ざっくり要約!
- 「がんと診断されると住宅ローンの返済がなくなる」といった仕組みは「がん団信」に加入している場合に適用
- がん団信は一度契約すると保障内容の変更ができないため、契約前に内容をきちんと確認する
これから住宅ローンを組む予定の方のなかには「がんになると住宅ローンがチャラになる」といったことを耳にしたことがあるかもしれません。
これは「がん団信」に加入している場合に適用される仕組みで、がんと診断された場合にその後の住宅ローンの返済が免除される可能性があります。ただし、がん団信には加入条件や保障内容に注意すべき点があり、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、がん団信の基本的な仕組みや、がん団信の種類、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。これから住宅ローンを組む方にとって、知っておきたいポイントをまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
記事サマリー
「癌で住宅ローンがチャラになった」はがん団信に加入していた場合

「がんと診断されると住宅ローンの返済がなくなる」といった仕組みは「がん団信」に加入している場合に適用されます。
通常、住宅ローンを契約する際には団体信用生命保険(団信)への加入を求められます。その団信にがんへの備えを加えたのが「がん団信」です。がん団信に加入することで、がんと診断された段階で住宅ローンの返済が免除されることになります。
ここではまず、基本となる「団信」とは何か、そしてがん団信にはどのような特徴があるのかについてみていきます。
団信とは
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの契約者が返済途中で死亡または所定の高度障害状態になった場合に、保険金によってローン残高を完済できる仕組みの保険です。
住宅ローンは数千万円単位の借入になることが多く、万が一、病気や事故で返済ができなくなった場合には、家族に負担が及ぶ可能性があります。こうしたリスクを避けるために、団信は重要な役割を果たしています。
通常、団信の保険料は住宅ローンの金利に組み込まれており、別途支払う必要はありません。また、金融機関で住宅ローンを組む場合、多くのケースで団信への加入が義務付けられています。
なお、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」などのローンについては、団信への加入は任意となっており、自身で加入するかどうかを選択することになります。
・「団信」に関する記事はこちら
団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説
がん団信の特徴
がん団信とは、一般的な団体信用生命保険に「がん保障」の特約を追加したものです。
契約者ががんと診断された場合、その時点で住宅ローンの残高がゼロになる仕組みです。
通常の団信では、死亡や所定の高度障害状態になった場合にしか住宅ローンが完済されません。しかし、がん団信に加入していれば、診断された段階で住宅ローンの返済義務がなくなります。
さらに、がん団信には手術や先進医療を受けた場合に、給付金や一時金を受け取れる特約が付いていることもあり、治療費の負担軽減にもつながるでしょう。
ただし、保障の内容や適用条件は、金融機関やローン商品によって異なります。また、がん団信に加入するには健康状態などに関する審査があり、すべての方が必ず加入できるわけではない点にも注意が必要です。
・「団信」に関する記事はこちら
団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説
癌で住宅ローンがチャラになるがん団信の種類

がん保障が付いた団信にはいくつかの種類があり、それぞれ保障範囲や免除条件が異なります。
代表的ながん団信の種類として以下の3つが挙げられます。
- がん団信
- 三大疾病団信
- 七大疾病・八大疾病団信
それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。
がん団信
がん団信は、その名のとおり「がん」のみを保障対象とする団体信用生命保険です。契約者ががんと診断された場合に、住宅ローンの残高が免除される仕組みです。
がん団信の保険料については、住宅ローンの金利に上乗せされるタイプと、無料で付帯できるタイプの2種類があります。
無料で付帯できるタイプの多くは、診断時に住宅ローン残高の50%が免除されることが多いです。一方、住宅ローン残高の100%が免除されるタイプのがん団信を希望する場合は、金利に上乗せするタイプが一般的です。
上乗せ幅の目安は0.1~0.2%で、たとえば元の金利が0.5%であれば、がん団信への加入後は0.6~0.7%程度になるでしょう。
三大疾病団信
三大疾病団信は「三大疾病」を対象とした団体信用生命保険で、以下の3つの病気が保障の対象となります。
- 癌
- 心疾患(急性心筋梗塞など)
- 脳卒中
住宅ローンの返済期間中に、これらの三大疾病によって所定の状態に該当した場合、住宅ローンの残高が免除される仕組みです。
厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、日本における総死亡者数のうち約46%が三大疾病によって亡くなっており、高い割合を占めています。
疾病名 | 死亡割合 |
がん(悪性新生物) | 24.6% |
心疾患 | 14.8% |
脳血管疾患 | 6.9% |
こうした背景からも、三大疾病団信に加入しておくことで、もしもの際の返済リスクを軽減し、経済的な不安を和らげることができるでしょう。
七大疾病団信・八大疾病団信
七大疾病団信・八大疾病団信は、三大疾病団信の保障範囲をさらに広げた団信で、以下のような生活習慣病も保障対象に含まれます。
- 高血圧症
- 糖尿病
- 慢性腎不全
- 肝硬変
- 慢性膵炎
これらは三大疾病(がん・心疾患・脳卒中)に加えて、さらに多くの病気がカバーされており、より広域なリスクに備えることができます。
ただし、保障範囲が広がる分、保険料の負担も大きくなります。
住宅ローンの金利には、三大疾病団信よりも高い水準で、0.3%前後の上乗せが一般的です。
また、七大疾病や八大疾病に含まれる病気の範囲や、どのような状態でローン残高が免除されるかといった条件は金融機関ごとで異なります。そのため、加入を検討する際には、保障の内容や適用条件をよく確認することが大事です
がん団信のメリット・デメリット

がん団信には、万が一に備えられるメリットがある一方で、注意しておきたいデメリットも存在します。加入を検討する際には、両面をよく理解したうえで判断することが大事です。
ここでは、がん団信のメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
メリット
がん団信のメリットは主に次の2つです。
- がんと診断されると住宅ローンの返済が免除される
- 保険料が一般のがん保険と比べて割安
がん団信はがんと診断されると、その後のローン返済が免除されます。
つまりローン残高がそのまま保障額になるため、一般的ながん保険よりも手厚い保障となるケースもあります。
ローン返済がなくなれば毎月の家計負担を軽減できるだけでなく、精神的な安心感も得られるでしょう。
また、がん団信の保険料は、単体で加入するがん保険と比較して割安に設定されていることが多く、費用対効果の面でも優れています。
そのうえ住宅ローン控除が適用される場合、金利に含まれたがん団信の保険料も控除対象となるため、節税効果も期待できます。
デメリット
一方でがん団信には以下のようなデメリットがあります。
- 契約後は内容変更ができない
- 住宅ローンの返済終了後は保障期間も終わる
- がんの種類によっては対象にならない
がん団信は、一度契約すると保障内容の変更ができないため、契約前に内容をきちんと確認したうえで判断する必要があります。
また、住宅ローンの完済と同時に保障も終了する仕組みのため、完済後にがんを発症しても保障は受けられません。
その場合は、別途がん保険などでカバーする必要があるでしょう。
さらに、すべてのがんが保障の対象になるわけではありません。たとえば、上皮内新生物(初期のがん)など、一部のがんは保障の対象外とされる場合があります。
がん団信加入後に癌と診断されたら住宅ローンはどうなる?

では実際に、がん団信に加入している状態でがんと診断された場合、住宅ローンの返済はどうなるのでしょうか。
ここからは、がんと診断されたときの保障内容を確認するとともに、がん団信に加入した場合と、加入しない場合でどれだけ費用に差が出るのかを具体的なシミュレーションでみていきます。
【シミュレーション条件】
- 借入金額:4,000万円
- 返済期間:35年(元利均等返済)
- 金利(一般の団信):0.5%(全期間固定)
- 金利(がん団信):0.7%(0.2%上乗せ)
まず、がん団信に加入しない場合の毎月の返済額は 10万3,834円です。
対して、金利が0.2%上乗せされた場合の毎月の返済額は 10万7,408円となり、月々の負担は約3,574円増加します。
この差額を35年間で比較すると、以下のようになります。
【返済額の比較】
一般の団信(1.0%) | がん団信(1.2%) | |
総返済額(35年間) | 約4,361万円 | 約4,511万円 |
総支払差額 | 約150万円 |
がんと診断された場合に住宅ローンの返済がすべて免除されることを考えると、月々3,500円程度の上乗せで加入できるがん団信は、万が一に備える手段として十分に検討する価値があるといえるでしょう。
がん団信加入にあたっての注意点

がん団信に加入する際には以下の点に注意する必要があります。
- 治療費は別で必要になる
- 住宅ローン返済期間になるほどメリットが少なくなる
- 保障の対象外となる期間がある
- 保障の条件を確認する
これらの注意点を事前に理解しておくことで、加入後のトラブルを防ぐことができます。
治療費は別で必要になる
がん団信は、がんと診断された際に住宅ローンの返済が免除される仕組みですが、がんの治療費そのものを保障する制度ではありません。
とくに注意したいのが、先進医療にかかる費用です。代表的なものとして重粒子線治療や陽子線治療が挙げられます。これらは治療効果が期待される一方で、保険適用外となることが多く、費用が高額になる傾向にあります。
たとえば重粒子線治療の場合、1回の治療で平均300万円程度かかるといわれており、経済的な負担は小さくありません。
がん団信で住宅ローンの負担を軽減できたとしても、治療にかかる費用は別途準備しておく必要があります。
そのためには、別途がん保険に加入しておく、あるいは医療費に備えた貯蓄を確保しておくなどの対策が重要になります。
住宅ローン返済期間になるほどメリットが少なくなる
がん団信の保障は住宅ローンの残高に応じて適用されるため、加入してすぐにがんと診断された場合と、完済直前に診断された場合とでは受けられる保障の金額に差が生じます。
たとえば、4,000万円の住宅ローンを契約したばかりであれば、その金額全体が保障の対象となります。一方で返済が進み、ローン残高が500万円程度になった段階でがんと診断された場合は、免除されるのは500万円のみです。
とくに注意したいのは、繰り上げ返済をした直後に万が一の事態が起きたケースです。現金が減ったうえに保障も縮小され、家計への影響が大きくなるおそれがあります。
そのため、繰り上げ返済を行う際は、貯蓄とのバランスやリスクへの備えも考慮したうえで慎重に判断することが大事です。
保障の対象外となる期間がある
がん団信には、契約してすぐに保障が受けられるわけではなく「免責期間」が設けられているのが一般的です。
多くのケースでは、契約から90日以内にがんと診断された場合は保障の対象外となり、団信は適用されません。
また、免責期間だけでなく、がんの種類によっても保障対象外となる場合があります。たとえば、上皮内がん(初期のがん)などは、多くの商品で保障の対象外とされています。
がん団信を検討する際は、保障がいつから始まるのか、そしてどのようながんが対象になるのかを事前に確認しておきましょう。
保障の条件を確認する
がん団信の保障が実際に適用されるかどうかは、診断されたタイミングやがんの進行度(ステージ)によって異なる点に注意が必要です。
たとえば、初期段階のがんは対象外とされる場合や「入院が必要な状態」といった条件が付けられていることもあります。
また、契約時の年齢制限についても一般的な団信に比べて厳しく設定されています。金融機関によって異なるものの、50歳前後を上限の目安としていることが多いようです。
・「団体信用生命保険に入れない病気」に関する記事はこちら
団体信用生命保険に入れない病気とは?該当ケースや対処法まで解説
まとめ
がん団信とは、一般的な団体信用生命保険に「がん保障」の特約を加えたもので、契約者ががんと診断された場合に住宅ローンの残高が免除される仕組みの保険です。がん団信に加え、三大疾病団信や七大・八大疾病団信といった、より広範な保障をカバーする団信も存在します。
がん団信の主なメリットは、がんと診断されることで住宅ローンの返済義務がなくなる点です。一方で、契約後に内容の変更ができないことや、住宅ローンの完済とともに保障も終了する点には注意が必要です。
これらの特徴をふまえたうえで、自身のライフプランやリスクへの備え方に合った保険を選びましょう。
この記事のポイント
- 癌で住宅ローンがチャラになるがん団信の種類は?
がん保障が付いた団信にはいくつかの種類があり、それぞれ保障範囲や免除条件が異なります。代表的ながん団信の種類として以下の3つが挙げられます。
- がん団信
- 三大疾病団信
- 七大疾病・八大疾病団信
詳しくは「癌で住宅ローンがチャラになるがん団信の種類」をご覧ください。
- がん団信加入にあたっての注意点は?
がん団信は、がんと診断された際に住宅ローンの返済が免除される仕組みですが、がんの治療費そのものを保障する制度ではありません。とくに注意したいのが、先進医療にかかる費用です。
代表的なものとして重粒子線治療や陽子線治療が挙げられます。これらは治療効果が期待される一方で、保険適用外となることが多く、費用が高額になる傾向にあります。そのほかにも、がん団信加入時にはさまざまな注意点があります。詳しくは「がん団信加入にあたっての注意点」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
住宅ローンを組む際、団信に加入することで、万が一のときにも経済的・精神的な安心感を得られます。なかでも、がんに対する不安を抱えている方には、がん団信の加入を検討する価値があります。たとえば、親族にがんの罹患者がいる方や、喫煙・飲酒などの生活習慣がある方は、前向きに加入を検討するとよいでしょう。
また、がん団信はあくまで住宅ローン返済をカバーするものであり、治療費までは保障されません。万が一の医療費に備えるためには、がん保険や医療保険との併用を考えるなど、トータルでのリスク管理をおすすめします。

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