所得税のほか、相続登記時の登録免許税、売買契約書に貼る印紙税がかかります。譲渡所得税の税率は所有期間で変わりますが、相続した不動産は被相続人の取得日を引き継ぐため、長期譲渡所得の税率が適用されることが多いです。
詳しくは「相続不動産の売却にかかる税金と費用」をご覧ください。
- 相続空き家の3,000万円特別控除を受けるための必要書類は?
1981年5月31日以前に建築された家屋などの要件を満たしたうえで、売却翌年の確定申告時に市区町村長が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付します。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があり、取得費加算の特例とは併用できません。
詳しくは「譲渡所得税を安くする2つの節税特例と必要書類」をご覧ください。
- 親の購入時の売買契約書が見つからない場合はどうする?
取得費を証明できない場合は売却価格の5%を概算取得費として計算しますが、本来の取得費より少なくなり税負担が重くなりやすいです。通帳の入出金履歴や住宅ローンの契約書、購入当時のパンフレットなどの代替資料を探し、見つからなければ購入時の不動産会社や金融機関に問い合わせてみましょう。
詳しくは「相続不動産を売却する際の注意点とトラブル対策」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
相続した不動産の売却を考えはじめたときは、まず亡くなった人が購入した当時の売買契約書を探すことをおすすめします。取得費を証明できないと、売却価格の5%を概算取得費として譲渡所得を計算することになり、税負担が重くなる可能性があります。実家の書棚や金庫など、心当たりがある場所に売買契約書が保管されていないか確認しましょう。

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