ざっくり要約!
- 個人事業主は収入が安定していないとみなされやすく、会社員や公務員などに比べて返済能力を証明しにくいため、住宅ローンの審査に通過しにくいといわれている
- 個人事業主でも「3年間以上の黒字申告をする」「その他の借り入れを返済する」などの方法で対策すると住宅ローンを借り入れられる可能性はある
個人事業主は会社員に比べて、収入が不安定であるとみなされやすく、売り上げから必要経費を引いた所得で審査されることもあり、住宅ローンを利用しにくいといわれています。
一方で住宅ローンが絶対に借り入れられないわけではなく、対策を講じることで審査に通過することは可能です。
この記事では、個人事業主が住宅ローンの審査に通過しにくいといわれる理由や審査で見られるポイント、通りやすくするためのコツなどを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
個人事業主が住宅ローンに通らない・通りづらいとされる理由
個人事業主が会社員や公務員などと比較して住宅ローン審査に通りにくい主な理由は、以下の通りです。
- 収入が安定していないとみなされやすい
- 所得で返済能力が判断される
収入が安定していないとみなされやすい
住宅ローンは長い年月をかけて返すものであるため、金融機関は「安定して返済ができる能力があるのか」を審査します。
個人事業主は、仕事の受注状況や景気、取引先の都合、自身の体調などで収入が増減することがあるため、会社員や公務員に比べて収入が安定していないと判断されやすいのです。
所得で返済能力が判断される
会社員や公務員の場合、住宅ローンの審査時に税金や社会保険料が差し引かれる前の税込み年収で返済能力が審査されます。
一方、個人事業主の場合、返済能力の判断基準は売り上げから必要経費を差し引いた「所得」です。売り上げが高くても、必要経費を多く計上しており、所得が少ないと審査に不利になることもあります。
また、多くの金融機関は直近3期分の確定申告書を確認して返済能力を審査するため「開業から3年が経過していない」「直近3年以上に赤字の年がある」などの理由で否決される場合もあります。
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個人事業主が住宅ローン審査で見られるポイント
ここでは、金融機関は住宅ローンの審査時に個人事業主の返済能力を判断するために、主に以下4つの項目を確認します。
「売り上げ」ではなく「所得」
金融機関が個人事業主の返済能力を「売上高」ではなく、そこから経費を差し引いた「所得金額」で判断しています。具体的には、確定申告書第1表の「所得金額等」にある以下の項目の金額で審査します。
- 事業所得(営業等、農業)
- 不動産所得
- 利子所得
- 配当所得
たとえば、売り上げが1,000万円、必要経費が600万円の場合、所得は400万円として審査されます。
税金対策のために必要経費を多く計上し所得を低く申告していると、住宅ローンの審査では不利になることがあります。
自己資金比率
自己資金比率とは、物件の購入価格に対する自己資金(頭金)の割合のことです。
自己資金を多く準備できると、住宅ローンの借入額が減るため、金融機関が融資金を回収できなくなるリスクが下がることで審査に有利に働く可能性があります。
また、計画的に貯蓄ができる人物であることを金融機関に示すことにより、審査にプラスの影響を与える効果も期待できます。
信用情報
信用情報とは、クレジットカードやローンなどの申込状況や利用状況に関する情報のことです。個人の信用情報は、CICやJICCなど指定信用情報機関に登録されています。
金融機関は住宅ローンの審査時に、指定信用情報機関に照会をして申し込んだ人の信用情報を確認します。
クレジットカードの支払いやローンの返済などを長期にわたり滞納した履歴が指定信用情報機関に登録されていると、住宅ローンの審査に通過するのは困難です。
健康状態
多くの金融機関は「団体信用生命保険(以下、団信)」への加入を住宅ローンの融資条件としています。
団信は、住宅ローンを借り入れた人が亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたときに、ローン残債が保険金で賄われる生命保険です。
団信に加入するためには、直近3か月以内の健康状態や過去5年以内の病歴などを告知しなければなりません。
持病がある人や過去に大病を患ったことがある人などは、団信の審査に通らず、住宅ローンそのものが契約できなくなる場合があります。
| ・「団信」に関する記事はこちら 団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説 団体信用生命保険に入れない病気とは?該当ケースや対処法まで解説 |
個人事業主が住宅ローン審査に通るためのコツ

個人事業主は住宅ローンの審査に通過しにくいといわれていますが、以下のポイントを押さえて対策することで借り入れやすくなります。
- 所得を圧迫しすぎない
- 3年間以上の黒字申告
- 個人事業主でも通りやすい住宅ローンを申し込む
- その他の借り入れを返済しておく
- 数年前から滞納等に気をつけておく
- ペアローンで借りる
| ・住宅ローンの審査が通らないときの対策方法に関する記事はこちら 住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?通らない場合の対策も紹介 |
所得を圧迫しすぎない
個人事業主の場合、住宅ローンの審査では「所得」を基準に収入の安定性が判断されるため、申し込みが近い時期は過度な節税を控えることをおすすめします。
たとえば、社用車の購入や高額な設備投資などは、住宅ローンを借り入れた後に行うのも1つの方法です。
また、節税をするのであれば所得控除を活用する方法もあります。
所得控除は、税金を納める人の状況に応じて所得金額から一定金額を差し引く制度です。
たとえば、生命保険の保険料を支払っている場合は「生命保険料控除」や、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入する方は「小規模企業共済等掛金控除」を受けられる可能性があります。
住宅ローンの審査では、基本的に所得控除を差し引く前の所得金額で収入の安定性が判断されます。所得控除を活用することで、ローン審査に影響することなく税金対策が可能です。
3年間以上の黒字申告
多くの金融機関は、収入の安定性を示すために「3年連続の黒字申告」を審査に通過する条件としています。
3年連続黒字であり、かつ所得も右肩上がりであれば審査に通過しやすくなるでしょう。
一方、黒字が続いていたとしても、所得に波があると、収入の安定性が低いと判断され、審査が否決となる可能性があります。
マイホームの購入を検討しているなら、継続して安定した黒字経営ができるよう、事業に専念することをおすすめします。
個人事業主でも審査に通りやすい住宅ローンを申し込む
審査に比較的通りやすい住宅ローンや金融機関を選ぶのも良いでしょう。代表的なのが、住宅金融支援機構と金融機関が提供する全期間固定金利の「フラット35」です。
フラット35は、原則として直近1年分または2年分の所得で審査されるため、開業して間もない方や過去に赤字の年があった方でも利用しやすいといわれています。
個人事業主向けの住宅ローンを取り扱う金融機関を検討するのも1つの方法です。ただし、金融機関は審査基準を一般公開していないため、住宅ローン事情に詳しい不動産会社の担当者やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると良いでしょう。
事業用の口座を開設している地方銀行や信用金庫に相談する方法もあります。日ごろから取り引きがある金融機関であれば、経営状況を把握してくれているため、確定申告書からは読み取れない実情を考慮してより柔軟に審査をしてくれる場合があります。
| ・「フラット35」に関する記事はこちら フラット35とは?メリットから手続きの流れまでわかりやすく解説 ・「住宅ローン選び」に関する記事はこちら 住宅ローンを組む銀行の選び方は?金利やポイントを解説 |
その他の借り入れを返済しておく
自動車ローンやカードローン、教育ローンなど、住宅ローン以外の借り入れは、申し込み前にできる限り完済しておくことをおすすめします。
住宅ローンの審査では、返済負担率(返済比率)が金融機関の定める基準の範囲内に収まっているか確認されます。返済負担率は、所得に占める年間総返済額の割合です。
年間総返済額には、申し込んだ住宅ローンだけでなく、返済中の借り入れも含まれます。
他の借り入れを完済することで、年間総返済額が減り返済負担率が低下して審査に通過しやすくなります。
数年前から滞納等に気をつけておく
職業にかかわらず、支払いや返済を延滞して信用情報に傷がついていると、住宅ローンの審査に通過することが著しく困難となります。金融事故に関する情報は、基本的に5〜7年経過しないと削除されません。
住宅ローンを利用して家を購入するのであれば、少なくとも5〜7年前からクレジットカードの支払いやローンの返済などは期日までに適切に支払うようにしましょう。
支払いや滞納の履歴が信用情報機関に登録されておらず、信用情報が良好な状態であると、金融機関からの信頼が高まり、審査に通過しやすくなります。
ペアローンで借りる
配偶者が会社員や公務員などであり安定した収入がある場合は「ペアローン」を利用するのも1つの方法です。ペアローンは、1つの物件に対して夫婦や親子などがそれぞれ主たる債務者として、個別に住宅ローンを契約する方法です。
たとえば、マイホームを購入するために計6,000万円の借り入れが必要な場合、借入金額が夫3,000万円、妻3,000万円のような2本のローンを組みます。
ペアローンを利用することで、家の取得に必要な金額を借り入れながら、夫婦のどちらかが単独で組むよりも、各人の返済負担率が抑えられ、審査に通過しやすくなります。
| ・「ペアローン」に関する記事はこちら ペアローンはデメリットが多い?後悔しないために知っておきたいこと 住宅ローンの収入合算とは?ペアローンの違いは?メリット・デメリットも紹介 |
個人事業主の住宅ローン審査で必要になる書類
個人事業主が住宅ローンの審査を受ける際に必要となる書類は、以下のとおりです。
| 主な必要書類 | |
|---|---|
| 収入を証明する書類(直近2年分または3年分) | ・確定申告書の控え(青色申告決算書・収支内訳書を含む) ・納税証明書(その1・その2) |
| 本人確認書類 | ・運転免許証 ・住民票または住民票記載事項証明書 ・マイナンバーカード ・健康保険証 ・住民票 など |
| 物件に関する書類 | ・売買契約書 ・重要事項説明書 ・物件のパンフレット・チラシ ・工事請負契約書 など |
必要書類は金融機関によって異なるため、事前に確認のうえ、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
まとめ
個人事業主は住宅ローンを利用しにくいといわれていますが、3年以上の黒字申告をしており、過度に経費を計上していなければ審査に通過できる可能性はあります。
また、その他の借り入れを返済し、フラット35をはじめとした個人事業主でも利用しやすいローンを選ぶなどの方法で対策すると借り入れがしやすくなります。
住宅ローンを利用する場合は、個人事業主が審査で確認されるポイントをよく理解し、自身の状況に応じた対策方法を検討したうえで申し込みをすると良いでしょう。
| ・「住宅ローンシミュレーション」に関する記事はこちら 住宅ローンの月々の返済額はどのくらい?【シミュレーション付】 |
この記事のポイント
- 個人事業主はなぜ住宅ローンが通りづらいのでしょうか?
個人事業主が会社員や公務員などと比較して住宅ローン審査に通りにくい主な理由は、「収入が安定していないとみなされやすい」「所得で返済能力が判断される」などがあります。
詳しくは「個人事業主が住宅ローンに通らない・通りづらいとされる理由」をご覧ください。
- 個人事業主は住宅ローン審査でどのようなところを見られますか?
住宅ローン審査では、所得や自己資金比率、信用情報などが見られます。
詳しくは「個人事業主が住宅ローン審査で見られるポイント」をご覧ください。
- 個人事業主がローン審査に通るためには?
多くの金融機関は、収入の安定性を示すために「3年連続の黒字申告」を審査に通過する条件としています。その他、個人事業主であることが不利になりにくいローン商品を選ぶことなどが挙げられます。
詳しくは「個人事業主が住宅ローン審査に通るためのコツ」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
個人事業主が住宅ローンを借り入れる場合、売り上げが減り所得が少なくなっても返済が続けられるかどうかをよく検討することが大切です。
毎月の収入と支出を把握し、住宅ローンの返済に充てられる金額を算出して、余裕を持った返済計画を立てましょう。

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