ざっくり要約!
- 角地緩和とは、特定の条件を満たす角地において、建ぺい率の上限が10%緩和される制度です。
- 建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合で、用途地域によって上限が異なります。
- 角地緩和の適用条件は、全国一律ではなく特定行政庁が個別に定めているため、自治体への確認が不可欠です。
土地探しやマイホーム建築の際に、日当たりの良さや開放感から人気が高いのが「角地」です。住み心地の良さに加え、建築規制の面でも「角地緩和」を受けられるというメリットがあります。
角地緩和とは、一定の条件を満たす角地に対して、建ぺい率の上限が緩和される制度です。
適用されることで、同じ敷地面積でもより広い住宅を建てられる可能性があります。
本記事では、角地緩和の概要や適用条件、注意点、建ぺい率の計算例などを詳しく解説します。土地探しや建築計画を進める際の参考として、ぜひご活用ください。
記事サマリー
角地緩和とは?
角地緩和とは、一定の条件を満たす角地に対して、建ぺい率の上限が10%緩和される制度です。建築基準法第53条第3項第2号に基づいて定められています。
たとえば、建ぺい率の上限が50%の地域でも、角地緩和が適用されると上限は60%まで引き上げられます。その分、同じ敷地面積でもより広い建物を建てられるようになり、土地を有効活用できる点がメリットです。
ただし、すべての角地が対象となるわけではなく、制度の適用には一定の条件を満たす必要があります。
建ぺい率とは?
建ぺい率とは、敷地面積に対して建築面積が占める割合のことです。建築面積とは、建物を真上から見たときの水平投影面積を指します。
建ぺい率は、敷地内にどの程度の大きさの建物を建てられるかを示すもので、建築基準法によって定められています。敷地に適度な空地を確保することで、火災時の延焼防止や通風・採光の確保をし、安心で快適な住環境を守ることが目的です。
なお、定められた建ぺい率を超える建物は、建築確認申請が通らないため、建築することはできません。
建ぺい率は用途地域によって異なる
建ぺい率の上限は、都市計画法で定められた用途地域によって異なります。用途地域とは、土地の利用目的を住居系、商業系、工業系などに分類したものです。
用途地域ごとに指定された建ぺい率の上限は、以下のとおりです。
用途地域 | 建ぺい率(%) | |
住居系 | 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 田園住居地域 第二種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60% のいずれか |
第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 | 50・60・80% のいずれか | |
商業系 | 近隣商業地域 | 60・80% のいずれか |
商業地域 | 80% | |
工業系 | 準工業地域 | 50・60・80%のいずれか |
工業地域 | 50・60% のいずれか | |
工業専用地域 | 30・40・50・60%のいずれか | |
その他 | 用途地域の指定のない区域 | 30・40・50・60・70% のいずれか |
例えば、主に住宅が建ち並ぶ「第一種低層住居専用地域」などでは、建ぺい率は30〜60%の範囲で定められています。一方、商業施設が多く集まる「商業地域」では、建ぺい率は原則として80%と高く設定されます。
・「建ぺい率」に関する記事はこちら
「建蔽率(建ぺい率)」と「容積率」って何?建築前に知っておきたい基礎知識を紹介
・「用途地域」に関する記事はこちら
第一種住居地域には何が建つ?利便性や住居環境のメリット・デメリットを解説
第二種住居地域はどんな場所?メリット・デメリットや第一種との相違点も解説
建ぺい率の計算例
建ぺい率は、次の計算式で算出します。
- 建ぺい率(%)= 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100
例えば、土地の面積が100㎡で建築面積が60㎡の場合は、建ぺい率は60%となります。
- 建ぺい率 = 60㎡ ÷ 100㎡ × 100 =60%
また、建築可能な建築面積の上限を建ぺい率から算出する際は、次の式で求められます。
- 建築面積の上限 = 敷地面積 × 指定建ぺい率
土地の面積が100㎡で建ぺい率の上限が60%の場合、建物の建築面積は60㎡が上限となります。
- 建築面積の上限 = 100㎡ × 60% = 60㎡
上記の土地が角地緩和の適用を受けられる場合、建ぺい率が10%加算され70%になるため、建築面積の上限は70㎡まで引き上げられます。
角地で緩和されるのは建ぺい率のみ
角地緩和によって緩和されるのは建ぺい率のみであり、容積率は緩和の対象外となります。容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ面積(各階の床面積の合計)の割合です。
建ぺい率が建物の水平方向の広がりを制限するのに対し、容積率は建物の立体的なボリュームの制限になります。
例えば、敷地面積が100㎡で容積率が200%の場合、建物の延べ面積の上限は200㎡となります。角地であっても、この容積率の上限が増えることはありません。
角地緩和の条件は?

角地緩和が適用されるためには、単に角にある土地というだけではなく、特定の条件を満たす必要があります。以下で、一般的な条件や調べ方について解説します。
条件は特定行政庁によって異なる
角地緩和の適用条件は、特定行政庁によって個別に定められています。特定行政庁とは、建築主事(建築確認などを行う公務員)がいる都道府県や市町村を指します。
例えば、道路の幅員や交差する角度、敷地が道路に接する長さなどが、特定行政庁ごとに独自の基準で定められている場合があります。
一般的な条件
角地緩和の適用条件は、特定行政庁によって異なりますが、一般的には以下のような要件が挙げられます。
- 敷地が2つ以上の道路に接している
- 接している道路の幅員が一定以上ある(例:それぞれ8m以上)
- 道路が交差する部分の内角が一定の角度以下である(例:120度未満)
- 道路に接している部分の長さが一定割合以上ある(例:敷地の周長の3分の1以上)
※参考:東京都都市整備局|Q5:東京都における建蔽率の角地緩和を教えてください。
※参考:東京都都市整備局|建蔽率の角地緩和=プラス10%について
上記はあくまで一例であり、幅員・角度・接道長さなどの具体的な数値は自治体によって異なります。実際に角地緩和が適用されるかどうかは、特定行政庁に確認する必要があります。
また「角地緩和」と聞くと、T字路などの角に位置する土地をイメージされる方も多いかもしれません。しかし実際には、表と裏の二面が道路に接している場合にも適用されることがあります。一方が道路で、もう一方が公園・広場・河川などに接している場合でも、適用されるケースがあります。

条件の調べ方
角地緩和の条件を調べる方法は、主に以下の3つがあります。
- 役所の建築確認申請の窓口に問い合わせる
- 自治体のWebサイトで確認する
- 不動産会社やハウスメーカーに相談する
なかでも最も確実なのは、土地がある市区町村の役所に直接問い合わせる方法です。建築指導課や都市計画課などの窓口で土地の所在地を伝えれば、角地緩和の条件や、その土地が適用対象になるかどうかを確認できます。
自治体によってはWebサイト上に条件を掲載している場合もあるため、チェックしてみるとよいでしょう。
また、土地の購入を検討している場合は不動産会社に、住宅を建てる場合はハウスメーカーなどに相談することで、角地緩和の適用について調査してもらうことも可能です。
角地は「隅切り」にも注意
角地の購入を検討する際は、角地緩和だけでなく「隅切り」についても理解しておくことが大切です。隅切りとは、角地の角部分を削り、道路や空地として確保することを指します。交差点の見通しを良くすることや、車の通行をスムーズにすることを目的に設けられたものです。
建築基準法や自治体の条例によって、一定の条件に合致する角地に隅切りが義務付けられるケースがあります。

隅切りされた部分は、敷地面積に参入できる場合もありますが、建ぺい率や容積率の計算では敷地面積から除外されることも少なくありません。また、隅切り部分には建物を建てられないといった制限がかかる点も押さえておきましょう。
・「隅切り」に関する記事はこちら
隅切りとは?道路斜線やセットバックとの関連、よくあるトラブルを紹介
まとめ
角地緩和とは、一定の条件を満たす角地において、建ぺい率の上限が10%緩和される制度です。敷地を有効に活用できるため、広さや設計の自由度が増すことが期待できます。
ただし、適用条件は特定行政庁ごとに異なるため、事前の確認が欠かせません。また、角地には隅切りが求められたり、特有の建築制限が設けられたりする場合もあります。
土地の購入や住宅の建築を検討する際は、こうした制限や条件についても理解しておくことが大切です。自治体や不動産の専門家へ相談しながら進めることで、思わぬトラブルを避けられるでしょう。
東急リバブルでは、不動産購入をトータルでサポートしております。角地を含む物件選びで気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 角地の緩和とは?
一定の条件を満たす角地に対して、建ぺい率の上限が10%緩和される制度を「角地緩和」と呼びます。
詳しくは「角地緩和とは?」をご覧ください。
- 角地緩和の条件は?
角地緩和の適用条件は特定行政庁によって異なりますが、一般的には敷地が2つ以上の道路に接していること、接している道路の幅員が一定以上あることなどが要件として挙げられます。
詳しくは「角地緩和の条件は?」をご覧ください。
- 角地の「隅切り」とは?
隅切りとは、角地の角部分を削り、道路や空地として確保することを指します。
詳しくは「角地は「隅切り」にも注意」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
角地の購入や住宅建築を検討する際は、管轄する自治体の最新の条例をチェックすることが大切です。道路の幅員や交差角度などによっては、緩和の対象外となるケースもあるため、早い段階での確認が安心です。
また、角地緩和が適用された場合でも、希望通りの規模で建築できるとは限りません。隅切りのほか、道路斜線やセットバックなどの建築制限が影響することも考えられます。建築計画をスムーズに進めるには、専門的な知識をもとにアドバイスを受けられる不動産会社に相談するのがおすすめです。

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