ざっくり要約!
- 固定資産税の納税額は、不動産の所在地や構造、面積、築年数などによって異なります。
- 固定資産税評価額がわからない場合は、実勢価格や再建築価格から概算金額を計算できます。
固定資産税は、土地や建物などの固定資産にかかる税金で「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率」で求められます。固定資産税は、不動産を所有しているすべての期間で負担することとなるため、購入前のシミュレーションが欠かせません。
本記事では、固定資産税がいくらになるかの計算方法と、マンションと戸建ての計算シミュレーションを紹介します。
記事サマリー
一戸建てとマンション、固定資産税の平均はいくら?
固定資産税は、土地や建物などの固定資産を1月1日時点に所有している人に納税義務があります。一戸建ての固定資産税の平均は、10〜15万円程マンションは8〜12万円程です。
一戸建ては土地の割合が大きい
一戸建ては、マンションと比較して土地の割合が多い不動産です。マンションはマンション用地を複数の所有者で按分しているため、土地の持分割合が少なく、その分、固定資産税が抑えられる傾向にあります。
土地は、地価の変動はあっても、建物と異なり経年によって価値が落ちていくものではありません。そのため、一戸建ては、マンションと比較して新築時から税額が下がりにくい物件種別だといえるでしょう。
マンションは経年による減価が大きくなる傾向にある
先のとおり、マンションは一戸建てと比較して土地の割合が少ない不動産です。逆にいえば、建物の割合が多いということ。建物は経年によって価値が落ちていくため、固定資産税額もまた経年によって落ちやすい物件種別といえます。
一方、マンションは相対的に一戸建てより立地が良いことが多いため、土地の持分は低くても評価が高いケースもありますのでご注意ください。あくまで、同等の条件や広さにおける税額を考えたとき、一戸建てのほうが高い傾向にあるということです。
固定資産税がいくらになるか計算する方法

固定資産税は、土地と建物を個別に評価して算出されます。そのため、相場や平均は1つの目安です。税額は、所有している不動産の所在地や建物種別、面積、築年数などを考慮したうえで算出されるため、不動産の規模や立地だけで判断することはできません。
ここからは、固定資産税の計算方法を詳しく見ていきましょう。
固定資産税の計算式
固定資産税の納税額は、以下の計算式で求められます。
固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率
固定資産税評価額は、土地や建物の販売価格ではなく、自治体が固定資産税評価基準によって算出した不動産の評価額のことで、3年ごとに見直されます。税率は「1.4%」とされていることが多い傾向にありますが、自治体ごとに適用税率が異なる場合があるので注意しましょう。
| ・「固定資産税」に関する記事はこちら 固定資産税とは?新築一戸建てやマンションの計算事例や税金が軽減される条件を解説! ・「固定資産税 計算 シミュレーション」に関する記事はこちら 固定資産税の計算シミュレーション 一軒家、マンション、更地の計算例を紹介 |
市街化区域は都市計画税も課せられる
すでに市街地となっている地域や、おおむね10年以内に市街化を計画している地域に不動産がある場合は、固定資産税に加えて都市計画税を納めなければなりません。市街化区域は、都道府県知事や国土交通大臣によって指定され、土地利用の観点から13種類の用途地域に区分されています。
都市計画税の納税額は、以下の計算式で求められます。
都市計画税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率
都市計画税の税率は、自治体の条例によって異なりますが「0.3%」が上限です。固定資産税の標準税率が1.4%なので、市街化区域内の不動産には、固定資産税と都市計画税と合わせて1.7%の税率がかかるのが一般的です。
| ・「都市計画税」に関する記事はこちら 都市計画税とは?固定資産税との違いや計算方法を解説 |
固定資産税評価額がわからない場合はどうする?
自治体から固定資産税の納税通知書や課税明細書が届いていない場合など、固定資産税評価額がわからないこともあるでしょう。そういったときは、自治体の固定資産税台帳を閲覧したり、実勢価格や再建築価格から計算したりすることで固定資産税評価額を推測できます。
固定資産税評価額は、以下の計算式で概算金額が求められ、土地と建物で計算方法が異なります。
土地の固定資産税評価額 = 実勢価格 ÷ 1.1〜1.2 × 70%
実勢価格とは、売買などで実際に取引される価格をいい「時価」と呼ばれることもあります。実勢価格は、取引時期や周辺環境によって変動するため、必ずしも契約金額が該当するわけではないので注意しましょう。
建物の固定資産税評価額 = 再建築価格 × 経年減価補正率
再建築価格とは、同じ建物を新築した場合にかかる建築費です。この再建築価格に、築年数による経年劣化を考慮するための「経年減価補正率」をかけることで、おおまかな固定資産税評価額が算出でき、法務省のサイトで確認できます。なお、新築住宅の場合は「新築価格 × 60%」で求められることが多いですが、建物の構造や所在地によっても異なるので、目安として活用しましょう。
| ・「固定資産税と実勢価格の関係」に関する記事はこちら 固定資産税評価額の目安は実勢価格や公示地価から計算できる!計算方法を解説 |
固定資産税の減税措置と申告方法
固定資産税は、一定要件を満たした固定資産を所有している場合に自治体に申請することで、以下の減税措置が適用されます。
新築住宅の減額措置
新築住宅の固定資産税は、一定期間、2分の1に減額されます。減額される期間は、戸建てが3年間、マンションは5年間です。ただし、認定長期優良住宅については、減額される期間が戸建ては5年間、マンションは7年間となります。
新築住宅の固定資産税減額措置を受けるには、住宅がある自治体に申告を提出する必要があります。
住宅用地の特例
住宅の敷地として利用されている土地は、固定資産税および都市計画税の課税標準価格が以下のように軽減されます。
| 固定資産税課税標準価格 | 都市計画委税課税標準価格 | |
| 小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) | 6分の1 | 3分の1 |
| 一般住宅用地 (200㎡超の部分) | 3分の1 | 3分の2 |
住宅用地の特例は、建物を新築した際や建て替える際、建物を取り壊した際などに土地のある自治体に申告書を提出します。
リフォーム減税
次の4つのリフォームのうちいずれかのリフォームを行った場合は、次のような固定資産税の減額措置が受けられます。
- 耐震リフォーム:リフォーム翌年の固定資産税が2分の1減額
- バリアフリーリフォーム:リフォーム翌年の固定資産税が3分の1減額
- 省エネリフォーム:リフォーム翌年の固定資産税が3分の1減額
- 長期優良住宅化リフォーム:リフォーム翌年の固定資産税が3分の2減額
減税のために消費者が用意する書類は、以下のとおりです。
| 耐震リフォーム | ・固定資産税減額申告書 ・耐震改修工事の内容を確認できる書類 ・領収書等 住宅性能評価書の写し(交付がある場合) ・補助金額が明らかな書類(補助金を受けている場合) |
| バリアフリーリフォーム | ・被保険者証の写し等(要介護認定または要支援認定野方) ・補助金額が明らかな書類(補助金を受けている場合) |
| 省エネリフォーム | ・固定資産税減額申告書 ・補助金額が明らかな書類(補助金を受けている場合) ・省エネ改修工事の内容を確認できる書類 ・領収書等 |
| 長期優良住宅化リフォーム | ・長期優良住宅認定通知書の写し ・固定資産税減額申告書 ・補助金額が明らかな書類(補助金を受けている場合) ・耐震改修または省エネ改修工事の内容を確認できる書類 ・領収書等 |
その他、建築士やリフォーム会社に必要な書類を用意してもらったうえで、リフォーム完了日から3ヶ月以内に申告する必要があります。
マンション長寿命化促進税制
過去に屋根や床の防水工事や外壁塗装など長寿命化に資する工事をしている築20年以上かつ10戸以上で、管理計画の認定を取得したマンションが2023年度から2025年度までに長寿命化に資する工事を実施すると、各区分所有者が翌年度に納める固定資産税(建物のみ)が2分の1から6分の1の範囲内で減額されます。減額割合は、自治体の条例によって異なります。
減額措置を受けるには、工事完了後、3ヶ月以内に市町村に申請する必要があります。なお、2025年度税制改正大綱には、現行の措置の2年間延長(2025年4月1日から2027年3月31日)と申請方法の簡略化案が盛り込まれています。
| ・「固定資産税の減税」に関する記事はこちら 固定資産税の減税措置とは?適用条件や申請方法を解説 |
マンションの固定資産税はいくら?
ここでは、3,000万円のマンションにかかる固定資産税を以下の条件でシミュレーションします。
【条件】
購入価格:3,000万円
敷地面積:750㎡
専有面積:70㎡
持分割合:15分の1
土地建物割合:6(土地):4(建物)
建物構造:非木造
長期優良住宅:非該当
土地の固定資産税は、新築と中古によって変わりませんが、建物は築年数によって納税額が異なります。まずは土地の固定資産税を見ていきましょう。
3,000万円(実勢価格)× 60%(土地建物割合)= 1,800万円(土地の実勢価格)
1,800万円 ÷ 1.2 × 70% = 1,050万円(土地の固定資産税評価額)
住宅の敷地として活用されている土地は、小規模住宅用地として200㎡まで固定資産税評価額が6分の1になる「住宅用地の特例」が適用されます。適用対象となるかを確認するために持分割合から敷地土地面積を求めます。
700㎡ ÷ 15(持分割合)= 50㎡
計算の結果、土地のすべてが200㎡の小規模住宅用地となるため、固定資産税評価額は6分の1として計算します。
1,050万円 × 1.4%(税率)÷ 6(住宅用地の特例)= 24,500円
以上の計算から、土地にかかる固定資産税は「24,500円」となります。
新築の場合
新築マンションの固定資産税は、以下のように計算します。
3,000万円(実勢価格)× 40%(土地建物割合)= 1,200万円(建物の実勢価格)
建物の固定資産税評価額は、実勢価格の60%で計算されるケースが多いため、実勢価格に60%をかけます。
1,200万円 × 60% = 720万円(建物の固定資産税評価額)
720万円 × 1.4% = 100,800円
新築マンションは「新築住宅の軽減措置」によって、新築から5年間の固定資産税が2分の1となるため、納税額は「100,800円 ÷ 2 = 50,400円」になります。土地の固定資産税との合計納税額は「24,500円 + 50,400円 = 74,900円」です。
築6年の場合
築6年のマンションの固定資産税は、経年減価補正率を用いて、以下のように計算します。
1,200万円(建物の実勢価格)× 0.8335%(経年減価補正率)= 1,000.2万円(建物の固定資産税評価額)
1,000.2万円 × 1.4 = 140,028円
長期優良住宅の認定を受けていない築6年のマンションは、先述した「新築住宅の軽減措置」の適用対象外となるため、減税が受けられません。したがって、建物にかかる固定資産税は、「140,000円(100円未満切り捨て)」となります。これと、土地の固定資産税と合計し「24,500円 + 140,000円 = 164,500円」となります。
一戸建ての固定資産税はいくら?
次に、3,000万円の一戸建てにかかる固定資産税を以下の条件でシミュレーションします。
【条件】
新築価格:土地 1,000万円、建物 2,000万円
敷地面積:165㎡
床面積 :100㎡
建物構造:木造
土地の固定資産税は、マンションと同様に新築と中古で変わらないので、まずは土地の固定資産税を求めていきましょう。
1,000万円(実勢価格)÷ 1.2 × 70% = 583.33…万円(土地の固定資産税評価額)
敷地面積が165㎡であることから「住宅用地の特例」の適用対象となるため、固定資産税評価額を6分の1として計算します。
583.33…万円 × 1.4%(税率)÷ 6(住宅用地の特例)= 13,611円
以上の計算から、土地にかかる固定資産税は「13,600円(100円未満切り捨て)」となります。
新築の場合
新築戸建ての固定資産税は、以下のように計算します。
2,000万円(実勢価格)× 60% = 1,200万円(建物の固定資産税評価額)
1,200万円 × 1.4% = 168,000円
新築一戸建ては「新築住宅の軽減措置」によって、新築から3年間の固定資産税が2分の1となるため、納税額は「168,000円 ÷ 2 = 84,000円」になります。土地の固定資産税との合計納税額は「13,600円 + 84,000 = 97,600円」です。
築6年の場合
築6年の一戸建ての固定資産税は、経年減価補正率を用いて、以下のように計算します。
2,000万円(建物の実勢価格)× 0.62%(経年減価補正率)= 1,240万円(建物の固定資産税評価額)
1,240万円 × 1.4 = 173,600円
築6年の一戸建ては、先述の「新築住宅の軽減措置」の適用対象外となるため、減税が受けられません。したがって、土地の固定資産税と合計すると「13,600円 + 173,600 = 187,200円」となります。
本記事で紹介したマンションと一戸建ての固定資産税は、下表の通りです。固定資産税は、不動産を所有している限り納付することとなるので、購入前にシミュレーションをしておくことをおすすめします。
| 新築マンション | 74,900円 |
| 築6年マンション | 164,500円 |
| 新築一戸建て | 97,600円 |
| 築6年一戸建て | 187,200円 |
| ・「固定資産税の計算シミュレーション」に関する記事はこちら 固定資産税の計算シミュレーション 一軒家、マンション、更地の計算例を紹介 |
固定資産税はいつ払う?
固定資産税は、1年分を4期に分けて納付する方法が一般的です。納期限は自治体ごとに以下のように決められています(令和5年度)。
| 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 | |
|---|---|---|---|---|
| 東京23区 | 6月 | 10月 | 12月 | 2月 |
| 名古屋市 | 5月 | 7月 | 1月 | 2月 |
| 大阪市 | 5月 | 7月 | 12月 | 2月 |
固定資産税の納税通知書は、4〜5月ごろに郵送している自治体が多く、遅くとも納期限の10日前までに交付することが法律で決められています。納期限までに納付しなかった場合は、固定資産税額と滞納日数に応じた「延滞金」が発生します。延滞金を納めることにならないためにも、納期限に遅れないように注意しましょう。
固定資産税の支払い方法は?
固定資産税は、次のような方法で支払うことができます。
口座振替
固定資産税は銀行などの窓口で納税することもできますが、一定の手間がかかるため、口座振替の手続きをしておくと毎年、楽に納税できます。
クレジットカードで納付
クレジットカードで固定資産税を納税すれば、ポイントが貯まります。クレジットカードを使用する場合は「地方税お支払いサイト」を利用します。
電子マネーやPay-easy
固定資産税は、PayPayなどの電子マネーやPay-easy(ペイジー)を使って納税することも可能です。電子マネーで納付する場合は、固定資産税納付書のバーコードやQRコードをカメラで読み取ります。
Pay-easyも同様に、納付書のバーコードを読み取るか、記載されている納付番号を地方税お支払サイトに入力することで納付できます。
| ・「固定資産税の納税時期・納税方法」に関する記事はこちら 固定資産税はいつ払う?納税通知書の届くタイミングと支払い方法などを解説 |
まとめ
固定資産税の納税額がいくらになるかは、一戸建てやマンションといった建物種別、新築か中古であるかによって大きく異なります。固定資産税は、不動産を所有している限り納付することになるので、購入前に計算シミュレーションをしておくことが大切です。
固定資産税の減税措置を活用すると、納税額を大きく抑えられる可能性があるので、適用を受けた場合に固定資産税がいくらになるのかをあわせて確認しておきましょう。
この記事のポイント
- 固定資産税はどうやって計算する?
「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率」で計算できます。
詳しくは「固定資産税の計算式」をご覧ください。
- 固定資産税評価額がわからないときはどうすればいい?
自治体から交付される固定資産税の納税通知書や課税証明書がない場合は、土地を「実勢価格 ÷ 1.1〜1.2 × 70%」、建物を「再建築価格 × 経年減価補正率」で計算します。新築住宅の場合は「新築価格 × 60%」で求められるケースが多いです。
詳しくは「固定資産税評価額がわからない場合はどうする?」をご覧ください。
- 固定資産税はいつ払う?
固定資産税は、1年分を4期に分割して支払うケースが多いです。納期限は自治体によって異なり、東京23区では6・10・12・2月に支払います。
詳しくは「固定資産税はいつ払う?」をご覧ください。

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