不動産売買の流れ 売主
更新日:  

売主必見!不動産売買の流れと必要書類、諸費用を完全ガイド

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 不動産売買の流れは、売却査定から始まり、媒介契約、販売活動、購入申込み、売買契約、引き渡しまでの6ステップです。
  • 査定、売買契約、引き渡しの各タイミングで必要書類を準備します。
  • 不動産の売却には、仲介手数料や印紙税、登記費用などの諸費用がかかります。

不動産の売却を検討しているものの、何から始めればよいか分からないという方もいるのではないでしょうか。不動産売買には専門的な知識が求められる場面も多く、手続きも複雑です。売却をスムーズに進めるには、一連の流れを事前に把握しておきましょう。

この記事では、不動産売買の基本的な流れを6つのステップに分け、それぞれの段階で売主がやるべきことを解説します。タイミング別に必要となる書類や、売却にかかる費用・税金についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

不動産を売却する流れと売主がやること

不動産の売却は、準備から引き渡しまで数ヶ月から半年ほどかかるのが一般的です。ここでは、売却の流れを以下の6つのステップに分け、各段階で売主がやるべきことを解説します。

  1. 売却査定
  2. 媒介契約の締結
  3. 販売活動
  4. 購入申込み・契約条件の調整
  5. 売買契約
  6. 決済・引き渡し

1.売却査定

売却査定は、所有する不動産がいくらで売れそうか、不動産会社に価格を算出してもらうことです。査定には、人工知能を活用した「AI査定」と物件情報をもとに算出する「机上査定」、そして実際に物件を訪問して評価する「訪問査定」32種類があります。

より正確な査定額を知るためには、訪問査定が不可欠です。査定額は不動産会社によって異なるため、3社程度に依頼し、提示された金額の根拠や販売戦略などを比較検討しましょう。

売主がやること

訪問査定を受ける際には、事前に物件の購入時の資料や図面、リフォーム履歴がある場合、仕様書などを準備しておくと、より精度の高い査定を受けられます。

また、査定は不動産会社の担当者と直接話せる機会でもあります。売却に関する疑問や不安な点を質問し、信頼できる担当者かどうかを見極めることも重要です。査定結果や担当者の対応を比較し、仲介を依頼する会社を検討します。

プロが解説 取引の流れ 費用と税金 不動産売却なら東急リバブル

2.媒介契約の締結

売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約とは、不動産の売却活動を正式に依頼するための契約です。

契約形態には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、それぞれ売却活動の報告義務や、自分で見つけた相手との契約可否などが異なります。それぞれの特徴を理解し、自身の売却方針に合った契約形態を選びましょう。
売主がやること
不動産会社から媒介契約の種類について説明を受け、どの形態で契約するかを決定します。契約時には、広告などに掲載する売却の希望価格(売出価格)を設定します。不動産会社の査定価格や周辺の相場、自身の希望などを踏まえて、担当者と相談しながら決めましょう。

契約締結の際には、本人確認書類や実印、登記済権利証または登記識別情報などの書類が必要です。

3.販売活動

媒介契約を結ぶと、不動産会社による販売活動が始まります。不動産情報サイトへの物件掲載やチラシの配布などによって、購入希望者を探します。

購入希望者から内覧の希望があれば、日程を調整して物件を案内しましょう。内覧は、物件を直接確認してもらい、購入の意思を固めてもらうための貴重な機会です。

売主がやること

売主には、不動産会社が行う販売活動への協力が求められます。特に内覧の対応は重要です。室内をきれいに整理整頓・清掃し、できる限り良い印象を与えることが大切です。

内覧当日は、購入希望者からの質問に答えられるよう、物件の魅力や周辺環境について整理しておきましょう。

また、売主には雨漏りや設備の故障など、物件の欠陥や不具合を告知する義務があります。告知は、物件状況報告書や設備表に記入して行うのが一般的です。引き渡し後のトラブルを防ぐためにも、把握している情報は正確に伝えることが大切です。

4.購入申込み・契約条件の調整

購入希望者が物件購入の意思を固めた場合、購入申込書(買い付け証明書)が提出されます。購入申込書には、希望購入価格や代金の支払い方法、引き渡し希望日などの条件が記載されています。

売主がやること

不動産会社から購入申込書の内容について説明を受け、提示された条件で売却するかどうかを検討します。希望価格と差がある場合は、値引き交渉に応じるかの判断が必要です。また、引き渡しの日程についても自身のスケジュールを踏まえて調整します。

価格や引き渡し時期などの条件に合意できない場合は、不動産会社を通じて交渉しましょう。双方が納得できる条件で合意に至ったら、売買契約の締結に向けて準備を進めます。

5.売買契約

売主と買主の双方が契約条件に合意したら、売買契約を締結します。契約時には、宅地建物取引士から重要事項説明を受け、契約内容を最終確認します。その後、売買契約書に署名・捺印し、買主から手付金を受領します。

手付金は、売買代金の一部として扱われるのが一般的です。契約後は、自己都合で契約を解除する場合、手付金の放棄や違約金の支払いが必要になるため、注意が必要です。

売主がやること

契約日に不動産会社に出向き、売買契約の手続きを行います。契約書の内容に間違いがないか、隅々まで確認することが大切です。

契約時には、本人確認書類や実印、印鑑証明書、登記済権利証または登記識別情報などが必要です。また、契約書に貼付する印紙代も準備します。不動産の売買契約は専門的な内容が多いため、不明点があればその場で担当者に質問しましょう。

6.決済・引き渡し

売買契約後、買主は住宅ローンの本審査手続きなどを進めます。本審査が承認されたら、残代金の決済と物件の引き渡しの日程を確定します。

決済日当日、買主から売買代金の残額が支払われます。同時に、物件の所有権を買主に移転するための登記手続きを司法書士に依頼します。すべての手続きが完了したら、物件の鍵を買主に渡して、引き渡しは完了です。

売主がやること

引き渡し日までに物件から家財などをすべて運び出し、空室の状態で引き渡せるように準備を進めます。公共料金の精算や、引越しに伴う住所変更の手続きも済ませておきましょう。

決済日には、買主から残代金を受領し、登記手続きに必要な書類を司法書士に渡します。住宅ローンが残っている場合は、銀行に事前手続きの上、 完済手続きを行います。最後に物件の鍵や関連書類を買主に引き渡し、取引は完了です。

不動産売却の必要書類

不動産売却 必要書類

不動産を売却する際には、様々な書類が必要になります。書類によっては取得に時間がかかるものもあるため、事前に全体像を把握し、計画的に準備を進めることが重要です。ここでは、必要となる主な書類を3つのタイミングに分けて紹介します。

  • 査定依頼時
  • 売買契約時
  • 決済・引き渡し時

査定依頼時

不動産会社に査定を依頼する段階で、必ず用意しなければならない書類は特にありません。しかし、物件に関する情報が詳しく分かる書類があると、より正確な査定額を算出できます。準備しておくとよい主な書類は、以下のとおりです。

書類名概要取得方法
登記済権利証または登記識別情報物件の所有者であることを証明する書類物件取得時に法務局から発行。再発行は不可。
固定資産税納税通知書・課税明細書毎年支払う固定資産税額が記載された書類毎年4月〜6月頃に市区町村から郵送される。
間取り図物件の広さや部屋の配置物件の購入時に不動産会社から受け取る。
測量図土地の正確な寸法がわかる図面法務局で写しを取得可能。
建築確認済証、検査済証建物が建築基準法に適合していることを証明する書類物件の購入時に不動産会社から受け取る。

これらの書類によって、不動産の所有者や面積、形状、固定資産税額などを正確に把握できます。

また、住宅性能評価書やホームインスペクションの報告書などがあれば、建物の品質を客観的に示す材料になります。

売買契約時

買主と売買契約を締結する際には、契約手続きや本人確認のために、以下の書類が必要になります。

書類名概要取得方法
本人確認書類運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書。
実印・印鑑証明書売主本人の実印、印鑑証明書。
共有名義の場合は全員分が必要。
印鑑証明書は市区町村の役所で取得。
登記済権利証または登記識別情報物件の所有者であることを証明する書類。買主や司法書士が確認する。物件取得時に法務局から発行。再発行は不可。
固定資産税評価証明書固定資産税の基準となる評価額を証明する書類。市区町村の役所または都税事務所で取得。
印紙税(収入印紙)売買契約書に貼付する印紙。契約金額によって税額が異なる。郵便局や法務局などで購入。

決済・引き渡し時

売買代金の残金決済と物件の引き渡し時には、所有権移転登記をはじめとする重要な手続きが行われます。そのため、法的な手続きに使う書類を揃えます。主な必要書類は、以下のとおりです。

書類名概要取得方法
登記済権利証または登記識別情報所有権移転登記に必要。司法書士に預ける。物件取得時に法務局から発行。再発行は不可。
実印・印鑑証明書登記手続きに使用。発行から3ヶ月以内のもの。印鑑証明書は市区町村の役所で取得。
抵当権抹消関連書類住宅ローンを完済し抵当権を抹消するための書類一式。決済日の約2~3週間前までに連絡し、金融機関から取り寄せる。
売却代金の振込先口座情報通帳やキャッシュカードなど、金融機関名、支店名、口座番号がわかるもの。
建築確認済証、検査済証建物が建築基準法に適合していることを証明する書類。物件の購入時に不動産会社から受け取る。
付帯設備の取扱説明書・保証書エアコンや給湯器などの設備に関する書類一式。
物件の鍵玄関の鍵や宅配ボックスのカードキーなど、すべての鍵。

所有権移転登記の申請に用いる印鑑証明書は、発行後3ヶ月以内のものでなければなりません。また、住宅ローンが残っている場合は、抵当権を抹消するための書類も金融機関から事前に取り寄せておく必要があります。

不動産売却にかかる費用

不動産売却では、売却で得たお金がすべて手元に残るわけではありません。資金計画を立てるためにも、どのような費用がかかるかを事前に把握しておくことが大切です。ここでは、不動産売却にかかる主な費用について解説します。

  • 印紙税
  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 住宅ローン完済手数料
  • その他の費用

印紙税

印紙税は、不動産売買契約書のような課税文書を作成する際に課される税金です。契約書に記載された契約金額に応じて税額が決まり、収入印紙を契約書に貼り付けて納税します。

2027年3月31日までは軽減税率が適用され、以下の税額となります。

契約書に記載される金額本則税率軽減税率
10万円を超え50万円以下のもの400円200円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円500円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

例えば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合、本則税率では2万円ですが、軽減措置が適用されると1万円となります。

売主用と買主用の2通の契約書を作成するため、売主と買主がそれぞれ1通分の印紙税を負担するのが一般的です。

仲介手数料

仲介手数料は、売却の仲介を依頼した不動産会社に支払う成功報酬です。売買契約が成立した際に発生し、一般的には売買契約時と引き渡し時に半金ずつ支払います。

仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法で定められており、次の即算式で計算できます。

売買金額仲介手数料
200万円以下(売買金額×5%)+消費税
200万円超400万円以下(売買金額×4%+2万円)+消費税
400万円超(売買金額×3%+6万円)+消費税

例えば、3,000万円で売却した場合の仲介手数料の上限は、以下のとおり105万6,000円(税込)となります。

  • (3,000万円×3%+6万円)+消費税=105万6,000円(税込)

登記費用

不動産を売却する際は、主に「抵当権抹消登記」と「所有権移転登記」の主に2つの手続きが行われます。所有権移転登記の費用は、買主が負担するのが一般的です。

一方、住宅ローンが残っている場合、抵当権抹消登記の費用は売主が負担します。抵当権抹消登記の費用には、登録免許税と司法書士への報酬が含まれ、以下の金額が目安となります。

登録免許税抵当権抹消の登録免許税
不動産1個につき1,000円、土地と建物で2,000円となることが多い
司法書士手数料抵当権抹消のための司法書士手数料
1.5~2.5万円程度

住宅ローン完済手数料

住宅ローンが残っている物件を売却する場合、売却代金でローンを完済するための手続きが必要です。その際に、金融機関へ支払うのが住宅ローン完済手数料(繰り上げ返済手数料)です。

手数料の金額は、利用している金融機関や手続きの方法によって異なります。例えば、窓口での手続きは数万円かかる場合がありますが、インターネット経由の手続きであれば無料または数千円程度で済むこともあります。具体的な金額は、ローンを契約している金融機関に確認しましょう。

その他の費用

上記以外にも、状況に応じて様々な費用がかかる場合があります。例えば、隣地との境界が確定していない場合に必要となる土地の測量費用や、古い建物を解体して更地で売却する場合の解体費用などが挙げられます。

また、買主へのアピールポイントとして、専門家による建物の調査(インスペクション)を実施する場合にも費用がかかります。

金額の目安は次のとおりですが、物件の状況によって異なるため、必要に応じて見積もりを依頼しましょう。

測量費用・土地の広さや隣地所有者数などによって異なる
・1回の確定測量で40~100万円程度が目安
解体費用・建物の構造や広さ、立地条件により異なる
・1坪あたりの目安は、木造4万円程度、鉄骨造(S造)6万円程度、鉄筋コンクリート造(RC造)7万円程度
インスペクション費用・5〜10万円程度が目安

不動産売却で譲渡所得税が課されるケース

不動産を売却して利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税(所得税・住民税)が課税されます。譲渡所得は、他の所得とは別に計算する「分離課税」の対象です。ここでは、譲渡所得の計算方法や税率、利用できる控除特例について解説します。

譲渡所得の計算方法

課税対象となる譲渡所得は、以下の計算式で算出します。

  • 課税譲渡所得金額=売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額

取得費とは、売却した不動産の購入代金や購入時にかかった諸費用から、建物の減価償却費を差し引いた金額です。

譲渡費用には、仲介手数料や印紙税など、売却のためにかかった費用が含まれます。これらの費用を売却価格から差し引いた金額が、課税の対象となります。

税率

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に区分されます。

区分所有期間所得税住民税合計税率
短期譲渡所得5年以下30.63%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15.315%5%20.315%

※所得税には、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が含まれます。

控除特例

マイホーム(居住用財産)を売却した場合には、税負担を軽減するための様々な特例が設けられています。主な控除特例は以下の通りです。

控除特例概要
3,000万円特別控除住んでいたマイホーム(居住用財産)を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例
軽減税率の特例所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合に、課税譲渡所得6,000万円以下の税率が14.21%に軽減される特例
買い換え特例マイホームを買い替える場合、旧居の売却で生じた譲渡所得に対する課税を新居の売却時にまで先送りできる特例
取得費加算の特例相続や遺贈※で取得した不動産を相続開始から3年10か月以内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例
※遺言によって法定相続人ではない人に遺産を贈ること

これらの特例を適用するには一定の要件を満たし、確定申告を行う必要があります。

まとめ

不動産の売却は、査定から始まり、媒介契約、販売活動、売買契約、決済・引き渡しという流れで進みます。それぞれの段階で売主がやるべきことや必要な書類が異なるため、全体像を把握して準備を進めましょう。

また、売却時には仲介手数料や印紙税、登記費用などの諸費用がかかるほか、売却によって利益が出た場合には譲渡所得税が課される可能性もあります。

不動産の売却には専門的な知識が求められるため、信頼できる不動産会社をパートナーに選ぶことが重要です。東急リバブルでは、お客様の状況に合わせ、売却活動をサポートいたします。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事のポイント

不動産を売却する流れは?

不動産の売却には準備から引き渡しまで数ヶ月から半年ほどかかるのが一般的で、売却の流れは査定や売却活動などの6ステップです。

詳しくは「不動産を売却する流れと売主がやること」をご覧ください。

不動産売却時の必要書類を教えてください。

不動産を売却する際には、査定時・売買契約時・引き渡し時に様々な書類が必要になります。書類によっては取得に時間がかかるものもあるため、事前に全体像を把握し、計画的に準備を進めることが重要です。

詳しくは「不動産売却の必要書類」をご覧ください。

不動産売却の費用はどのくらいかかりますか?

不動産売却では、売却金額の4%程度の諸費用がかかります。

詳しくは「不動産売却にかかる費用」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

不動産売却の流れのなかで、想定よりも長引く可能性があるのが販売活動で、その要因のひとつは価格設定です。売却をスムーズに進めるためには、適切なタイミングで価格を見直す判断も重要になります。
一般的に、販売開始から3ヶ月程度経っても購入希望者からの反応が薄い場合は、価格見直しを検討する目安とされています。ただし、安易に値下げするのではなく、不動産会社の担当者と相談のうえ、内覧件数や周辺の類似物件の価格などを参考に判断するとよいでしょう。