ざっくり要約!
- 公務員は景気に左右されにくいなどの理由から、一般の会社員よりも住宅ローン審査に通りやすい傾向にある
- 公務員が住宅ローンを利用する場合、金利優遇や特別プランを設けている金融機関もある
公務員として働いている方のなかには、住宅購入を検討する際に「きちんと住宅ローン審査に通るのだろうか」と不安を感じる方も少なくありません。また、公務員に適したローン商品について知りたいと考える方もいることでしょう。
実際のところ、公務員の方は比較的ローン審査に通りやすい傾向にあります。また、公務員の方に限定された住宅ローン商品もあり、年収や物件価格などに応じて適した商品を選択することが重要です。
この記事では、公務員が住宅ローン審査で有利とされる理由や、利用できる主な住宅ローン商品について解説します。さらに、公務員が住宅ローンを組む際に押さえておきたいポイントも紹介しているため、これからマイホーム購入を検討している公務員の方にとって参考になる内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
公務員は住宅ローン審査に通りやすいって本当?

一般的に公務員は住宅ローン審査に通りやすいといわれていますが、すべての方にあてはまるわけではありません。
ここでは、公務員が審査で有利といわれている背景と、審査に落ちやすいケースの両方についてみていきます。
公務員が住宅ローン審査で有利とされる理由
公務員が一般の会社員よりも住宅ローン審査に通りやすい傾向にある、主な理由は次の3つです。
- 安定した収入が得られる
- 定年退職金が出る
- 解雇リスクが少ない
公務員は景気に左右されにくく、毎月安定した給与が支給されます。さらに、景気が厳しい状況でもボーナスが支給されることも多く、金融機関に「返済リスクが低い」と判断されやすくなります。
加えて、定年時には原則として退職金が支給されるため、一括返済を選択することも可能です。
なお、地方公務員の定年退職金の平均は約2,270万円とされており、将来的にまとまった資金を確実に受け取れる点も金融機関からの高評価につながっています。
そのうえ民間企業に比べると、景気の変動による解雇リスクが小さいため、安定的に返済できると判断されやすい点も公務員ならではの強みといえるでしょう。
出典:給与・定員等の調査結果等 5)退職手当の支給状況|総務省
公務員が住宅ローン審査に落ちる可能性があるケース
公務員は住宅ローン審査に通りやすい傾向にあると解説しました。とはいえ、公務員であっても審査に落ちるケースは当然あります。
例えば、次のような場合はローン審査の通過は難しくなるでしょう。
- 信用情報に問題がある
- 健康面に問題がある
- 返済負担率が高い
- 購入物件に問題がある
まず、信用情報に問題があるケースです。過去にクレジットカードやカードローンの返済遅延や滞納があると、その記録は信用情報機関に登録され、金融機関からの評価を下げる要因になります。信用履歴に傷がある場合、公務員であっても審査に不利になるでしょう。
また、住宅ローンを利用する際は団体信用生命保険(団信)への加入が基本条件となります。そのため、持病などで団信に加入できない場合は融資が難しくなります。その場合は、後述する「フラット35」などの選択が有効となるでしょう。
返済負担率が高いケースにも注意が必要です。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合を指します。
一般的に返済負担率は25~35%程度が目安とされており、この基準を超えると「返済が厳しい」と判断され、審査に落ちる可能性が高まってしまいます。
さらに、購入する物件自体に問題がある場合も注意が必要です。再建築不可の物件や築年数が古い物件(築30年以上)などは、担保価値が低いと判断されやすく、金融機関によっては融資が認められないこともあります。
| ・「住宅ローンの審査が通らない人の特徴」に関する記事はこちら 住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?通らない場合の対策も紹介 ・「団信」に関する記事はこちら 団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説 ・「返済負担率」に関する記事はこちら 住宅ローンは年収の何倍が理想なのか?借入可能額と返済可能額の違いとは |
公務員が住宅ローンを組む場合の優遇内容

金融機関から見ると、公務員は安定した返済が期待できる職業のひとつです。そのため、公務員が住宅ローンを利用する場合、金利優遇や特別プランを設けている金融機関も少なくありません。
主な優遇内容は以下のとおりです。
| 優遇内容 | 具体例 |
| 金利の優遇 | 0.1〜0.5%程度の金利引き下げ |
| 返済期間の優遇 | 40~50代でも35年ローンを組める |
| 借入限度額の引き上げ | 年収に対して通常より多くの借入が可能 |
とくに近年は金利が上昇傾向にあるため、金利優遇は利息負担の軽減に直結します。
また、公務員は退職金を受け取れることから、40代や50代でも長期ローンが認められる可能性が高い点も特徴です。
こうした優遇を活用することで、返済計画に余裕を持たせやすくなります。ただし、優遇条件は一般に公開されていない場合も多く、実際に適用されるかどうかは金融機関へ直接確認する必要があります。
公務員が住宅ローンを組むならどれが良い?主な住宅ローン商品を解説

住宅ローンは制度や仕組みによって内容が異なり、選び方によって将来の返済負担に大きな差が出ます。公務員の場合は、勤務の安定性を背景にさまざまな選択肢があり、自分のライフプランに合う商品を選ぶことが大事です。
公務員が利用できる主な住宅ローン商品には、次のようなものがあります。
- 共済貸付
- 民間金融機関が提供する住宅ローン商品
- フラット35
- 財形住宅融資
それぞれの特徴について詳しくみていきましょう。
共済貸付
共済貸付は、公務員共済組合が運営する貸付制度です。民間金融機関が扱う住宅ローンと同じように、住宅の新築・購入・増改築・リフォームなど住居に関する幅広い用途で利用できます。
共済貸付のメリット・デメリットは次のとおりです。
| 内容 | |
| 共済貸付のメリット | 保証人が不要 団信には自動加入 |
| 共済貸付のデメリット | 貸付限度額は少ない 金利タイプは固定金利のみ 融資まで時間がかかる |
共済貸付は保証人を立てる必要がなく、団体信用生命保険(団信)にも自動で加入できるため、万が一の場合でもローン残債がゼロになる安心感があります。
一方で、貸付限度額が2,000万円以下に設定されていることが多く、希望する住宅価格に届かないケースも少なくありません。また、金利タイプは固定金利のみであるため、変動金利を選んで返済額を抑えたい方には不向きといえるでしょう。
民間金融機関が提供する住宅ローン商品
民間金融機関が提供する住宅ローンは、会社員をはじめ幅広い層に利用されています。メガバンクや地方銀行、信用金庫に労働金庫(ろうきん)など、多様な金融機関が独自の住宅ローンを取り扱っています。
民間金融機関の住宅ローンのメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 内容 | |
| 民間金融機関の住宅ローンのメリット | 金利が低め 貸付限度額が多い 融資までの時間が短い |
| 民間金融機関の住宅ローンのデメリット | 審査が厳しい 団体信用生命保険への加入が必須 |
メガバンクは低金利と利便性に優れ、地方銀行や信用金庫は地域密着型の手厚い対応が特徴です。ろうきんは利用者に寄り添ったサポートが手厚く、ネット銀行は低金利かつ利便性の高さが魅力です。
一方で、団体信用生命保険への加入が必須となる場合が多いため、健康状態によっては利用が難しくなることもあります。こうした点を踏まえ、自身のライフスタイルに合った商品を選ぶことが大切です。
フラット35
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して運営する全期間固定金利型住宅ローンです。金利が返済終了まで一定であるため、長期的な返済計画を立てやすい点が大きな特徴です。さらに、公務員であれば従来のフラット35より金利が低く設定される「フラット35エース」を利用できる場合もあります。
フラット35のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 内容 | |
| フラット35のメリット | 金利が一定で返済負担が変わらない 団体信用生命保険への加入は任意 |
| フラット35のデメリット | 変動金利を利用できない |
フラット35は金利が固定されているため、収入が安定している公務員との相性が良く、安心して返済計画を立てやすいローンです。
また、団体信用生命保険(団信)への加入が任意であるため、健康上の理由で団信に加入できない方でも利用できます。
一方で、変動金利を利用できないため、借り入れ当初の金利負担を抑えたい方は民間金融機関の住宅ローンを検討するとよいでしょう。
・「フラット35」に関する記事はこちら
フラット35とは?メリットから手続きの流れまでわかりやすく解説
財形住宅融資
財形住宅融資とは、財形貯蓄を行っている公務員が利用できる制度です。1年以上財形貯蓄を継続し、残高の合計が50万円以上あること等が利用条件となります。
財形住宅融資のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 内容 | |
| 財形住宅融資のメリット | 他の固定金利と比べて金利が低い 事務手数料や保証料が不要 長期で返済できる |
| 財形住宅融資のデメリット | 金利上昇リスクがある 融資額は最大4,000万円まで |
財形住宅融資は、フラット35などの固定金利ローンよりも低い金利で利用できるのが特徴です。
例えば、2025年9月時点でフラット35の金利が2.0%程度であるのに対し、財形住宅融資は1.77%と低めに設定されています。そのうえ、事務手数料や保証料が不要なため、諸費用の削減にもつながるでしょう。
ただし、5年ごとに金利が見直される仕組みのため、将来的な金利上昇リスクを考慮する必要があります。また、融資額は最大4,000万円までに制限されており、物件によっては購入が難しくなる点にも注意が必要です。
公務員が住宅ローンを組む際の2つのポイント

住宅ローンを利用する際には、借入額や利用する金融機関以外にも、金利タイプや返済方法といった契約内容にも注目することが大事です。これらは将来の返済計画に大きく影響するため、それぞれの特徴を理解しておくことが欠かせません。
ここでは、金利タイプと返済方法の概要について詳しく解説していきます。
金利タイプ
住宅ローンを組む際には、どの金利タイプを選ぶかが重要なポイントになります。
主な金利タイプは以下の3つです。
- 固定金利
- 変動金利
- 固定金利期間選択型
まず、固定金利は返済期間中ずっと金利が変わらないため、安定した返済計画を立てやすいのが特徴です。ただし、金利が高めに設定されることが多く、総返済額は多くなる傾向にあります。
変動金利は借入時点の金利が低く、当初の返済額を抑えやすいのが魅力です。その一方で、市場金利の変動に左右されるため、金利が上昇すると返済額が増えるリスクがあります。
そして固定金利期間選択型は、一定期間(例えば10年など)は固定金利で、その後は変動金利に切り替わるタイプです。固定と変動の両方の特徴を併せ持つため、金利動向に応じた柔軟な選択ができます。
なお、国土交通省の調査(令和5年度)によれば、実際に住宅ローンを利用した人のうち84.3%が変動金利を選択しており、低金利を重視する傾向があるようです。
| ・「変動・固定金利」に関する記事はこちら 住宅ローンの変動・固定金利の推移は?今後の選択ポイントを解説 |
返済方法
住宅ローンの返済方法は主に次の2つがあり、それぞれ特徴が異なります。
- 元利均等返済
- 元金均等返済
まず、元利均等返済は毎月の返済額が一定になる仕組みで、元金と利息を合わせて返済していきます。返済額が安定しているため、家計管理をしやすい点が特徴です。
一方の元金均等返済は毎月の元金返済額が一定で、利息は残高に応じて変動します。返済開始当初は返済額が高く、負担は大きくなりますが、返済が進むにつれて利息が減り、総返済額は元利均等返済より少なくなります。
毎月の返済負担を安定させたい方は元利均等返済を、経済的に余裕があり総返済額を抑えたい方は元金均等返済を選択するとよいでしょう。
公務員の共働き世帯が住宅ローンを組む際の注意点

夫婦がともに公務員で住宅ローンを利用する場合、安定した収入を背景に多額のローンを組みやすくなります。ただし、それゆえに共働き世帯の場合は注意すべき点も存在します。
ここからは、公務員の共働き世帯が住宅ローンを組む際に意識しておきたい注意点を解説していきます。
借り過ぎに注意する
公務員夫婦は安定した収入を評価され、金融機関の審査に通りやすい傾向があります。
そのため借入可能額も大きくなりやすく、過度なローンを組んでしまうケースも少なくありません。
住宅ローンを組む際には、将来的にどちらかが働けなくなる可能性も考慮する必要があります。出産や体調の変化によって仕事を辞めたり、休職したりすることも十分にあり得ます。そのため、夫婦どちらかの収入だけでもやりくりできるよう、無理のない借入額を設定することが大切です。
例えば以下の条件で、借入額ごとの毎月の返済額を比較してみましょう。
【借入条件】
金利タイプ:変動金利
金利:0.8%
返済方法:元利均等返済
返済期間:35年
| 借入額 | 毎月の返済額 |
| 3,000万円 | 8万1,918円 |
| 4,000万円 | 10万9,224円 |
| 5,000万円 | 13万6,530円 |
| 6,000万円 | 16万3,836円 |
ここでの返済額を一つの目安とし、適切な借入額を検討してください。
| ・「世帯年収1000万円の住宅ローン」に関する記事はこちら 世帯年収1000万円の住宅ローンはいくらが適切?目安や家族構成別の注意点も |
収入合算・ペアローンの場合はリスクも理解しておく
夫婦で住宅ローンを組む場合、収入合算やペアローンを利用する方法があります。
収入合算は夫婦の収入を合算して1本のローン契約で借入を行う方法で、連帯保証型と連帯債務型があります。一方、ペアローンは互いに主債務者となり、相手の連帯保証人になる仕組みで、双方が住宅ローン控除を受けられる点が特徴です。
ただし、それぞれにメリットがある一方で、以下のような注意点が存在します。
| 利用する際の注意点 | |
| 収入合算 | 団信に加入できるのは原則主債務者のみ 連帯保証型ではローン控除の対象は主債務者に限定される |
| ペアローン | 事務手数料や登記費用が2人分かかる 離婚時の売却が困難になることも |
収入合算では、団信に加入できるのは原則、主債務者のみで、合算者に万が一のことがあっても残債は免除されません。さらに連帯保証型では住宅ローン控除の対象も主債務者に限られます。
一方のペアローンは、双方でローン控除を受けられる反面、事務手数料や登記費用が2人分かかります。また、離婚時には売却に双方の合意が必要となり、手続きが難航するケースも少なくありません。これらの注意点をきちんと理解したうえで検討してください。
| ・「住宅ローンの収入合算」に関する記事はこちら 住宅ローンの収入合算とは?ペアローンの違いは?メリット・デメリットも紹介 ・「ペアローン」に関する記事はこちら ペアローンはデメリットが多い?後悔しないために知っておきたいこと ・「連帯債務・連帯保証」に関する記事はこちら 住宅ローンの連帯債務と連帯保証はどう違う?ペアローンとの違いも解説 |
育児休業時の収入減少への対策を考えておく
育児休業を取得する場合、一定期間は収入が減少します。そのため、収入が減ったときにどう対応するかをあらかじめ考えておくことが大事です。
金融機関のなかには、育児休業中の返済負担を軽減できる制度を設けているところもあります。例えば、返済額を一時的に軽減したり、一定期間支払いを猶予したりする制度を導入している金融機関も存在します。
こうしたサポート制度を利用できれば、育児休業中の家計への負担を抑えやすくなります。将来のライフプランを見据えて、育児休業時の支援制度がある金融機関を選ぶことも重要なポイントとなるでしょう。
転勤する場合の対応を考えておく
公務員夫婦が住宅ローンを組む際には、転勤の可能性についても考慮しておくことが大切です。
とくに国家公務員の場合、全国各地への異動があり、どちらかが遠方へ赴任するケースも想定されます。
共働き世帯の場合、単身赴任になるケースが一般的で、その場合は赴任先と自宅の両方で生活費が発生します。また、転勤辞令を受けていない側が仕事を辞め、赴任先で新たに働き口を探すことになるケースもあり、その間は収入が不安定になりがちです。
こうした状況を踏まえると、余裕を持った返済額に設定しておくことが、将来のリスクに備えるうえで重要となるでしょう。
まとめ
公務員は安定した収入があり、解雇リスクも少ないことから、住宅ローン審査に通りやすいといわれています。
また、利用できる住宅ローンには、民間金融機関が提供する商品に加え、公務員ならではの貸付制度もあります。それぞれの特徴を理解し、自身に合った商品を選ぶことが大切です。
一方で、公務員は借入の上限が高く設定されやすいため、過度に借り入れてしまうリスクがあります。借入可能額と返済可能額は必ずしも一致しないため、将来的な生活変化を踏まえた余裕ある返済計画を立てる必要があるでしょう。
そうした意識を持ったうえで物件探しを始めれば、無理のない範囲で理想の住まいが見えてきます。安心できるマイホームの実現に向けて、まずは一歩を踏み出してみてください。
この記事のポイント
- 公務員は住宅ローン審査に通りやすい?
公務員は一般的に、会社員よりも住宅ローン審査に通りやすい傾向があります。
公務員は景気に左右されにくく、毎月安定した給与が支給されます。さらに、景気が厳しい状況でもボーナスが支給されることも多く、金融機関に「返済リスクが低い」と判断されやすくなります。
加えて、定年時には原則として退職金が支給されるため、一括返済を選択することも可能です。
詳しくは「公務員は住宅ローン審査に通りやすいって本当?」をご覧ください。
- 公務員が住宅ローンを組む場合の優遇は?
公務員が住宅ローンを利用する場合、金利優遇や返済期間の優遇、借入限度額の引き上げといった特別プランを設けている金融機関もあります。
詳しくは「公務員が住宅ローンを組む場合の優遇内容」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
夫婦で公務員として働いていても、育児休業や転職、病気やケガなどによって収入が一時的に減少する可能性もあるため、余裕を持った返済計画を立てることが大切です。夫婦どちらかの収入が途絶えたとしても、返済を続けられるようなローンにしたいところです。具体的な借入額や返済負担を正しく把握したい場合は、FPなど専門家の意見を聞きながら住宅購入を進めていきましょう。

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