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賃貸借契約の保証人がいない時はどうする?保証人不要の物件はある?

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • 賃貸の保証人とは借主の債務(契約上の義務のこと)を保証する人のこと
  • 家賃保証会社とは、借主が家賃の不払いを発生させたときに貸主に対して家賃を支払ってくれる会社のこと

近年は賃貸物件で連帯保証人を不要とするケースが増えつつありますが、未だに連帯保証人を必要とする物件も存在します。

連帯保証人を不要とする物件では、借主は家賃保証会社への加入が義務付けられることが一般的です。

厳密には連帯保証人と家賃保証会社では保証の範囲が異なるため、連帯保証人と家賃保証会社の加入の両方を求められることもあります。

賃貸物件の保証人や家賃保証会社とは、どのようなものなのでしょうか。
この記事では、「賃貸の保証人」について解説します。

賃貸の保証人とは?連帯保証人についても解説

賃貸の保証人とは?連帯保証人について

賃貸の保証人とは、借主の債務(契約上の義務のこと)を保証する人のことです。
借主には、例えば家賃を払わなければならない等の債務があります。

借主が家賃を払わない等の債務を履行しなかったときに、借主に代わって債務を負担する人が保証人です。

保証人と連帯保証人の概要

保証人には、大きく分けて「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。
連帯保証人とは、主たる債務者(借主)と連帯して債務を負担する保証人のことです。

賃貸借契約で求められる保証人は、連帯保証人であることが一般的です。

保証人と連帯保証人の相違点は、「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」、「分別の利益」の3点にあります。

相違点保証人連帯保証人
催告の抗弁権ありなし
検索の抗弁権ありなし
分別の利益ありなし

催告の抗弁権とは、債権者(貸主)から債務の履行を請求されたとき、先に主たる債務者に催告するように主張できる権利のことです。
連帯保証人は、仮に貸主から家賃の支払いを請求された場合、先に借主に催告して欲しいとは主張できません。

検索の抗弁権とは、主たる債務者に弁済する資力があり、かつ執行が容易なことを証明すれば、先に主たる債務者の財産から執行するように主張できる権利のことです。
連帯保証人は、仮に借主が資産を持っていたとしても、借主の財産から家賃を取るように貸主に主張できないことになります。

分別の利益とは、2人以上の保証人がいるときに、各保証人は「債務の額を保証人の数で割った額についてのみ保証すれば良い」という利益のことです。
連帯保証人は、仮に連帯保証人が2人以上いたとしても、それぞれが満額の保証債務を負うことになります。

このように連帯保証人には、保証人よりも重い責任があります。

連帯保証人は借主が負う全ての債務を負う人であり、簡単にいうと借主と同じ責任を負う人といえます。

連帯保証人が負うリスク

連帯保証人が負うリスク

連帯保証人は借主と同等の責任を負うことから、無限責任を負うことになります。

例えば、借主が自己破産して滞納した家賃を払えなくなったときは、連帯保証人が全額支払うことが必要です。

また、借主が物件内で自殺をし、物件が事故物件になったときも、連帯保証人は貸主から損害賠償請求を受ける立場にあります。

連帯保証人は原則として責任範囲が無制限であることから、他人が連帯保証人となってくれるケースは少ないです。

一般的に、連帯保証人は親や兄弟等の親族がなることが多いといえます。

保証人不要の物件とは

保証人不要の物件とは

近年は、次節で紹介する民法改正を背景に、連帯保証人を不要とする物件が増えつつあります。

しかしながら民法が改正される以前から、保証人を不要とする物件は存在しました。
例えば、UR(旧日本住宅公団)の賃貸住宅は、昔から保証人を不要としています。

その他としては、後述する家賃保証会社への加入を借主に義務付けている物件でも、連帯保証人を不要としていることが一般的です。

法改正による保証人制度の変更ポイント

法改正による保証人制度の変更ポイント

近年の高齢化社会では、親が連帯保証人になったとしても、実質的に連帯保証人としての役割を果たせないケースが増えてきました。

連帯保証人の責任範囲は無制限であり、適切な連帯保証人を確保することが難しいという社会的要請を受け、2020年に連帯保証人に関して民法の改正が行われています。

民法改正の意図は、連帯保証人の保護を厚くすると同時に、長期的には賃貸物件における連帯保証人を付ける慣習をなくすことが目的です。

従来よりも面倒な手続きを付加することで、契約当事者に連帯保証人ではなく家賃保証会社を選ばせ、連帯保証人を不要とする方向に誘導する狙いがあります。

保証する金額の限度額を設ける必要がある

従来、賃貸借契約における連帯保証人が負う債務の額は無制限でしたが、民法改正により極度額を設けなければならないこととなりました。

極度額とは連帯保証人が負う責任の限度額のことです。

例えば、極度額を300万円と定めた場合、負担しなければならない債務額が400万円あったとしても300万円まで負担すれば良いことになります。

なお、極度額を定めない場合、保証契約そのものが効力を有しないこととなる点が注意点です。

連帯保証人に情報を提供する

改正民法では、連帯保証人の保護を手厚くすることも目的となっています。

連帯保証人の保護策の一つとして、貸主は連帯保証人から借主の債務の履行状況につき情報提供の請求があった際に応じなければならないことになりました。

連帯保証人から情報提供の依頼があった場合、情報開示は貸主の法律上の義務であることから、情報提供は借主の承諾は不要です。

例えば、借主が家賃を2カ月間不払いしているときに連帯保証人から情報提供の依頼があった場合、貸主は借主の承諾を経ずに連帯保証人へ状況を伝える必要があります。

なお、店舗や事務所等の事業用建物における賃貸借で連帯保証人を付ける場合、借主は連帯保証人に対して財産や収支の状況、債務額等の情報提供を行うことが必要です。

一方で、アパートや賃貸マンション等の居住用建物における賃貸借契約においては、財産や収支の状況、債務額等の情報提供は不要となります。

連帯保証人になれる人・なれない人

連帯保証人になれる人・なれない人

連帯保証人は誰でもなることができますが、なれる人には適正が求められることが実際のところです。
この章では、連帯保証人の適正という観点から「なれる人」と「なれない人」を紹介します。

連帯保証人になれる人

一般的に、以下のような人に適正があると考えられています。

  • 安定した収入のある親または兄弟
  • 安定した収入のある親類縁者

また、中小企業が借主となる店舗や事務所の賃貸では、社長が連帯保証人となることも多いです。

連帯保証人になれない人

連帯保証人は、以下のような人は適正がないと考えられています。

  • 血縁関係のない他人
  • 高齢で収入のない人
  • 認知症の人または認知症の発生の恐れのある人
  • 自己破産をしている人
  • 海外に在住している等の理由で連絡の取りにくい人

賃貸の保証人に代わる家賃保証会社とは

賃貸の保証人に代わる家賃保証会社

近年は連帯保証人を付ける代わりに、借主に家賃保証会社への加入を義務付ける物件が増えてきました。

この章では、家賃保証会社について解説します。

家賃保証会社とは

家賃保証会社とは、借主が家賃の不払いを発生させたときに、貸主に対して家賃を支払ってくれる会社のことです。

家賃を滞納させた借主は、後日に家賃保証会社から不払い賃料の請求を受けることになります。

家賃保証会社利用の流れ

基本的に物件の入居申込書を提出する時点で、家賃保証会社への加入手続きも行います。

家賃保証会社は、物件を仲介している不動産会社から紹介されることが一般的です。

家賃保証会社によっては、収入が証明できる書類の提出が求められることもあります。
家賃保証会社では独自の審査を行い、審査に通れば家賃保証会社に加入し、物件も借りることができるようになります。

家賃保証会社に加入する際は、家賃保証会社へ保証料を支払うことが必要です。

・「家賃保証会社」に関する記事はこちら
賃貸保証会社(家賃保証会社)とは?料金や役割、仕組みを解説

連帯保証人と家賃保証会社を併用するケースもある

物件によっては、連帯保証人と家賃保証会社への加入の両方を義務付けていることもあります。

理由としては、連帯保証人は家賃の滞納以外に包括的に債務を保証しており、連帯保証人と家賃保証会社では保証している範囲が異なるからです。

そのため、家賃保証会社だけでは不安な貸主は、連帯保証人も要求してくることがあります。

賃貸物件で保証人ではなく家賃保証会社を使うメリット・デメリット

賃貸物件で保証人ではなく家賃保証会社を使うメリット・デメリット

この章では、家賃保証会社を使うメリットとデメリットについて解説します。

貸主が家賃保証会社を使うメリット・デメリット

貸主が家賃保証会社を使うメリットとしては、連帯保証人を確保できない入居希望者とも契約できる機会が広がる点が挙げられます。

また、家賃の滞納が発生したときに、家賃が確実に保証される点もメリットです。

一方でデメリットとして、家賃保証会社は連帯保証人よりも保証範囲が狭い点が挙げられます。

例えば、借主が夜逃げや自殺等を行った場合、連帯保証人がいないと残った家具の処分を実施しにくいです。

借主が家賃保証会社を利用するメリット・デメリット

借主が家賃保証会社を使うメリットとしては、連帯保証人を付けなくて良いという点が挙げられます。

適切な連帯保証人がいない人でも、物件を探しやすくなります。

一方で、デメリットは家賃保証会社への保証料が発生するという点です。

連帯保証人であれば、借主が負担する費用は無料であるため、契約や更新を行う際の費用を抑えることができます。

・「賃貸の保証会社の審査」に関する記事はこちら
賃貸の保証会社の審査に落ちることはある?保証会社不要の場合は?

まとめ

以上、「賃貸の保証人」について解説してきました。
賃貸物件を借りる際に求められる保証人は、連帯保証人であることが一般的です。
連帯保証人とは、借主と同等の債務を負う人のことを指します。
近年は、民法改正をきっかけに連帯保証人を不要とする物件が増えてきました。
連帯保証人を不要とする物件では、家賃保証会社への加入が義務付けられていることが一般的です。
賃貸物件を借りる際に、参考にして頂ければと思います。

この記事のポイント

賃貸の保証人とは?

賃貸の保証人とは、借主の債務(契約上の義務のこと)を保証する人のことです。
借主には、例えば家賃を払わなければならない等の債務があります。借主が家賃を払わない等の債務を履行しなかったときに、借主に代わって債務を負担する人が保証人です。

詳しくは「賃貸の保証人とは?連帯保証人についても解説」をご覧ください。

賃貸の保証人に代わる家賃保証会社とは?

家賃保証会社とは、借主が家賃の不払いを発生させたときに、貸主に対して家賃を支払ってくれる会社のことです。家賃を滞納させた借主は、後日に家賃保証会社から不払い賃料の請求を受けることになります。

詳しくは「賃貸の保証人に代わる家賃保証会社とは」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

賃貸市場では、連帯保証人を必要とする物件は減り、家賃保証会社への加入を義務付ける物件が増えているのが大きな流れです。この流れは今後も続く見込みであり、家賃保証会社への加入を義務付ける物件が主流になると見込まれます。
気になる物件を借りる際に連帯保証人を付けることが義務付けられていて、しかし適切な連帯保証人がいない場合は、貸主に家賃保証会社の加入だけで借りることはできないか相談してみるのも一つです。賃貸市場は傾向としては借主が有利な借り手市場であることから、貸主も相談に応じてくれる可能性はあります。

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