家買えない
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家が買えない場合はどうする?「高い」と感じた際の対処法を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • 近年の住宅価格の高騰は、建築コストの高騰が強く影響している
  • 住宅を購入するためには、希望する条件の緩和や補助金の活用などを視野に入れるのがおすすめ

日本の不動産価格はすでに10年以上値上がりを続けており、最近は家が高過ぎて買えないと感じる方も増えてきました。

郊外では買い控えの動きが出始めているものの、それでも住宅価格は下落する気配がありません。

トランプ関税で景気が後退すると思われましたが、不動産価格の先行指標である株価が上昇しており、不動産価格は引き続き上昇する見込みが高くなっています。

家が高くて買えない場合、どのような対処法があるのでしょうか。
この記事では、「家が買えない」というテーマについて解説します。

家が買えない?住宅価格の高騰が続く背景

家が買えない?住宅価格の高騰が続く背景

日本の住宅価格は、概ね2013年頃から上昇が続いています。
最初に不動産価格が上昇し続けている背景について解説します。

建築コストの高騰

近年の住宅価格の高騰は、建築コストの高騰が強く影響しています。

建設費地に関しては、東日本大震災が生じた後から復興事業に人手が割かれたため、顕著に上昇していきました。

当時から建築業界は人材不足が問題となっていましたが、建築業界の人材不足の問題は未だに解消されず、建築費高騰の一因となっています。

また、近年は国際的な金利差から生じる円安圧力が継続しており、輸入資材の価格が高騰しています。
最低賃金が上がり、残業規制も加わったことで、輸送費等が上がったことも建築費高騰の一因です。

さらに2025年4月から全ての新築住宅を、省エネ基準適合住宅とすることが義務化されました。

断熱性等の住宅性能を高める必要があり、仕様を上げざるを得なくなったことも建築費高騰の一因となっています。

建築費高騰は複数の要因が複合的に重なっており、1つの問題を解消しても他の問題が残り続けることから、今後も高騰が続く見込みが高いです。

海外の投資家・富裕層による住宅購入の増加

東京都区部等の都市部のマンションでは、外国人投資家や富裕層が住宅を購入する動きが目立っています。

外国人投資家は、マンションを投資目的で保有するため、空き家のまま保有しているケースも多いです。

現状、日本は円安圧力が強いため、外国人投資家から見ると日本の不動産は割安に映ります。

日本の実需者層には手の届かない価格でも、投資家にとっては購入できる価格帯であることから、都市部には強い購入需要が存在し、価格が上昇する要因となっています。

都市部のマンション供給の減少

近年はあまりにも建築費が高騰していることから、全国でデベロッパーが新築マンションの建築を見送る動きが相次いでいます。

そのため、数年前に比べると新築マンションの供給量が減っています。

新築マンションの供給量が減ることで、需要が中古マンションに集中し、中古マンションの価格も上がっている状況です。

近年の都市部の中古マンションでは、新築時の価格よりも値上がりしている物件が多く存在します。

住宅需要が高い世代の世帯年収アップ

住宅価格の高騰が続いている中でも、家を購入できている若い世代が存在します。
その多くは、共働き世帯です。

共働きによって世帯収入が増えていることから、価格が上がっても購入できる需要者層が存在し、価格が下がらない要因となっています。

株価の高騰

インフレが生じると現金の価値が下がるため、投資家等が資産をリスクヘッジの目的で、現金を株や不動産に換える動きが生じます。

不動産よりも値動きの激しい株価は、不動産価格の先行指標とされており、株価が上昇すると不動産価格も遅れて上昇することが一般的です。

逆に株価が下がれば、1~2年後に不動産価格も下がることが予想されます。

近年は株価の上昇が続いており、トランプ関税の懸念をよそに、未だに株価の上昇傾向が続いています。

株価が大きく下がる気配がないことから、不動産価格の高騰はしばらく続く見込みが強いです。

低金利政策の継続

日本の不動産価格が2013年頃から上昇したのは、日銀の低金利政策が主たる要因です。
近年は、低金利政策によって円安圧力が生じ、不動産価格の上昇に拍車をかけています。

本来であれば金利を上げて価格を下げたいところですが、政府が国債による多額の負債を抱えているため、金利を上げると政府の歳出が増えてしまうという問題があります。
金利を上げるということは増税につながる可能性があり、今の日本は金利を機動的に上げることができない状況となっているのです。

ただ、政府の放漫財政を容認してきたのは国民であるため、家が買えない原因は詰まるところ「国民のせい」という見方もあるかもしれません。

今後、政府が財政再建に本格的に着手し、日銀が正常な機能を取り戻すことができれば、不動産価格が適正になることが期待されます。

家が買えない・高い状態は今後も続く?

家が買えない・高い状態は今後も続く?

インフレを抑えるためには、日銀が金利を上げることが必要です。
今すぐ金利を上げてしまうと政府の利払いが増えることから、税金も上げざる得ない可能性があります。

仮に金利を上げると、当面の間、高金利、高税金、高インフレのトリプルパンチが生じてしまう恐れがあります。
現状は高インフレのシングルパンチだけで留まっているため、まだ良い状況かもしれません。

トリプルパンチの懸念を踏まえると、日銀が金利を急激に上げて不動産価格を抑え込むことは困難であると思われ、住宅価格の高騰は今後も続くものと見込まれます。

家が買えない場合の対処法5つ

家が買えない場合の対処法5つ

この章では、経済的な事情により家の購入が難しい場合の対処法を解説します。

補助金を利用する

現在、政府は2050年のカーボンニュートラル(CO2排出量を実質ゼロにすること)の実現に向けて、省エネ住宅の建築に対してさまざまな補助金制度を設けています。

省エネ性能の高い住宅は割高ですが、補助金を利用すれば多少の緩和が期待できます。
補助金は毎年制度内容が変更されるため、施工会社に相談した上で最適な制度を選択することが望ましいです。

ペアローンや収入合算で住宅ローンを組む

住宅ローンは、個人の収入ではなく世帯の収入を前提に組むことも可能です。
共働き世帯であれば夫婦の収入を合算することで、より多くの金額を借りることができます。

世帯収入を前提に住宅ローンを組む方法としては、ペアローンの他、連帯保証や連帯債務といった方法もあります。

それぞれの方法にはメリットやデメリットがあるため、自分たちに適した組み方を選ぶことをおすすめします。

親からの援助を受ける

マイホームの購入資金に関しては、贈与の特例があり親からの援助を受けやすくなっています。

マイホームの贈与の特例とは、「住宅取得等資金贈与の非課税特例」のことです。

2026年12月31日までの贈与で、質の高い住宅であれば1,000万円、その他の住宅であれば500万円までの贈与税の非課税枠が設けられています。

質の高い住宅とは、省エネ性能や耐震性、バリアフリー性に関して一定のレベル以上の条件を満たす住宅のことです。

親から援助を受けられれば頭金が増え、住宅ローンの借入額が減ります。

出典:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

条件を緩和する

住宅を購入するためには、希望する条件を緩和することも現実的な対処方法です。
「新築よりも中古」「都市部よりも郊外」「駅から近い物件よりも遠い物件」等の方が価格は安くなります。

また、最近では新築の戸建てを建てる際、2階建てではなく平屋を選択する人も多いです。
平家は建築費の単価こそ割高であるものの、総額は2階建てよりも安くなります。

平屋は家の中に階段がないため、将来、自分が高齢になったときも住みやすいです。
建築費を抑えるだけでなく、将来の住みやすさを求めるという意味でも平屋は検討の余地があるといえます。

専門家のサポートを受ける

資金的な不安がある場合、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談することも対策の1つです。

ただし、ファイナンシャルプランナーはお金の専門家であって不動産の専門家ではないため、不動産購入の相談実績が豊富な人を選ぶことが必要といえます。

家を買えないなら賃貸もアリ!メリット・デメリットを比較

家を買えないなら賃貸もアリ!メリット・デメリットを比較

家は必ずしも購入だけでなく、賃貸という選択肢もあります。
この章では、持ち家と賃貸物件のメリットとデメリットについて解説します。

持ち家のメリット・デメリット

持ち家のメリットとデメリットをまとめると、下表の通りです。

メリットデメリット
・ローンを完済していれば老後も安心して住むことができる
・自由にリフォームができる
・一般的に家賃に比べると維持費は安くなることが多い
・修繕は自分で対応しなければならない(マンションであっても修繕積立金は発生する)
・買い替えをするには手間がかかる
・将来資産価値が下がるリスクがある

持ち家は高齢者になったときに安心して住めるため、特に老後になってからメリットが強まるといえます。

賃貸物件のメリット・デメリット

賃貸物件のメリットとデメリットをまとめると、下表の通りです。

メリットデメリット
・利便性の高い場所も選択しやすい
・修繕を貸主負担とすることができる
・借金を負わなくて済む
・一般的に家賃は持ち家の維持費よりも高いことが多い
・単身の高齢者になると借りることが難しい
・自由にリフォームができない

賃貸は収入がある現役世代のうちは大きなデメリットはありませんが、高齢になったときに不安要素が強まります。

まとめ

以上、家が買えないというテーマについて解説してきました。
住宅価格は、建築費の高騰に加え、日銀の低金利政策も要因になっていることから、今後も上昇傾向が続く見込みがあります。

家を購入するには、「ペアローンを組む」「条件を緩和する」等が効果的な対処法です。
家を購入できない場合には、賃貸という選択肢も含めて幅広く検討していただければと思います。

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この記事のポイント

家が高くなっているのはなぜ?

近年の住宅価格の高騰は、建築コストの高騰が強く影響しています。

建設地に関しては、東日本大震災が生じた後から復興事業に人手が割かれたため、顕著に上昇していきました。

当時から建築業界は人材不足が問題となっていましたが、建築業界の人材不足の問題は未だに解消されず、建築費高騰の一因となっています。

詳しくは「家が買えない?住宅価格の高騰が続く背景」をご覧ください。

家が買えない場合の対処法は?

住宅を購入するためには、希望する条件を緩和することも現実的な対処方法です。

「新築よりも中古」「都市部よりも郊外」「駅から近い物件よりも遠い物件」等の方が価格は安くなります。

また、最近では新築の戸建てを建てる際、2階建てではなく平屋を選択する人も多いです。

平家は建築費の単価こそ割高であるものの、総額は2階建てよりも安くなります。

詳しくは「家が買えない場合の対処法5つ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

最近の選挙の動向を見ると国民の意識が変わってきており、政府もいよいよ財政再建に着手する可能性があります。政府の債務残高が減り日銀が金利を機動的に操作できるようになれば、不動産価格だけでなく、円安や物価高といったあらゆる問題が解決していく可能性が出てきます。
不動産価格の高騰を社会問題として捉え、少しずつ声を上げて社会を変えていくことは大変有意義なことです。家が買えないということは、個人だけの問題ではなく社会全体の問題でもあるのです。

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