2026年8月13日から14日にかけての線状降水帯の発生により、千葉県では記録的な大雨となりました。「令和8年8月千葉豪雨」と名付けられたこの災害で注目したいのは、冠水や浸水の被害に遭った人の2人に1人が、国や自治体が水害リスクが高いと定めている地域の外で被災していたという調査結果です。
昨今、想定を超える水害が相次ぐなか、水害の想定が実態に追いついていないという課題を受け、各地でハザードマップの更新が進んでいます。この動きは、不動産の資産価値だけでなく、住宅ローンや火災保険料など、住まいにかかわるお金の面にも影響を及ぼし始めています。
本記事では、水害の多発・激甚化とそれに伴うハザードマップの更新が自宅の資産価値や融資に与える影響、そして住み替えを検討する際の基準や手順を解説します。
記事サマリー
各地で進むハザードマップの更新
ハザードマップは「一度つくられたら終わり」というものではなく、法改正や新たな浸水想定を反映して更新されていきます。近年、自然災害は激甚化の傾向にあり、これまでの想定を上回る豪雨が各地で発生しています。こうした状況を受け、浸水想定の見直しとハザードマップの更新が全国で進められています。
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2021年の水防法改正による対象拡大
洪水浸水想定区域は、想定し得る最大規模の降雨を前提としたものへと見直しが進められてきました。
さらに2021年の水防法改正により、浸水想定区域の指定対象が中小河川へと拡大されたほか、浸水のおそれがある区域に住宅などが立地する下水道については、下水道の排水能力を超える雨で起こる「内水氾濫」を想定した浸水想定区域の指定・公表が管理者に義務づけられました。
しかし、2025年末時点の内水ハザードマップ等の作成状況は全国で32%にとどまります。東京都は8割を超える自治体が作成している一方、豪雨に見舞われた千葉県は4割程度、山梨県や大分県など、ほとんど作成されていない都道府県も散見されます。
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都道府県の想定区域図をもとに自治体が順次改定
各自治体のハザードマップは、都道府県などが公表する浸水想定区域図をもとに作成されます。
東京都は2026年3月31日、洪水浸水想定区域図の最新データを公表し、同月には下水道局による雨水出水浸水想定区域の指定・公表も行われました。これを受けて、都内の自治体では洪水と雨水出水を合わせたハザードマップへの更新が進んでいます。
更新によって、これまで想定区域に指定されていなかった場所も、新たに浸水リスクのあるエリアとして示されている可能性があります。実家や自宅のリスクは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」や自治体の最新のハザードマップで確認できます。昔の記憶や以前見たハザードマップの印象のまま判断せず、これを機に改めてご家族で確認されることをおすすめします。
水害リスクは住宅の価格や流動性にどう影響するのか
水害リスクは、必ずしも不動産価格や流動性に影響するわけではありません。とくに利便性や住環境の評価が高いエリアでは、影響は限定的です。
しかし、近年は水害の多発・激甚化を受け、住宅の価値や流通に関わるさまざまな制度が改正されています。また、実際にゲリラ豪雨や線状降水帯、台風などの脅威を肌で感じる機会が増えるなか、買主が立地の水害リスクに向ける目は年々厳しくなっており、水害リスクが不動産の価格や流動性に影響する可能性が高まっています。
売買時の水害リスク説明義務化
大規模な水災害の頻発を受け、2020年8月から不動産取引時の重要事項説明において、水害ハザードマップ上の物件の所在地を示すことが義務化されました。宅地建物取引業法施行規則の改正によるもので、売買だけでなく賃貸の取引も対象です。
説明にあたって宅建士は、市町村が作成した最新の水害ハザードマップを提示し、物件のおおむねの位置を買主に示します。対象となるのは、洪水・雨水出水(内水氾濫)・高潮の3種類です。あわせて、ハザードマップに記載された避難所の位置についても情報提供することが望ましいとされています。
買主は契約前に必ず水害リスクを知る立場にあり、ハザードマップが更新されれば、その最新の内容が取引の場で示されることになります。
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住宅ローン控除はレッドゾーンの新築が対象外に
2026年時点では、立地によって住宅ローン控除の適用が左右されることはありません。しかし2028年以降に入居する新築住宅については、土砂災害特別警戒区域や浸水被害防止区域といったいわゆる災害レッドゾーン内にある場合、住宅ローン控除の適用対象外となります。
既存住宅は引き続き対象ですが、金利上昇も続く中、住宅を購入する人の大きな後押しとなる制度だけに、災害リスクが高いエリアが対象外となるインパクトは小さくありません。災害リスクの高い土地での新築需要が抑えられれば、その周辺も含めた土地の評価に影響しかねません。国の税制が立地の災害リスクで住宅を線引きし始めたという点でも、象徴的な改正といえます。

火災保険料の地域差が買主の負担を重くする
金利のみならず、保険料も住宅を購入する人にとって無視できない負担です。これまで全国一律だった火災保険の水災料率は、2024年10月以降の火災保険料率の改定により、水災リスクに応じて5つの区分に細分化されました。水災リスクは市区町村単位で区分され、保険料が最も安い1等地に対し、最も高い5等地の保険料は約1.2倍とされています。同時に、火災保険の参考純率自体も全国平均で13.0%引き上げられました。
住宅ローンを組む際、火災保険への加入は事実上必須です。水災補償は任意であるものの、水害リスクの高いエリアでは、水災補償を付ければ保険料が重くなり、外せば被災時の備えを欠くことになります。同じ予算で物件を探す買主が、保険料まで含めた住居費のトータルで比較するようになれば、水害リスクの高いエリアの物件はそれだけ選ばれにくくなっていくことが予想されます。
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マンションは「管理組合の備え」も評価される
マンションも水害と無縁ではありません。2019年の台風19号では、武蔵小杉のタワーマンションで地下の電気設備が浸水し、停電や断水が長期間続いたことが大きく報じられました。今回の千葉豪雨でも、マンションの電気室が水没し、停電の復旧後もエレベーターや給水ポンプが使えない事態などが起きています。
電気室や受変電設備が地下や1階にあるマンションでは、専有部が浸水しない上層階の住戸であっても、共用部の被害によってライフラインが止まってしまうおそれがあります。止水板の設置や重要設備の配置の見直し、共用部の損害保険で水災補償をどう扱うかといった水害対策は、個人ではなく管理組合の判断に委ねられます。
購入検討者が管理状況を重視する傾向は強まっており、マンションは立地のリスクだけでなく、管理組合の備えそのものが資産価値の一部として評価される時代になりつつあります。
水害リスクが「融資」に与える影響

住宅ローンの審査では、申込者の年収や勤務先とあわせて、物件の担保価値が重要な判断材料になります。金融機関は、返済が滞った場合に物件を売却して融資を回収できるかという視点で担保を評価するため、将来の資産価値は無関係ではありません。
日本の住宅ローンは現在、水害リスクが金利や個別の審査に明示的に反映されているとは言いがたいのが現状です。しかし、これだけ水害が頻発し、火災保険の水災料率は地域のリスクに応じて差がつき、住宅ローン控除でも災害リスクの高い立地が対象外となる動きが出てきているなかで、担保評価だけが水害リスクと無関係であり続けるとは考えにくいのではないでしょうか。
実際、海外では水害リスクの高い地域の住宅ローン金利に上乗せが行われている国もあり、日本でも金融機関や金融庁、日本銀行などによる気候変動リスクの分析が加速しています。水害リスクが担保評価や融資条件へ反映される日は、そう遠くないかもしれません。
そうなれば、水害リスクの高いエリアの物件は希望額を借りにくくなり、買える人が減ることで流動性にも影響が及びます。裏を返せば、水害リスクの低いエリアの物件は、安全面に加え、融資や保険の面でも有利になっていくものと考えられます。
安全なエリアへ住み替えるための基準と手順
では、実家や自宅が水害懸念エリアにある場合、何を基準に、どのような手順で住み替えを考えれば良いのでしょうか。
検討の基準
まず確認したいのは、最新のハザードマップで想定される浸水深です。3mを超える浸水が想定されるエリアでは2階まで水が達するおそれがあり、垂直避難だけでは安全を確保しにくくなります。家屋倒壊等氾濫想定区域に含まれていないか、避難所までの経路にリスクがないかも見ておきたいところです。
ただし、先のとおり内水ハザードマップの作成は全国でまだ道半ばであり、今回の千葉豪雨でも、被災した人の2人に1人は想定区域の外で被害に遭っています。浸水エリアに指定されていなかったとしても、周辺より低い土地やくぼ地、過去に浸水した履歴のある場所にはリスクが潜んでいます。ハザードマップを基本としつつ、土地の高低差や地形、地域の浸水履歴まで含めて確認しておくと安心です。
高齢の方や小さいお子さんが暮らすお住まいであれば、避難行動の難しさも判断材料になるでしょう。資産価値だけでなく、住み続けた場合の安全性まで含めて検討することが、資産防衛と家族の安全の両立につながります。
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住み替えの手順
住み替えを進める場合は、まず現住居について最新のハザードマップ等でリスクを確認します。あわせて、住宅ローンの残債を確認したうえで不動産会社の査定を受け、売却価格の目安をつかみます。売却代金で残債を返しきれるか、次の購入の頭金にいくら回せるかがわからなければ、住み替えの予算そのものが立てられません。
予算の目安がついたら、条件や災害リスクを確認しながら新居探しを進めましょう。住み替え先は、災害リスクの低さだけでなく、担保評価や保険料の面でも有利に働きやすいかどうかという視点を持って検討することをおすすめします。

売却と購入の順序も資金計画を左右します。売却を先行させれば資金計画は立てやすい一方、先に現住居を引き渡すため、新居の入居までに仮住まいが必要になる場合があります。購入を先行させれば住まい探しに時間をかけられますが、現住居と新居のローン返済が重複する「ダブルローン」のリスクがあります。
いずれの住み替え方法もメリット・デメリットがあるため、資産状況や新居探しにかけられる時間などに合わせて選ぶことが大切です。
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重要なのは不動産会社選び
水害リスクのあるエリアの売却は、リスクの説明の仕方や販売戦略によって結果が変わりやすい取引でもあります。売却と購入、そして融資や災害リスクのことまで一体で相談できる不動産会社に、早い段階で相談しながら進めることをおすすめします。
東急リバブルでは、売却と購入の両面から住み替えをサポートしています。売却が計画どおりに進まなかった場合にあらかじめお約束した保証額で買い取る「リバブル売却保証」のほか、購入物件の支払時期と売却代金の受領時期が合わない場合に、残代金の支払いなどを一時的に立て替える「立替払制度(資金のつなぎ制度)」なども用意されています。
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まとめ
水害の多発・激甚化を受けてハザードマップの更新は各地で進み、水害リスクは重要事項説明や住宅ローン控除、火災保険料を通じて、住まいの価格や流動性に影響し始めています。将来的には、住宅ローンの担保評価に反映される可能性もあります。まずは最新のハザードマップで自宅や実家のリスクを確認し、必要であれば早めに住み替えを検討してみましょう。

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