固定資産税,日割り清算
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不動産売却後の固定資産税の日割り計算方法は?消費税はかかる?起算日をもとにした計算例を紹介

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 固定資産税は買主の負担分を日割りで計算し、その額を売主が受け取ったうえで、納税通知書に基づき売主が納めることが一般的
  • 固定資産税を日割りで清算する際には、まず「起算日」を決める

不動産を売却する際に「固定資産税は売主と買主でどのように取り決めるのだろう」と気になる方も多いのではないでしょうか。日割り計算となる場合の仕組みや実際の清算方法がよくわからず、疑問を抱えている方も少なくありません。

固定資産税は1月1日時点の所有者に課税される仕組みですが、実務上は売買契約において引き渡し日を基準に売主と買主で負担を分けるのが一般的です。

この記事では、固定資産税の日割り計算する仕組みや起算日の考え方、引き渡し日ごとの計算例を解説します。さらに、清算時の注意点や消費税の扱いについても紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

固定資産税を日割り計算するケースとは

固定資産税を日割り計算するケース

不動産を売却する際には、売主と買主の間で「固定資産税をどのように按分するか」を決める必要があります。

ここでは、まず固定資産税の基本を整理し、そのうえで売却後に日割り計算が必要となる理由を確認していきましょう。

固定資産税とは

固定資産税とは、土地や建物などの不動産を所有している方に対して課される地方税です。

税額は各市区町村が固定資産税評価額をもとに算定し、自治体から送付される納税通知書に基づいて支払います。

固定資産税の概要は以下のとおりです。

項目概要
納税義務者毎年1月1日時点での不動産所有者
課税対象期間4月1日から翌年3月31日までの1年度分
税額の算定方法各市区町村が固定資産税評価額をもとに算定
評価額の見直し原則3年ごとに見直される

さらに、不動産が「市街化区域」に所在している場合には、固定資産税に加えて都市計画税の支払いも必要です。これらの税金は不動産を所有している限り、毎年発生することになります。

固定資産税の日割り計算が必要になるのは売却後

前述のとおり、固定資産税は1月1日時点での所有者に納税義務が発生します。仮に1月2日に所有権が移ったとしても、その年の固定資産税はすべて売主が負担しなければなりません。

しかし、所有権を失うにもかかわらず税金を払い続けることになるため、売主からすると不公平に感じてしまいます。

そこで法的な規定はないものの、実務では売買契約書の中で取り決めを行い、引き渡し日までを売主負担、引き渡し日以降を買主負担とする清算方法が一般的に用いられます。

具体的には、買主の負担分を日割りで計算し、その額を売主が受け取ったうえで、納税通知書に基づき売主が税金を納める仕組みです。

例えば、固定資産税額が20万円で、そのうち売主の保有期間が100日、買主の保有期間が265日だったとしましょう。この場合、売主負担は約5万5千円、買主負担は約14万5千円となり、買主はこの分を清算金として売主に支払うことになります。

固定資産税の日割り計算方法

固定資産税の日割り計算方法

固定資産税を売主と買主で公平に按分するためには、正確な日割り計算を行う必要があります。ここからは、具体的な日割り計算方法について解説します。

1.起算日を決める

固定資産税を日割りで清算する際には、まず「起算日」を決めます。

起算日とは、売主と買主それぞれが負担する期間を区切る基準日を指し、この日をもとに所有期間を計算します。

日割り清算に関して法的な決まりはなく、実務上は売主と買主の話し合いによって起算日を定めるのが一般的です。

起算日は「1月1日」もしくは「4月1日」のいずれかを用いることが多く、関東と関西で以下のように習慣が異なります。

地域起算日
関東1月1日(1/1~12/31)
関西4月1日(4/1~3/31)

起算日をもとに売主と買主の負担額を算出し、買主の持ち分を清算金として売主へ支払い、売主がまとめて納税します。どの基準日を採用するかによって按分額が変わるため、売買契約書には起算日を明確に記載しておくことが大事です。

2.固定資産税を日割りする

実際に固定資産税を日割りで清算する際は、まず自治体から送られてくる納税通知書を確認し、固定資産税の額を把握します。そのうえで、設定した起算日を基準に、売主と買主の所有日数を分けて計算します。

具体的な計算式は以下のとおりです。

売主:(固定資産税の額 ÷ 365日) × その年の起算日から引き渡し日までの所有日数
買主:(固定資産税の額 ÷ 365日) × 引き渡し日から翌年の起算日までの所有日数

なお、計算過程で1円未満の端数が生じることがあるため、切り捨てにするか切り上げにするかを事前に決めておく必要があります。

次項で起算日を「1月1日」とする場合と「4月1日」とする場合の計算例をみていきましょう。

1月1日が起算日の場合

ここでは、1月1日を起算日とした場合の固定資産税等清算金について、次の条件でシミュレーションしていきます。

【条件】

  • 固定資産税額:30万円
  • 引き渡し日:8月3日
  • 起算日:1月1日

日割り日数の計算は以下のとおりです。

売主の日割り日数:1月1日~8月2日=214日
買主の日割り日数:8月3日~12月31日=151日

次に年間固定資産税を365日で割り、日数をかけて実際の負担額を算出します。

売主:(30万円 ÷ 365日) × 214日 = 17万5,890円
買主:(30万円 ÷ 365日) × 151日 = 12万4,109円

この場合、買主は12万4,109円を売主に清算金として支払い、売主が30万円をまとめて納税する形となります。

なお、うるう年は366日で計算する必要があるため、1日分の負担額が変わります。日割り清算を行う際は、該当年がうるう年かどうかも念のため確認しておきましょう。

4月1日が起算日の場合

次は起算日が4月1日のケースをみていきましょう。条件は以下のとおりです。

【条件】

  • 固定資産税額:30万円
  • 引き渡し日:8月3日
  • 起算日:4月1日

この場合、日割り日数は次のように計算されます。

売主の日割り日数:4月1日~8月2日=124日
買主の日割り日数:8月3日~翌年3月31日=241日

次に固定資産税を365日で割り、日数をかけて負担額を算出します。

売主:(30万円 ÷ 365日) × 124日 = 10万1,917円
買主:(30万円 ÷ 365日) × 241日 = 19万8,082円

このケースでは、引き渡し日が年度の前半にあたるため、残りの期間を負担する買主の金額が大きくなることがわかります。

このように、起算日を1月1日とするか、4月1日とするかによって負担割合は変わるため、売主と買主の合意のうえでどちらを基準にするかを明確にしておくことが重要です。

固定資産税の日割り計算例【引き渡し日別】

固定資産税の日割り計算例【引き渡し日別】

固定資産税の納税通知書は毎年5~6月ごろに送付されます。そのため、納税通知書が届く前に引き渡し日を迎えるのか、あるいは届いた後に引き渡すのかによって、清算方法が異なります。

ここでは、引き渡し日が1~5月にある場合と、6月以降にある場合に分けて、それぞれの計算方法を解説していきます。

1~5月に引き渡し日がある場合

納税通知書は5~6月ごろに届くため、1~5月に引き渡しがある場合は通知書がまだ手元になく、正式な納税額を把握できません。そのため、固定資産税の清算は次のいずれかの方法で行うのが一般的です。

  1. 納税通知書が届いてから清算する
  2. 前年の金額をもとに清算し、実際の通知書と金額が違えば再清算する
  3. 前年の金額をもとに清算し、通知書の額が違っても再清算しない

どの方法を採用するかは売主・買主で話し合い、売買契約書に明記しておくことが大切です。
ただし、1は引き渡し後の清算になるため買主に敬遠されがちです。2についても追加で支払う可能性があるため買主から難色を示されるケースも少なくありません。

その点、3であれば事前に負担額が確定するため、もっともトラブルが少ない方法といえます。

6~12月に引き渡し日がある場合

6~12月に引き渡しがある場合は、すでに納税通知書が届いているため、実際の固定資産税額をもとに正確に日割り清算を行うことができます。

売主は通知書に記載された納期までに納付する必要があります。納税方法は一括納付のほか、4期に分割して納付することも可能です。納付期限は各市町村によって異なるため、送られてきた通知書の期限をきちんと確認しておきましょう。

例えば、兵庫県神戸市の納付期限は次のようになります。

第1期/一括第2期第3期第4期
納付期限4月末日7月末日12月25日2月末日

もし、納税を怠ると延滞金が課されるほか、不動産自体が差し押さえられる可能性があります。通知書が届いたら必ず期限内に納付を済ませましょう。

固定資産税を日割り計算する際の注意点5つ

固定資産税を日割り計算する際の注意点5つ

固定資産税を日割り計算する際は、双方の間でトラブルを避けるためにも、いくつか押さえておくべき注意点があります。

主な注意点は次の6つです。

  • 当事者間で合意をとる
  • 売買契約書に明記しておく
  • 消費税の扱いについて知っておく
  • 固定資産税清算分は上乗せで支払う
  • 引き渡し日が伸びた場合は再計算する
  • 確定申告では売却代金の一部として扱う

それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。

当事者間で合意をとる

固定資産税の日割り清算は法律で定められているわけではなく、あくまで売主と買主の合意に基づいて行われるものです。そのため、買主が清算に応じない場合には強制することはできません。

トラブルを防ぐためには、以下の点をあらかじめ取り決めておくことが大切です。

  • 起算日をいつにするか
  • 日割り計算で生じる端数を切り捨てるのか切り上げるのか
  • 1~5月に引き渡しがある場合の計算方法をどうするか

また、起算日は地域によって慣習が異なるため、担当する不動産会社と正確にすり合わせておくことがトラブル防止につながります。

売買契約書に明記しておく

双方で話し合い、固定資産税の清算方法について合意ができたら、その内容を必ず売買契約書に明記しておく必要があります。万が一トラブルに発展した場合でも、書面に明記されていれば根拠として提示できるため、安心して取引を進められます。

契約後のトラブルを回避するためにも、作成された契約書案には必ず目を通し、もし記載がなければ追記してもらい、納得したうえで署名・押印するようにしましょう。

消費税の扱いについて知っておく

固定資産税の日割り清算分は、条件によっては「消費税」が課される可能性があります。

個人間での不動産売買であれば非課税ですが、売主が法人となる場合は消費税の課税対象となります。

この場合、日割り清算分のうち、建物にかかる部分については消費税の対象です。一方、土地については売主が法人であっても非課税扱いとなります。

【消費税の取り扱い】

売主対象消費税の課税有無
個人土地・建物非課税
法人土地非課税
法人建物課税対象

消費税が課されてしまうと、実際の負担額が大きくなってしまう可能性があります。そのため、法人の場合は消費税の取り扱いについてあらかじめ税理士などに確認しておくと安心です。

固定資産税清算分は上乗せで支払う

固定資産税を日割り計算した清算金は、売買代金とは別に支払うのではなく、売買価格に上乗せする形で処理するのが一般的です。

例えば、自宅を3,000万円で売却する際に、清算金が20万円であれば、実質の売買価格は3,020万円として扱われます。

税務上は売却代金が増えたものとみなされるため、売却益が出れば「譲渡所得税」の課税対象となります。とはいえ、居住用不動産の売却であれば3,000万円特別控除などの特例を利用できる場合もあり、売却益が発生しないことも少なくありません。

具体的な課税の有無や金額はケースによって異なるため、不安な場合は事前に税理士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。

引き渡し日が伸びた場合は再計算する

固定資産税の清算は引き渡し日を基準に行うため、予定より引き渡し日が延びた場合には日割り計算をやり直す必要があります。

数日程度のずれであれば数百円から数千円で済むことが多いですが、数週間から1カ月延びれば数万円単位で負担額が変わることもあるため、注意が必要です。

売買契約書に清算金額をすでに書き込んでいる場合は、契約変更の手続きが必要になります。その手間を避けるため、実務上は当初の金額のままにして取引を進めるケースが多いです。

確定申告では売却代金の一部として扱う

前述のとおり、固定資産税の日割り清算金は、売買代金の一部として扱われます。

そのため、不動産の売却で利益が生じた場合には譲渡所得税の対象となり、翌年に確定申告を行う必要があります。

譲渡所得の計算式は以下のとおりです。

課税譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

居住用の不動産であれば、3,000万円特別控除などの特例を利用できるケースがあり、税負担を軽減できる可能性があります。ただし、特例を利用する場合は利益が出なかったとしても、確定申告自体は必要となります。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

まとめ

不動産を売却する際は、あらかじめ売主と買主の間で「固定資産税をどのように分担するか」を決めておくこと必要があります。

固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に納税義務が生じます。しかし、実務では売買契約書で取り決めを行い、引き渡し日までを売主、引き渡し日以降を買主が負担する形で清算するのが一般的です。

具体的には、買主の負担分を日割りで計算し、その清算金を売主が受け取ったうえで、納税通知書に基づいて売主が税金を納付します。そのためには、当事者間で合意をとり、契約書に明記しておくことでトラブル防止につながります。

こうした複雑な取り決めを円滑に進めるためにも、信頼できる不動産会社に相談し、安心して不動産売却を進めていきましょう。

この記事のポイント

固定資産税の日割り計算方法は?

固定資産税を日割りで清算する際は、まず自治体から送られてくる納税通知書を確認し、固定資産税の額を把握します。そのうえで、設定した起算日を基準に、売主と買主の所有日数を分けて計算します。

詳しくは「固定資産税の日割り計算方法」をご覧ください。

固定資産税を日割り計算する際の注意点は?

固定資産税の日割り清算は法律で定められているわけではなく、あくまで売主と買主の合意に基づいて行われるものです。

トラブルを防ぐためには、当事者間で合意をとり、起算日をいつにするかなどをあらかじめ取り決めておくことが大切です。

詳しくは「固定資産税を日割り計算する際の注意点5つ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

固定資産税は現金だけでなく、クレジットカードやキャッシュレス決済アプリに対応している自治体も増えています。自宅から手続きができ、さらにポイント還元も受けられるため、納税負担を抑える手段として活用しやすいでしょう。ただし、対応可否は自治体ごとに異なるため、納付前に利用できるか確認しておく必要があります。

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