ざっくり要約!
- マンションの買い替え手順には、旧居の売却を先に行う「売り先行型」、新居の購入を先に行う「買い先行型」、売却と購入を同時に進める「同時進行型」の3つがあります。
- 売り先行型は資金計画が立てやすく、買い先行型は希望の物件をじっくり探せるのがメリットで、自身の状況に合わせて手順を選ぶことが重要です。
- 買い替えのタイミングは、ライフステージの変化やマンションの老朽化、資産価値の上昇、住宅ローン控除期間の終了時などが挙げられます。
マンションの買い替えは、住環境をより良くするための選択肢ですが、手順や資金計画について不安を感じる方もいるでしょう。買い替えには「売り先行」「買い先行」などの手順があり、それぞれにメリットと注意点が存在します。
この記事では、マンションの買い替えに適したタイミングをはじめ、3つの買い替え手順の特徴、スムーズに進めるための融資制度や諸費用について詳しく解説します。ご自身の状況に合った最適な買い替えプランを立てるために、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
マンションを買い替えるタイミング
マンションの買い替えは大きな決断であり、タイミングを見極めることが重要です。ここでは、買い替えのきっかけとなる主なタイミングを4つ紹介します。
- ライフステージの変化
- マンションの老朽化
- 資産価値の上昇
- 住宅ローン控除期間の終了
ライフステージの変化
結婚や出産、子どもの独立といったライフステージの変化は、マンションの買い替えを検討するきっかけとなります。家族が増えればより広い住まいが必要になり、反対に子どもが独立すれば、夫婦二人での生活に適したコンパクトな住まいに移るという選択肢も出てくるでしょう。
また、転勤や転職による通勤場所の変更や、親の介護のために実家の近くへ移り住むといった理由も考えられます。家族構成や働き方の変化に合わせて住環境を見直すことは、自然な流れといえます。
マンションの老朽化
マンションの築年数が経過し、老朽化が進んだときも買い替えを考えるタイミングのひとつです。一般的にマンションは12〜15年周期で大規模修繕工事が行われ、これに伴い修繕積立金が値上がりする場合があります。
また、築年数が古くなると、キッチンや浴室といった設備の旧式化や故障が目立ち始めることもあります。資産価値が大きく下落する前に売却し、新しい設備が整ったマンションへ買い替えることで、快適な生活と将来的な資産形成につながります。
| ・「老朽化」に関する記事はこちら 老朽化したマンションはどうなる?建て替え・立ち退きなど行く末を解説 |
資産価値の上昇
所有しているマンションの資産価値が購入時よりも上昇した場合も、買い替えに適したタイミングといえるでしょう。周辺エリアの再開発などでマンションの価格は上昇することがあります。
その時期に売却すれば、売却益(譲渡所得)が期待できます。売却によって得た利益を新居の購入資金に充てることで、より条件の良い物件への買い替えや、住宅ローンの負担軽減が可能になります。
| ・「資産価値の高いマンション」に関する記事はこちら 資産価値の高いマンションの条件とは?戸建てとの比較も紹介 |
住宅ローン控除期間の終了
住宅ローン控除の適用期間が終了することも、買い替えを検討するきっかけになります。住宅ローン控除は、年末時点のローン残高に応じて一定額が所得税などから控除される制度で、通常10年または13年間適用されます(2024・2025年入居の場合)。
控除期間が終わると税金の負担が増えるため、そのタイミングで売却し、新たな物件を購入して再び控除を受けるという考え方もあります。ただし、買い替えには諸費用がかかるため、全体の資金計画を考慮した上での判断が必要です。
| ・「住宅ローン控除終わった後」に関する記事はこちら 住宅ローン控除が終わるとどうなる? 増税額と終了後に検討すべきことを解説 |

マンション買い替えの3つの手順
マンションの買い替えは、現在の住まいの「売却」と新居の「購入」のどちらから進めるかによって、次の3つの手順に分けられます。
- 売り先行型
- 買い先行型
- 同時先行型
それぞれにメリットとデメリットがあるため、ご自身の資金状況やライフプランに合わせて選びましょう。3つの手順について、それぞれの特徴を解説します。
売り先行型
| メリット | ・売却で得た資金を新居の購入費用に充てられるため、資金計画が立てやすい。 ・売却を焦る必要がなく、希望の価格で売れる可能性が高まる。 ・住宅ローンが残っていても、売却代金で完済できる見込みが立てやすい。 |
| デメリット | ・新居が見つかるまで、仮住まいが必要になる場合がある。 ・仮住まいの家賃や、2回分の引越し費用など、追加のコストがかかる可能性がある。 ・希望の条件に合う新居がすぐに見つからない場合、慌てて決めてしまうリスクがある。 |
「売り先行型」とは、現在住んでいるマンションの売却が完了してから、新居を購入する方法です。
売り先行型のメリットは、売却価格が確定してから新居を探すため、資金計画を正確に立てられる点です。売却で得た資金を新居の頭金に充てたり、残っている住宅ローンを返済したりできます。自己資金に不安がある方や、着実に買い替えを進めたい方に向いているといえるでしょう。
一方で、売却後に新居の購入・引き渡しまで期間が空いてしまうと、一時的に賃貸物件などで生活する「仮住まい」が必要になる可能性があります。その場合、仮住まいのための家賃や敷金・礼金、さらに2回分の引越し費用といったコストが発生する点がデメリットです。
| ・「仮住まい」に関する記事はこちら 仮住まいとは? 建て替え・住み替え・リフォーム中の住まいはどうする? |
買い先行型
| メリット | ・気に入った物件が見つかるまで、時間をかけてじっくり探すことができる。 ・新居へ引越してから売却活動を行うため、空き家の状態で内覧対応がしやすく、売却がスムーズに進む可能性がある。 ・仮住まいが不要なため、引越しは1回で済む。 |
| デメリット | ・旧居が売れるまで、新旧2つの住宅ローンを支払う「二重ローン」状態になるリスクがある。 ・売却価格が未定のまま購入を進めるため、資金計画が立てにくい。 ・旧居の管理費や固定資産税なども二重で負担する必要がある。 |
「買い先行型」は、新居を購入してから、現在住んでいるマンションを売却する方法です。
買い先行型は、仮住まいの費用や手間を気にする必要がないため、条件に合う物件が見つかるまで時間をかけて新居を探せることです。住みたいエリアや希望の条件が明確な方にとっては、理想の住まいを見つけやすい方法です。新居へ移り住んでから売却活動を行えるため、居住中の内覧対応といった手間が省ける点も利点です。
ただし、新居の購入後に旧居の売却が進まないと、新旧両方の住宅ローンを支払う「二重ローン」の状態になる可能性があります。また、売却できるまで管理費や固定資産税の支払いも続くため、資金的に余裕がある方に適した方法です。旧居の住宅ローンが残っている場合は、金融機関の審査が難しくなることも考えられます。
| ・「ダブルローン」に関する記事はこちら ダブルローンとは?デメリットはある?住み替え時の注意点を解説 |
同時先行型
| メリット | ・仮住まいが不要で、引越しを1回で済ませられる。 ・二重ローンのリスクを回避できる。 ・売却と購入の費用や手間を抑えられる。 |
| デメリット | ・売却の買主と、購入先の売主双方とのスケジュール調整が非常に難しい。 ・タイミングが合わないと、希望の価格での売却や、理想の物件の購入を諦めなければならない可能性がある。 ・不動産会社の高度な調整能力が不可欠。 |
「同時進行型」は、旧居の売却活動と新居の物件探しを並行して進め、売却と購入の決済日を同日に合わせる方法です。
同時進行型は、売り先行と買い先行のデメリットを解消できる理想的な手順といえます。仮住まいの費用や二重ローンの心配がなく、スムーズに新生活をスタートできるのが利点です。
しかし、売却の買主を見つけるタイミングと、理想の新居が見つかるタイミングを合わせることは簡単ではありません。どちらかの契約が遅れると、もう一方の契約に影響が出てしまうリスクがあります。この手順を成功させるには、売却と購入の両方で高い調整能力を持つ不動産会社のサポートが必要です。

マンションの買い替えをスムーズにする融資や制度

マンションの買い替えでは、売却と購入のタイミングがずれることで、資金繰りに課題が生じる場合があります。ここでは、そうしたリスクに備えて用意されている融資や制度を3つ紹介します。
- 住み替えローン
- つなぎ融資
- 買い替え保証
住み替えローン
住み替えローンとは、新居の購入費用と、旧居の住宅ローン残債をまとめて借り入れできる金融商品です。旧居の売却価格がローン残債を下回る状態でも、売却損を新しいローンに上乗せして融資を受けられます。
住み替えローンのメリットは、自己資金でローン残債を完済する必要がなく、資金的な負担を軽減できる点です。買い先行型で進めたいものの、自己資金に不安がある方にとって有効な選択肢となります。
ただし、通常の住宅ローンに比べて金利が高めに設定される傾向があります。また、借入額が大きくなるため、審査も厳しくなることが一般的です。
| ・「住み替えローン」に関する記事はこちら 住み替えローンの審査は厳しい?通らなかったときの対処法も紹介 |
つなぎ融資(立替払制度)
つなぎ融資は、旧居の売却代金が入るまでの間、一時的に新居の購入資金を借り入れできる短期的なローンです。旧居を売却すれば住宅ローンを完済できる見込みはあるものの、売却よりも先に新居の購入代金の支払いが必要になる場合に活用されます。
つなぎ融資により、売却代金を待たずに新居の購入手続きを進めることができ、買い先行型でも二重ローンのリスクを軽減できます。理想の物件を逃さずに済むでしょう。
注意点として、つなぎ融資の借入期間は数カ月から1年程度と短く、融資手数料などの諸費用も別途必要です。
| ・東急リバブルの「立替払制度(資金のつなぎ制度)」 |
売却保証
売却保証は、不動産会社が提供するサービスのひとつです。まず一定期間、仲介として旧居の売却活動を行い、その期間内に買主が見つからなかった場合に、あらかじめ決められていた価格で不動産会社が物件を買い取る仕組みです。
売却保証を利用するメリットは、「いつまでに、いくらで売れるか」という売却の不確実性を解消できる点にあります。売却の期限が決まっているため、資金計画が立てやすくなり、安心して新居探しを進められます。
ただし、不動産会社による買取価格は、仲介での売却価格の相場よりも低くなるのが一般的です。市場価格での売却を目指しつつも、万が一売れ残った場合の保険として活用する方法といえるでしょう。

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マンションの買い替えにかかる諸費用
マンションを買い替える際は、物件の価格だけでなく、売却と購入の両方で様々な諸費用が発生します。買い替えをスムーズに進めるために、諸費用を事前に把握し、資金計画に組み込んでおきましょう。
売却にかかる諸費用
マンションを売却する際には、主に仲介手数料や税金、登記費用などが必要となります。
| 仲介手数料 | 売買代金が800万円超の場合:(売買代金×3%)+6万円+消費税 |
| 印紙税 | 金額が1,000万円超5,000万円以下の場合:1万円(軽減税率) |
| 登録免許税 | 抵当権抹消の登録免許税 不動産1個につき1,000円、土地と建物で2,000円となることが多い |
| 司法書士手数料 | 抵当権抹消のための司法書士手数料 1.5~2.5万円程度 |
| 一括返済手数料 | 窓口申し込みの場合:3万円程度 |
| 税金 | 譲渡所得が発生した場合に生じる 売却した年の1月1日において所有期間が5年超なら税率は譲渡所得に対して20.315%(5年以下の場合、税率は39.63%) |
これらの費用のうち、特に金額が大きくなるのが仲介手数料です。売買契約が成立した際に不動産会社へ支払う成功報酬で、売却価格に応じて上限額が法律で定められています。
また、住宅ローンが残っている場合は、売却代金で一括返済するための手数料や、担保として設定されている抵当権を抹消するための登記費用が必要です。
| ・「売却にかかる諸費用」に関する記事はこちら マンション売却にかかる仲介手数料・諸費用の相場は? 総額をシミュレーション |
購入にかかる諸費用
新居となるマンションを購入する際にかかる主な諸費用は、以下のとおりです。
| 仲介手数料 | 売買代金が800万円超の場合:(売買代金×3%)+6万円+消費税 |
| 印紙税 | 金額が1,000万円超5,000万円以下の場合: 売買契約書に1万円(軽減税率)、住宅ローンの金銭消費貸借契約書に2万円 |
| 登録免許税 | 所有権移転登記で軽減措置の適用要件を満たしている場合 土地:固定資産税評価額×1.5% 建物:固定資産税評価額×0.3% 抵当権:債権額×0.1% |
| 司法書士手数料 | 所有権移転登記と抵当権設定登記を合わせて10万円前後 |
| 不動産取得税 | 軽減措置が適用されると発生しないことも多い |
| 火災保険料 | マンションの場合:5年契約で3.5~4.5万円程度。地震保険に加入する場合は別途費用がかかる |
| 住宅ローン事務手数料 | 「5~10万円」程度または「借入額の2.2%」 |
| 住宅ローン保証料 | 「60~120万円程度」または「金利に0.2%上乗せ」 |
マンションの購入時は、売却時と同様に仲介手数料がかかります。それに加えて、不動産の取得に課される不動産取得税や、所有権移転登記、住宅ローンを組む際の抵当権設定登記にかかる登録免許税などが必要です。
| ・「購入にかかる諸費用」に関する記事はこちら 住宅購入にかかる諸費用ってどのぐらい? |
どの手順であってもまずは「査定」を
マンションの買い替えをするには、どの手順で進めるにしても、まずは不動産会社に査定を依頼しましょう。現在住んでいるマンションが「いくらで売れそうか」がわからなければ、買い替え自体の可否や、新居にかけられる予算を決めることができません。
査定価格を知ることで、住宅ローンの残債を売却代金で完済できるかどうかが明確になります。また、自己資金と合わせてどの程度の価格の新居を購入できるかも見えてくるでしょう。
資金計画の見通しが立つことで、「売り先行」と「買い先行」のどちらが自身の状況に適しているのかを判断しやすくなります。

まとめ
マンションの買い替えは、現在の住まいの売却と新居の購入を並行して進めるため、手順や資金計画が重要です。
主な手順には、資金計画を立てやすい「売り先行」と、理想の住まいをじっくり探せる「買い先行」があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。どの手順を選択するにしても、まずは現在のマンションの価値を把握することが不可欠です。
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この記事のポイント
- マンションを買い替えるタイミングはいつがベストですか?
マンションの買い替えは大きな決断であり、タイミングを見極めることが重要です。
「マンションを買い替えるタイミング」では、買い替えのきっかけとなる主なタイミングを4つ紹介します。
- マンションを買い替える際の手順を教えてください。
マンションの買い替えは、現在の住まいの「売却」と新居の「購入」のどちらから進めるかによって、3つの手順に分けられます。
詳しくは「マンション買い替えの3つの手順」をご覧ください。
- マンション買い替えの諸費用はどのくらいかかりますか?
マンションを買い替える際は、物件の価格だけでなく、売却と購入の両方で様々な諸費用が発生します。
詳しくは「マンションの買い替えにかかる諸費用」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
マンションを買い替える際は、売却と購入の仲介を同じ不動産会社に依頼すると、決済や引渡しのスケジュール調整がスムーズに進みやすいという利点があります。特に、売却と購入のタイミングを合わせる「同時進行型」を目指す場合、双方の調整が必要なため、一社に任せるメリットは大きいでしょう。
また、不動産会社によっては買い替え保証などを提供していない場合もあるため、査定を依頼する際に買い替えであることを伝え、サービス内容を確認してみることをおすすめします。

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