ざっくり要約!
- マンションを現金で一括購入すると、住宅ローンの利息や金融機関で借り入れる際の事務手数料(融資手数料)が不要になる
- マンションを現金で一括購入すると、住宅ローン控除を受けられないなどのデメリットもある
マンションを買うとき、現金で一括購入してもよいものなのでしょうか。マンション購入には大きな資金を投じなければならず、一抹の不安を覚える方もいるでしょう。
今回は、マンションを一括で購入するメリット・デメリットを解説します。またマンションを一括で購入すべきか判断する方法や向いている人の特徴、購入の流れ、必要書類まで詳しく紹介しますので、マンション購入を検討している方はぜひ参考にしてください。
記事サマリー
マンションを一括購入する主なメリット4つ

マンションを現金で一括購入する場合、住宅ローン利用に比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットを4つ紹介します。
1.利息や諸費用が発生しない
マンションを現金で一括購入する場合、住宅ローンの利息や金融機関で借り入れる際の事務手数料(融資手数料)が不要になるため、購入にかかる諸費用を抑えられるのがメリットです。
たとえば借入3,000万円で返済期間を35年、金利0.5%(元利均等方式)で計算すると、返済総額は約3,270万円です。そして金利が上昇すれば、返済総額も増えることになります。
そのほかにも金融機関へ支払う保証料や事務手数料)、抵当権設定のための登記費用、団体信用生命保険の保険料(金利上乗せ)などがかかります。
しかしマンションを現金で一括購入すれば、これらの諸費用は発生しません。
ちなみに金融機関へ支払う保証料は、金融機関や借入額によって異なり、融資実行時に一括、もしくは金利に上乗せして支払う方法があります。
住宅ローンを借り入れる際は、団体信用生命保険への加入が条件になり、保険料を住宅ローンの金利に上乗せして支払うのが一般的です。
事務手数料は、融資金額に対して定率型や定額型などがあります。
定率型(融資額の2.2%程度)の場合は保証料が不要となることが多く、定額型の場合は3~5万円前後が目安です。
・「住宅購入にかかる諸費用」に関する記事はこちら
住宅購入にかかる諸費用ってどのぐらい?
2.審査不要でスピーディに購入できる
マンションを現金で一括購入できれば、住宅ローン審査を申し込むなどの手間がかからず、売買契約から決済・引き渡しまでスムーズに進めることができます。
通常、住宅ローンを利用する場合、必要書類を揃えて金融機関へローンの事前審査を申し込み、売買契約締結後にローン審査の本申し込みをします。したがって売買契約後にローンが不承認になった場合は、解約できる特約をつけて契約するのが一般的です。
ローン審査の申し込み後、買主は審査が通るかどうか不安を覚えることもあるでしょう。また売主にとっても、買主のローン承認が下りるまで不安定な状態が続くことになります。
ちなみに中古物件購入時に申し込みが重なった場合は、購入条件が同じであれば現金購入の方が選ばれやすい傾向があります。
3.滞納のリスクを避けられる
マンションを現金で一括購入すれば、毎月の住宅ローン返済する必要がありません。
住宅ローンを利用している場合、万が一会社の倒産や病気になって働けなくなるなどしてローンを滞納すれば、マイホームを手放すことになるかもしれません。
月々のローン返済を滞納し続けると、金融機関から全額返済を求められ、全額返済できなければ競売に掛けられることになるためです。
現金でマンションを一括購入すれば、ローン返済に悩むことがなくなり、将来の心配も軽減できるのがメリットです。
・「住宅ローン 滞納」に関する記事はこちら
住宅ローンが払えないとどうなるのか時系列で解説!すぐに検討すべき対処法も紹介
4.保証人が不要
マンションを現金で一括購入できれば、保証人を探す手間がかかりません。
ローン借入で連帯保証人が必要になるのは、契約者が自営業や勤続年数が短いなどの理由から、返済能力が不十分、もしくは収入が不安定であると判断された場合です。保証会社に依頼する方法もありますが、その場合は一定の費用がかかります。
金融機関は融資の際、不動産に抵当権を設定するため、基本的には連帯保証人は不要ですが、ペアローンや共有名義の場合などは、お互いに相手側の連帯保証人になります。
一度連帯保証人になると、死亡や離婚をしても連帯保証人から外れることは難しく(状況や条件にもよる)、債務を負うことになってしまうため注意が必要です。
・「連帯保証人」に関する記事はこちら
住宅ローンで連帯保証人が必要なケースは?配偶者でもOK?デメリットも解説
マンションを一括購入する主なデメリット・注意点3つ

マンションを現金で一括購入するとしたら、どのようなデメリットがあるのでしょうか。ここでは、注意すべきポイントを3つ解説します。
1.住宅ローン控除が受けられない
マンションを現金で一括購入すると、住宅ローン控除を受けられません。
住宅ローン控除とは、最大で13年間、毎年住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除する制度です。
住宅ローン控除を受けるためには、一定の条件を満たす必要がありますが、長期に渡って所得税を減税できるのがメリットです。
住宅ローン控除の主な要件は、以下のとおりです。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 住宅の床面積が50㎡以上
(2024年12月31日までに建築確認を受けた場合は40㎡以上) - 住宅取得後6カ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住すること
- 中古住宅は一定の耐震基準(新耐震基準)を満たしていること
- 新築住宅は一定の省エネルギー基準を満たしていること
- 控除を受ける年の所得が、合計で2,000万円以下
出典:消費税率の引上げに対応した住宅関連税制とすまい給付金|国土交通省
・「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」に関する記事はこちら
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)で税金はいくら戻る?要件や手続き方法を解説
2.手持ち資金が大きく減る
マンションを現金で一括購入すると、手持ちの資金が大きく減ることになります。
自宅を住宅ローンで購入すれば、余剰資金を投資などに回すこともできますが、マンション購入に貯金を使い果たしてしまうと、万が一のことが起こった際に生活費に困窮することになりかねません。
マンション購入する際には、不動産会社へ支払う仲介手数料や登記費用、印紙代などの諸費用がかかり、物件の状態によってはリフォーム費用やクリーニング費用がかかることもあります。
またマンション購入後には不動産取得税や固定資産税、都市計画税などの税金のほか、管理費や修繕積立金がかかり、車を所有していれば、駐車場代も支払うことになるでしょう。
特に、子どものいる家庭では教育費など子育てにかかる費用も考慮する必要があります。
進学など、将来大きなお金がかかることを想定して、他のローンより比較的低金利な住宅ローンを利用しつつ手元に資金を残しておくことも有効な方法です。
マンション購入代金以外にかかる諸費用や将来必要になるお金も含めて試算し、ゆとりを持った資金計画を立てるようにしましょう。
3.火災保険の加入を忘れる可能性がある
住宅ローンを組む際は、火災保険への加入が条件になっていることが一般的です。火災保険を検討する機会があるため、忘れてしまう心配はないでしょう。
一方でマンションを現金で一括購入する場合、火災保険への加入を勧められるタイミングはなく、加入自体は検討していたとしても忘れてしまうかもしれません。
万が一、隣人が火災を起こせば、自宅に延焼する可能性があり、火災保険に加入していなければ、自己負担で修理等しなければなりません。
また、火災保険に加入しなければ地震保険に加入できないため、自然災害に備えたい方は、火災保険への加入を忘れないようにしましょう。
マンションの一括購入がお得かどうかを判断するには

結局のところ、マンションは現金で一括購入した方がお得なのでしょうか。
「現金で一括購入」と「住宅ローンを利用して購入」を比較した場合に、どちらがお得なのかは、一概には判断できません。
マンションを現金で一括購入できれば、住宅ローンの利息を払う必要がありません。また諸費用も軽減できるため、金銭的には負担を少なくできるでしょう。
一方、マンション購入で、住宅ローン組んだ場合はどうでしょうか。住宅ローン控除を適用できれば、所得税を減税できます。また貯金を減らさずに済むため、その余剰資金を運用できれば、大きな利益を生む可能性もあります。
しかし、今後金利がどの程度上昇するのか、また余剰資金をどこまで運用できるのかは、誰にもわかりません。
現金一括購入と住宅ローン利用のどちらにするか迷ったら、ライフプランについても相談できる不動産会社へ依頼するか、ファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。
マンションの一括購入が向いている人

マンションの一括購入が向いている人とは、どのような人なのでしょうか。ここでは、現金での一括購入が向いている人の特徴を紹介します。
資金が潤沢にある人
貯金が潤沢にあり、マンションを現金で購入したとしても資金面に余裕がある方は、現金での一括購入が向いています。
わざわざ利息や諸費用を支払ってまで、住宅ローンを組む必要はないかもしれません。
マンション購入をスムーズに進めたい人
マンションにすぐにでも引っ越ししたい人は、現金での一括購入が向いています。
住宅ローンを利用する場合、ローンの本審査に1カ月程度かかることが多く、引渡しまでに時間がかかってしまうでしょう。その点、現金で一括購入すれば、スムーズに引っ越しできます。
住宅ローン控除が適用にならないマンションを購入する人
住宅ローンを利用する場合、住宅ローン控除を受けられるのがメリットです。しかし、そもそも住宅ローン控除が受けられない物件であれば、現金での一括購入を検討しましょう。
マンションを一括購入する流れと必要書類

最後に、マンションを現金で一括購入する際の流れと、必要書類について解説します。
主な購入の流れ
マンションを一括購入する流れを4つのステップで紹介しますので、まずは一般的な流れを把握しておきましょう。
1.物件申し込み
希望や条件に合うマンションを内見し、購入したいマンションが見つかったら、不動産会社にその旨を伝えます。
売主への意思表示は、購入申込書など書面でするのが一般的で、不動産会社経由で購入を申し込みます。
住宅ローンを利用しない場合は、金融機関への相談や審査は不要ですが、マンションを購入する資金があることを証明するために、不動産会社から預金通帳などの提示(コピー可)を求められることがあります。
2.契約
不動産会社からマンションについて重要事項説明を受け、売買契約書の内容を確認し、購入する意思が変わらなければ署名・捺印し、売買契約を締結します。
契約時には手付金として、売主へ売買代金の5~10%を支払うのが一般的です。
また売買契約時に不動産会社へ仲介手数料の半額を払うことが多く、残りの半額は決済時に支払います。
支払い方法や必要書類については、不動産会社の担当者に確認しておきましょう。
3.支払いと引き渡し
現金で一括購入する場合は、決済日は売買契約日から1~2週間後に設定することが多く、売主はこの間に引渡しのために準備(引っ越し)を進めます。
ちなみにローン利用の場合は、ローン実行までに時間がかかるため、売買契約日から決済までに1カ月程度かかります。
空室になったマンションを事前に内見して最終確認を済ませたら残代金決済へ進みます。売買代金から手付金を差し引いた金額を売主へ支払い、引渡しを受けます。
4.所有権移転登記
決済日当日に売主・買主・不動産会社・司法書士が集まり、引き渡しのための手続きをします。売主は残代金の着金を確認した後、司法書士へ所有権移転登記の申請を依頼するのが一般的です。
ちなみに司法書士に依頼しなくても、所有権移転登記自体は可能です。
自分で手続きをすれば、司法書士への報酬を節約できます。
しかし必要書類を揃えるなど手間がかかることを考えると、司法書士へ依頼した方がスムーズで、書類不備で登記できないといったリスクもなく安心です。
・「所有権移転登記」に関する記事はこちら
所有権移転登記は自分でできるのか?費用、必要書類や手続きの流れを解説
必要書類
マンションを現金で一括購入する際に必要な書類は、主に以下のとおりです。
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
- 印鑑
- 印鑑証明書
- 住民票
- 預金通帳・銀行印・キャッシュカード(銀行で決済する場合)
- 印紙(売買契約書に貼付)
- 預金通帳や有価証券残高証明書のコピーなど(購入資金があることを証明する書類)
まとめ
マンションを現金で一括購入する場合、利息や諸費用を節約でき、比較的手間をかけずに購入できるのがメリットです。しかし住宅ローン控除による恩恵を受けることができないなど、デメリットもあります。
現金で一括購入する場合は、購入時や購入後に発生する税金や支出を試算し、資金的に無理がないか、よく検討したうえで購入を決めましょう。
この記事のポイント
- マンションの一括購入がお得かどうかを判断するにはどうしたらいい?
「現金で一括購入」と「住宅ローンを利用して購入」を比較した場合に、どちらがお得なのかは一概には判断できません。
購入する人の条件などによって、どちらがお得になるのかは変わります。現金一括購入と住宅ローン利用のどちらにするか迷ったら、ライフプランについても相談できる不動産会社へ依頼するか、ファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。
詳しくは「マンションの一括購入がお得かどうかを判断するには」をご覧ください。
- マンションの一括購入が向いている人はどんな人?
マンションの一括購入が向いているのは、資金が潤沢にある人、マンション購入をスムーズに進めたい人、住宅ローン控除が適用にならないマンションを購入する人です。
詳しくは「マンションの一括購入が向いている人」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
マンションを現金で一括購入するために、貯金をすべて使い果たすことはおすすめできません。しかし資金にある程度余裕があるのであれば、住宅ローンを組まずに購入するほうが、資金面の負担は少なくなるでしょう。
マンション購入について現金一括とローン利用で迷ったら、まずは不動産会社に相談してみてください。不動産購入だけでなく、資金計画についても相談できることが多く、プロならではのアドバイスを受けることができます。

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