無償 譲渡 物件
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不動産の無償譲渡とは? 0円物件を取得するメリット・デメリット

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 不動産の無償譲渡とは、所有者が物件を0円で譲り渡すことですが、法律上は「贈与」にあたり、税金や諸費用がかかるため完全に無料ではありません。
  • 無償譲渡される物件は、立地が悪かったり建物が古かったりするなど、買い手が見つかりにくい何らかの理由を抱えていることがほとんどです。
  • 取得費用を抑えて家を持てるメリットがある一方、高額なリフォーム費用が必要になる場合や、個人間取引によるトラブルのリスクがある点に注意が必要です。

物件価格0円で家が手に入るといわれる「無償譲渡物件」に、興味を持っている方もいるのではないでしょうか。しかし、何かリスクがあるのではないかと不安を感じるかもしれません。無償譲渡物件は、所有者が固定資産税の負担などから逃れるために手放したいケースが多く、取得する側にも税金や登記費用といったコストが発生します。

この記事では、不動産の無償譲渡の仕組みや、無償で譲渡される物件の特徴、メリット・デメリットについて解説します。内容を理解し、後悔のない物件選びに役立ててください。

不動産の無償譲渡とは?

不動産の無償譲渡とは、土地や建物といった不動産を、対価を受け取らずに譲り渡すことです。 一般的な不動産取引は金銭の授受が発生する「売買」ですが、無償譲渡では対価が0円のため、法律上は「贈与」として扱われます。

物件を譲り受ける側は、物件そのものの購入費用はかかりませんが、贈与税や不動産取得税、登記費用などの諸費用は負担する必要があります。 そのため、完全に無料で不動産が手に入るわけではない点を理解しておくことが重要です。

無償譲渡されるのはどんな物件?

無償で譲渡される物件には、通常の売買では買い手が見つかりにくい、何らかの理由があることがほとんどです。ここでは、無償譲渡の対象となりやすい物件の主な特徴を解説します。

  • 立地が悪い
  • 築年数が古い
  • 事故物件
  • 管理不全のマンション

立地が悪い

交通の便が悪かったり、生活利便施設が遠かったりするなど、立地条件に課題がある物件は無償譲渡の対象になりやすい傾向があります。 具体的には、駅から遠くバスの本数も少ない、スーパーや病院まで車で長時間かかる、といったケースが挙げられます。

このような物件は、一般的な住宅としての需要が低く、買い手を見つけるのが困難です。そのため、所有者が固定資産税などの維持費負担から逃れるために、無償での譲渡を選択することがあります。

築年数が古い

築年数がかなり経過し、建物が著しく老朽化している物件も、無償譲渡されることが少なくありません。 こうした物件は、そのまま住むことが難しく、大規模なリフォームや建て替えが必要になる場合がほとんどです。

リフォームや解体には多額の費用がかかるため、買い手が見つかりにくいのが実情です。 所有者にとっては、費用をかけて解体するよりも、無償で譲渡して手放すほうが経済的な負担を軽減できるという判断に至ることがあります。

事故物件

過去にその物件で自殺や殺人事件、火災による死亡事故などがあった「事故物件」も、無償譲渡の対象となることがあります。このような物件は、心理的な抵抗を感じる人が多く、売却が著しく困難になるためです。

特に、事件や事故の内容が深刻であるほど、買い手を見つけるのは難しくなります。所有者としては、資産価値が大幅に下がった物件を持ち続けるよりも、無償で手放して管理の負担や固定資産税の支払いから解放されたいと考えるケースがあります。

管理不全のマンション

マンションの一室が無償譲渡される場合、その背景にマンション全体の管理不全が隠れている可能性があります。例えば、管理組合が機能しておらず、修繕積立金が十分に集まっていないケースが考えられます。

このようなマンションは、近い将来、外壁の補修や給排水管の更新といった大規模修繕が実施できず、建物の資産価値が大きく下落するリスクを抱えています。現状の所有者は、そうした将来のリスクを懸念し、無償でも手放したいと考えることがあります。

無償譲渡物件が増えている背景

近年、無償譲渡を希望する不動産所有者が増えていますが、その背景には社会構造の変化が関係しています。主な3つの背景について見ていきましょう。

  • 人口の減少
  • 空き家の増加
  • 都市部への一極集中

人口の減少

日本の総人口は長期的に減少傾向にあり、特に地方では過疎化が深刻な問題となっています。人口が減少すれば、当然ながら住宅の需要も減少し、買い手のつかない不動産が増えることになります。

親から相続したものの、自分は別の場所に住んでいるため活用できず、売りたくても売れないといったケースが少なくありません。 このように、人口減少は不動産の供給過多を招き、無償譲渡という選択肢を生む一因となっています。

空き家の増加

人口減少や高齢化に伴い、全国的に空き家の数が増加していることも、無償譲渡物件が増える大きな要因です。 空き家は、所有しているだけで固定資産税や都市計画税がかかり、定期的な管理も必要になるなど、経済的・時間的な負担が大きいものです。

さらに、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、倒壊の恐れなどがある「特定空家」に指定されると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなったり、過料が科されたりする可能性も出てきました。

建物を解体して更地にすれば税金の負担はさらに増えるため、所有者が維持管理の負担から逃れるために無償譲渡を選ぶケースが増えています。

都市部への一極集中

仕事や教育の機会を求めて、多くの人が地方から東京などの都市部へ移り住む傾向が続いています。 その結果、地方の不動産は需要が低下し、価値が下落しています。

都市部に生活基盤がある人にとって、遠く離れた地方にある実家などを相続しても、管理が難しく、活用方法も見いだせないことが多いでしょう。 売却しようにも買い手が見つからず、最終的に無償で譲渡せざるを得ない状況が生まれています。

不動産を無償譲渡されると税金がかかる?

不動産を無償で譲り受けた場合、物件価格は0円ですが、税金の支払い義務が発生します。 誰が誰に譲渡するかによって、かかる税金の種類が異なります。ここでは、個人が譲り受けるケースを中心に、どのような税金がかかる可能性があるのかを解説します。

  • 贈与税がかかる可能性があるケース
  • 所得税がかかる可能性があるケース
  • 法人税がかかる可能性があるケース

贈与税がかかる可能性があるケース

個人から個人へ不動産が無償譲渡された場合、譲り受けた側(受贈者)には贈与税が課される可能性があります。 法律上、無償譲渡は「贈与」とみなされ、その不動産の評価額が年間110万円の基礎控除額を超えると、贈与税の申告と納税が必要になります。

不動産の評価額は一般的に高額になるため、多くの場合で贈与税が発生すると考えておくとよいでしょう。 なお、このケースでは譲渡した側(贈与者)に税金はかかりません。

所得税がかかる可能性があるケース

法人から個人へ不動産が無償譲渡された場合、譲り受けた個人には所得税が課されます。 この場合、不動産は「一時所得」として扱われ、その不動産の時価が所得金額とみなされます。 給与所得など他の所得と合算して確定申告を行い、所得税を納める必要があります。

一方で、譲渡した法人側は、その不動産を時価で譲渡したものとみなされ、帳簿価額との差額が売却損益として計上されます。利益が出た場合は、法人税の課税対象となります。

法人税がかかる可能性があるケース

法人が不動産の無償譲渡を受けた場合は、譲渡したのが個人か法人かにかかわらず、譲り受けた法人に法人税が課されます。 これは、法人が無償で資産を譲り受けた場合、その不動産の時価相当額が「受贈益」として法人の利益とみなされるためです。

この受贈益は他の利益と合算され、法人税の課税対象となります。個人が法人に無償譲渡した場合は、譲渡した個人にも「みなし譲渡所得課税」として所得税が課される点にも注意が必要です。

不動産の無償譲渡を受けるメリット

不動産 無償譲渡 メリット

無償譲渡物件には税金やリフォーム費用などの課題もありますが、一方で魅力的なメリットも存在します。コストを抑えて新たな生活を始めたい人や、物件を事業に活用したい人にとっては、大きなチャンスとなる可能性を秘めています。

  • コストを抑えて地方移住ができる
  • 移住に際して補助金が支給されることも
  • 収益化も可能

コストを抑えて地方移住ができる

無償譲渡物件を活用する大きなメリットは、物件の購入費用をかけずに住まいを確保できる点です。これにより、地方への移住や二拠点生活を始める際の初期費用を大幅に抑えることが可能です。

都会の喧騒から離れて静かな環境で暮らしたい、自然豊かな場所で子育てをしたいといった希望を持つ人にとって、無償譲渡物件は理想のライフスタイルを実現するための有効な選択肢のひとつといえるでしょう。

移住に際して補助金が支給されることも

自治体によっては、空き家のリフォーム費用や解体費用に対して補助金や助成金制度を設けている場合があります。 これは、空き家問題の解消や移住・定住の促進を目的としたものです。

例えば、特定の地域への移住者を対象とした支援金や、耐震改修工事への補助などが挙げられます。こうした制度をうまく活用すれば、物件の改修にかかる自己負担を軽減し、より少ないコストで快適な住環境を整えることができます。

収益化も可能

無償で譲り受けた物件は、自分で住むだけでなく、賃貸物件として貸し出したり、民泊やカフェとして活用したりして収益を得ることも可能です。 物件の取得費用がかからないため、投資の初期費用を抑えられ、高い利回りが期待できる可能性があります。

ただし、事業として活用する場合は、立地や物件の状態、地域のニーズなどを慎重に見極める必要があります。また、リフォーム費用などの初期投資も考慮したうえで、事業計画を立てることが重要です。

不動産の無償譲渡を受けるデメリット

無償譲渡物件には多くのメリットがある一方で、安易に飛びつくと後悔しかねないデメリットやリスクも存在します。物件を取得してから想定外の費用やトラブルに悩まされることのないよう、事前に注意点をしっかり理解しておくことが大切です。

  • 取得にかかる費用は0円ではない
  • リノベーションや解体が必要な物件が多い
  • トラブルが発生する可能性がある

取得にかかる費用は0円ではない

物件自体の価格は0円でも、不動産を取得する際にはさまざまな費用が発生します。 前述のとおり、贈与税(個人間の譲渡の場合)がかかる可能性があるほか、不動産取得税や、所有権移転登記のための登録免許税も必要です。

これらの税金や登記費用は、不動産の評価額をもとに計算されるため、合計で数十万円から数百万円になることもあります。 また、物件を所有し続ける限り、毎年固定資産税の支払い義務も生じます。

リノベーションや解体が必要な物件が多い

無償譲渡される物件の多くは、築年数が古く、老朽化が進んでいるため、そのままでは住めない状態であることが少なくありません。 そのため、快適に住むためには、大規模なリフォームやリノベーションが必要になるのが一般的です。

建物の状態によっては、耐震補強や水回りの全交換など、数百万から一千万円以上の高額な費用がかかるケースもあります。 また、倒壊の危険があるなど損傷が激しい場合は、建物を解体する必要があり、その費用も負担しなければなりません。

トラブルが発生する可能性がある

無償譲渡は、不動産会社が仲介しない個人間での取引となるのが一般的です。 そのため、契約内容の不備や、物件の状態に関する認識の相違などから、後々トラブルに発展するリスクがあります。

例えば、譲り受けた後に、雨漏りやシロアリ被害といった隠れた欠陥が見つかるケースも考えられます。 個人間の取引では、こうした問題が発覚した際の責任の所在が曖昧になりがちです。安心して取引を行うためには、契約前に専門家に相談し、物件の状態をしっかり確認することが重要です。

まとめ

不動産の無償譲渡は、物件を無料で手に入れられる可能性がある一方で、安易に判断するのは禁物です。物件価格は0円でも、贈与税や不動産取得税、登記費用といった諸費用がかかり、老朽化による高額なリフォーム費用が必要になることも少なくありません。

特に、不動産会社を介さない個人間での取引は、契約内容の不備や物件の隠れた欠陥などをめぐるトラブルに発展するリスクも伴います。メリットだけでなく、こうしたデメリットを理解し、現地に足を運んで物件の状態をご自身の目で確認することがポイントです。

無償譲渡物件に興味がある場合や、不動産取引に関する不安がある場合は、専門的な知識を持つ不動産会社に相談してみるのもひとつの方法です。東急リバブルでは、不動産に関するさまざまなご相談に対応しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事のポイント

無償譲渡される物件とはどのような物件ですか?

無償で譲渡される物件には、通常の売買では買い手が見つかりにくい、何らかの理由があることがほとんどです。

「無償譲渡されるのはどんな物件?」では、無償譲渡の対象となりやすい物件の主な特徴を解説します。

不動産を無償譲渡されたら税金がかかりますか?

不動産を無償で譲り受けた場合、物件価格は0円ですが、税金の支払い義務が発生します。 誰が誰に譲渡するかによって、かかる税金の種類が異なります。

詳しくは「不動産を無償譲渡されると税金がかかる?」をご覧ください。

不動産を無償譲渡されるメリットはありますか?

コストを抑えて新たな生活を始めたい人や、物件を事業に活用したい人にとっては、大きなチャンスとなる可能性を秘めています。

詳しくは「不動産の無償譲渡を受けるメリット」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

無償譲渡の契約を進める際には、トラブルを避けるためにも「契約不適合責任」について当事者間で取り決め、契約書に明記することが重要です。契約不適合責任とは、引き渡された物件が契約内容と異なる状態だった場合に、譲渡した側が負う責任のことです。例えば、契約書に記載がなかった雨漏りやシロアリ被害が引き渡し後に発覚した場合、譲り受けた側は修繕費用の請求などができます。
個人間の無償譲渡では、この責任を一切負わない「契約不適合責任免責」とすることも可能ですが、その場合は、把握している物件の欠陥についてはすべて相手に告知する義務があります。どのような条件で契約するのか、専門家も交えて慎重に話し合い、双方が納得のうえで書面に残しておきましょう。

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