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マンション売却から引き渡しまでの流れとは?必要な書類も紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンション売却時の引き渡しは、売買契約日の約1ヵ月後に行われることが多い
  • 引き渡し時に必要な書類がいくつかあるので、事前に準備しておく

不動産の売買では、売買契約日と引き渡し日が異なり、1ヶ月程度の間が空くことが特徴です。買主は売買契約日から引き渡し日の間に住宅ローンの本審査および申し込みを行うため、売買契約から引き渡しまでは1ヶ月程度空いてしまいます。

売却の手順では、売買契約日よりも引き渡し日の方が重要です。引き渡し日はやることが多いため、万全の準備をして臨む必要があります。

マンション売却の引き渡しでは、どのようなことが行われるのでしょうか。
この記事では、マンション売却の引き渡しまでの流れや必要書類などについて解説します。

マンション売却から引き渡しまでの流れ

章のタイトルは「マンション売却から引き渡しまでの流れ」となっていますが、ここで紹介するのは実質的に「引き渡し日当日の流れ」になります。

引き渡しは、売買契約日の約1カ月後に行われることが多いです。場所は、買主が住宅ローンを組む銀行で行われることがよくあります。参加者は、「売主」「買主」「不動産会社の担当者」「売主側の銀行担当者」「買主側の銀行担当者」「司法書士」です。

不動産会社が売主側と買主側で分かれている場合には、「売主側の不動産会社の担当者」と「買主側の不動産会社の担当者」が参加します。

①残金決済日に売却金を受け取る

引き渡し日に最初に行うのは、買主からの残金の入金です。
なぜ「残金」という表現になるかというと、入金されるのは手付金を除いた金額だからです。

売買契約日には、通常、買主から手付金を受領します。手付金の相場は売買代金の約5〜10%です。仮に手付金が売買代金の10%であれば、引き渡し時に買い主から振り込まれるのは残金である売買代金の90%となります。

残金の入金は、振込で行われることが一般的です。売主は、何らかの手段で振り込まれたことを確認します。

最近ではネットバンキングが発達したため、スマホを使ってその場で着金確認ができるケースも増えてきました。ネットバンキングが利用できない場合には、近くの銀行・ATMへ出向き、通帳を記帳して確認するといった方法を取ります。

②売却するマンションの登記手続きを行う

マンション売却で行う登記手続きは「抵当権抹消」と「所有権移転」の2つです。
抵当権とは、ローンの返済が滞ったときに銀行(債権者)がその担保物件から優先的に弁済を受けられる権利のことを指します。

売買契約書には、「抵当権等の抹消」という条文が記載されていることが一般的です。負担の消除では、売主は「本物件の所有権等移転の時期までに、抵当権等の買主の権利行使を阻害する一切の負担を除去抹消する」と記載されています。

売主は、売買契約で抵当権等の権利を所有権等移転の時期までに抹消することを約束しているため、引き渡し時に抵当権の抹消手続きを行うことになります。

住宅ローン残債が残っているマンションを売る場合、抵当権を抹消するには住宅ローン残債を一括返済しなければなりません。住宅ローンを完済すれば抵当権自体はなくなりますが、登記簿謄本に書かれている抵当権の記載を抹消するには、抵当権抹消書類が必要となります。書類の発行手続きに通常3週間~1カ月程度の時間を要するので、売買契約が終わったタイミングで早めに銀行の担当者に連絡を取りましょう。

抵当権抹消書類は、抵当権を設定した売主側の銀行が保有している書類です。売主側の銀行からの指示により、事前もしくは引き渡し当日に司法書士が引き受けます。

また、売主は所有権移転に必要な書類を司法書士に渡します。司法書士は、引き渡しが滞りなく終わったら、そのまま法務局に直行し、抵当権抹消と所有権移転の登記手続きを行います。

③税金などを精算する

マンション売却では、引き渡し日を境に以下を清算することが一般的です。

【清算対象となるもの】

  • 固定資産税および都市計画税
  • 管理費および修繕積立金

固定資産税および都市計画税は、その年1年分の納税義務者はあくまでも1月1日時点の所有者です。
ただし、引き渡し日以降は買主が負担した方が合理的であることから、その年の引き渡し日以降の固定資産税等を買主が売主に支払うことで負担の調整を行います。

売買が行われたとしても、その年の固定資産税等の納税義務者が買主に変わるわけではありません。その年の引き渡し日以降の固定資産税等の納税も、引き続き売主が行います。

また、管理費および修繕積立金は、翌月分を前月末払いのように先払い方式となっていることが多いです。引き渡し日を月の間に設定すると、その月の引き渡し日以降の管理費および修繕積立金は売主が立て替えている状態となります。引き渡し日以降の売主が立て替えている部分について、精算金として買主が売主に支払います。

買主から支払われる精算金は、引き渡しよりも前に金額が売主と買主の双方に通知され、事前に確認できることが通常です。引き渡しの場で計算したものが支払われるわけではなく、事前に金額を確認したものが支払われることになっています。
精算金は、事前確認の時点で金額に間違いがないかしっかりとチェックしておきましょう。

④必要書類や鍵などを買主に渡す

買主から残代金の入金が確認できたら、必要書類と鍵を買主に引き渡します。
不動産はモノを手渡しすることができないため、その代わりに「鍵」を渡すことで物件の引き渡しをしたものとみなします。

すべての書類を引き渡したら、売主と買主の双方で「売買物件引き渡し確認書」に押印を行うことも多いです。また、鍵に関しても買主が「鍵受領書」に押印して売主に渡すこともあります。

「売買物件引き渡し確認書」や「鍵受領書」は任意ですが、不動産会社によっては後日のトラブルを防ぐために用意されていることがあります。

マンション売却時の引き渡し前に必要な準備

マンション売却時の引き渡し前に必要な準備について解説します。

引き渡しに必要な書類を集める

引き渡し時に必要な書類は、下表の通りです。

利用目的書類名
所有権移転のための書類登記済証(権利証)または登記識別情報
印鑑証明書(3カ月以内に発行のもの)
固定資産税評価証明書
住民票 (住所変更している場合)
身分証明書
買主へ引き渡すための書類固定資産税納税通知書の写し
管理費および修繕積立金の額の確認書
分譲時のパンフレット
管理規約・理事会の会計報告書や議事録
設備取扱説明書・保証書

印鑑証明書のみ、引き渡し日から3カ月以内という期限設定があるため、早く取り過ぎないようにすることが注意点です。その他の書類は特に期限がありませんので、早めに準備しておくことをおすすめします。

司法書士への登記依頼

司法書士は、不動産会社が手配してくれることが多いです。特にこだわりがなければ、不動産会社が手配した司法書士にそのまま依頼します。

自分でこだわって司法書士を探したい場合には、不動産会社にいつまでに決めなければいけないかを確認し、早急に手配しておきましょう。

登記費用の負担者は、抵当権抹消登記は売主、所有権移転登記は買主が負担するのが一般的です。

抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円となります。マンションの場合、土地1個、建物1個で構成されていることが多いため、2,000円となることが一般的です。

不動産会社や司法書士への報酬を確認

不動産会社に支払う仲介手数料は、売買契約時に50%、引き渡し時に50%を支払うことが一般的です。
引き渡し時は売買契約をすでに終えているため、仲介手数料はすでに確定していることが多いといえます。引き渡し時に、残りの仲介手数料の支払いを忘れないようにすることが注意点です。

抵当権抹消のために売主が司法書士に支払う手数料の相場は、1~2.5万円程度となり、変更手続きが必要な場合はこの値段にプラスされることもあります。

物件の確認

引っ越し後、引き渡しまでの間に一度空き家の状態で売主、買主、不動産会社の立会いの下、物件の最終確認が行われることが一般的です。

売主は、通常、売買契約時に買主に対して付帯設備表を渡しています。付帯設備表とは、設備の有無や不具合について記載した書面のことです。

最終確認では、付帯設備表に基づき、主に設備の動作確認や不具合の確認が行われます。例えば、付帯設備表でエアコンを「有」とした場合には、引っ越しにエアコンは持っていくことができません。

マンション売却時の引き渡しにまつわる疑問

マンション売却時の引き渡しにまつわる疑問について解説します。

売主が引き渡しに参加できない場合は?

売主が引き渡しに参加できない場合には、代理人を立てます。
代理人を立てる場合には、事前に本人が不動産会社と司法書士に面談して、本人の意思を伝えておくことが適切です。

また、代理人に与える代理権の内容は極力限定し、代理人に裁量の余地を与えないようにしておくことが安全といえます。

引き渡しが決まったら引っ越しはどのタイミングで行う?

引っ越しは、売買契約から引き渡しまでの間に行うのが原則です。

売買契約では手付解除の期限が定められています。手付解除の期限は、売買契約から2週間後くらいに設定されることが多いです。

手付解除の期限までは買主から一方的に売買契約を解除される可能性があるため、手付解除期限を過ぎてから引き渡しまでの間に引っ越すのが安全といえます。

引き渡し後にマンションに不具合があったらどうする?

買主に告知をしておらず、かつ免責もしていなかった不具合については、売主は契約不適合責任を負う可能性があります。
契約不適合責任とは、契約内容とは異なるものを売ったとき、売却後に買主から修繕または契約解除あるいは損害賠償を請求されることがある売主責任のことです。不具合の内容としては、マンションであれば主に給排水管の故障等になります。

契約不適合責任を負う期間(通常引き渡しから3カ月等)は、売買契約で定められています。責任期間内に不具合が発生すれば契約不適合責任を負う可能性がありますが、責任期間を過ぎれば契約不適合責任は原則として負う必要がありません。

引き渡しが平日に行われるのはなぜ?

引き渡し日は原則として平日の午前中に行われます。平日であれば、買主は銀行振込ができ、売主も着金確認ができるからです。

売主の着金確認後、すぐに司法書士が登記所へ向かい、迅速に手続きを進められるよう、平日に行われます。

午前中に行えば、万が一トラブルがあった場合、その日のうちにトラブルを解決できる可能性が高いという理由もあります。

この記事のポイント

マンション売却時の引き渡し前に必要な準備はありますか?

必要書類を用意しておくほか、司法書士への登記依頼、不動産会社や司法書士への報酬の確認、物件の確認などが必要です。

不明点がある場合は不動産会社に確認しましょう。

詳しくは「マンション売却時の引き渡し前に必要な準備」をご覧ください。

引き渡し後にマンションに不具合があったら?

買主に告知をしておらず、かつ免責もしていなかった不具合については、売主は契約不適合責任を負う可能性があります。
契約不適合責任とは、契約内容とは異なるものを売ったとき、売却後に買主から修繕または契約解除あるいは損害賠償を請求されることがある売主責任のことです。

ただし、契約不適合責任を負う期間(例えば引き渡しから3ヶ月等)は、売買契約で定められています。

詳しくは「マンション売却時の引き渡しにまつわる疑問」をご覧ください。

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