節税対策、空室リスク、管理会社の選び方など、不動産経営に関するよくあるご質問
カテゴリー: 賃貸管理
不動産経営での節税方法にはどんなものがありますか?
不動産経営による主な節税方法は次の5つです。
1.「経費」を正確に計上する
税金が課されるのは「収入」ではなく、経費を差し引いた「所得」です。正確に経費を計上することで、所得に課される所得税や住民税の税額が抑えられます。
経費計上できるのは、収入を得るために直接要した費用や不動産の維持・管理などにかかる費用です。主な経費は次のとおりです。
- 不動産会社への仲介手数料や管理手数料
- 入居者募集にかかる広告宣伝費
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費・修繕積立金
- ローンの利息
- 損害保険料
- 減価償却費
- 通信費
- 交通費 など
2.「減価償却」を計上する
減価償却とは、資産が経年によって減価していく分を耐用年数に応じて分割して経費計上していく会計処理を指します。不動産経営では、マンションやアパート、戸建てなどの「建物」部分を減価償却して計上していきます。
法定耐用年数の期間中、毎年一定額を経費として計上することにより、課税対象となる所得を減らし、所得税や住民税を抑えられます。構造ごとの法定耐用年数は次のとおりです。
| 建物の構造 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 木造 | 22年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) 鉄筋コンクリート造(RC造) |
47年 |
※参照:国税庁
3.「損益通算」によって所得を減らす
損益通算とは、会計上の損失を所得と相殺することで課税所得を圧縮し、税額を減らす方法を指します。家賃収入から経費を差し引いて生じた赤字を給与など他の所得と損益通算することで、課税所得を減らすことができます。
不動産経営では減価償却を経費計上できることから、実際のキャッシュフローは黒字でも帳簿上は赤字となり、損益通算が可能になる場合があります。不動産の取得時や修繕時などまとまった経費が発生した年はとくに、高い節税効果に期待できます。
4.確定申告で「青色申告」を選択する
不動産所得が20万円を超える年には、確定申告が求められます。申告の種類には「青色申告」と「白色申告」の2つがありますが、節税効果が高いのは青色申告です。両者の主な違いは、以下のとおりです。
| 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|
|
|
青色申告を選択する場合は、開業日から2ヵ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
5.「法人化」する
法人化によって節税する主な方法は次の2つです。
(1)不動産を法人名義にする
法人を設立し、不動産の所有権を法人に移行する方法です。家賃収入は法人の収益となり、所得が法人税の課税対象になります。個人の所得税率は5%から45%までの累進課税であるのに対し、法人税率は15%〜23.2%です。そのため、所得が大きいほど法人のほうが有利ということになります。また、役員報酬や退職金、生命保険など、個人事業では経費にできない支出も計上できるため、節税につながりやすくなります。
(2)不動産管理会社を設立する
不動産管理会社を設立し、その会社に管理を委託すれば、管理委託費を経費計上できます。不動産の所有権は個人に残したまま所得を圧縮できるため、節税につながりやすくなります。
不動産経営で空室が続いた場合、どう対処すべきですか?
不動産経営で空室が続いた場合の主な対処法は、次のとおりです。
1.空室の原因を推測する
賃貸住宅の空室が続く理由はひとつではありませんが、根本的な原因となるのは主に次の4つです。
- 賃料・初期費用が相場より高い
- 内装や設備の老朽化、外観や共用部分の印象の悪さ
- 入居審査が厳しすぎる
- 募集方法が非効率
競合物件の賃料や条件、周辺エリアの賃料相場、管理会社や仲介会社による販促活動などを確認し、原因を推測してみましょう。
2.原因に則した対策を実行する
空室対策として有効な具体的な手段は、次の7つです。原因に則した対策を実行しましょう。
(1)賃料の値下げ
競合物件と比べて賃料が高いと感じられる場合は、値下げすることで入居者の目に留まりやすくなります。適切な賃料に設定できるよう、不動産会社に賃料査定を依頼することも検討しましょう。
(2)初期費用の調整
賃料を下げると収益が大きく下がり、再び上げることが難しくなります。一方、初期費用にあたる敷金や礼金の値下げであれば、収益への影響を最小限に留めながらも、入居者の目に留まりやすくなります。また、数ヶ月間だけ家賃を無料とする「フリーレント」を導入するのも効果的です。
(3)新たな設備の導入
エアコンやTVモニター付きインターフォン、無料インターネットなど、需要の高い設備を導入することで競争力が高まります。一定の費用がかかりますが、大規模な改修などと比べると費用対効果が高くなりやすい施策です。
(4)リフォームを実施する
経年劣化が目立つ物件は、壁紙や床の張り替え、水回りのリフォームなどによって印象を改善できます。室内洗濯機置き場やバス・トイレ別、独立洗面台などは、多くの入居者が必須としている設備です。
(5)入居審査の緩和
入居審査の緩和も、空室対策の有効な手段となり得ます。入居者層を広げるため、フリーランスや高齢者、外国籍の方の受け入れも検討してみましょう。保証会社を利用することで、リスクを抑えながら対象を広げられます。
(6)AD(広告料)を支払う
入居者募集をしてくれる不動産会社に仲介手数料とは別に「AD(広告料)」を支払うことで、優先的に物件を紹介されやすくなります。競合が多いエリアではとくに有効な手段です。
(7)不動産仲介会社を変更する
賃料が適正で、競合と比べても見劣りしない条件の場合は、仲介会社の集客に問題がある可能性があります。集客力や対応に不満がある場合は、仲介会社の切り替えも検討してみましょう。
空室は収益に直結するため、早期の対応が不可欠です。学生向けの物件を社会人向けにリノベーションし、空室率が20%から5%に改善した事例もあります。仲介会社と連携し、募集条件や内装、広告戦略を見直してみましょう。
不動産経営での管理会社選びのポイントは?
賃貸の管理会社の選び方のポイントは、次の6つです。知人からの紹介やインターネットなどでの情報収集を通して複数の候補先を比較・検討し、1社に絞っていくようにしましょう。
1.空室対策のノウハウ
空室は収益に直結するため、管理会社には空室対策のノウハウが求められます。管理会社が管理している物件の平均入居率、平均入居期間などの実績を比較し、具体的にどのような対策を提案しているのかヒアリングしてみましょう。
2.管理プラン・業務内容
管理会社に委託できることは、入居者募集や契約手続き、家賃の回収・滞納時の督促、建物の清掃や点検、入居者からのクレーム対応など、多岐にわたります。自分がどこまでを任せたいのかを明確にし、希望に合ったプランやサービス内容が用意されているかを確認することが大切です。
3.業務管理委託費
管理内容にもよりますが、業務管理委託費は月額賃料の3〜10%程度が一般的です。安すぎる場合は、委託できる範囲が限定的だったり、実績やノウハウに不安があったりする可能性もあります。逆に高すぎる場合は収益を圧迫することもあるため、費用とサービス内容のバランスを見極めましょう。
4.貸し方・管理依頼方法
賃貸物件の貸し方はひとつではありません。たとえば、長期的に安定した賃貸経営を目指す場合は更新可能な普通借家契約が向いていますが、期間を限定して貸したい場合は更新のない定期借家契約が適しています。空室保証付きで安定した賃料収入を得たいのであれば、管理委託ではなくサブリース契約のある管理会社を選びましょう。貸したい期間や得たい収入などから適切な賃貸方法を検討し、それが可能な管理会社かどうか確認しましょう。
5.トラブル対応
設備の故障やクレームなどの対応力は、入居者の満足度や定着率に直結します。賃貸経営におけるトラブルは多岐にわたるため、対応力は管理実績にも比例する傾向にあります。24時間対応の可否などの体制に加え、管理戸数や入居率なども確認しておくと良いでしょう。
6.担当者の対応
対応力や提案力は、担当者の専門性や人間性などにも左右されます。管理会社としてのサービス内容や実績に加え、担当者の知識や姿勢も重要な判断材料となります。
空室対策やトラブル対応などのサポートの手厚さは貸主の経営状況・収益に深く影響します。管理会社はどこも同じだろうからと安易に決めずに、6つのポイントを押さえて自身の希望に合う管理会社を選択するようにしましょう。