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ローン中の家を売る場合の税金はいくら? 控除特例と併せて解説

執筆者プロフィール

品木 彰
品木彰
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大手生命保険会社に7年半勤め、個人営業と法人営業の両方を経験。人材サービス会社の転職エージェントとしての勤務経験もあり。 2019年1月からはフリーランスのWebライターとして独立。「お金に関する正しい知識を、より多くの人々に届けたい」という思いを原動力に、保険や不動産、資産運用、相続など幅広いジャンルの記事を執筆している。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 住宅ローンの返済中に家を売ると、登録免許税、印紙税、消費税、譲渡所得税といった税金がかかる可能性がある
  • 売却により譲渡損失が生じたときは、特例を適用することでローン残高と売却価格の差額を給与など他の所得から相殺できる

住宅ローンの返済中に家を売却する場合でも、登録免許税や印紙税、譲渡所得税などが発生する可能性はあります。

一方、所定の要件を満たしていると、控除特例により家を売却したときの税負担を軽減することが可能です。

この記事では、住宅ローンの返済中に家を売る場合の税金について、種類や税額の決まり方、税負担を軽減する特例などについて解説します。

ローン中の家を売る場合にかかる税金とは

住宅ローンを返済中の家を売却する場合に課税される税金は、以下の通りです。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 消費税
  • 譲渡所得税

登録免許税

登録免許税は、法務局で登記手続きをする際に納める税金です。家の売主は、主に抵当権を抹消する登記(抵当権抹消登記)に課税される登録免許税を納めます。

抵当権は、ローンの返済が滞ったとき、金融機関が担保となっている不動産を差し押さえ、強制的に売却して得られた代金を優先して融資金の弁済に充てられる権利です。

ローンを返済中の家を売却するためには、この抵当権を抹消することが条件となります。

抵当権抹消登記の登録免許税の額は、不動産1個につき1,000円です。

一般的に抵当権は、土地と建物それぞれに設定されます。そのため、家の売却時には最低でも2,000円の登録免許税がかかり、土地が2筆以上に分かれる場合は、1筆ごとに1,000円ずつ税額が増えていきます。

また、抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合、登録免許税とは別に1万〜2万円程度の報酬を支払う必要があります。

印紙税

印紙税は、課税文書を作成する際に課せられる税金です。不動産の売買契約書は課税文書にあたるため、税額分の収入印紙を貼って印紙税を納める必要があります。

印紙税の税額は、不動産の売買契約書に記載される金額に応じて決まります。

契約書に記載される金額本則税率軽減税率
10万円を超え50万円以下のもの400円200円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円500円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

※出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

たとえば、売買契約書に記載される家の売却代金が2,000万円の場合、本来の印紙税額は2万円ですが、軽減税率が適用されることで1万円に減額されます。

消費税

消費税は、商品の販売やサービスの提供などの取引に対して課税される税金です。

買主探しを依頼した不動産会社に支払う仲介手数料や、登記手続きを代行してもらった司法書士に支払う報酬には10%の消費税がかかります。

家の売却代金については、売主が個人であれば基本的に消費税は課税されません。

売主が事業者であり、事業に使用していた不動産を売却する場合には、建物の売却代金に消費税が課税されますが、土地部分は非課税となります。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金のことです。内訳は、所得税、復興特別所得税(2037年12月31日まで)、住民税です。

課税の対象となる譲渡所得(課税譲渡所得金額)と譲渡所得税の計算式は、以下の通りです。

  • 課税譲渡所得金額=総収入金額−(取得費+譲渡費用)-特別控除
  • 譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率

上記の「総収入金額−(取得費+譲渡費用)」が計算結果がプラスである場合、譲渡所得が生じているため、売却の翌年に確定申告が必要です。

総収入金額や取得費、譲渡費用、特別控除に該当する項目は、以下の通りです。

内訳
総収入金額・土地や建物の売却代金
・固定資産税・都市計画税の精算金
取得費・土地や建物の購入代金・建物の建築代金
・購入時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税、測量費、土地の造成費用など)
譲渡費用・売却時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬、立ち退き料、建物の取り壊し費用など)
特別控除・マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例(3,000万円特別控除)
・被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(相続空き家の3,000万円特別控除)
・公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例 など

取得費を求める際、建物部分の購入代金や建築代金から減価償却費を差し引きます。 減価償却費は、簡単にいえば経年劣化によって減少した価値分です。

譲渡所得税の税率は、不動産を売却した年の1月1日時点における所有期間で異なります。

所有期間税率
5年以下(短期譲渡所得)39.63%(所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%)
5年超(長期譲渡所得)20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)
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家の売却で利用できる控除特例

マイホーム(居住用財産)を売却したときは、控除特例を適用することで税負担を軽減したり課税を先送りにしたりできます。

控除特例を受けるためには、制度ごとに定められる要件を満たしたうえで原則として確定申告が必要です。

ここでは、ローン中の家を売却するときに適用できる主な控除特例を解説します。

3,000万円特別控除

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例「以下、3,000万円特別控除」は、マイホームを売却したときの譲渡所得から最大で3,000万円を控除できる特例です。

この特例を適用すると、譲渡所得が3,000万円以下であれば譲渡所得税はかかりません。

控除を受けるためには「日本国内にある自分が住んでいる家(居住用財産)を売る」「売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない」などの要件を満たす必要があります。

軽減税率の特例

軽減税率の特例は、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合に、譲渡所得税の税率が引き下げられる特例です。

この特例を適用すると、課税譲渡所得金額6,000万円以下の部分の税率が14.21%(所得税・復興特別所得税10.21%+住民税4%)に軽減されます。

3,000万円特別控除との併用もできるため、両制度を適用できれば家を売却したときの譲渡所得税の負担を大幅に軽減することが可能です。ただし、住宅ローン控除について住まいの買換えの場合、新居に住み始めた年と、その前後2年間に軽減税率の特例を使用している場合は、適用除外になります。
また、特定の居住用財産の買換え特例についても併用ができませんので、利用する制度を事前に検討する必要があります。

買い換え特例

特定の居住用財産の買換えの特例(以下、買い換え特例)は、住んでいる家を売却し、新たにマイホームを購入した人が利用できる制度です。

この特例では、一定の要件を満たすと、譲渡所得に対する課税を新しく取得したマイホームを売却するときにまで繰り延べることができます。

譲渡所得税が非課税になるわけではありませんが、課税を先送りにできるため、売却時の税負担が軽減され、より多くの売却代金を新居の購入資金に充てることが可能です。

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ローン中の家なら譲渡損失を損益通算できる可能性がある

ローン中 譲渡損失

家を売却したときに、損失(譲渡損失)が生じた場合、譲渡所得税はかからず、確定申告も不要です。

一方、ローンを返済中の家を売却して譲渡損失が生じたときは、確定申告をして特例を適用することで他の所得と相殺して税負担を軽減できる場合があります。

譲渡損失とは

譲渡損失とは、不動産の売却時に生じた損失のことです。家の売却価格が取得費と譲渡費用を下回る場合に生じます。

たとえば、家の売却価格が2,000万円、取得費が2,500万円、譲渡費用が100万円の場合「2,000万円−(2,500万円+100万円)=−600万円」となり、600万円の譲渡損失が発生する計算です。

損益通算とは

損益通算とは、不動産の売却によって生じた損失を、その年の給与所得や事業所得など他の所得と相殺することです。

損益通算をすると、家を売却した年の課税対象となる所得が減り、所得税や翌年の住民税の負担が軽減されます。

たとえば、家を売却して新居を購入する場合は「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用することで、売却時に生じた譲渡損失を他の所得と相殺できます。

この特例では、損益通算したあとに引ききれない損失があったときは「繰越控除」により最大3年間にわたって繰り越し、翌年以降の所得から控除することも可能です。

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、住宅ローンが残っている家を、ローンの残高を下回る価格で売却したときに適用できる特例です。

この特例を適用できると、以下の計算式で求められる譲渡損失を給与所得などと損益通算できます。

  • マイホームの売買契約日の前日における住宅ローン残高−売却価格

たとえば、マイホームの売買契約日の前日における住宅ローン残高が3,000万円、マイホームの売却価額が2,500万円の場合、最大で500万円を損益通算できます。

この特例を適用するためには「譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えている」「返済期間10年以上の住宅ローンの残高がある」などの要件を満たしたうえで、確定申告をする必要があります。

所定の要件を満たしていれば、買い換えをしなくても利用することが可能です。また、控除しきれなかった部分は、最大3年間にわたり繰り越して控除できます。

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ローン中の家を売るときの税金における注意点

最後に、ローンを返済中の家を売却するときの主な注意点を解説します。

控除特例は住宅ローン控除と原則として併用できない

家を売却したあとに新しく家を取得する場合、その年を含む過去3年間に以下の控除特例を適用していると、住宅ローン控除を受けることができません。

  • 3,000万円の特別控除
  • 軽減税率の特例
  • 買い換え特例
  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

たとえば、2026年に家を取得する場合、2024〜2026年の間に上記のいずれかの控除特例を適用していると、住宅ローン控除は利用できません。

家を買い替えるときは、住宅ローン控除と家を売却したときの控除特例のどちらを受けたほうが有利になるか慎重に検討しましょう。

一方で「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、新居の住宅ローン控除と併用することが可能です。

不動産取得時の金額がわかる書類がないと税負担が重くなることも

譲渡所得を計算するためには、原則として売却する家を取得したときの売買契約書や領収書など、購入金額・建築金額、諸費用がわかる書類が必要です。

取得金額がわかる書類を紛失している場合「売却価格の5%」を概算取得費として譲渡所得を計算しても良いとされています。

しかし、概算取得費は実際の取得費よりも低く算出されることが少なくありません。そのため、概算取得費を用いると譲渡所得が高くなり、税負担が重くなる可能性があります。

家を売却するときは、取得費がわかる書類を探し、実際の取得費を把握したうえで譲渡所得や税額を計算することが大切です。

まとめ

家を売却する際にかかる可能性がある税金は、登録免許税、印紙税、消費税、譲渡所得税の主に4種類です。

このうち、譲渡所得税については確定申告で3,000万円特別控除や軽減税率の特例などを適用して負担を軽減できます。

また、ローン中の家を売却して譲渡損失が出た場合は、特例によりローン残高と売却価格の差額を給与所得などと損益通算して、所得税や住民税の負担を軽減することも可能です。

この記事のポイント

ローン支払い中の家を売却するときに税金はかかりますか?

住宅ローンを返済中の家を売却する場合に課税される税金は、「登録免許税」「印紙税」「消費税」「譲渡所得税」があります。

詳しくは「ローン中の家を売る場合にかかる税金とは」をご覧ください。

家を売却する際に使える控除はありませんか?

マイホーム(居住用財産)を売却したときは、控除特例を適用することで税負担を軽減したり課税を先送りにしたりできます。

詳しくは「家の売却で利用できる控除特例」をご覧ください。

ローン中の家を売る際に注意点はありますか?

場合によっては控除が併用できないなど、注意点があります。

ローンを返済中の家を売却するときの主な注意点を「ローン中の家を売るときの税金における注意点」にて解説します。

ライターからのワンポイントアドバイス

品木 彰

住宅ローンが残る家を売却する際の税負担を軽減するためには、控除特例の要件を理解して適切に確定申告を行うことが重要です。
とはいえ、控除特例の種類や要件、確定申告の方法などを正しく理解するためには、税務の専門知識が求められます。家を売却するときは、最寄りの税務署や税理士、税務知識に明るい不動産会社の担当者とよく相談をするようにしましょう。

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