不動産ID
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不動産IDは新しい不動産管理の仕組み|ガイドラインの内容解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 不動産IDとは、1つの不動産に対して割り振られる固有の番号のこと
  • 不動産IDはまだ試験的に運用されている段階で、これから整備拡大されていく見込み

デジタル化社会において、不動産の情報をスムーズに検索・整理・活用するために不動産IDの整備が進められています。
不動産IDとは、不動産を一意に特定できる不動産の共通コードのことです。

不動産IDがあれば、1つの不動産に関するさまざまな情報を紐づけることができ、対象不動産のあらゆる状況を把握することができます。
不動産IDとは、どのようなものなのでしょうか。
この記事では「不動産ID」について解説します。

不動産IDとは?概要や導入背景を解説

不動産IDとは?概要や導入背景

不動産IDとは、1つの不動産に対して割り振られる固有の番号のことです。

不動産IDは、個人を特定するマイナンバーカードの個人番号に似ています。
マイナンバーカードは個人番号によって特定の個人を見分けることで、保険証や運転免許証等のさまざまな情報を1つのカードに紐づけることができます。

1つの不動産には登記情報や修繕履歴情報、インフラの整備状況等のさまざまな情報が存在しており、不動産IDによってこれらの情報の紐づけができると期待されています。

不動産IDの概要

不動産IDとは、不動産を一意に特定することができる17桁の番号のことです。
17桁の番号は、13桁の不動産番号と4桁の特定コードで構成されています。

不動産IDを例示すると、以下のようなイメージです。

1234567890123-G025

上記は不動産番号が「1234567890123」で、特定コードが「G025」となります。

13桁の不動産番号とは、不動産の登記簿謄本の右上に記載されている番号のことです。

不動産番号は1筆(ふで:土地の単位のこと)の土地または1個の建物ごと(区分所有建物の場合は一個の専有部分ごと)に記録されている数値となります。

4桁の特定コードとは、不動産番号のみでは不動産を特定できない場合に対象部分を特定するために用いられるコードのことです。

典型的な例としては、アパートや賃貸マンションの各部屋は不動産番号のみでは特定できない不動産となります。

不動産番号は、1つの登記簿謄本に対して割り振られる番号です。
アパートや賃貸マンションは、1つの建物として登記されるため、10室からなるアパートでも割り振られる不動産番号は1つだけです。

不動産番号だけでは、アパートの101号室と202号室は区別できないことから、各部屋を区別するために枝番として特定コードが用いられるようになっています。

一方で、不動産の中には戸建てのように不動産番号だけで1つの不動産を特定できる物件も多いです。

不動産番号だけで一意に特定できる不動産では、特定コード部分は「0000」と表記されます。

不動産IDは、基本的には従来から存在する不動産番号を用い、不動産番号だけでは特定できない不動産は枝番の特定コードで識別できる仕組みとなっています。

不動産ID導入の背景

不動産IDが導入された背景には、日本が不動産分野においてテクノロジーを活用しながら、不動産取引の活性化やデジタル化等を図っていることがあります。

不動産取引の活性化やデジタル化等を進めていくには、情報を効率よく整備することが必要であり、不動産を一意に特定できる番号の必要性が高まってきました。

まず、日本には1つの不動産を特定する方法として地番と住居表示の2種類があります。

地番とは、土地の各筆に割り振られている番号のことです。
住居表示とは、郵便物を配達するために行政が割り振った番号を指します。

都市部では、地番と住居表示が異なることが多いです。
地番と住居表示が異なる現状では、同一物件か否かを直ちに特定できないという「表記ゆれ」の問題が存在します。

また、前節の特定コードの部分でも示したように不動産には不動産番号だけでは識別できない物件も存在します。
例えばアパートの各部屋には住居表示はありますが、不動産番号は存在しません。

このように住居表示や不動産番号だけでは不動産を一意に特定できないことから、新たに1つの不動産を特定できる不動産IDを作る必要があったのです。

不動産IDとレインズ・不動産オープンIDの違い

不動産IDとは、国土交通省が整備を進めている不動産を一意に特定するための番号のことです。

不動産関連でIDという言葉が登場するものとしては、「レインズの確認用ID」と「不動産オープンID」が存在します。

レインズの確認用IDとは、専属専任媒介契約または専任媒介契約と呼ばれる仲介の契約で不動産会社に売却を依頼した場合、発行されるIDのことです。

レインズとは、不動産の売買を円滑に進めるために、不動産会社同士が売り物件の情報を共有できるサイトになります。

専属専任媒介契約や専任媒介契約で契約すると、不動産会社はレインズに物件情報を登録しなければいけません。
不動産会社は、レインズに物件を登録したことを証する書面を売主に発行しなければならないというのがルールです。

売主は、物件がレインズに登録されていることを確かめるために、レインズシステムにログインすることができます。
ログインする際に発行されるのが、確認用IDとパスワードです。

レインズの確認用IDは、売主がレインズにログインするためだけに使用するIDであるため、国土交通省が整備する不動産IDとは全く異なります。

一方で、不動産オープンIDは、不動産IDと類似の概念の番号のことです。

不動産オープンIDは一般社団法人不動産テック協会が独自に提供しているIDのことであり、同じく13桁の番号によって不動産を一意に特定できる番号となっています。

国土交通省が推進している不動産IDのルール検討会では、不動産テック協会も構成員として参加しています。

不動産IDは不動産オープンIDがベースとなったと考えられ、不動産テック協会の基礎調査があったからこそ、短期間で不動産IDが13桁に定まったものと推測されます。

・「専属専任媒介契約」に関する記事はこちら
専属専任媒介契約とは?専任媒介・一般媒介との違いやメリットを解説

不動産IDの番号を決める基本ルール

不動産IDの番号を決める基本ルール

不動産IDは、一定のルールに基づいて定められる点が特徴です。
この章では、不動産IDの番号を決める基本ルールについて解説します。

使用する番号

不動産IDは、13桁の不動産番号と4桁の特定コードで構成され、合計で17桁の番号となります。
不動産番号だけで一意に特定できる不動産の場合には、特定コードが「0000」と表記されるのがルールです。

土地・一戸建ての建物

土地や一戸建ては、不動産番号だけで一意に特定できる不動産であることから、「不動産番号-0000」が不動産IDとなります。

非区分建物

非区分建物とは、アパートや大型商業施設等の建物が該当します。

アパートは建物全体で1つの登記がされており、分譲マンションのように部屋ごとの登記簿は存在しません。

そこで、アパートや賃貸マンションのような建物は、特定コードに部屋番号を付すことがルールとなっています。

特定コードは4桁であるため、例えば203号室であれば特定コードは「0203」です。

大型商業施設は、フロアごとに特定コードを付すことがルールです。

まず4桁のうち、左2桁で地上や地下等を表します。
左詰めで地上階は「G0」、地下階は「B0」、地上の中間階は「GM」、地下の中間階は「BM」と表記します。
さらに右2桁で階数を表すのがルールです。
地上2階であれば、「G002」と表記することになります。

区分所有建物

分譲マンションのような区分所有建物も不動産番号で一意に特定できるため、「不動産番号-0000」で表記されることが原則です。

ただし、大型商業施設で区分所有建物の中でさらに区画が分かれている場合、前節の非区分建物と同じルールを適用してフロアごとに不動産IDを付します。

不動産IDによって期待される主な効果

不動産IDによって期待される主な効果

不動産IDは、不動産業界だけでなくほかの業界でもさまざまな効果が期待されています。
この章では、不動産IDによって期待される効果について解説します。

不動産売買における効果

不動産IDにより、さまざまな情報が整備されれば、不動産会社の売買仲介業務が大幅に効率化されることが期待できます。

インフラや都市計画情報を一気に調査することができ、ポータルサイト上の広告の管理も容易になることが考えられます。

そのほかの業界で期待される効果

不動産IDは、物流や防犯、保険、行政といった不動産業界外での活用も期待されています。

官民のデータの共有化が進めば、有益な情報の入手が容易となり、新たなサービスが生まれることも予想されます。

不動産ID活用にあたっての注意事項

不動産ID活用にあたっての注意事項

不動産IDは、さまざまな情報と連携していくと最終的には容易に個人情報に照合できてしまう懸念があることが注意点です。

不動産ID自体は特定の個人を識別できる情報ではないものの、例えば登記簿謄本と紐づけられれば容易に所有者の氏名や住所が特定できてしまいます。

そのため、個人情報の取り扱いが問題となる可能性があり、個人情報保護法との関連を意識しければならない場面も出てきます。

不動産IDの普及状況

不動産IDの普及状況

不動産IDは、まだIDのルールが決まった段階であり、本格的な普及は進んでいません。

個人のマイナンバーカードも、当初は一部からネガティブな意見があり、なかなか普及しませんでした。

不動産IDに関しても、不動産業界内の一部ではビジネスにマイナスの影響を与えるのではないかとの憶測が出ています。

マイナンバーカードの普及にも時間がかかったように、不動産IDも普及していくには一定の時間を要するものと予想されます。

まとめ

以上、不動産IDについて解説してきました。
不動産IDとは、不動産を一意に特定できる番号のことです。
不動産IDを作ることで1つの不動産に関するさまざまな情報を紐づけることができ、容易にデータ収集を行うことができるようになります。
不動産IDは、まだ試験的に運用されている段階であり、これから整備拡大されていく見込みです。
一般の人でも利用できるサービスが増えれば、認知度や利便性がさらに高まることが期待されます。

この記事のポイント

不動産IDとは何ですか?

不動産IDとは、1つの不動産に対して割り振られる固有の番号のことです。
1つの不動産には登記情報や修繕履歴情報、インフラの整備状況等のさまざまな情報が存在しており、不動産IDによってこれらの情報の紐づけができると期待されています。

詳しくは「不動産IDとは?概要や導入背景を解説」をご覧ください。

不動産IDによって期待される主な効果は?

不動産IDにより、さまざまな情報が整備されれば、不動産会社の売買仲介業務が大幅に効率化されることが期待できます。
インフラや都市計画情報を一気に調査することができ、ポータルサイト上の広告の管理も容易になることが考えられます。

詳しくは「不動産IDによって期待される主な効果」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

不動産IDは、まだ情報の紐づけが十分に行われていないことから、利便性が認識されていない状況です。個人のマイナンバーカードも、カードが登場してから保険証や運転免許証の情報が紐づけるまでにかなりの時間がかかっています。個人のマイナンバーカードも登場したときはこればどのように活用されるのかわからない状態でした。
現在の不動産IDも個人のマイナンバーカードが登場したときと似ています。これから多くの情報が紐づけられるようになれば、不動産IDが便利なものに変わると予想されます。

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