ざっくり要約!
- マンション売却で譲渡所得(利益)が出なかった場合や給与所得者で一定の条件を満たす場合は、確定申告をする必要はない
- 売却により損失が生じたときは、確定申告をすることで損益通算や繰越控除の特例を適用することで税金が還付される可能性がある
マンションを売却したときに利益が生じなかった場合は確定申告は不要です。一方、本来であれば確定申告が必要であるにもかかわらず、誤って不要と判断してしまうと、後で税務署から指摘され、加算税や延滞税が課せられる可能性があります。
マンションを売却したときは、売却益を正しく計算し、確定申告をすべきかどうかを適切に判断することが大切です。
今回は、マンション売却後に確定申告が不要になるケースや売却益が生じていなくても確定申告をしたほうが良いケースなどを解説します。
記事サマリー
マンション売却で確定申告が不要なケース
確定申告とは、1年間の所得と税金を計算し、税務署に申告・納税する手続きです。
マンションを売却して得た利益は「譲渡所得」として、所得税や住民税、復興特別所得税(2037年まで)の課税対象となります。これらは「譲渡所得税」と呼ばれます。
一方、以下のようなケースでは確定申告は不要です。
- 譲渡所得が生じなかった場合
- 給与所得者で給与・退職所得以外の所得合計が年間20万円以下の場合
譲渡所得は、売却価格から取得費(マンションを取得するのに要した費用)や譲渡費用(売却時に生じた税金や手数料など)を差し引いて求めます。
譲渡所得の計算結果が0円以下であれば原則として確定申告は不要です。
会社員や公務員などの給与所得者で年末調整を受けている場合、譲渡所得と給与以外の所得(副業による雑所得や配当所得など)の合計が20万円以下であれば確定申告は不要です。
ただし、後述する譲渡所得に関する控除特例を適用した結果、譲渡所得税が0円になる場合は確定申告をしなければなりません。
また、年末調整の対象となる給与以外の所得が20万円以下でも、譲渡所得が生じているのであればお住まいの自治体で住民税の申告と納税が必要です。
・「譲渡所得」に関する記事はこちら
譲渡所得の確定申告はいくらからするべき? 計算方法も詳しく解説
譲渡所得が出なくても確定申告したほうがいいケース
マンション売却で譲渡所得が発生しなかった場合でも、以下のような場合は確定申告をしたほうが良いでしょう。
- 新しいマイホームに買い替えるときに売却損が生じた場合
- 住宅ローンの残債よりも低い金額で売却した場合
上記のケースに該当する場合、確定申告で所定の控除特例を適用するとマンションを売った方の税負担が軽減され、納め過ぎた税金が還付される場合があります。申告期間は例年2月16日〜3月15日です。※土日祝日により前後します。
以下では、売却損が生じていても確定申告をしたほうが良いケースについて解説します。
新しいマイホームに買い替えるときに売却損が生じた場合
マンションを売却して新しいマイホームを購入する場合、一定の要件を満たすと「居住用財産の買換え等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用できます。
これは、マイホームの売却によって生じた損失を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)できる特例です。
たとえば、マンションを売却したときの損失が200万円、給与所得が500万円の場合、特例により損益通算をするとその年の課税所得が300万円に減額されます。その結果、売却した年の所得税と翌年の住民税が軽減されます。
会社員や公務員など給与や賞与から所得税が源泉徴収されている方は、確定申告でこの特例を適用したことで納税額が減った場合、差額を還付してもらうことが可能です。
また、この特例は繰越控除もできるため、所得から控除し切れなかった損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越し、各年の所得と相殺できます。
住宅ローンの残債よりも低い金額で売却した場合
マンションの売却代金が住宅ローンの残高を下回った場合、一定の要件を満たすと「特定居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用できます。
この特例についても、売却時に生じた損失を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)ができ、控除しきれなかった部分は翌年以降3年間繰り越して控除(繰越控除)が可能です。
一方、こちらの特例はマイホームを買い替える必要はありません。また、損益通算できる損失額はローン残高から売却金額を差し引いた残りが上限となります。住宅ローン控除との併用も可能です。
・「譲渡損失」に関する記事はこちら
不動産売却時の節税方法とは?譲渡損失が出た場合の特例活用法も解説
・「買換え特例」に関する記事はこちら
居住用財産の買換え特例とは?併用できない特例と適用要件をわかりやすく解説
マンション売却の譲渡所得を計算する方法
マンションの売却時に確定申告が必要かどうかを判断するためには、譲渡所得の計算方法を適切に理解しておく必要があります。
ここでは、譲渡所得の計算式について詳しく解説します。
課税の対象となる譲渡所得の計算式
課税対象となる譲渡所得(課税譲渡所得金額)は、次の計算式で求めます。
- 課税譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
計算式の各項目の内容は次の通りです。
| 内訳 | |
|---|---|
| 総収入金額 | ・マンションの売却金額 ・固定資産税・都市計画税の精算金 |
| 取得費 | ・マンションの購入金額 ・購入時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税など) |
| 譲渡費用 | ・売却時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬など) |
| 特別控除 | ・マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例(3,000万円特別控除) ・公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例 など |
単に譲渡所得というときは、特別控除額を差し引く前の金額を指すのが一般的です。
取得費の求め方
取得費は、売却したマンションを購入した際にかかった費用の合計から「減価償却費相当額」を控除した金額です。減価償却費相当額の計算式は次の通りです。
- 減価償却費相当額=建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数
経過年数は、築年数ではなく自分がマンションを所有していた期間を指します。6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てる点に注意しましょう。
居住用のマンションを売却する場合、建物の法定耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切り捨て)に応じた旧定額法の償却率を使用します。
法定耐用年数は、建物や設備などの固定資産を使用できる期間の目安として法律で定められる年数です。建物の構造や用途ごとに定められています。
マンションの多くは鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造です。そのため、法定耐用年数は47年であり、居住用はその1.5倍の70年(端数切り捨て)、それに対応する旧定額法の償却率は0.015となります。
たとえば、建物の購入価額2,000万円、構造が鉄骨鉄筋コンクリート造、経過年数が15年の場合、減価償却費相当額は以下の通りです。
- 2,000万円×0.9×0.015×15年=405万円
この場合、取得費を計算するときはマンションを取得する際にかかった費用から減価償却費相当額405万円を差し引きます。
・「減価償却」に関する記事はこちら
中古マンション売却時の減価償却費の計算方法は? 節税できる控除特例も紹介!
・「取得費が不明な場合」に関してはこちら
マイホーム売却時の税金
譲渡所得に対する税率
譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に税率をかけて税額を求める「分離課税」の対象です。税率はマンションを売却した年の1月1日時点の所有期間によって変わります。
| 所有期間 | 税率 |
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63%(所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%) |
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%) |
売却した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで税率に約19%の差が生じるため、税額も大きく変わります。
・「短期譲渡所得・長期譲渡所得」に関する記事はこちら
短期譲渡所得・長期譲渡所得の基礎知識!不動産売却で気をつけるべき点も
マンション売却後の確定申告の流れ

マンションの売却後に確定申告をする場合は、原則、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に申告書類を提出し、必要に応じて納税も済ませます。ここでは、確定申告の基本的な流れを解説します。
1.必要書類を揃える
まずは、確定申告に必要な書類を集めましょう。必要書類は以下の通りです。
| 書類の内訳 | |
|---|---|
| 申告書類 | 確定申告書第一表・第二表 確定申告書第三表(分離課税用) 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】) |
| 売却時の書類 | 売却時の売買契約書 譲渡費用(仲介手数料や登記費用など)が確認できる領収書 |
| 購入時の書類 | 購入時の売買契約書 購入時の仲介手数料や登記費用などが確認できる領収書 |
| 本人確認書類 | 以下A.Bのいずれか A.マイナンバーカードの裏面と表面のコピー B.番号確認書類(例:通知カード)+身元確認書類(例:運転免許証・パスポートなど) |
| その他 | 給与所得者の場合は源泉徴収票 |
売買契約書や領収書などは、確定申告の際に提出しなくても良いですが、申告書類を作成する際に必要です。
また、申告をした後も税務署から問い合わせがあったときにいつでも提示できるよう保管しておきましょう。
マイホームを売却したときの譲渡所得に関する控除特例を適用する際は、追加で書類が必要になる場合があります。
マンションを売却したときは、国税庁のWebサイトや最寄りの税務署で確定申告に必要な書類をよく確認することが大切です。
・「確定申告の必要書類」に関する記事はこちら
不動産売却後の確定申告に必要な書類は? やり方・控除特例もわかりやすく解説
2.申告書類を作成する
マンション売却の確定申告では、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)と確定申告書第一表・第二表、第三表(分離課税用)を作成します。
譲渡所得の内訳書は、売却価格、取得費、譲渡費用などを記入する書類です。記入を進めると課税の対象となる譲渡所得の金額を算出できるようになっています。
確定申告書には譲渡所得をはじめとするすべての所得や税額などを記載します。マンション売却時の譲渡所得は分離課税のため、第三表(分離課税用)への記入も必要です。
譲渡所得の内訳書と確定申告書を作成する際は、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」を利用することをおすすめします。
画面の案内にしたがって金額を入力するだけで、譲渡所得や所得税が自動で計算され、それらが反映された申告書類を作成できます。
3.税務署へ提出する
確定申告書類が作成できたら、以下のいずれかの方法で税務署に提出します。提出先は、売主本人の住所地を管轄する税務署です。
- 税務署の窓口に持参
- 税務署へ郵送
- e-Taxでのオンライン申請
税務署の窓口へ持参すると、申告期間中に設けられる相談コーナーで職員に質問しながら申告書の作成と提出ができます。ただし、申告期間中は混雑しやすいため、時間に余裕をもって出向くようにしましょう。
郵送で提出する場合、所轄の税務署または業務センター宛に確定申告書類一式を信書便で送付します。提出日は郵送物に押された消印の日付となるため、この日付が申告期限内となるように郵送しましょう。
e-Taxであれば、マイナンバーカードとその読み取りに対応したスマートフォン(またはICカードリーダー)を利用してオンラインで申告が完了します。24時間いつでも送信でき、税務署へ足を運ぶ必要もありません。
・「e-taxの準備や手順」に関する記事はこちら
マンション売却で確定申告をe-taxでする場合の準備や手順解説
確定申告が必要にもかかわらず怠った場合に課される税金
確定申告が必要にもかかわらず適切に申告をしなかった場合、本来納めるべき税金に加えて加算税や延滞税が課される可能性があります。
マンションを売却したときは、加算税や延滞税の対象にならないよう、期日までに確定申告を済ませることが大切です。
ここでは、確定申告を怠った場合や本来よりも税額を少なく申告した場合に課される税金について解説します。
加算税
加算税は、本来納めるべき税金を正しく申告・納付しなかった場合に、ペナルティとして追加で課される税金です。
申告そのものをしなかった場合に課される無申告加算税と、申告はしたものの税額が少なかった場合に課される過少申告加算税の2種類があります。
| 項目 | 無申告加算税 | 過少申告加算税 |
|---|---|---|
| 概要 | 申告期限までに申告しなかった場合に課される | 申告はしたが税額が少なかった場合に課される |
| 計算方法 | 納付すべき税額×税率 | 新たに納める税額×税率 |
| 税率 | 税務署から調査の事前通知が届く前に自主的に期限後申告:5% 事前通知後から税務調査の開始前までに期限後申告:10〜25% 税務調査後に期限後申告:15〜30% | 税務署から調査の事前通知が届く前に自主的に修正申告:かからない 事前通知後から税務調査の開始前までに修正申告:原則5%※1 税務調査後に修正申告:原則10%※2 |
※2「当初の申告納税額」と「50万円」のいずれか多い金額を超えた部分は15%
税務署から調査の事前通知が届く前に自主的に申告すれば、無申告加算税の税率は5%に抑えられ、過少申告加算税については課されなくなります。
申告漏れや税額の計算ミスに気が付いたときは、速やかに期限後申告または修正申告をし、正しい税金を納めるようにしましょう。
延滞税
延滞税は、納付期限(例年3月15日)を過ぎても税金を納めなかった場合に、遅れた日数に応じて課される税金です。延滞税の額は、法律で定められる納期限の翌日から本来の税額を納める日までの日数に応じて決まります。
また、納期限の翌日から2か月が経過した日の翌日以降は税率が上昇します。
納付が遅れるほど延滞税の負担が増えていくため、譲渡所得にかかる税金を正しく納めていなかった場合は、速やかに期限後申告または修正申告をしましょう。
意図的な隠蔽や不正行為はさらに重税に
意図的に所得を少なく申告した場合や所得の隠蔽・偽装などの不正行為があった場合は、無申告加算税や過少申告加算税に代わって「重加算税」が課される可能性があります。
重加算税の税率は次の通りです。
- 過少申告(申告はしたが所得を隠蔽・偽装した場合):追加で納める税額の35%
- 無申告かつ隠蔽・偽装があった場合:本来納める税額の40%
無申告加算税や過少申告加算税に比べて重加算税の税率は高く設定されているため、追加で納める税金の負担も重くなります。
重加算税が課されないようにするためにも、譲渡所得やそれに課せられる税金は適切に申告することが大切です。
まとめ
マンション売却時に譲渡所得が発生しない場合は原則として確定申告をする必要はありません。また、会社員や公務員などの給与所得者は、売却によって譲渡所得が生じても給与以外の所得が合計20万円以下であれば基本的に申告不要です。
一方で、売却損が生じたときは確定申告をして控除特例を適用することで、給与所得や事業所得などと相殺して所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。
確定申告が必要かどうかを正確に判断するためには、譲渡所得を正しく計算することが重要です。不明点がある場合は税理士や不動産会社に相談し、期限までに適切に申告手続きが済ませられるようスケジュールに余裕をもって準備を進めましょう。
この記事のポイント
- マンションを売却しました。確定申告が不要なケースもあるのですか?
「譲渡所得が生じなかった場合」、「給与所得者で給与・退職所得以外の所得合計が年間20万円以下の場合」は確定申告が不要です。
詳しくは「マンション売却で確定申告が不要なケース」をご覧ください。
- 譲渡所得がでなくても確定申告した方が良い場合があるのですか?
「新しいマイホームに買い替えるときに売却損が生じた場合」「住宅ローンの残債よりも低い金額で売却した場合」は確定申告で所定の控除特例を適用するとマンションを売った方の税負担が軽減され、納め過ぎた税金が還付される場合があります。
詳しくは「譲渡所得が出なくても確定申告したほうがいいケース」をご覧ください。
- 確定申告の必要があるのにしなかった場合、どうなりますか?
確定申告が必要にもかかわらず適切に申告をしなかった場合、本来納めるべき税金に加えて加算税や延滞税が課される可能性があります。
詳しくは「確定申告が必要にもかかわらず怠った場合に課される税金」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
マンションを売却したときは、譲渡所得が生じていないかをよく確認し、必要に応じて確定申告を行いましょう。税務署は登記記録などをもとにマンションが売却された事実や売却金額を把握できます。そのため、必要であるにもかかわらず確定申告をしていないと、高い確率で税務署から指摘を受けます。「バレないだろう」と手続きを怠るのではなく、期限内に正しく申告手続きをしましょう。


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