ざっくり要約!
- 所有期間5年以内にマンションを売却すると、譲渡所得税の税率が高くなり税負担が重くなる可能性がある
- 譲渡所得が発生しないときや、3,000万円の特別控除を適用して課税譲渡所得金額が0円になる場合、所有期間5年以内に売却しても譲渡所得税は生じない
マンションの購入から5年以内に売却すると、売却益に課税される譲渡所得税の負担が重くなるといわれています。
これは、売却する不動産の所有期間が5年以内の場合、5年を超える場合に比べて譲渡所得税の税率が高く設定されているためです。
この記事では、マンションを売却するときの譲渡所得税の税率や計算方法、利用できる控除特例などを解説します。
記事サマリー
所有期間5年以内のマンションの税金が高くなる理由
所有期間5年以内のマンションを売却すると税金が高くなる理由は、売却益(譲渡所得)に課せられる税率が約19%高くなるためです。
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)は、所得税や住民税の課税対象です。2037年(令和19年)までは復興特別所得税も課税されます。これらの税金は、まとめて「譲渡所得税」と呼ばれるのが一般的です。
譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日における所有期間によって変わります。所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、5年超なら「長期譲渡所得」として、それぞれ以下の税率を用いて税額を計算します。
- 所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%
所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%
※上記の税率には復興特別所得税が含まれます
所有期間が5年以内のタイミングでマンションを売却するほうが税率は高くなるため、譲渡所得税の負担が重くなることがあります。
マンションを売却したときの譲渡所得税の計算方法
次にマンションを売却したときの譲渡所得や税額の計算方法を詳しくみていきましょう。
譲渡所得の計算式
課税の対象となる譲渡所得(課税譲渡所得金額)は、以下の計算式で算出します。
- 課税譲渡所得金額=売却価格−(取得費+譲渡費用)-特別控除
それぞれの項目に該当するものは以下の通りです。
| 内訳 | |
| 総収入金額 | ・マンションの売却金額 ・固定資産税・都市計画税の精算金 |
| 取得費 | ・マンションの購入金額 ・購入時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税など) |
| 譲渡費用 | ・売却時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬など) |
| 特別控除 | ・マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例(3,000万円特別控除) ・公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例 など |
取得費を計算するときは、建物部分の購入金額から「減価償却費」を差し引きます。
減価償却費は、経年劣化によって減少した価値分に相当する金額であり、以下の計算式で求められます。
- 減価償却費=購入代金×0.9×償却率×経過年数
※経過年数の1年未満の部分は、6か月以上は1年、6か月未満は切り捨て
償却率は、建物の構造ごとに定められる耐用年数に応じて決まります。
マンションのほとんどは、鉄骨造または鉄骨鉄筋コンクリート造です。居住用に使われていたマンションの場合、耐用年数は70年、それをもとに決まる償却率は0.015となります。
| ・「減価償却」に関する記事はこちら 不動産の減価償却とは?耐用年数や定額法での計算方法をわかりやすく紹介 |
譲渡所得税の計算方法と税率
譲渡所得税を求める計算式は以下の通りです。
- 譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率
先述の通り、税率はマンションを売却する年の1月1日時点の所有期間に応じて決まります。
| 所有期間 | 税率 |
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63%(住民税9%・所得税30%・復興特別所得税0.63%) |
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315%(住民税5%・所得税15%・復興特別所得税0.315%) |
マンションに実際に住んでいた期間ではなく、売却した年の1月1日時点での所有期間に応じて税率が決まる点に注意が必要です。
短期譲渡所得と長期譲渡所得のどちらに該当するかは、マンションを購入したあとに迎えたお正月の数で考えると良いでしょう。
たとえば、マンションを購入したあとにお正月を7回迎えた場合は、譲渡所得税を計算する際の所有期間は7年であるため税率は20.315%となります。
| ・「短期譲渡所得・長期譲渡所得」に関する記事はこちら 短期譲渡所得・長期譲渡所得の基礎知識!不動産売却で気をつけるべき点も |
所有期間5年以内のマンションの売却で利用できる控除特例
所有期間5年以内のマンションを売却するときは、所定の要件を満たすと「居住用財産の3,000万円特別控除の特例(以下、3,000万円の特別控除)」を適用できます。
3,000万円の特別控除は、マイホームとして使用していた居住用財産を売却する際、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。3,000万円特別控除を受けるためには、以下のような要件を満たしたうえで確定申告をする必要があります。
- 自身が住んでいる(または住んでいた)居住用不動産を売却する
- 住まなくなってから3年後の12月31日までに売却する など
| ・「3,000万円特別控除」に関する記事はこちら マンション売却で活用可能! 3,000万円特別控除とは? |
確定申告の期限は、原則的にマンションを売却した翌年の2月16日から3月15日です。3,000万円の特別控除などを適用した結果、譲渡所得や税額が0円となる場合でも、確定申告は必須です。
| ・「確定申告」に関する記事はこちら 不動産売却後の確定申告は自分でできる? 計算方法・流れ・必要書類などを解説 |

【シミュレーション】所有期間の違いでどれだけ税額に差が生じる?

マンションの所有期間が5年以内の場合と5年を超える場合で、税負担はいくら変わるのでしょうか。シミュレーションで確認してみましょう。
試算条件は、以下の通りです。
- マンションの購入価格:5,000万円(建物3,500万円、土地1,500万円)
- 購入時の諸費用:200万円
- マンションの売却価格:5,500万円
- 売却時の諸費用:180万円
- 固定資産税精算金:10万円
売却予定のマンションは鉄骨鉄筋コンクリート造であり、償却率は0.015であるとして計算します。また、3,000万円の特別控除の要件は満たしていないとします。
所有期間5年以内で売却した場合の税額
所有期間が5年以内のマンションを売却する場合、売却益は短期譲渡所得、税率は39.63%となるため、譲渡所得税の計算結果は以下の通りです。
- 減価償却費=建物取得価額×0.9×償却率×経過年数
- =3,500万円×0.9×0.015×5年
- =236万2,500円
- 取得費=(建物の購入金額−減価償却費)+土地の購入金額+購入時の諸費用
- =(3,500万円-236万2,500円)+1,500万円+200万円
- =4,963万7,500円
- 課税譲渡所得金額=総収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除
- =(5,500万円+10万円)-(4,963万7,500円+180万円)-0円
- =366万2,500円
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
- =366万2,500円×39.63% =約145.1万円
所有期間5年でマンションを売却すると、およそ145万円の譲渡所得税がかかる結果となりました。
所有期間7年で売却した場合の税額
マンションの所有期間が7年である場合、売却益は長期譲渡所得となり税率は20.315%に下がるため、税額は以下の通りとなります。
- 減価償却費=建物取得価額×0.9×償却率×経過年数
- =3,500万円×0.9×0.015×7年
- =330万7,500円
- 取得費=(建物の購入金額−減価償却費)+土地の購入金額+購入時の諸費用
- =(3,500万円-330万7,500円)+1,500万円+200万円
- =4,869万2,500円
- 課税譲渡所得金額=総収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除
- =(5,500万円+10万円)-(4,869万2,500円+180万円)
- =460万7,500円
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
- =460万7,500円×20.315% =約93.6万円
所有期間が7年になると、譲渡所得税はおよそ93.6万円となりました。売却のタイミングが2年違うだけで、税額に約51.5万円もの差が生じる計算です。
【注意】所有期間が5年を超えても税額が変わらないこともある
マンションの所有期間が5年以内であっても、売却時に譲渡所得が発生しない場合や特例の適用により税額が0円となる場合は、5年を超えるまで売却を待つ必要はありません。
ここでは、マンションの所有期間が5年を超えても譲渡所得税が変わらないケースを解説します。
そもそも譲渡所得が発生しない
取得費と譲渡費用の合計金額が売却価格よりも高く、譲渡所得が生じない場合、譲渡所得税を納める必要はありません。
買ったときよりも高値で売却することが難しく、売却益が見込めないのであれば、所有期間が5年以内であっても譲渡所得税の負担が重くなる心配はないでしょう。
譲渡所得が3,000万円以下かつ3,000万円特別控除が適用になる
マンションを売却したときの譲渡所得が3,000万円以下であり、かつ3,000万円の特別控除を適用できる場合、譲渡所得税は発生しません。
3,000万円の特別控除は、マイホームの所有期間に関係なく適用できる特例です。売却時の所有期間が5年以内であっても、要件を満たしていれば最高3,000万円の控除が受けられます。
売却益が3,000万円を下回る見込みであり、特別控除も受けられるのであれば、所有期間が5年を超え、税率が下がるのを待ってから売却する必要はないといえます。

取得から5年以内のマンション売却を成功させるコツ
マンションを購入して5年以内に売却する場合、譲渡所得税の税率が高くなることを踏まえて売却を検討しましょう。まずは、譲渡所得が出るかどうかを正確に把握することが大切です。購入時に近い金額で売却できるとしても、購入時の諸費用や減価償却費、売却時の仲介手数料などを算入すれば、実際には譲渡所得がでないことも少なくありません。
また、自宅として使っていた場合は、3,000万円の特別控除の適用も検討できます。控除特例を適用することで、所有期間が5年以内でも税額がゼロになる可能性があります。
さらに、税率の高さだけでなく、市場動向や築年数による価格変動にも目を向けましょう。たとえば、マンション価格が下落局面に入る兆しがある場合は、5年を待たずに売却するほうが手取り額が多くなるケースもあります。
税金・価格の両面から総合的に判断するには、不動産会社や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
・「マンション売却のコツ」に関する記事はこちら
マンションの売却価格と築年数の相関は? 築年帯ごとの売却のコツを伝授
マンション売却のコツ|売れない場合の理由と対処法
まとめ
マンションを売却するときの所有期間が5年を超えていると、譲渡所得税の税率は計20.315%ですが、5年以内の場合は計39.63%と高くなります。売却益が同じ水準でも、所有期間が5年を超えるかどうかで税額が数十万円変わる可能性があります。
一方、譲渡所得が生じないときや3,000万円の特別控除により譲渡所得税が0円になるのであれば、5年以内に売却しても税負担が重くなることはありません。
マンションの売り時を判断する際は、不動産会社や最寄りの税務署などにも相談し、売却益にかかる税金の仕組みをよく理解することが大切です。
この記事のポイント
- 所有して5年以内のマンションを売却すると税金が高くなるのですか?
所有期間5年以内のマンションを売却すると税金が高くなる理由は、売却益(譲渡所得)に課せられる税率が約19%高くなるためです。
詳しくは「所有期間5年以内のマンションの税金が高くなる理由」をご覧ください。
- マンションを売却した時の譲渡所得税の計算はどうなりますか?
マンションを売却したときの譲渡所得や税額の計算方法を「マンションを売却したときの譲渡所得税の計算方法」にて詳しく解説しています。
- 所有期間の違いで税額にどれくらいの差が出るのでしょうか?
マンションの所有期間が5年以内の場合と5年を超える場合で、税負担はいくら変わるのでしょうか。
「【シミュレーション】所有期間の違いでどれだけ税額に差が生じる?」にてシミュレーションしています。
ライターからのワンポイントアドバイス
不動産の所有期間が5年を超えてから売却したほうが必ずしも有利になるとは限りません。たとえば、経年劣化による資産価値の低下や不動産市況の悪化などで売却価格が安くなったことで、税金などの支払い後に残る金額が少なくなるケースもあります。
マンションを売却するタイミングは、税金だけではなく不動産市況やエリアの人口推移、築年数などさまざまな要素をもとに考慮することが大切です。判断に迷うときは、マンションの売却が得意な不動産会社に相談することをおすすめします。

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