固定資産税課税標準額
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固定資産税課税標準額とは?評価額との違いや計算方法を解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。
https://x.com/sakuragirie

ざっくり要約!

  • 固定資産税課税標準額とは、固定資産税額を算出する際に用いられる金額
  • 住宅用地に対しては、固定資産課税標準額を軽減する特例措置がある

不動産を所有すると、毎年固定資産税がかかります。土地や建物の評価によっては増額になることもあるため、注意が必要です。

本記事では、固定資産税の仕組みを理解していただくために、固定資産税の算出基準や税金の減額措置、税額を算出する方法をわかりやすく解説します。

読み進めていただくことで、来年度に固定資産税がどのくらいかかるのか把握できるようになります。不動産の購入や相続を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

固定資産税課税標準額は税額の算出基準となるもの

固定資産税課税標準額は税額の算出基準となるもの

固定資産税課税標準額とは、固定資産税・都市計画税を算出する際に課税対象となる金額のことで、それぞれ税率を乗じて課税額が算出されます。

はじめに、固定資産税と都市計画税の概要について解説します。

固定資産税とは

固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を所有している人に対して、市区町村(東京都23区は都)が課税する地方税です。

毎年1月1日時点で固定資産を所有している人に対して、4~6月頃に固定資産税の納税通知書が届くので、納付期限までに一括、もしくは4期に分けて納税します。

固定資産税額を求める計算式は、以下のとおりです。

固定資産税額=課税標準額×税率(標準税率1.4)%

課税標準額については、この後に続く章で詳しく解説します。

固定資産税は地方税のため、税率や納付期限は自治体によって異なることがあります。実際の税率や納付方法などについては、各自治体のホームページや窓口で確認するようにしてください。

都市計画税とは

都市計画税とは、毎年1月1日時点で市街化区域内に土地や家屋を所有している人に対してかかる地方税です。

つまり市街化区域以外の土地や家屋が、課税対象外となります。

市街化区域とは、すでに市街地として形成されている区域および、おおむね10年以内に優先的に市街化を図るべき区域のことです。

2024年4月1日時点で都市計画税を課税している自治体は、639団体といわれており、日本全体では約1/3の自治体は課税していることになります。

固定資産税と同様に、4~6月頃に納税通知書が届きます。納付期限までに一括、もしくは4期に分けて納税しましょう。

都市計画税を求める計算式は、以下のとおりです。

都市計画税額=課税標準額×税率(標準税率0.3)%

なお標準税率は0.3%ですが、自治体ごとに0.3%を上限に定めることができるため、実際の税率とは異なることがあります。税率や納期方法については、自治体のホームページ、もしくは窓口で確認するようにしてください。

出典:土地や家屋をお持ちの方へ|東京都

固定資産税課税標準額と固定資産税評価額の違い

固定資産税課税標準額と固定資産税評価額の違い

固定資産税課税標準額と混同されやすい用語に、固定資産税評価額があります。どのような違いがあるのでしょうか。

自治体から送られてくる納税通知書を見ると、課税明細書には課税標準額や評価額など、さまざまな金額が掲載されています。それぞれどのような意味があるのか、正しく理解している方は少ないかもしれません。

そもそも固定資産税課税標準額と固定資産税評価額は、基本的には同額です。

固定資産税課税標準額とは、固定資産税額を算出する際に用いられる金額で、特例措置や税負担について調整が行われた場合は、固定資産税評価額よりも低くなります。

一方の固定資産税評価額とは、土地や家屋などの固定資産の価値を表すもので、固定資産税額(都市計画税・不動産取得税)を算出する際に基準となる金額です。

固定資産税評価額は、総務省(総務大臣)が定める「固定資産評価基準」に基づき、各自治体が土地・家屋にわけて設定しており、土地については公示価格価格の70%程度が目安になります。

ちなみに新築の固定資産税評価額は、実際にかかった工事代金の50~60%ともいわれていますが、家の構造によって異なり、築年数に応じて変動します。

固定資産税評価額は、課税明細書のほか、固定資産税評価証明書(各自治体で取得可能)でも確認できます。

固定資産税課税標準額と相続税評価額の違い

固定資産税課税標準額と相続税評価額の違い

固定資産税課税標準額以外にも、不動産の価値を評価する金額として「相続税評価額」があります。

国税庁は相続税(贈与税)を計算する方法(財産評価基本通達)を定めており、相続税(贈与税)の税額を算出する際に基準となるのが、相続税評価額です。

たとえば宅地の相続税評価額の算出には、路線価方式と倍率方式があります。

路線価が公表されているエリアは「路線価×補正率(加算率)×地積」(路線価方式)で計算し、路線価が定められていない地域は「固定資産税評価額×倍率」(倍率方式)で計算します。

路線価は、国税庁のホームページで確認できます。計算方法について不明な点があれば、税務署の窓口で相談してみましょう。

出典:No.4602 土地家屋の評価|国税庁
No.4604 路線価方式による宅地の評価|国税庁
No.4606 倍率方式による土地の評価|国税庁

固定資産税課税標準額を軽減する特例

固定資産税課税標準額を軽減する特例

住宅用地に対しては、固定資産課税標準額を軽減する特例措置(固定資産税等の住宅用地特例)があり、固定資産税および都市計画税は、一定の割合で軽減されます。

住宅1戸につき、200㎡までの住宅用地は「小規模住宅用地」、200㎡を越える部分は「一般住宅用地」に区分され、それぞれ以下の割合で軽減されます。

区分固定資産税の課税標準額都市計画税の課税標準額
小規模宅地住宅1戸につき200㎡までの部分課税標準額×1/6課税標準額×1/3
一般住宅用地小規模住宅地以外の住宅地
(住宅用地1戸につき200㎡を越える部分)
課税評価額×1/3課税評価額×2/3

つまり住宅用地が200㎡までであれば、敷地のすべてが小規模宅地の軽減措置が受けられます。

たとえば住宅用地の課税評価額額が1,800万円の場合、宅地の面積が200㎡以下であれば、固定資産税額は以下のように計算できます。

課税標準額:1,800万円×1/6=300万円

固定資産税額:300万円×1.4%(税率)=4.2万円

住宅用地で宅地の面積が300㎡、課税評価額が1,800万円の場合は、固定資産税額は以下のように計算します。

小規模住宅用地の課税標準額:1,800万円×200/300㎡×1/6=200万円

一般住宅用地の課税標準額:1,800万円×100/300㎡×1/3=200万円

課税標準額(合計):200万円+200万円=400万円

固定資産税額:400万円×1.4%(税率)=5.6万円

ちなみにアパートなど集合住宅の敷地も、住宅用地として軽減を受けることができ、200㎡×1室(1戸)の面積までが小規模住宅地として扱われます。

出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|主税局

宅地等における負担調整措置

固定資産税課税標準額を軽減する特例措置以外に、新築住宅に対する減額措置や、リフォームした住宅に対する減税もあります。

たとえば新築住宅に対しては、居住水準の向上と良質な住宅の建設を促進することを目的に、固定資産税を3年間(マンション等は5年間)にわたって1/2に減額する措置があります。

さらに認定長期優良住宅に対しては2年間延長されるので、5年間(マンション等は7年間)にわたって、固定資産税が1/2になります(適用期限は2026年3月31日)。

また耐震化や省エネ化のリフォームをすることで、固定資産税が軽減となる措置を受けられる可能性もあります。

リフォーム促進税制について、詳しくは国土交通省のホームページで確認してください。

出典:新築住宅に係る税額の減額措置|国土交通省
リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について|国土交通省

固定資産税課税標準額の具体的な調べ方

固定資産税課税標準額の具体的な調べ方

固定資産税を正しく計算するためには、正確な固定資産税課税標準額を知っておく必要があります。ここでは、固定資産税課税標準額を調べる4つの方法を紹介します。

納税通知書を確認する

所有している土地や建物の固定資産税課税標準額は、毎年市区町村から4~6月頃に送られてくる納税通知書で確認できます。

納付書のほかに課税明細書が付いており、土地・建物それぞれの課税標準額が記載されています。

固定資産課税台帳を閲覧する

納税通知書が手元にない場合は、市区町村(東京都23区は都税事務所)ごとに備えている固定資産課税台帳でも、固定資産税課税標準額が確認できます。

具体的な確認方法としては、固定資産課税台帳を閲覧するか、証明書の交付を申請しましょう。ただし閲覧や証明書を取得できるのは、納税者本人やその家族、代理人等に限られます。

閲覧や証明書の請求には、300円程度の手数料がかかりますが、縦覧制度(納税者がその価格がほかの土地建物と比較して適正であるか判断するための制度)を利用することで、たとえば第1期の納期限までといった形で一定期間は無料で閲覧することもでます。

ちなみに固定資産課税台帳には、土地建物の固定資産税課税標準額のほかに、評価額や所有者、土地の地番や地目、地積、家屋の構造や床面積などが記載されています。

固定資産評価証明書を取得する

土地建物の固定資産税課税標準額は、固定資産評価証明書でも確認できます。400円程度の手数料がかかりますが、市区町村(東京23区は都税事務所)で申請・取得できます。

固定資産評価証明書を取得できるのは、納税者本人やその家族、代理人等に限られます。

固定資産評価証明書には、土地建物の固定資産税課税標準額のほかに、評価額や所有者、土地の地番や地目、地積、家屋の構造や床面積などが記載されています。

不動産仲介会社に確認する

住宅を購入する際など納税者でない場合は、基本的に固定資産課税台帳の閲覧や固定資産評価証明書の取得はできません。

そのため、課税標準額や評価額、固定資産税額を知りたいときは、不動産仲介会社に相談しましょう。新築の場合は課税標準額が決まっていませんが、概算値を出してもらうことは可能です。

不動産仲介会社に売却を依頼している場合は、委任状を渡すことで代理取得できます。

固定資産税課税標準額が上がらないのに税金が上がる理由とは

固定資産税課税標準額が上がらないのに税金が上がる理由

固定資産税の基準となる土地建物の評価額は、3年に1度「評価替え」を行い、見直しをします。しかし固定資産の評価額は変わらないのに、固定資産税が上がることがあります。

最後に、固定資産税が上がる原因について解説します。

減税措置期間が終了した

固定資産税には、減額措置があります。その適用期間が終わると元の税額に戻るため、急に固定資産税が上がったと驚く方が多いかもしれません。

たとえば新築住宅に対しては、固定資産税を3年間(マンション等は5年間)にわたって1/2に減額する措置がありますが、4年目(マンション等は6年目)は約2倍の税額になります。

資金計画やライフプランを立てる際は、減額措置後は元の税額になることを忘れないようにしてください。

減免措置の対象外となった

住宅用地は、200㎡までは固定資産税の課税標準額が1/6、都市計画税は1/3になる特例があります。

しかし住宅を解体してしまうと、住宅用地に対する特例を受けられなくなり、固定資産税や都市計画税は元の金額に戻ってしまいます。

また住宅が建っていたとしても、空き家として放置してしまうと「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、住宅用地特例の適用対象から除外されてしまうことがあります。

特定空家に指定される可能性があるのは、次のような状態です。

  • 建物が破損していて倒壊のおそれがあり、保安上危険となるおそれがある状態
  • ゴミの放置によって悪臭が発生しているなど、衛生上有害となるおそれがある状態
  • 建物の状態が悪い、庭木が繁殖しすぎているなど、周辺の景観を損なっている状態
  • 周辺環境の保全のために、放置することが適切ではないと判断できる状態

なお、管理不全空家に指定される可能性があるのは、放置することで特定空家になってしまうおそれがある空き家です。

空き家を所持している場合は適切に管理し、周辺住民を危険にさらしたり、周辺の景観を損なったりしないように注意しましょう。

負担調整措置がとられている

固定資産税を評価額に基づいてそのまま算出すると、納税者の負担が大きくなると判断されたときに、負担調整措置が取られることがあります。

負担調整措置とは、課税標準額を徐々に引き上げることで、税額の上昇を緩やかなものにして納税者の負担が急増するのを防ぐための措置です。

近年では、新型コロナウイルス感染症の流行によって、納税者の経済状況が変化したことを鑑みて、令和3年(2021年)に負担調整措置が取られました。

まとめ

固定資産税の仕組みや固定資産税の算出基準や、税金の減額措置について解説してきました。固定資産税がどのように算出されるのか、理解できたのではないでしょうか。

固定資産税は減額措置の期間終了や、住宅用地の特例を受けられなくなると、もとの税額に戻ってしまいます。土地の評価や規模によっては大きな負担となるため、固定資産税が上がるタイミングを忘れないようにしてください。

この記事のポイント

固定資産税課税標準額とは?

固定資産税課税標準額とは、固定資産税・都市計画税を算出する際に課税対象となる金額のことで、それぞれ税率を乗じて課税額が算出されます。

詳しくは「固定資産税課税標準額は税額の算出基準となるもの」をご覧ください。

固定資産課税標準額はどうやって調べますか?

固定資産税課税標準額は、毎年市区町村から4~6月頃に送られてくる納税通知書で確認できます。

納税通知書が手元にない場合は、市区町村(東京都23区は都税事務所)ごとに備えている固定資産課税台帳でも、固定資産税課税標準額が確認できます。

詳しくは「固定資産税課税標準額の具体的な調べ方」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

不動産を購入または相続すると、固定資産税や都市計画税がかかります。住宅ローンの返済以外の支出や税金も含めて、無理のない資金計画やライフプランを立てましょう。不動産会社によっては、住宅購入を検討するお客さまを対象に、ライフプランを相談できるサービスを提供していることがあります。
無料で相談できるケースも多いため、税金について不安があれば、まずは不動産会社に相談することから始めてみましょう。

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