育休中住宅ローン
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育休中の住宅ローン審査はきつい?払えない場合もある?控除についても紹介

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 育休中であっても、住宅ローンの審査に通る可能性は十分にある
  • 住宅ローンの審査では育休中の給付金額ではなく、あくまで育休前の収入を基準に判断される

育休中にマイホームの購入を検討している方のなかには「住宅ローンを組めるのだろうか」と不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。育休中は勤務先からの収入が途絶えることが一般的なため、そもそも住宅ローンを組めないと考えてしまう方も少なくありません。

しかし実際には、審査は厳しくなるものの、育休中でも住宅ローンを組むことは可能です。

この記事では、育休中に住宅ローンを申し込む際に重視されるポイントや、夫婦で利用できる住宅ローンの種類を解説します。さらに、もし返済が難しくなった場合の対策についても触れるため、育休中に住宅ローンを検討している方に役立つ内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。

育休中でも住宅ローンを組むのは可能?

育休中でも住宅ローンを組むのは可能?

育休中であっても、住宅ローンの審査に通る可能性はあります。これは、育休は職場復帰を前提とした制度であり、金融機関は復帰後の安定収入を見込んで審査するためです。

住宅ローン審査では「将来の収入水準」も重視ポイントになるため、育休前の収入実績や復職後の収入見込み額をもとに判断されます。

とくに、復帰後も同じ給与水準が見込まれる場合は、審査に通りやすくなるでしょう。

ただし、銀行によって対応に差があり、大手銀行は育休中の審査に厳しい傾向があります。一方で地方銀行や信用金庫などでは柔軟に対応してくれるケースもあるため、金融機関選びも重要なポイントになります。

育休中の住宅ローン審査で重視されるポイント

育休中の住宅ローン審査で重視されるポイント

住宅ローンの審査に通るためには、金融機関がどの点を重視するのかをあらかじめ理解しておくことが大切です。そのなかでもとくに重視されるのが以下の4つです。

  • 育休前の収入
  • 職場復帰の可能性
  • 健康状態
  • 自己資金の金額

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

育休前の収入

育休中は多くの方が給付金を受け取れますが、これまでの給与水準と比べると収入は減少傾向にあるため、住宅ローンの審査に不安を感じる方は少なくありません。

しかし、住宅ローンの審査では育休中の給付金額ではなく、あくまで育休前の収入を基準に判断されます。

とくに評価されやすいポイントは以下のとおりです。

  • 育休前の収入水準
  • 雇用形態(正社員/パート・契約社員等)
  • 育休前の勤続年数
  • 勤務先の企業規模や安定性

育休前の収入が高い場合や、正社員としての勤続年数が長い場合は金融機関からの評価が高まり、審査で有利になりやすいでしょう。

職場復帰の可能性

育休制度は復職を前提としているため、金融機関の審査では「本当に復帰するのか」が重要なチェックポイントになります。

復帰の可能性が高いと判断されれば、住宅ローンの承認を受けやすくなります。

その際、職場復帰の時期を明示できる書類や、客観的に復帰の見込みを示せる情報があると効果的です。

たとえば以下のような資料が参考になるでしょう。

  • 勤務先から発行される復職時期を明記した証明書
  • すでに産休・育休から復帰した社員が在籍していることを示す情報
  • 保育園や幼稚園が確保できなくても祖父母などに子どもを預けられる体制があること

こうした証拠を事前に揃えておけば、金融機関側も返済能力を判断しやすく、手続きもスムーズに進みます。

健康状態

住宅ローンの審査では、申込者の健康状態も重要な要素です。

多くの金融機関では「団体信用生命保険(団信)」への加入を融資条件としているため、健康状態が良好であることが前提となります。

団信とは、ローン返済中に契約者が死亡や高度障害となった場合に、保険金でローン残債を完済する仕組みです。金融機関にとってはリスク軽減、利用者にとっては生命保険としての役割を果たします。

妊娠や出産の時期は体調を崩しやすく、健康状態の診査に影響する可能性もあるため十分な配慮が必要です。

なお「フラット35」であれば団信加入が任意のため、健康に不安がある方でも利用できます。ただし、団信に加入しない場合は、万が一に備えて生命保険や収入保障保険など、別の保険でリスクをカバーする工夫が求められるでしょう。

自己資金の金額

住宅ローン審査では、自己資金(頭金)の有無も審査に大きく影響します。自己資金が多いと借入額が減り、返済負担率も下がるため審査で有利になります。

返済負担率(返済比率)とは、年収に対する年間返済額の割合のことです。

返済負担率は金融機関が返済能力を判断する際に参考にする指数で、一般的な基準は25〜35%以内が理想といわれています。

返済負担率の計算式は以下のとおりです。

【返済負担率の計算式】
年間のローン返済額 ÷ 年収 × 100

たとえば年収400万円で年間返済が160万円だと返済負担率は40%に達し、審査は厳しくなります。しかし、自己資金を入れて返済額を120万円まで抑えられれば返済負担率は30%となり、審査に通りやすくなるでしょう。

育休中に夫婦で組める住宅ローンの種類

育休中に夫婦で組める住宅ローンの種類

育休中は「収入が不安定」と判断する金融機関もあり、単独で住宅ローンを申し込むと審査で不利になる場合があります。その場合でも、夫婦で申し込めば審査に通りやすくなる可能性があります。

夫婦で利用できる住宅ローンの種類は以下のとおりです。

  • 収入合算(連帯債務型)
  • 収入合算(連帯保証型)
  • ペアローン

それぞれの違いについて以下の表にまとめてみました。

収入合算(連帯債務型)収入合算(連帯保証型)ペアローン
契約数1本1本2本
借入可能額合算した収入に基づいた金額合算した収入に基づいた金額双方の収入に基づいた金額
住宅ローン控除双方とも対象主債務者のみ対象双方とも対象
団体信用生命保険主債務者のみ対象主債務者のみ対象双方とも対象

次項でそれぞれの特徴について詳しくみていきましょう。

収入合算(連帯債務型)

収入合算(連帯債務型)とは、夫婦の一方が主契約者(主債務者)となり、もう一方が連帯債務者として収入を合算し、1本の住宅ローンとして契約する方法です。連帯債務型の場合、主債務者と連帯債務者の双方に返済義務が生じます。

連帯債務型のメリットは、夫婦で住宅ローン控除が適用されるため、一定の節税効果が期待できることです。

一方の注意点として、団体信用生命保険(団信)に加入できるのは基本的に主債務者のみであり、連帯債務者には保障がつきません。

収入合算(連帯保証型)

収入合算(連帯保証型)は、夫婦の一方が住宅ローンの契約者(主債務者)となり、もう一方が連帯保証人となって収入を合算し、審査を受ける方法です。

連帯保証人には日常的な返済義務はなく、基本的には主債務者が返済を続けます。

たとえば3,000万円の住宅ローンをこの方式で借り入れたとしましょう。この場合、夫が主債務者で妻が連帯保証人であれば、日常の返済は夫のみが行います。

ただし、万が一主債務者が返済不能となった場合には、連帯保証人(妻)が残りの返済をすべて引き受けることになります。

また、連帯保証型では住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)の対象となるのは主債務者のみであり、連帯保証人には適用されない点にも注意が必要です。

ペアローン

ペアローンとは、夫婦がそれぞれ自分の名義で住宅ローンを契約する方法です。双方がローン契約者となり、互いに連帯保証人となる仕組みになっています。

ペアローンのメリットは、夫婦それぞれが住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)の対象となる点です。

双方に保障や節税効果が及ぶため、収入がある程度安定している共働き世帯に適した形といえるでしょう。

一方で、夫婦ともに安定した収入や信用力が求められるため、ほかの方式に比べて審査は厳しくなる傾向があります。また、2本のローン契約を結ぶことになるため、事務手数料や保証料などの諸費用が高額になりやすい点にも注意が必要です。

育休中に住宅ローンを組む際の注意点4つ

育休中に住宅ローンを組む際の注意点4つ

育休中に住宅ローンを申し込む場合、金融機関によっては審査に不利になる可能性があるため、通常よりも慎重な準備が求められます。

ここでは育休中にローンを組む際に、押さえておきたい4つの注意点を紹介します。

住宅ローン控除が十分に受けられないことがある

育休中に住宅ローンを契約すると、住宅ローン控除を十分に受けられない可能性があります。

住宅ローン控除とは、一定の条件を満たして住宅ローンを利用した場合に、年末時点のローン残高に応じて所得税や住民税が軽減される制度です。最大で13年間、ローン残債の0.7%が納めた税金から差し引かれる仕組みになっています。

しかし、育休中は収入の中心が育児休業給付金となります。

育児休業給付金は非課税所得にあたるため、給与のように課税対象とはならず、その期間は住宅ローン控除の適用を受けられません。

さらに、復職後も年収が103万円以下にとどまる場合には所得税が発生せず、控除を受けられないケースもあります。

収入減少に対応できる返済額を設定する

育休中は収入の中心が育児休業給付金となり、育休前と比べて収入が減少することが一般的です。

給付金の支給額はこれまでの賃金のおおむね67%程度となります。そのうえ、育休中は賞与が支給されない勤務先も多く、収入が大きく落ち込む可能性があります。

加えて、復職後に時短勤務を選んだ場合も勤務時間が短くなるため、収入は減少することが見込まれます。

こうした状況を踏まえると、収入が減っても返済が続けられるよう無理のない返済計画を立てておくことが重要です。

たとえばボーナス返済に依存しないプランを選んだり、返済比率を低めに設定したりするなど、余裕をもたせた返済方法を検討しておくと安心です。

諸費用を確保しておく

住宅を購入する際には、物件の購入価格だけでなく、契約や登記などにかかる「諸費用」の確保も必要です。

主な諸費用には以下のようなものがあります。

諸費用概要
ローン手数料住宅ローン契約にかかる事務手数料
ローン保証料返済が滞った際に備えて保証会社に依頼するための費用
印紙税契約書などの文書に貼付する印紙代
火災保険・地震保険火災や地震などの災害リスクに備えるために加入する保険料
登記費用所有権の移転や抵当権の設定など登記手続きに必要な費用

これらは借入額の物件価格の3〜8%ほどを占めることが一般的です。

たとえば、5,000万円の物件を購入した場合には150~400万円程度の諸費用が必要になるでしょう。

住宅ローンを組む際はこうした諸費用も念頭に入れておき、住宅ローンの返済計画とは切り離して準備しておきましょう。

審査に通りやすい金融機関を探す

育休中に住宅ローンを申し込む場合は、審査に通りやすい金融機関を選ぶことが重要です。なかには育休中の家庭に配慮し、特別な商品や制度を用意している金融機関もあります。

主な優遇措置の例としては次のようなものがあります。

  • 一定期間、元金を据え置き利息のみを支払える制度
  • 出産後1年間の金利優遇措置
  • 一定期間の金利優遇サービス

たとえば、フラット35の場合、子どもの人数に応じて金利が最大1%優遇されるプランがあります。

このように、金融機関を選ぶ際には、通常の金利や諸費用を比較するだけでなく、優遇制度の有無も確認しておくと、負担の少ないローンを見つけやすくなるでしょう。

育休中に住宅ローンが払えない!?返済への対策

育休中に住宅ローンが払えない!?返済への対策

育休中は収入が減るため、毎月の住宅ローン返済が家計の大きな負担となり、予定どおりの返済が難しくなるケースもあります。そのような場合には、次のような対策を知っておくと安心です。

  • 猶予措置を金融機関に相談
  • 住宅ローンの借り換えを検討

それぞれの対策について解説していきます。

猶予措置を相談

住宅ローンの返済が厳しいと感じたときには、まず融資を受けた金融機関に相談することが大切です。

育休中に収入が減った場合、多くの金融機関では返済スケジュールの変更(リスケ)や、返済条件の見直しといった特別な対応を検討してくれます。

具体的に相談できる内容としては次のような方法があります。

  • 返済期間を長くする
  • 一定期間だけ月々の返済額を減らす
  • 一定期間だけ元金の支払いを猶予し、利息のみを支払う形に切り替える
  • ボーナス返済分の条件を変更する

このような措置を活用すれば、一時的な収入減にも対応しやすくなります。返済が難しくなってからでは対応が遅れることもあるため、できるだけ早い段階で金融機関に相談することが重要です。

住宅ローンの借り換えを検討

育休中に返済負担を軽くする方法のひとつに、住宅ローンの借り換えがあります。金利の低いローンへ切り替えることで、毎月の返済額や総返済額を抑える効果が期待できます。

借り換えによるメリットが大きくなるのは、次の条件に当てはまる場合です。

  • 現在のローンとの金利差が1%以上ある
  • 返済期間が10年以上残っている
  • 残債が1,000万円以上ある

これらの条件に該当する場合には、住宅ローンの借り換えを検討してみる価値があります。

ただし、借り換え先を選ぶ際には金利だけで判断せず、事務手数料や保証料などの諸費用も含めて総合的に比較することが重要です。条件をしっかり見比べたうえで、より有利な金融機関を選んでください。

まとめ

育休中であっても、住宅ローンの審査に通る可能性は十分にあります。審査では「育休前の収入」や「復職後に安定した収入が得られるか」が重視されるため、育休前の実績や復職予定が大きな判断材料となります。

とはいえ、育休中は通常よりも審査が厳しくなる傾向があるため、夫婦で収入合算する方法やペアローンを活用するのも有効な手段です。さらに、返済が難しくなった場合は契約先の金融機関に早めに相談し、猶予措置などを利用して無理のない返済を続けることが大切です。

育休中の住宅ローンは不安がつきまとうものです。だからこそ制度や仕組みをきちんと理解し、無理のない返済計画を立て、子育てと住宅購入を両立させましょう。

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この記事のポイント

育休中でも住宅ローンは組める?

育休中であっても、住宅ローンの審査に通る可能性はあります。これは、育休は職場復帰を前提とした制度であり、金融機関は復帰後の安定収入を見込んで審査するためです。

住宅ローン審査では「将来の収入水準」も重視ポイントになるため、育休前の収入実績や復職後の収入見込み額をもとに判断されます。

詳しくは「育休中でも住宅ローンを組むのは可能?」をご覧ください。

育休中の住宅ローン審査のポイントは?

住宅ローンの審査に通るためには、金融機関がどの点を重視するのかをあらかじめ理解しておくことが大切です。とくに重視されるのが以下の4つです。

  • 育休前の収入
  • 職場復帰の可能性
  • 健康状態
  • 自己資金の金額

詳しくは「育休中の住宅ローン審査で重視されるポイント」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

住宅ローンは長期間にわたる大きな契約であり、家計への影響も少なくありません。そのため、夫婦で返済計画や働き方の見通しをしっかり共有しておくことが重要です。とくに育休中や子育て中は収入や生活スタイルが変わりやすいため「どちらがどのくらい働くのか」「収入をどう確保するのか」を共有しておくと安心です。そのうえで、夫婦で利用できる収入合算やペアローンを選択肢に加えると、より現実的な返済プランを立てやすくなるでしょう。

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